星をみるひと(ホット・ビィ)
(c)HOT-B
発売:ホット・ビィ(1987) 機種:ファミリーコンピューター ジャンル:ロールプレイング
評価:★☆☆☆☆
カレイドスコープシリーズで知られるホット・ビィ(GA夢)が出した、ファミリーコンピューターでも伝説級の扱いをされているロールプレイングゲームです。舞台は未来世界、「くるーすり(クルーIII)」と呼ばれるコンピュータに管理された巨大都市アークシティを逃げ出した記憶喪失の少年「みなみ」が、執拗なサイキック狩りを避けながら同じように迫害されているサイキックの子供たちと出会い、アークシティに隠された謎を解いていく物語。「みなみ」は特定のブロックを破壊するブレイクの能力を持ち、ジャンプ能力を持つ「しば」、ダメージ床を歩くシールドを使う「みさ」、テレパシーを操る「あいね」の四人が仲間になります。アークシティの中枢に進むに連れて、驚くべきこの世界の姿が明らかになり人類が向かうべき未来への選択肢を知ることになるでしょう。
魅力的な設定にストーリーを秘めた作品ですが、それにも関わらず巷では伝説扱いされている理由はいわゆるファミコンユーザーには崩壊しているとした思えないだろうゲームシステム。開始早々、貧弱なみなみの周囲には町の姿すら見えず、戦ってもほとんど勝てない雑魚敵がはびこっている有り様で、しかも逃げる方法がないのであれよと思うままにゲームオーバー。実は迫害されているサイキックたちは協力して町の姿を隠しており、スタート地点から左に歩くとマムスの村に入ることができますが、うっかり武器を買ってしまうとかえって敵にダメージが与えられなくなってしまいます。サイキック狩りの追っ手を相手に、けっきょく素手で殴りあう頼もしいみなみですが「さらまんど」あたりに病気にされてしまうと何もできずに殴り殺されるのを待つばかり。
この手のゲームにはおなじみの、移動速度の異常な遅さとエンカウント率の高さにげんなりとしながら、町や村に入ると出たときにそれまでと違う場所に飛ばされたり、こまめなパスワード保存をしても所持金や経験値の一部が失われるようになっていると、ふつうの人であればカートリッジを積み木にして遊ぶといった別の有効活用を考えるに違いありません。
とはいえ、ロールプレイングゲームの序盤というのはそんなものだということを知っている剛毅な人であれば、不条理な苦労を乗り越えてレベルを5程度まで上げて、最初の仲間であるしばを見つけることができれば少しずつこのゲームを進めることができるようになるでしょう。テレポートの超能力を覚えれば敵から逃げることもできますし、攻撃用のESPさえ使えるようになれば戦闘でも充分な強さを発揮します。サイキックたるもの武器や素手で戦ってどうしようというつもりでしょうか。
最初の仲間となるしばに続いて、アークシティで仲間になるあいねが何故か三人目ではなく最後尾に配置されるのが不明ですが、ちょっと頑張った人ならここまでは遊んだのではないかと思います。終盤に待つ感動のストーリーのために、更なる難儀を背負い込む覚悟があればこのゲーム最大の謎というか面倒である、みさを仲間にしてクルーIIIの正体を知ることができるかもしれません。
ゲームやシステム上の不便はそれと承知していれば挑むこともできますが、とにかく移動速度の遅さが攻略を難儀にしているのが実に残念で、慣れてくるとむしろ敵すらでない町中を歩く方がかったるく感じてしまうのはこのゲームを体験した人なら分かってくれるでしょうか。とはいえ、なまじこのゲームが親切に作られていたらほとんどの人が記憶していない作品になっていたような気もします。
充分に評価できるストーリーと設定、序盤さえ我慢すればなんとかならなくもない戦闘バランス、どうしようもない移動速度の遅さと方々でストレスのたまるシステム。パスワード用に片仮名フォントが存在するにも関わらず、平仮名ばかりで読みづらいテキストなどプレイアビリティという言葉を極限まで無視してみましたという家庭用機には実にハードな作品ですが、このゲームが発売された同時期にウルティマ恐怖のエクソダスが、その二ヶ月後にウィザードリィが、そして四ヶ月後にはドラゴンクエストIIIが発売されているという恐ろしい事実もこのゲームの伝説性を物語っているのではないかと思います。
みなみは しにました。
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