ザ・マン・アイ・ラブ(シンキングラビット)
(c)THINKING RABBIT
発売:シンキングラビット(1988) 媒体:FD ジャンル:アドベンチャー
評価:★★★★★
ニューヨークで私立探偵をしている主人公にかかってきた一本の電話。依頼人である老婦人マクガイアは家の金庫から現金と宝石が盗まれたことを語ると、サファイアの指輪だけでも取り返して欲しいと涙ながらに語ります。思い出に埋もれて暮らすには彼女のそれはあまりにも少なすぎたのだと、心中に語る主人公は失われた宝石の行方と、事件の全容を追うべく捜査に乗り出しました。
うさぎ倶楽部シンキング・ラビット謹製による推理ものアドベンチャーゲームで、名作「カサブランカに愛を」同様のコマンド入力方式がこだわりを感じさせる作品です。アメリカン・コミック調の画面が一見してコミカルに見えなくもありませんが、内容は人情味あふれるハード・ボイルド。慣れた人なら宝石はすぐに取り戻すことができるでしょうが、事件の全容と本当の結末にたどりつくにはかなり地道な捜査を続けなければなりません。
とにかく感心させられるのがコマンド入力幅の広さで、例えば依頼人宅に向かうときでも家に行く、ドアをたたく、ライセンスを見せるといった入力を家に近づく、ノックする、名前を言うとしても進めることができるようになっています。張り込みや尾行といったあまり使わない単語も、警察で冗談のように「張り込みや尾行でもしてがんばるんだな」と教えてくれるので細かいところまでテキストを読んでいれば思いつくことができるかもしれません。一方で、人名や地名が一度聞き逃すと(たぶん)再び聞くことができないことがあるので例えば依頼人の名前や住所を忘れてしまうともうどうしようもなくなってしまいます。実際の捜査のつもりでメモはきちんととっておくといいでしょう。
工夫が効いていて面白いのが、コミック調の絵柄のおかげで主人公のバイオレンスな行動がやわらげられていることで、いかれた客や不審者を殴りつける行為に殺伐さをまるで感じさせないのは見事。妙なところで自由度が高く、出会った人を何の脈絡もなく撃ち殺してもどこか冗談で済んでしまいます(もちろん即ゲームオーバーになりますよ!)。
難易度はやや高め、丁寧なつくりと自由度の高い操作性のおかげでじっくりと楽しむことができる作品です。電話がかかってきてそれをごく自然に取り、話を終えて受話器をごく当然のように置くことができることにこの作品の丁寧さがあるでしょう。攻略方法なんてちょっと調べればすぐに見つけられてしまう、だからこそこのゲームは自力で楽しんでこそ本当の魅力が分かるのではないかと思います。
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