軽井沢誘拐案内(エニックス)

karuizawa
(c)ENIX

発売:エニックス(1986) 媒体:ROM ジャンル:アドベンチャー
評価:★★★★☆
 ポートピア連続殺人事件に続く、エニックスの推理アドベンチャーゲームの移植作品となります。移植作としては決して綺麗な画像とはいえませんが、MSX1の性能と同社の他の移植作とを比べれば見た目でも充分に映える出来になっているのではないかと思います。内容は推理サスペンス風で、恋人の久美子がいる軽井沢の別荘を訪れた主人公が、突然行方不明になったという彼女の妹、渚を探すというお話です。渚が訪れていたという謎のパーティーについて調べているうちに久美子までもが姿を消してしまい、渚の友人である麻美の協力も得て、思わぬ事件の全容が明らかになっていきます。
 全体的にアダルト、というよりも本来の意味で大人向けのドラマ的な要素を盛り込んでいるために、ごく自然に恋愛のやりとりや子供向けではない事件を扱う展開が魅力ですが、一方でいかにも強引に思えてしまう場面が鼻につく点も見逃せません。ストーリー上、その必要がないのにレオタード姿や下着を見せる役割を担う麻美さんの存在もそうですが、神様のお告げで隠し通路が開かれたりと不自然に手段が目的にされているあたりは気になるところです。他にもポートピア連続殺人事件のふみえさんがゲスト出演するのはまだしも、ゆうぼうまで出すのはちょっとやりすぎではないでしょうか(それはそれで楽しいですが)。

 とはいえアドベンチャーゲームとしてはいくつかの斬新な試みが面白い作品でもあり、基本はコマンド選択式で2Dマップ上を移動して推理が進むことによって行ける場所や展開が変わるようになっています。端からコマンドをすべて入力するのではなく、きちんと推理をしながら行動することでストーリーを進めることができるので操作に飽きることもありません。序盤は色々な人に出会って情報を集める程度ですが、第四章では皆の証言から矛盾を探し、第六章ではそれまでの謎を解きほぐさなければならないなどしっかりした推理が要求されるようになっています。コピープロテクトの一種だと思いますが、同梱されている写真による謎ときが必要な場面もあって、実は解き方が分かっていればかなり速くクリアできる一方で推理ができなければコマンド選択式にも関わらず解けないようになっているのは見事というほかありません。
 有名な第六章はなぜかロールプレイング風のゲームになっていて、黒幕のアジトを目指して悪者たちを倒して行くことになりますが、投げキッスとパンチラと北斗神拳で戦う様はゲームとしてはおもしろい一方で蛇足に感じるのも事実でしょう。最後の推理の直後であり、そのままアジトに突入してエンディングでも問題はなかったかと思います。非常に面白い、よくできた作品である一方で面白い要素を加えすぎて余計に思える演出があるという変わった作品です。

 第五章があるせいか、ヒロインの久美子さんよりも麻美さんの方が印象に残っている気がするんですが。
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