ウィッシュルーム 天使の記憶(任天堂)

wishroom wishroom
(c)Nintendo

発売:任天堂(2007) 機種:ニンテンドーDS ジャンル:アドベンチャー
評価:★★★★★
 あのリバーヒルソフトの流れを汲むというCING製作によるアドベンチャーゲームです。舞台は1979年12月28日、年の瀬が迫ったロサンゼルスで主人公のカイル・ハイドは「特別な探し物を見つける仕事」のためにホテル・ダスクという一軒の古いホテルを訪れます。三年前、ニューヨークで刑事をしていたハイドは仲間を裏切って逃走した同僚ブラッドリーを探すために刑事を辞職すると、父の友人が経営する商会でセールスマンを勤めながら商会の裏稼業を手伝っていました。宿泊客の願いが叶うという噂がある、ウッシュルームと名付けられている部屋にチェックインをしたカイル・ハイドはミラという奇妙な少女と出会います。少女の手首にあるブレスレットは、三年前にハイドに撃たれて埠頭から落ちたブラッドリーがはめていたものでした。

 推理ものと呼ばれるアドベンチャーゲームでありながら作中ではこれといった殺人も事件も起きることがなく、それにも関らず良質なミステリーを体験させてくれる作品です。ゲームの進行はホテル・ダスクで、主人公が泊まる一晩の間だけのできごとであり、そのほとんどがホテルの従業員や宿泊客との会話だけで成り立っていくのが大きな特徴。アナザーコード以来のニンテンドーDSの機能を活かした謎解きも随所で用意されていますが、基本的には会話中に出る選択肢を選んでいくことで推理をすすめていくのでそれほど難易度も高くありません。ちょっとした言動の間違いでホテルを追い出されてゲームオーバーになってしまうことはありますが、登場人物の行動にきちんと理由があるのでそれほど無茶な間違いをすることはないと思います。ゲームとしては親切に過ぎる点が難易度を下げているきらいがあって、特に謎解きに関係がない人の部屋を訪れても誰も出てこないのはちょっと寂しいところです。
 ですがそうした親切さまたは難易度の低さがあってなお、ミステリーとしてのスリルが失われていない点がこの作品の最大の魅力ではないかと思います。おそろしい事件に出会うのではなく、危険や、あるいはゲームオーバーをくぐり抜けるのでもなく、隠された秘密が解き明かされていくスリルを感じさせてくれるところがこの作品の真骨頂であり、主人公自身を含めてホテル・ダスクに集まった人たちが秘めている秘密が明かされていく展開に思わず引き込まれてしまいます。主軸となっているのはブラッドリーが三年前に主人公を裏切った理由と盗まれた「天使の絵」の行方であり、章ごとに明かされていく人々の秘密が意外なつながりを見せていき、姿を消した親友の真意に迫っていく過程にサスペンスではないミステリーを感じます。

 そうしたシナリオの完成度とは別に見事なのがさまざまなシステム上の演出で、快く耳に残る音楽や鉛筆描きを思わせる独特のグラフィック、アニメーションを含む見せかたが実にセンスがよく、操作性の良さと合わせてテンポよく味わうことができるでしょう。基本操作はDSを縦画面にして右画面をタッチペンだけで行うようになっていて、ほとんど感覚で操作ができてしかも誤操作がしにくいように気を使っているインタフェースには脱帽してしまいます。細かいことのように思えますが、この手のゲームでタッチパネルでない画面をつい触ってしまったり、選びたくもない選択肢にペンが触れてしまったという経験のある人もいるかと思いますが、おそらくこの作品ではそうした間違いが起こりにくいのではないでしょうか。
 個性的な登場人物たちもこの作品の魅力のひとつで、これは個人的な感想ですが、登場人物たちによい意味でどこか演技を思わせるところがあるのは面白いところです。子供とは思えないメリッサの好演や、助演賞が取れそうなルイスやローザの存在感に感心するといったゲームらしからぬ奇妙な感想を持ってしまいましたが、なにしろジェフ・エンゼルの若手くさい演技力が更にそう思わせてくれるのかもしれません。ストーリーとしては章ごとに彼らの一人一人にスポットライトが当てられるようになっていて、特にヘレンの過去を追う六章は必見です。主人公というか主演のカイル・ハイドはセールスマンなのに横柄だとか、本当に客商売をやっているのかと言われるような人で、他人には「あんた」と声をかけて女の子には「おいチビ」と呼びかけるような人ですが、セールスマンとしてはともかくホテル・ダスクの謎を追うには案外こんな人のほうが向いているのかもしれません。ちなみにアナザーコードの主人公、アシュレイさんもそうでしたがおいしいものを食べたときの笑顔がすごくいい感じです。

 基本的に難易度が低いので攻略に気をつけるようなことはほとんどありませんが、万年筆の文字を読む方法だけは想像ができてもそれがどこでできるか分かりにくいと思うので厨房あたりをうろついてみるといいでしょう。苦労したのは「俺のストライクはピンがふっとぶ」ボウリング対決くらいですが、これも何度でもリトライできるので存分にガーターして問題はありません。あとは倉庫にあるブラックライトを見逃してしまったので、暗号を自力で解いてしまいましたが海外版マイトアンドマジック2の最終暗号に比べればかわいいものだと思います。あとはクリアに関係がないところで、コインの両替はダニングがフロントにいるときしかできない点には注意。
 一周目と二周目では多少展開がちがっていて、二周目ではレイチェルさんがすごく親密になっているのとミラの思い出の品が手に入る展開がありますが、個人的にはメリッサにクリスマスプレゼントができて、ミラに会わずにホテル・ダスクを去っていく一周目のほうが好みです。ポイントはダニングにポテトチップをあげることと、ミラをおこすときにニンテンドーDSを閉じない方法を使うことくらいですので、大晦日のできごとを待ってみてください。
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