ハイドライド3(T&Eソフト)

hydlide3
(c)T&E SOFT

発売:T&Eソフト(1987) 媒体:FD/ROM ジャンル:アクションロールプレイング
評価:★★★★☆
 名作アクションロールプレイングゲーム、ハイドライド3のMSX2版です。ちなみにタイトル数字は前作ではローマ数字、本作ではアラビア数字になっていますが一説ではハイドライド「III」は作らないとのことだったので、続編ではない新しいハイドライドとして開発したとも言われています。ROM版はMSXと同様4メガロムでカセットテープやPACへのデータ保存、ディスク版はディスク内にデータ保存が可能です。
 第一作のハイドライドと同様に、MSX2版も安定した完成度が魅力で美しいグラフィックからBGMまで、他機種版に劣らない出来をしていますがMSX版に比べると画面切替時のゼルダスクロールがなく、快適すぎるゲームスピードも実現できていないので普通にいい作品となっているのは好みが分かれるところでしょうか。このゲームではテキストの日本語/英語切り替えができるようになっていますが、ドット数の都合で多少見にくいMSX版の日本語フォントに比べてちゃんと読めるのは魅力です(慣れればMSX版の日本語フォントも充分読めます)。

 いくつか細かいネタを並べてみると、職業はどれを選んでも攻略可能ですが特殊クラスである怪物だけは最終ボスの攻撃で溶けやすいという弱点があるので注意が必要です。体力が低くても全体的に能力が高い修道士がおすすめですが、アクションに自信がない人は強盗を選んで回復は薬で行うのが無難でしょうか。町の施設では銀行が潰れて閉鎖されていますが、一度クリアするとミュージックモードになるのは有名な話。もともとこの銀行はきちんと機能する予定で、要領の都合で削られてしまったそうですがその割りに地下酒場のイベントとか各種お遊びアイテムなどを設けているのも楽しいところです。ちなみにこの酒場、お金が足りていたときのほうがむしろ厳しいですよね?
 天空に続く塔から地下の洞窟、果ては宇宙空間から異世界まで旅する楽しさはファンタジー世界にどこかSF風味が入ったT&Eらしさだと思います。同型フロアが多いとはいえ地上200階建てのハーベルの塔を歩いて登頂に挑戦したり、銀の鎧をなんとか持ち帰ろうと苦労した人もいるのではないでしょうか。他にはハーベルの塔の近くにオイルの湧き出る泉があって、これが夜になるとスーパーオイルになるのでオイルを買わずに攻略することが可能です。オイルが少なくなると洞窟のスポット照明が小さくなるのは芸が細かいですが、ランプを点けたまま宿屋に泊まると切れなくなるので知らないうちにこの状態になった人もいるかもしれません。ちなみに洞窟でのスポット処理ですが、同時期に発売された「イース」で偶然同様の処理が行われていたことを開発者の内藤氏は気にしていたようです。

 ジムの巻物やバラリスの像といった、第一作を思い出させるアイテムも登場しますがそれらを含めてフェアリーランドが生み出された謎が最後の戦いでは明かされることになります。アクションをメインとしたゲームなので、あまりストーリーや謎を前面に出してはいませんがその分細かいところを気にしないで目まぐるしく変わる場面や展開を楽しめるのではないでしょうか。
 作中では分かりにくい設定は後にファミリーコンピューター等の他機種版で多少の説明がされているようで、火柱と地割れはフェアリーランドからの脱出を図った人々が世界の裏側にある宇宙に行くために掘り抜いたときのもののようです。もともと彼らはフェアリーランドの先住民で、次元の扉の向こう、異世界に暮らしていましたが逃げ出すと湖の宮殿を建てて暮らしていました。そのフェアリーランドからも逃げ出そうとして宮殿を湖に沈め、世界の裏側へと向かいますがけっきょく宇宙船は破壊されてしまうと、彼らを追ってきたものによってサラという怪物へと変えられてしまいます。ちなみに宮殿で聞くことができる彼らのメッセージに「幻想の街には我々に都合の悪い物を持っている人間が存在する」とあり、これが何のことかはちょっと自信がありませんがおそらくバラリスの力が封じられた禁断の洞窟を開くことができる聖水のことを指しているのではないでしょうか。

 エンディングはいかにもな内容になっていますが、妖精の笑顔に続いて流れるメインテーマを耳にすればこれ以外の演出もストーリーもありえないと思わせる美しいシーンではないだろうかと思います。

「言ったでしょ?不思議が当然フェアリーランドってね」
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