同級生（エルフ）

nanpa
(c)ELF

発売：エルフ(1992)　機種：ＰＣ−ＤＯＳ　ジャンル：アドベンチャー
評価：★★★★☆
　いわゆるアダルトゲームでありながら、後にコナミのときめきメモリアルなどに踏襲されて広まることになった、恋愛ゲームのパイオニア的な作品です。システム自体は町中を歩き回って出会った女性をナンパしまくるという旧来のナンパゲームのものですが、登場人物ごとのシナリオを用意して恋愛関係を深めていくという手法が当時はかなり画期的でした。今でこそ格別珍しくはないものの、ナンパゲームといえば女性の好みの回答を選ぶと性交ができるという程度であったことを思えば、当初ナンパゲームとして売り出されていたこの作品を購入したユーザーたちが「これは恋愛ゲームだ」と断じたというエピソードにも頷けます。

　ゲームは破天荒な高校三年生「たくろう」の夏休みの生活を描いていますが、無敵にして無類の女好きという主人公がゲームらしい無体さを感じさせながらも、このあたりはゲームの不条理さを主人公の存在感で打ち消す手法として珍しいものではないでしょう。ヒロイン扱いされる女性は全部で１４人、いちおうメインヒロイン格となる桜木舞さんを攻略することがゲームの目的になっていますが、個別のシナリオや攻略が用意されている準ヒロインたちの存在に加えて舞さん自身がいまいち影が薄いこともあって、好みの女性を攻略するという恋愛ゲームとしての形ができています。基本的に登場人物はそれぞれのスケジュールによって出現する場所が決まっているので、目的の相手を足しげく訪れてシナリオを展開させていき、シナリオが進んでいく中で彼女たちの悩みや事件に主人公が関わっていくという流れになっています。

　アダルトゲームとしては記録的な売上を伸ばし、ゲームの設定原画集というジャンルを生み出して後に家庭用ゲーム機にまで移植されることになった怪作ですが、開発のきっかけは元来ふつうのナンパゲームであったにも関わらず竹井正樹氏の原画を見た製作者がヒロインを単なる性行為の対象とするにはもったいないと思ったのがきっかけとなっているそうです。そのために随所にナンパゲームとしての面影が残っていてヒロインの攻略がヒロインとの性行為とイコールにもなっているので、シナリオや会話でも性交ができればＯＫという風潮が見られるのは惜しいところです。個別のシナリオでは気になりませんが、複数のヒロインを同時攻略するとどうしても不自然さを感じてしまうのは欠点かと。その一方で攻略失敗したヒロインが「お邪魔キャラ」として存在する記号的な男性キャラクターと結ばれるようになっているので、同時攻略をするとシナリオに不自然さを感じるし、特定のシナリオだけを進めると随所で後味の悪い結末を見ることになるという微妙なところがあるのはもったいないと思います。

　こうした特徴や事情を含めて続編となる同級生２で完成されることになる、恋愛ゲームとしての礎となった作品ですが後に発売されたＷｉｎｄｏｗｓ版や家庭用ゲーム機版などではシナリオやエンディングの変更を含めてより恋愛ゲームらしく修正されているものの、あえて作り直すよりはオリジナルのナンパゲームとしての面影を残した恋愛ゲームとしてＰＣ−ＤＯＳ版同級生をすすめてみたいところです。
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