ハイドライド3(T&Eソフト)
(c)T&E SOFT
発売:T&Eソフト(1987) 媒体:ROM ジャンル:アクションロールプレイング
評価:★★★★★
名作アクションロールプレイングゲーム、ハイドライドのシリーズ第三作でサブタイトルは「THE SPACE MEMORIES(異次元の思い出)」。ストーリーを引き継いだ完結編の流れを取っていますが、実際にはマップや登場するキャラクター等を含めて作品間の関わりは少ないのがシリーズの特徴となっています。フェアリーランドは邪悪なエビルクリスタルが溶けて後、平穏を取り戻すと長い年月が過ぎていました。王国は発展を遂げて人々は豊かな生活を享受し、魔法が生活に溶け込んでいくうちに攻撃的な古い力が忘れられていったほどで、世界は平和の中に流れていきました。気がついてみるとフェアリーランドから妖精の姿が見られなくなりましたが、それを気にする者はほとんどいません。
そんなある夜、フェアリーランドに巨大な火柱が立ち上るとそれを境にして各地に奇妙な現象が起こるようになったのです。地面には巨大な地割れが広がり、不思議な扉が現れて町の外を怪物がうろつくようになり・・・修道僧たちは異変の原因を突き止めるべく、一人の若者を呼び出します。
前作で懲りたのか、ゲーム性が変わることを承知で戦闘を体当たりから武器アクションと補助魔法に切り替え、攻撃魔法を一切廃止しています。攻撃力が能力に依存する近接武器と、武器により固定されている射撃武器を使い分けつつ互いの向きや射程距離を把握しながら行う戦闘が楽しく、システムが変わってもハイドライドらしいアクション性は失われていません。
MSX版では4メガロムを採用して1400のパーツを使用したという膨大なマップが用意されていますが、地上のマップなどを不必要に広くせずに多彩な場面を設けており、地上200階建てのハーベルの塔やスポットライト処理の洞窟、果ては遺棄された宇宙船までMSXとは思えない美しいグラフィックが飽きさせません。PSGの芸術ともいえるBGMに、MSXらしい軽快なゲームスピードや画面切替時のゼルダスクロールなど、他機種版と比べても快適さでは特に優れた作品となっています。データセーブは内臓RAMではなくカセットテープとPACの二種類に可能で、PACのデータはフロッピーディスクに書き込むことができる仕様になっているのでバックアップが取りやすいのも魅力。
システムでは重量制限と時間、食事の概念があるのが特徴的ですがこれが良くも悪くもゲームに制限を与えています。ゲーム開始直後はナイフかスリングくらいしか持てず、ヘルメットを被るだけで動きが遅くなりますし、強力でも重い斧や鎧は終盤になっても使いづらいので単に買える装備を全部揃えただけでは扱うことができません。手に入る金貨にまで重さがあって、両替機を手に入れると換金できるというのは面白いですがちょっとやりすぎにも思えるでしょうか。空腹になると体力が徐々に減りはじめ、夜になると敵の攻撃力が上がって自分の腕力が下がる点も注意が必要です。基本的には朝に宿屋を出て冒険に向かうことになるので影響はありませんが、最終ダンジョンで空腹や睡魔に襲われて苦労した人もいるのではないでしょうか。
戦闘では飛び道具が楽に思える一方で、近接武器は間合いさえ届けば障害物を透過できるという特徴があるので長剣で壁の向こうや二体の敵を同時に攻撃できるのは面白いところです。場面に応じた装備の持ち替えや買い替えがけっこう自然に行われるのは、攻略フローとゲームバランスの絶妙さかもしれません。ヒントの少ない謎解きがままあるのは当時のゲームならではですが、重要ポイントを歩くとヒュンと音が鳴るようになっているのでハイドライドIIのような理不尽さも感じることは少ないでしょう。
水の城やマッドドラゴン、宇宙船の美しさにどこか哀しげで心地よいBGM、軽快な操作性までMSXでも最高級の技術力と演出を味わってください。FM−PACやSCC音源を除けば、コナミの「夢大陸アドベンチャー」とこの作品がMSXゲームミュージックの双璧ではないかと思います。
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