ラストウィンドウ 真夜中の約束(任天堂)

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(c)Nintendo

発売:任天堂(2010) 機種:ニンテンドーDS ジャンル:アドベンチャー
評価:★★★★☆
 前作「ウィッシュルーム天使の記憶」の続編で、開発元であるCING最後の作品となったアドベンチャーゲームです。舞台は前作からちょうど一年が過ぎた1980年末の出来事、父の友人であるエドの温情で彼が経営するレッドクラウン商会のセールスマンとして働いていた主人公のカイル・ハイドですが、あまりに不真面目な勤務態度にとうとう堪忍袋の緒が切れたエドからクビを言い渡されてしまいます。落胆しつつ「ケイプウェスト・アパートメント」に帰宅したカイルは建物の入口で帽子にサングラス姿の不審な女性とすれちがいますが、その印象も記憶に残らないうちにアパートが年内にも取り壊されることと、早々に部屋を立ち退かなければならないことを知らされました。茫然としながら数日ぶりとなる部屋の扉を開けるカイルの足下に一通の手紙が落ちます。そこには彼の裏稼業である探し物のオーダー、25年前に無くなったというレッドスター捜索の依頼が記されていました。

 基本的なシステムは前作を踏襲しており、ニンテンドーDSを横にした右画面でのタッチペン操作による謎解きを中心にしています。前作よりも更に操作性が改善されて遊びやすいようになっており、例えば自分の部屋で電話や訪客に出るときにいちいち電話機や扉のある場所まで歩く必要がなくなっていたり、部屋割りや謎解きのヒントが無意味に歩き回る必要のない場所に配置されているなど、細かいところでストレスを感じにくい作りになっています。一方で親切さが簡単さにつながっている側面もあり、次に取るべき行動を主人公が呟いてくれるので何も考えずにシナリオを進めてしまうことができるなど謎解きに悩む箇所がほとんどありません。更に一つの謎を解く方法が複数用意されている例が多く、自由度を感じさせる反面これも難易度を下げる原因となっています。よくいえば初心者向けの作品ですが、むしろ前作をこのくらい親切にして本作品はもっと難しくしてもらいたかったところでしょうか。
 ちなみに前作はホテル・ダスクに宿泊した一夜を舞台にしていましたが、今作品では立ち退きを前にしたアパートで過ごす一週間ほどがシナリオの舞台になっていて登場人物もアパートの住人たちが中心になっています。引き続いて登場する上司のエドと同僚のレイチェル、それにゲスト的に登場するミラの存在が前作を知っている人には楽しいですが、特にミラの存在は知らない人に分かりにくいかもしれません。

 音楽やグラフィックはあいかわらず見事で、CGによるリアルな背景と鉛筆描き風の線画がアニメーションする独特の演出の組み合わせは流石です。登場人物との会話や謎解きの方法が複数用意されていて、その行動がマーティン・サマー著の小説として残されるシステムは感心ものですが、これで各章の最後に用意される袋とじのヒントをもう少しうまく使えるか、あるいはミステリ仕立てに読者への挑戦などを用意できればもっと面白いシステムに化けたのではないかと思います。クリア後のエピローグが小説として追記されるので、それを読む楽しみはありますがプレイ中に小説を読み返す必要が少ないのはちょっともったいないですね。
 おなじみ会話システムでは随所で「聞き流す」ことが必要になっており、単純な選択ではなく「問いただす・聞き流す」から「何を問いただすか」への流れがうまく活きているのはよい改善点だと思います。タッチペン操作やDSの機能を使った謎解きはオルゴールだけ少し悩むかもしれませんが、後はそれほど難しいものはありません。その代わりという訳ではないでしょうが、今回は間違えるとかんたんにゲームオーバーになる行動が随所に仕掛けられているので行動はよく考えて慎重に行わないといけなくなっています(アドベンチャーゲームだから当然です)。

 操作性が親切で遊びやすく、展開も演出も見事でシナリオも充分に引き込まれるものになっており、いわゆるコマンド総当たりができないシステムになっていて自然に主人公視点で行動して謎を解いていくことができる点で非常にインタラクティブ性に優れた作品。欠点というほどではない、好みとしてであればやはり難易度の低さが気になる点と、もう少し個別の登場人物にスポットを当てるシナリオにしても良いかと思いました。主人公カイル・ハイドの父親の死に迫る謎解きがシナリオの中心になっているだけに仕方がないのかもしれませんが、ベティやシャルル、ラッキーズ・カフェの親子にまつわる展開は個人的にちょっと物足りなく感じてしまいます。ちなみにベティの演技がちょっと微妙ですが前作ジェフ・エンゼルほどの大根ではないのでそこは安心してください!
 いっそ前作との結びつきをもっと強くして前後編として発売しても良かったのではないかと思いますが、やはり前作「ウィッシュルーム」を遊んだ上で続編として接して欲しい作品です。余談ですが、ミラの似顔絵はぜひとも気合いを入れて描いて欲しい一方で上手すぎるとそれも違うような気がしてしまい、カイル・ハイドが描いたっぽい絵を描きたくなってしまうのはちょっと感情移入しすぎですね。
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