ドラゴンクエストIV 導かれし者たち(スクウェアエニックス)
(c)SQUARE ENIX
発売:スクウェアエニックス(2001) 機種:プレイステーション ジャンル:ロールプレイング
評価:★★★☆☆
有名なドラゴンクエストの第四作を、プレイステーション用にリメイクした作品です。もともと2D処理性能が低すぎるプレイステーションでドラゴンクエストを出すことに無理はあるんですが、VIIの技術を活かしていくつかの不満点も改善しているなかなかの力作。
フィールドは斜め移動可能、街やダンジョンは3Dによる回転表示にしているので、わざわざファミコン版を踏襲しているカクカクした地形に最初は違和感があっても、操作自体が親切なおかげでそれほど気になりません。そして何より、ファミコン版最大の欠点であった五章以降のAI戦闘を解除して命令することができるので、まともに遊べるドラクエIVになっただけでも高い価値があるといえるでしょう。ただ、システムバランスに失敗していたとはいえ本来ファミコン版の売りであった筈のAI学習機能を外してしまい、命令を可能にしたことによって戦闘システムがまったく別のゲームになってしまった感は否めません。せっかく命令をしても攻撃対象の選択基準が「ダメージを与えた相手を袋叩き」であるために効率的な攻撃ができないことも欠点。
それでもIVの数少ない魅力であった個性的なキャラクターはそのままに、プレイステーション版になって音楽の質が格段に向上したことや、移民の町や新アイテムの追加、持ち物袋の用意にちいさなメダルの引き換えシステムの変更など、細かいところで遊びやすさに気を使ったつくりは好感が持てるようになっています。
一方で、読み込みの遅いプレイステーションではどうしてもドラゴンクエスト本来の魅力であるお手軽な操作性が落ちている上に、より外見のバランスが悪くなった不細工なモンスターたちが繰り出す、不必要な戦闘エフェクトのおかげで更にゲームのテンポが悪くなっている感も否めません。せっかくの移民たちも場所を選ばずにどこにでも現れるために世界中どこでも空の人が現れたり、隔絶されたゴットサイドを家出少年が気軽に訪れたりと微妙な不自然さも健在です。
そしてAI解除によって戦闘こそ多彩になりましたが、これによってオリジナルのファミコン版とはまったく別のゲームになったことが理解されていないせいで戦闘バランスが別の方向に破綻。難易度が極端に下がった上に、一部呪文の効果やMP消費量が変更されたことでスカラが無意味になったりベホマズンが強すぎるなど、呪文体系が崩壊してしまっています。補助呪文を効果的に使う敵も皆無に近く、強い敵は単にHPが多くて攻撃力が高いだけの怪獣であり、ことにボス戦ではこれが顕著になるために戦闘にまるで緊張感がないのも残念なところ。弱いままのパーティで強いボスに勝つには工夫よりも運が必要で、自分たちが強くなれば攻撃と回復だけの力押しで勝てるのでいずれにしても攻略の楽しみがありません。
アイテム関連で趣味的な変更や追加を行っている点は評価できますが、相変わらず女性キャラクターを優遇する傾向はファミコン版と変わっておらず、ドレスやレオタードが充実している一方でトルネコ専用のそろばんはファミコン版以来の一本のみ。ブライは最後までうろこの盾を装備しなければならず、特に男勇者くんが娘勇者さんのレッサー版と化しているのは気の毒でなりません。苦悩した挙句にステテコパンツを履いて笑いをとることすら、彼には許されれていないのです。
もちろん正気を疑いたくなる滅茶苦茶なストーリーはそのままで、ファミコン版の不条理をすべて踏襲した上に演出面は強化されているので、魔人像が歩き出す場面を見るとこれが後ずさって戻るところをリバーサイドの人は見てるんだなあとか、天空を貫く塔はすぐ近くに住んでいるコナンベリーの港町から丸見えなんだろうなあとか、余計な心配をせずにはいられなくなってしまいます。サントハイムや勇者の村で悪逆の限りをつくしたムーンサルト様が仲間になるという最悪のオマケまで用意されているのも正直どうかと思いますが、ザオリクや教会では生き返らないらしい、妖精族をも甦らせる世界樹の花とやらがもしもあるなら、まっさきにシンシア姉さんに使うことができますね。
あとは女勇者がはねぼうしを装備できないのもマイナスです。
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