ドラゴンクエストIV 導かれし者たち(エニックス)

dragonquest4
(c)ENIX

発売:エニックス(1990) 機種:ファミリーコンピューター ジャンル:ロールプレイング
評価:★★☆☆☆
 かの有名国産RPG、ドラゴンクエストの第4弾。ロトシリーズと呼ばれたI〜IIIまでのシステムを整理して、更にそれまでのドラゴンクエストにはなかったキャラクター性やストーリー性を前面に打ち出すことを試みた意欲作です。アレフガルドを中心とした前作までとは全く別の世界が舞台となっており、魔王を倒すことができるというただ一人の勇者と、それを守る七人の導かれし者たちを中心としたお話。仲間たちそれぞれの冒険が順に語られていく第一章から第四章までと、彼らが勇者に出会ってともに冒険する第五章のシナリオによってゲームが進められていきます。
 とにかく登場人物が外見から能力まで実に個性的で、同じ魔法使いでも攻撃魔法主体の若い踊り娘マーニャと補助魔法を備えた宮廷魔術師ブライ、重い鎧を来た戦士のライアンに素早さあふれる武闘家のアリーナ姫、僧侶らしい能力を持つ占い師ミネアと前線で剣を振ることもできるクリフトに、前作IIIでの商人と遊び人を合わせたような個性的な能力を持つ商人トルネコの存在など、パーティバランスまで考えて作られたメンバーがそろっているのが最大の魅力。

 ただゲームとして残念なのは、第五章以降になると仲間がAIで戦うようになり一切の命令ができなくなってしまうことで、道具の使用はもちろん補助呪文すらほとんど使わなくなってしまう上に、効果のない呪文を連発したりと戦闘バランスが完璧にぶちこわされてしまいます。売りである筈の学習能力つきAIも役に立たず、同じ敵と何度か戦ったり経験値が増えたりしてもたいして効果的な戦い方をしてくれるわけでもありません。こうなるとキャラクターの個性も裏目に出てしまい、スクルトやバイキルトを使わないサントハイムの無能者二人よりも、もとから攻撃魔法主体のマーニャのほうが大味に戦うことができますし、占い師ミネアはどうせ占いをしませんから回復専門メンバーとして活躍することになるのです。勇者だけは戦闘中に道具を使えるというある意味特別な存在になるために、終盤やボス戦では回復と凍てつく波動の専門役となって、うっかり武器を振るおうものなら仲間の回復が間に合わずにピンチになりかねません。魔王を倒すことができるただ一人の勇者役は、アリーナ姫に譲ったほうがいいでしょう。
 そんな壊れた戦闘バランスのほかにもドラゴンクエストとは思えないセンスの悪いモンスターや呪文も盛りだくさんで、色違いモンスターの配置箇所が近いことも多く砂漠で会うデザートゴーストと氷の洞窟のイエティがごく近い時期に登場したり、第一章のボス敵がすぐに色を変えて二章の序盤に登場するといった興ざめっぷりも披露。終盤の敵は大きければいいやという大魔導さんや、牙も角もカギ爪もあるのに剣を振りますというエスタークさんのような雑なモンスターも多くラスボスに至ってはもはや哀れというレベル。肝心のストーリーも酷いもので伝説の勇者とはまるで年代の違う子供たちがバトランド地域限定で神隠しに会っていたり、その勇者を探している筈の魔王は武闘会に参加して呑気に遊んでいる体たらく。隔絶された土地に隠されている伝説の宝の地図は誰がどうやって描いたものかさっぱり分からず、にもかかわらず宝の噂だけは世界各地に知られているという情報の伝わりぶりも不思議です。

 他にも騎士団で有名な国バトランドが温泉街よりも武器防具の品揃えが悪かったり、ストーリーの要となる黄金の腕輪がものすごく雑な洞窟にあるにも関わらず誰も取りに行かず、ロザリーヒルの鍵となるあやかしの笛がなぜかよその国の王様に献上されている始末。建造理由が説明できない魔人像は歩くところを見せたいだけの存在となっていて、サントハイムに行かせないためにいつまでも倒れたままの兵士が旅のほこらの通路をふさぎ、果ては苦労してたどりつく筈のボスの居場所にマスタードラゴンが飛んできたりとご都合満載のオンパレード。キャラクターの魅力とカジノの魅力を除けば、ドラクエファンの中学生がつくったゲームではないかと思われるほどやりきれないできばえとなっています。
 とにかく魅力的なキャラクターが好きという人を除けばお世辞にも人に薦めることができない作品ですが、もしも女勇者がはねぼうしを装備できるようにしていたらもっと評価が上がっていたと思います。
>他の記事を見る