ポートピア連続殺人事件(ENIX)

portpia
(c)ENIX

発売:エニックス(1985) 媒体:TAPE ジャンル:アドベンチャー
評価:★★★★★
 堀井雄二のシナリオで知られる、国産推理ものアドベンチャーゲームの走りの一つとされている作品です。ちなみにオリジナルとなるPC60版やPC88版では堀井雄二がグラフィックからプログラムまでこなしているとか。事件はサラ金会社の社長をしている「やまかわこうぞう」の死体が自宅のマンションで発見されたことから始まります。現場が完全な密室だったために自殺とも思われますが被害者には以前から黒い噂が絶えず、貴方は部下の「まのやすひこ」通称ヤスを連れて捜査に乗り出しました。第一発見者の「こみや」や「ふみえ」といった関係者たちから聞き取りを行い、事件を追っていくうちに発生する第二第三の殺人事件。やがて「こうぞう」の思わぬ過去が明らかになっていくと、あまりに有名な犯人の正体へと繋がっていきました。

 ゲームはコマンド入力式ですが、ヤスに指示を与えるという方式になっているためにコマンドはすべて「ほんたて しらべろ」とか「ありばい きけ」といった命令口調で進めます。ちなみに「ききこみ しろ」のように単独で意味が通じる一部のコマンドは「ききこみ」だけでも構いません。いわゆる言葉探しゲームとしての特別なコマンドを使う必要はほとんどありませんが、移動できる場面自体は少ない中で捜査を進める条件を一つずつ揃えていき、進行状況に従ってタレ込みや新しい情報が入ってくるという展開になっているので難易度は思いのほか高めです。例えば「デゼニランド」のように不条理ではあっても目につくものを何とかすればいい、という考え方ができないので慣れるまで苦労するかもしれません。
 システムと連動したシナリオの妙が絶妙で、ヤスに命令する入力形式自体がシナリオに関わっているのももちろんですが、事件解決が見えた時点でエピローグのローディングを進められる作りなど、クリアしてから改めて見返してみるとそれぞれの人物の行動に思わぬ理由があったことが分かります。複雑で奥が深いとまでは言いませんが、当時の性能で許されるシンプルな構成の中でこれだけのシナリオが構築されている点は脱帽ものではないでしょうか。それでいて本来、情報を得てから移動できる場所や電話番号にかけても何も起こらないようになっているのも細かいところですが本当に見事だと思います。当時、こうした「条件を満たさない行動」には単に「できません」といったメッセージを返すのが普通で、プレイヤーが試したコマンドがこの場面では使わないけどいずれ使うんだろうと推測することが可能でした。

 小ネタでは取り調べ室で頼むことができる出前について、何でも頼むことができるのでヤスに元気よく「はい、ウ○コいっちょー!」と言わせた人も多いのではないでしょうか。後は忘れてはいけないのが機種ごとに解き方が異なる港の暗号、MSX版では「7251454400=ミナトデ=ミナトテ゛」であることさえ気づけばあっという間に答えが分かるかと思います。
 もちろんBGMも何もありませんが、オープニングとエピローグで流れるサイレンの音や活字がタイプされる音が不思議に雰囲気を盛り上げてくれる演出の妙も見事。
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