ロマンシングサ・ガ−ミンストレルソング−(スクウェアエニックス)

romancingsaga
(c)SQUARE ENIX

発売:スクウェアエニックス(2005) 機種:プレイステーション2 ジャンル:ロールプレイング
評価:★★★★★
 最初におことわりとして、旧作ロマンシングサ・ガを遊んでいない上での感想となります。1992年にスーパーファミコンで発売されたという同名作品のリメイクとなっていますが、システム等が大幅に改修された作品。かつて神々に戦いを挑んだ邪神サルーインを封じるべく、神々の王エロールが作り出した10個のディステニィストーンを手に人間の勇者ミルザがこれを打ち倒した後の世界、マルディアスを舞台に8人の主人公たちが旅に出ます。
 海外作品を思わせる自由度の高さが特徴で、各主人公ごとに決められている序盤の展開とラスト周辺を除けば、ほとんどのイベントを自由に攻略していくことが可能です。そのせいで流れるようなストーリー性には欠ける一方、しっかりと世界観がつくられているので自分なりの冒険や展開を楽しむことができるのが魅力のひとつでしょうか。連れて行く仲間や会話の選択など、どのように選んでもゲームが進行していくので正義の味方らしい振る舞いもできれば、悪党らしい冒険を行うことも可能です。

 肝心のシステムもかなり細かい点まで練りこまれており、自分の好きな楽しみ方を追求しやすいのが最大の魅力で、仲間の育て方ひとつをとっても様々な技を覚えたり術法の強化や合成、強力な薬草の調合や鍛冶屋でひたすら武器を鍛えるなど趣味に応じた攻略が可能。戦闘バランスがやや厳しめで常軌を逸して強いボス敵がいることはもちろん、雑魚敵でも時に容赦なく強力な相手が登場するので作業的な戦闘になることも少ないでしょう。どれほどの強力な相手でも、何度も失敗しながら倒す方法を探す楽しみがあるので戦闘ゲームとしても屈指の作品です。
 先述したように全体的にウルティマシリーズに代表される海外作品の影響が強く、登場するモンスターが場所ではなくシナリオの進行によって強くなっていくシステムや地域色を感じさせる町やイベントの存在、馬や船といった移動手段の数々など、放り出された世界を自由に体験できる要素が強くなっています。それに合わせて世界観まで細かく構築されており、各種族各ランクごとに設定されたモンスターや種族ごとの生態系、神々の支配地域やその影響まで作られている徹底ぶり。いっそモンスターなんかは8種族8種類で用意するとか、意味もなく8ビット機っぽいデータ構成にこだわって欲しかったほどでしょうか。一方で海外作品特有の不親切な操作性は避けられており、例えばさまざまな移動手段が用意されていても面倒であれば地図上で目的地を選ぶだけで進むことができるなどゲームとして気が使われています。

 要望ともいえない要望であれば、馬による移動が楽しいのでそれこそウルティマのようにどこでもどこまでも馬で進めるようにして欲しかったことや、最高ランクのモンスターをもっと気楽に出して欲しかったこと、逆に地域や場所によってはもっとランクの低いモンスターが登場するようにして、雑魚相手でなければ入手しづらいアイテムをゲーム後半にも手に入れられるようにして欲しかったところでしょうか。パーティ人数が5人という微妙な人数なので、一人でクラスをメインとサブの二つくらい選べるようにしてくれたら、パーティに一人は薬草摘みを連れて行くとかやりやすかったのではないかと思います。
 とにかく自由度の高さと長く遊べるシステムが魅力の作品ですが、わりと何でもできるせいで人によっては何をしたらいいのかわからなくなるかもしれません。ですが冒険をつくるのは冒険の舞台に立つあなたです、といったロールプレイングゲーム本来の姿を思えば、この作品こそ本来ストーリーなどは必要ない、ロールプレイングゲームらしい作品といえるのではないでしょうか。

 問題はお忍びのカール・アウグスト・ナイトハルト殿下がいきなり名乗ることくらいですね。
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