カサブランカに愛を(シンキングラビット)
(c)THINKING RABBIT
発売:シンキングラビット(1988) 媒体:FD ジャンル:アドベンチャー
評価:★★★★★
シカゴにある新聞社デイリー・カサブランカ社に勤める女性記者ジェリーは、行方不明になったという親友メイ・エルガーを探しに、同僚のロイを連れて彼女の家を尋ねます。メイが行方不明になる直前、ジェリーに送られてきた日記には彼女の父親が時間を研究する科学者であったことと、その研究が軍部によって狙われていることが記されていました。ですが、ジェリーたちがエルガー博士の家で見たものは何者かによって殺害された博士の姿だったのです。
という導入ではじまる、うさぎ倶楽部の名前で一部の根強いファンを持つシンキングラビットが出した名作アドベンチャーゲームです。「殺人者は時空を超えて」の副題どおりに物語はエルガー博士の殺人事件の謎と、時間にまつわる彼の研究を追いかけていくことになりますが、博士の作った機械で時間をさかのぼり出会った真実はおそろしい殺人事件からは思いもつかない、人の決意とあたたかな心でした。
ゲームはコマンド入力式で、コマンドの受付幅も広い親切設計。モノトーンの美しすぎるグラフィックに、丁寧に作りこまれた登場人物たちの時代を越えた関係が絶妙に構築されています。事件や物語に直接関係がない人までしっかりと設定されているので登場人物に親しみやすい個性を備えさせている一方で、それが謎解きを混乱させるダミートラップにもなっている作りは見事というしかありません。推理アドベンチャーに見せておきながら、目的はありがちな犯人探しではなく、隠された謎を純粋に解いていく楽しみを追求している昔ながらのアドベンチャーゲームになっています。
いくつかのハマリ的な要素があり、ゲームオーバーがないために難易度はやや高め。言葉探しでは唯一、「まわりを見る」というコマンドだけは思いつかないかもしれませんが、その他には不条理な謎も少なく、酒や花をあげる相手を間違えないようにすることや時計の取り戻し方が分かれば存分にすばらしいストーリーを堪能することができるでしょう。もうひとつ、これを知らなくてもクリアはできますが、マーシャの手紙は「家を出る前に必ず読むこと」だけは決して忘れないでいてください。
たぶん、このゲームを解いたことのある人なら同じことをいうでしょうから。
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