メタルサーガ 鋼の季節(サクセス)

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発売:サクセス(2006) 機種:ニンテンドーDS ジャンル:ロールプレイング
評価:★☆☆☆☆
 戦車で戦うロールプレイングゲームとして、一部の人に独特の支持を受けているシリーズのニンテンドーDS版となります。シリーズごとの作品順がまちまちだったり、リメイク作品等も出ていて正直ややこしいので各作品ごとのつながりは知りたい人が調べてくださいませ。
 自然と環境を守るために、人類が生み出した電子頭脳「ノア」はその目的のために障害となる人類そのものを抹殺することを決意、大破壊と呼ばれる暴走を引き起こして文明を崩壊させてしまいます。舞台は近未来、荒廃した大破壊後の世界で人類は辛うじて生き残ると一人のハンターがノアを破壊して人類を襲う脅威は去っていましたが、ノアは自分が滅びたときのために「ノア・シード」と呼ばれるバックアップを残していました。主人公はハンターと呼ばれている、戦車でも武器を手にしての戦いもできる少年でかつてノアを破壊した人物の息子という設定。仲間になる四人のキャラクターと一匹の犬を連れて、合計三人のパーティを組んでノア・シードを破壊するための方法を探します。

 良くも悪くも特徴的なのがすべての操作をタッチペンだけで行い、移動もコマンド入力も含めてボタンはいっさい使用しないという操作性。そのためユーザインタフェースが致命的に悪く、慣れれば戦闘時の操作くらいはそれなりに快適にできなくもありませんが特にフィールド移動がかったるいことこの上ありません。本作品の中古販売価格の暴落ぶりや、後の続編で本作品のシステムがほとんど踏襲されなかったことを見てもそのかったるさが分かるというものです。また作り込みが甘いのかテキストの誤字やバグもあちこちに見られ、バージョン改修して交換してもおかしくないレベルで放置されているのは正直不誠実としかいいようがないでしょう。
 そうしたゲームとしての大前提を否定するほどの欠点だけではなく、武器防具が実際に購入して装備するまで効果がはっきりと分からなかったり、第2フリーザでの無意味な氷上移動のようなストレスがたまる展開など、細かい不親切も目立ってお世辞にも快適な作品とは呼べない、というよりもはっきりいって普通の人は不快に感じるのでこの作品を触ったことのある十人のうちおよそ十人が「やめとけ」と言ってくれるでしょう。

 とはいえMSX版ラストハルマゲドンに慣れ親しんだ人であればこの程度の不親切を許容してしまうかもしれませんので、そうした気の毒な人は意外にシンプルにも関わらずカスタマイズして自分なりの遊びかたを追求することができる、このシリーズならではの魅力を感じることもできなくはありません。パーティが主人公と犬ともう一人の三人だけ、しかも犬は操作できないので道具や特技の使い分けが思いのほか重要で、特に攻略が難しい一部のボスや賞金首との戦闘で工夫を凝らす楽しみがあります。戦車を強化してごり押すか、強い仲間を選んで装備を充実させるか、ポチをひたすらドーピングするか、自分が突き詰めた方法で強敵を倒したときの満足度はなかなか悪くありません。
 イベント攻略の条件に難しいものや面倒なものが多く、それでいてすべてを進めずともクリアができてしまうのでそれこそ「ノアシード破壊砲」の出力を最大にできなくてもノアシードを破壊することさえできてしまいますが、一方で不親切だからこその自由度があるのも魅力です。何をやったらいいかよくわからないということは本来何をやってもいいという、ロールプレイングゲームで本来の姿を思い出させてくれるといえばこんな作品よりも他のゲームで味わって欲しい感覚ですね。ゲーム性に直接関わる点であれば、個人的にはフィールドのエンカウント率を調整して一定以下の移動では敵が登場せずにある程度移動したら必ず敵が登場する設定を加えて欲しかったことと、ボス敵をもっとべらぼうに強くして攻略を難しくして欲しかったところでしょうか。エンカウント率の高さよりも、なかなか戦闘が起こらずストレスがたまるのはこのゲームならではかと。敵の強さも初期に手に入る装甲車でもオーバーロードをふつうに撃墜できる楽しさがありますが、そのぶん弱いボスをかんたんに倒せてしまうのはもったいないところです。

 ちなみに本作品のたぶん最大の売りである戦車の数々ですが、むやみに多すぎずそれでいてバラエティに富んでいるのは良い感じです。ジョーク系機体の飛行機もインパクトが強く、様々な改造や装備をしていくごとに外見が変わっていく様は飽きさせません。姉さんとタニアさんに貢ぐための資金確保を考えると(!)突き詰めた改造ができるのは二、三台が限度でしょうが、新しい戦車に乗り換えていくのも気に入った戦車に乗り続けるのも自由というのは戦車への思い入れが強くなるこのシステムでは重要だと思います。仲間はソルジャーにメカニックと料理人にハッカーの四人で、それぞれ特徴的に使いこなせる一方で主人公とポチに比べるとどうしても経験値が劣ってしまうのでそこは救済策が欲しかったところでしょうか。
 これも定番だと思える「私の戦車紹介」は先述した装甲車にサウルス砲と鉄球を積んで、攻撃力を最大まで上げた命名太砲ケア号がお気に入りです。オーバーロード撃破時のパートナーは運転レベルが高くて「ゆるめる」を持っているメグさんが適任ですね。もちろん戦車から下ろすとたちまちミンチにされてしまうのでいざというときの回復は主人公が行うのが基本です。

 総じてフォローのしようがない問題点や不満点があるものの、それを見逃すことができれば意外な楽しさに気づかされますし、どうせならタニアさんとの結婚イベントを見るまで貢いでしまえと思わせてくれる作品。冗談のような世界観や演出が多いですが、文明が滅ぼされても結局自然は復活せず荒廃したままという皮肉な世界で、案外生き残ることができるのは冗談のようなたくましさを持つ人々なのかもしれません。とはいえ総じて、というのであればやはりこの作品に対する評価は「やめとけ」というしかないでしょうね。
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