グランディアX(エニックス)

grandiax
(c)ENIX/GAME ARTS

発売:エニックス(2002) 機種:プレイステーション2 ジャンル:ロールプレイング
評価:★★★★☆
 名作グランディアシリーズの続編、という書き出しでは当たり前に過ぎますが続編です。開発メンバーは変わっていませんがエニックスから発売されているのがポイントで、特にデバッグ要員を豊富に用意できたこともあって驚くほど開発スピードが早かったそうです。前作2同様に世界観や物語は別ですが、システムやテーマが共通しているのがシリーズとしての特徴で、グランディアよりもLUNARらしさが印象強かった2に比べるとしっかりとグランディアらしい作品となっています。そしてこれこそ賛否が分かれる原因となった、エクストリームと謳う戦闘場面に特化したゲームシステムへのこだわりこそが今作の最大の特徴となっています。

 舞台は人の住む軍事国家ノーチスとエルフの暮らす貴族社会アルカダ、獣人の集まりである遊牧民族ハズマの勢力が互いに対立し争っている世界。その彼らを突如襲った、精霊暴走と呼ばれる土火水風の遺跡を中心に巻き起こった災害を止めるべく集められた各種族の混成部隊を率いるべく、リーダーにさせられた新米地導師エヴァンの物語です。地脈を操り好きな場所に好きなときにジオゲートと呼ばれる門を開いて移動することができる、地導師の家に生まれながらもろくに修行をしていなかったエヴァンはそれでも多少のゲートを開くことができたこともあって、危険な作戦地域に乗り込み精霊暴走を鎮めていきます。やがて遺跡と精霊暴走の正体、そして混成部隊を組んだノーチス軍の目論見が明らかになり古代人の目的であった究極生物クァン・リーが世に姿を現わしました。仲間にも莫迦にされるほどに未熟な坊やであったエヴァンですが、精霊暴走に対する中で成長を続けていった少年がそれでも捨てることが無かったのは人と人とのつながりだったのです。
 毎回見事なシナリオでうならせるグランディアシリーズでも、前作に並ぶ見事なストーリーを見せてくれる作品ですが、にも関わらずそのストーリーが本作に対する最大の批判となっています。クァン・リーを倒すファーストエンディングまでの物語と、そのクァン・リーが残したものを探していくセカンドエンディングまでの物語、ベースキャンプであるロッカの村を舞台にした村人一人の台詞にいたるまでよく考えられた素晴らしいテーマと練りこまれたストーリー構成の妙は見事というほかないのですが、戦闘特化したシステムを活かすためにそうした物語をひとつも拾わずともゲームを進めてクリアができるように作られているため、何も考えずにゲームを進るとすべてに気がつかないままエンディングにたどりついてしまうでしょう。
 一方でゲームシステムはエクストリームの名に恥じないグランディアの集大成となっていて、IPゲージの奪い合いというこれまでのシステムを踏襲しながら緻密な計算の上に成り立っている戦闘システムは経験値稼ぎをしているだけでもアイテム集めをしているだけでもマナエッグ育てをしているだけでも飽きない上に、それでも極めることができない程の膨大なデータ量を誇っています。アクションでないにも関わらず、コンマ数秒の時間を意識しながら相手の攻撃を牽制しつつ効果的な行動を選ぶ、強すぎる敵が相手であっても戦い方一つで勝機が見えるし、これまでのグランディアでは難しかった苦境からの逆転勝利も可能なシステムは脱帽ものです。ゲームをクリアせずにひたすら遊ぶことができるゲームというのは、最近では珍しいかもしれません。

 欲をいえばこれだけのシステムを作っておきながら、敵の強さに限界があるのでやがてゲームの難易度が下がってしまうことが最大の不満点で、レベル250まで自分たちが強くなるシステムで登場する敵の最高レベルが150というのはやはり物足りないものを感じます。こんなの勝てるわけないと思わせる強敵を倒すことができる、この作品であればせめてボスだけでも全てレベル250の相手を用意してくれればひたすらレベル稼ぎをする楽しみも更に増大したのではないでしょうか。あるいは自分たちのレベルをお手軽に下げることができれば、全員のレベルを10くらいまで下げてから各遺跡のボスたちと楽しい戦いに挑むこともできたのではないかと思います。
 遊びこめば遊びこむだけ楽しくなる作品であり、気軽に遊んでしまうと楽しさに気がつくことができないというシステムはやはり手放しで評価できるものではありませんが、攻略本は自分で作るものであると考えるほどにゲームへの思い入れを持つことができる人であれば、是非とも挑んでもらいたい最強のグランディアです。また、もしもロールプレイングゲームにはストーリーこそが大切だと思うような人であれば、町中での会話のひとつまで構築されている見事なストーリーを知り、グランディアのテーマである人と人とのつながりを感じることができるでしょう。

 丁寧にゲームをしましょうという、ただそれだけのことです。
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