ファイヤープロレスリングS(ヒューマン)
(c)HUMAN
発売:ヒューマン(1996) 機種:セガサターン ジャンル:スポーツ
評価:★★★★☆
ほぼプロレスファン限定で圧倒的な任期を誇るプロレスゲームの定番シリーズで、なぜかそれまでセガ系の家庭用ゲーム機には微妙に縁がなかった正当派ファイプロにあたる作品です。どこかで見たような仮名のレスラーたちがチープな画面で試合をするといえばそれまでですが、キャプチャーなどしていないにも関わらずやたらリアルに思わせる画像や動きの再現度に開発陣のプロレスへの愛着を感じまくります。
基本操作は単純で、タイミングよくボタンを押すことによってレスラーごとに割り与えられた技が出るようになっていますが、前や後ろから組み合っているときはもちろん、相手が倒れていたり場外だったりコーナーに登ったり2対1だったりと、細かい状況に応じてそれぞれ別の行動が可能になっています。力まかせなパワー系の選手、華麗な飛び技を駆使するルチャドール、シビアな格闘家風味の選手から反則凶器なんでもござれの悪役まで、好きなスタイルで試合ができる「なんでもあり」なシステムはそれこそ格闘ゲームの及ぶところではありません。相手の股間を蹴り上げてから顔面に毒霧、すかさず場内にアピールをしてドロップキックという動きがごく当然に許されるのはプロレスとプロレスゲームならではでしょう。
セガサターン版となる本作はマルチタップを想定した六人同時対戦が可能になっていて、3対3の六人タッグ戦からバトルロイヤルまでできるのが特徴。もちろんシリーズ定番の選手エディット機能をはじめ、団体や選手のリネーム機能も充実しすぎていますので、ビクトリー武蔵というちょっとアゴが長い参議院議員に似た人をアントニオ猪木と呼びかえるのも遊ぶ人の自由です。海外選手や隠し選手も豊富に用意されている上に、エディット用の顔パーツでは更にマイナーな選手(によく似た人)も使えるので実在する選手から架空の選手まで自由につくることも可能。
シリーズ全体を通して言えることですが、ゲームとしてはあくまでプロレスゲームなのでそれこそ対戦格闘ゲームのようなシリアスな攻防は求めるだけ無駄と思ってまちがいありません。勝敗よりも盛り上がる試合を重視する、プロレスファンでない人にはそもそも理解しづらいジャンルですがファンであれば好きな団体や選手問わずに楽しめる作品ではないかと思います。海外やインディ系団体の選手も充実していますし、アントニオ猪木によく似た人vsジャイアント馬場によく似た人のような夢の対決を実現することもできれば、単純に嫌いなレスラーを凶器で血だるまにするちょっとアレな試合も好きに組むことができるでしょう。
こまかいところで気になるのは、ふつうに試合をすると5分程度で終わってしまうのでゲーム内時間の経過を倍くらい速くしてもよかったこと、電流爆破戦で時限爆弾後の攻防ができないこと、レフェリーのカウントが遅すぎて3カウントが取りづらいこと、せっかくの3プラトン技を太鼓の乱れ打ち以外にも用意して欲しかったことあたりが不満点でしょうか。
あとはセガサターンのバックアップデータがとても消えやすいという、この作品のせいではない致命的な欠点を除けば選ばれている選手や技の種類、六人タッグ戦のにぎやかな楽しさなどシリーズでも特に評価が高いファイプロの一つに数えることができると思います。この時期はまだ版権的につっこまれていなかったらしい悪のオーナーことディンク・カクラコンの名前が登場するのも個人的にはツボですね。
画像はオリジナルエディット選手「アンクルベア一号&二号」を選んでみました。
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