ファミコンウォーズDS(任天堂)

dswars dswars
(c)Nintendo

発売:任天堂(2005) 機種:ニンテンドーDS ジャンル:シミュレーション
評価:★★★★☆
 発売が近づくつど国際情勢の影響で延期や発売中止になる不遇のシリーズのニンテンドーDS版です。ゲームボーイウォーズアドバンスの時代から一年ほどが過ぎて、舞台はコスモランドやオメガランドから更にはなれた辺境の大陸マクロランド。総帥ヘルボウズが打倒されて、解体した筈のブラックホール軍がとつぜん勢力を回復すると周辺を砂漠化させながら侵攻を開始、これに対抗するためにレッドスターを中心とした四国による連合軍が結成されると、かのキャサリンの妹である「フラットブレスト」レイチェルを司令官に反撃が開始されました。

 という設定のシナリオが用意されているキャンペーンシナリオや定番のフリー対戦、トライアルやサバイバルマップにアクションゲーム風味のコンバットモードまで多彩なシステムが用意されている作品です。すべてを遊び尽くすには膨大すぎるマップやシステムが収められている一方で、どちらかといえば自分の好みに合ったモードで遊ぶほうがおすすめでしょうか。
 基本システムはこれまでと大きく変わってはいませんが、幾つかの追加要素が登場しているのは続編ならではでしょう。新規参戦するショーグンたちは全体的に能力が抑えられていて、よりにもよってレッドスター所属のレイチェルさんが使い勝手のいいヘルボウズみたいになっている点を入れても反則級の人はあまりいません。あいかわらずホーク&ゴリラの存在意義を失わせてしまうリョウ&おばさんコンビはやばいですが、ミドリウム&ビクトリアスのゲームバランス崩壊カップルはもはやどうしようもありません。黒幕のヘルボルトが首から上に棺桶を乗せている気の毒な人なので、強いボスの役目をキャンドル様が負っているのは前作のキャットさんと同じようなポジションだと考えればいいでしょう。シリーズを追うごとにマックスだけが劣化していくのはたぶん彼がキャサリン司令の実年齢を知っているからですね。

 で、その他の追加要素としてフォースによる能力強化ができるようになりましたが、これがちょっと強力すぎて特にサクテキマップの難易度を下げてしまう点や、多彩なユニットも相変わらずタコ戦車が強すぎて重戦車の存在意義が消えている点などゲームバランス的には気になる箇所が多いのは正直なところです。グレートタンクだけは巨大なガラクタっぷりが面白いので、個人的にはタコ戦車を廃止してこれに替えたほうが良かったかと。これは前作2でも同様ですが、タコ戦車の存在がとにかく陸上ユニットの均衡を崩してしまっています。
 あとは今回の売りであるタッグバトルですが、ターン制シミュレーションゲームでの連続行動ははっきりいってバランス崩壊するのでこれもおすすめできません!ブレイクゲージがたまらないように攻勢を控えつつ、相手がブレイクを発動したターンに掃討戦に出るという動きが有効なので、こうなると相手を倒すことではなく相手のブレイクを発動させないことを目的とした行動となってしまい戦術シミュレーションとは言い難くなってしまうでしょう。これがアドバンス1なら軽戦車と自走砲だけで重戦車の大軍に負けても今度こそと思うことができますが、スペシャルブレイクやタッグブレイクに負けても理不尽なストレスの方が悔しさよりも大きくこれはどうかと思います。ショーグンの個性を活かしたキャンペーンマップも少なく、しかもこちらが連合軍のせいか味方が大軍で敵が少数という例もままあっていっそブラックホール軍で遊ぶキャンペーンがあってもいいですね(いっそ四軍に包囲されながらブラッククリスタルを守るとか)。

 対人戦を除けばおすすめはパズル要素と攻略性が楽しい各種サバイバルと、フォースやタッグに制限をかけて挑戦ができるトライアルの両モードでしょうか。サバイバルモードはトライアル同様にフォース禁止やタッグ禁止にすれば獲得EXPが増えるようにしてくれたら文句がなかったと思います。新機軸のコンバットモードはタンクバタリオンまたはバトルシティー風味のアクションゲームですが、残念なことに完成度で遠く及ばずハチが言うほど大したゲームではありません。この手のシステムは可能な限りシンプルでないと意味がないので、個人的にはフィールドがスクロールするほど広いだけで問題外ですね。自ユニットが撃墜された場合もその場で次のユニットを出撃させるのではなく、ステージ最初からの再挑戦でないと単なる力押しができてしまいます。
 とはいえ全体的に気になる点が見られる一方で、モードもマップも膨大に用意されているので好みのものだけ遊んでも遊びきれないボリュームは感嘆ものです。フォースやブレイク、タッグ等の要素も自分で使わないことはできますし、その他壁紙やサウンドモード、ショーグンの衣裳交換などおまけ要素も楽しく、あいかわらず親切なシステムと合わせて初心者にもおすすめしやすい作品です。愛くるしいホイップさんが格好いいおじさんになってしまったので、アイドルの座はジーポちゃんで不動ですね。

 ちなみにペスとかいう犬みたいな名前をした新主人公さんですが、欠点のないとてもよい人なのに地形効果や移動力や射程など、どれも中途半端なのは彼の女性に対する振る舞いがたいへん中途半端なことに起因しています(断言)。
>他の記事を見る