デゼニワールド(ハドソンソフト)
(c)HUDSON SOFT
発売:ハドソンソフト(1986) 機種:PC88 ジャンル:アドベンチャー
評価:★★★☆☆
198x年。オリンピックの誘致に失敗した名古屋では起死回生を図り、さいたまの巨大遊園地デゼニランドを越える巨大遊園地、デゼニワールドを建設することを計画します。ですがそのために設置した人工知能を持つスーパーコンピュータ「HAL3(ハルミ)」が暴走してしまい計画は頓挫、これを止めるために我らがヒーロー、デゼニマンが立ち上がりました。
ハドソンの名を普及のものにした名作「デゼニランド」と「サラダの国のトマト姫」に続く、中本氏と竹部氏によるコマンド入力式アドベンチャーゲーム。当初、1984年に発表されたにもかかわらず発売まで2年もの期間がかかってしまい、その頃にはシステムが古臭くなってしまったことや難易度の低さ、雑多なパロディが鼻につくなど様々な批判を受けたこともあってやや存在を黙殺されている感のある気の毒な作品でもあります。
巨大遊園地自体はもちろん「ディズニーワールド」のパロディ。HAL3の暴走で放棄されたデゼニワールドに乗り込み、ランドからコスモイメージ、スターシップナゴヤといったパビリオンを経てHAL3との対決が待っています。ゴルゴ13やスーパーマン、バットマンからサンダーバード、黄金バットやウルトラマンに時をかける少女まで、かなり思い切った作品や登場人物を出しまくる力強さはある意味ではデゼニランド以上に危険かもしれません。
他にも2001年宇宙の旅やインディージョーンズにゴーストバスターズを思わせる展開など遠慮というものがありませんが、そのせいでタイトルにも関わらず「ディズニーワールドのパロディ」らしさが失われているのがやはり惜しいところでしょうか。おそらく国内でディズニーワールドのパロディをしたところで、デゼニランドのように実物を知っている楽しさが得られないための苦肉の策だと思いますが、この内容ならいっそタイトルを「デゼニマン」にしたほうが良かったのではないかとも思います。
肝心の謎解きは難易度の低さが指摘されるとおり、理不尽な単語探しがほとんどなくこの手のゲームが好きな人であればかんたんに解くことができるでしょう。序盤、デゼニワールドに向かうまでのひたすらTALKを入力する展開には物足りなさを感じさせますが、コスモイメージの脱出方法など旧作を思わせる工夫は健在。警備ロボットを電源ケーブルを抜いて倒したり、アドベンチャーゲームの魅力である力技の許されない楽しさを味わせてくれます。
謎解きよりもパロディや展開を楽しませてくれるという点が当時の風潮に流されたと批判を受けてしまった作品ですが、実のところゲームとしては充分に完成度の高い良作といえる出来映えになっています。それが批判を受けた理由は古臭いコマンド入力や唐突な展開、理不尽な単語探しといった「デゼニランドらしさ」こそがこの作品に望まれていたということであり、旧作デゼニランドがそれだけファンに強烈な印象を残していたことの皮肉な証明でもあるのでしょう。
個人的にはけっこう好きな作品ですが、やはり考えさせられるのが某氏に似ているというデゼニマンの存在。主人公が「あなた」ではないアドベンチャーゲームが決して珍しくもないことはサラダの国のトマト姫でも同様ですが、この作品であればデゼニマンの姿は見せずに主人公視点で描画してくれた方がより莫迦莫迦しい臨場感を感じさせてくれたのではないでしょうか。デゼニマン自体の外見はむしろ好みですが、オープニング以外はエンディングのブタ丸と手をつなぐシーンのように背中だけの登場でも良かったのではないかと思います。
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