Romancing Saga-Minstrel Song-を遊んでいます。
プレイステーション2へのリメイク作品となるロマンシングサ・ガ、通称ミンサガというらしいですが、実はスーパーファミコンには触ったことがないので旧作をまるで知りません。舞台はマルディアスと呼ばれる大陸、かつて神々に戦いを挑んだ邪神サルーインが英雄ミルザたちの命と引き替えに封印されて1000年が過ぎた後の世界で、八人の主人公たちが吟遊詩人の語りに導かれながら旅をするというものです。海外作品を思わせる自由度の高さと唐突に強すぎる怪物に遭遇するような難易度の高さこそありますが、何いってんだよロールプレイングゲームってそういうもんじゃないかというウルティマやマイト・アンド・マジックを食事にまぶして育ったような人にとっては特に気にならないことでしょう。貴方はとある世界にいます、そこからあとは貴方が決めてくださいというのはロールプレイングゲーム通称ロープレ(c)SEGAの基本スタンスですね。
地勢から歴史、神々の伝説まで構築された設定を用意して、それらが冒険の中で必要なだけ語られるスタンスには丁寧に構築された世界へのこだわりを感じさせますし、地域による民族や人種から服装や文化の違いも見事に表現されているので、各地を旅する感覚が実に楽しい作品です。とはいえここで細かいシステムを紹介してもやはり面白味がないでしょうから、いつものように個性的な登場人物たちを中心にした「マルディアスの人々の語り」を綴ってみることにしましょう。この作品、職業も装備も連れ歩く仲間たちも自由に選ぶことができる上に、行動次第で能力まで好きなように成長させていくこともできるので、愛情と根気(執念と同義語)さえあればけっこう自分の好きな冒険模様を描くことが可能です。八人の主人公から一人を選んで何周でも新しい旅を試みることができますが、最初に選んだのは南エスタミルのスラムに育った詩人ジャミルでした。
ボガスラル海峡というどこかで聞いたような名前の海峡の両岸に建てられた都市エスタミルで、スラム育ちの主人公ジャミルが旅に出るきっかけになったのが借金のかたに連れて行かれた幼馴染を助けることになった事件とクジャラート国の支配者ウハンジ様との出会いでした。奴隷商人の屋敷に押しかけて幼馴染の居場所を聞き出した先、秘密の部屋に娘たちを囲っていたのがウハンジ様。夫の密かな趣味に疑問を持った奥方の依頼を受けていたジャミルは、色々な意味で彼をピンチに陥れることになりました。けっきょく事件は穏便に済ませようということになりますが、ジャミルの視点ではどうしても軽い存在として描かれているこの人こそ旧態然としていた国を改革して、大都市エスタミルへの遷都を実現したスゴイ人だったりします。ジャミルが育ったスラムはウハンジ様の改革によってふくれあがった、無秩序な影の部分にあたる訳ですね。
後にこのジャミルが旅を続けていく中で、かつて1000年前に封じられた邪神サルーインの復活を阻む役目を担っていくことになりますが、邪神復活によるモンスター侵攻の矢面に立たされたクジャラートで国境の最前線に身を置き、これを守り抜くのがウハンジ様になります。奇妙な出会いをしたアウトローが世界を救う様を見やりながらも「あのような連中でも世の中の役に立った訳だ」と皮肉に言い放つクジャラートの支配者の姿に、歴史に綴られる戦いの記録と詩人が語る戦いの調べを思い浮かべずにはいられないことでしょう。
詩人ジャミルが連れていた幾人かの仲間の中でも、インパクトのある存在が騎士団領の山奥で出会った竜騎士。竜に乗った騎士ではなくて騎士の技と騎士の心を学んだ竜、まごうかたなき巨大なドラゴンです。ジェミニスターというふた振りの剣を構える姿も勇ましく、炎や冷気もほとんど効きませんが、困ったことに巨体のせいかほとんど防具を装備できず最前線で戦うどころではありません。幸い幾つかの幻術が得意なので後ろに待機させて仲間の補助に徹してもらいましたが、羊舞う眠りの術で敵を眠らせまくる姿は実に頼もしいものでした。直接殴られさえしなければ味方がいっせいに炎や冷気の嵐を受けても彼だけは生き残ってくれますし、治療と回復役にも重宝しましたが問題はこんな彼のどのへんが騎士だというのか、これがわからない。
もう一人、竜騎士が補助役であれば大砲役として活躍したのが炎の魔術師ミリアムさん。北エスタミルの酒場で、旅のはじまりに出会った魔法使いなのでやはり炎でなければいけません。トレードマークの帽子と真っ赤なローブがなかなかお洒落な人です。実は炎を使おうとすると、対極である水の術が封印されてしまうので治療や回復の術が使えなくなってしまうがそんなことはどうでもいい、そんなミリアムさんですが物事は可能な限り燃やして解決しようとでもいうのか、戦いとなれば炎のシールドを自分に張ったらあとは仲間のことなんて気にもとめずにヘルなファイアを撃ちまくります。多少はほかの術も覚えていますが、そんなものは帝国で学んだという術合成でヘルなファイアを強化するための材料でしかありません。好きこそものの上手なれとでもいうべきか、その炎の威力は尋常でなく彼女の出番がまわってくるたびに敵が一体ずつ消し炭になっていく様がとても頼りになる方でした。終盤ともなればお気に入りの炎のロッドを振って踊りまわるという有り様で、旅の最初から最後まで頑なに炎にこだわってみせた彼女ですが、基本術でしかない筈の炎を連発する彼女こそ竜騎士を差し置いて主戦力です。
もう一人の主人公が、海賊船レイディラックを駆る海の男キャプテン・ホーク。町の酒場でごろつきが相手でも宮殿で王様や皇帝陛下が相手でも俺の名はキャプテン・ホーク!と勇ましく名乗るなかなか熱い人です。海賊の島のアジトで部下たちを率いていた彼ですが、ライバルの海賊ブッチャーにハメられて帝国海軍の襲撃を受けるとやむなく逃亡、船も大破してしまい残ったわずかな部下を連れてニューロードの街道まで逃げ延びます。海の男が街道に立っていることに彼らしく自嘲したかもしれませんが、生き残った部下を見捨てる訳にもいきません。屈辱にはじまり苦難が待つ旅の第一歩として、まずは「海賊」という呼び名で固有名詞すら与えられていない男をさっさと解雇することにしました。少数精鋭は旅の基本ですし、もちろん彼が手にしていたバトルアックスはキャプテンの手斧よりもすぐれた逸品なのできちっと巻き上げておきます。海のおきては厳しいのです。
そのキャプテン・ホークに従う仲間がレイディラックでは操舵士をしていたトカゲ人、ゲッコ族出身のゲラ=ハ。ハンサムで礼儀正しく、荒くれ者の世界で生きながらも品位ある立ち居振る舞いが隠せないクールな男です。誉めすぎです。紳士らしくボクシングが得意な彼の存在は頼もしいことこの上ありませんし、物を隠したり探したりするのが好きなゲッコ族の嗅覚もこれからの旅に大いに役立つことでしょう。もちろん先ほどキャプテンが誰かの身ぐるみをはいでいたような気がすることについては、紳士的にだんまりを決め込んでくれています。とはいえけっこう肉体派のゲラ=ハ、力も体力もあるけど実は不器用と少々バランスがよろしくありません。しばらくは趣味を活かした盗賊修行をさせながら、もう少し手先を器用にしていって欲しいところです。海賊にして肉体派で盗賊修行中の紳士、どこか違う部品が混じっているような気もしますね。
ところで海賊の島を発つ前に、レイディラックの乗員として拾っていたのが謎の人物ダークさん。その時はまさか船が大破するとは思ってもいませんでしたが、船乗りの面倒を見るのが船長ですから船がなくなったからといって知らぬふりを決め込むこともできません。記憶喪失中の彼、肉体派のゲラ=ハに比べて術法が得意な頼れる存在で、記憶喪失で知性派というのも無理があるような気もしますが海の男はうろたえません。街道の果て、ウエストエンドの開拓村で何かを思い出したのか、ぽつぽつと自分の過去を語り出します。
「オレには、好きな人がいたんだ・・・」
いつか彼も愛を唄う詩人への道を突き進むことでしょう。まさにミンストレルソング。
仲間に加わることはありませんが、仲間というよりもむしろ敵として登場するのが海の悪魔。一見すると常夏の衣装を着た少女めいた姿をして、自ら海神ウコムの使いを名乗りマルディアスに出没しますがこれに目をつけられたが最後、彼女が探すというニンフ像を手に入れろと言って執拗に追いかけてくる存在です。海岸線の近くであれば世界中どこにでも現れて、水滴を滴らせながら追ってくるその姿には多くの人が逃げ出してしまうことでしょう。しかもこの像、全部で三体ありますがそれを持っていると怪物が襲いかかってくるいわくつきの一品で、彼女自身も「像の一体は取り返した・・・だから私がここにいる」などと不穏な言葉を呟きます。
不幸な犠牲者を出しながら、それでもニンフ像を取り返すと彼女も姿を隠しますが、しばらくすると今度は海底にあるウコムの神殿から伝説のブラックダイヤを取ってこいと言って再び姿を現します。ですがうっかりこれを受けてしまうと、主人公たちは海に突き落とされた挙げ句に怪物と罠に満ちた危険な神殿へと赴かなければなりません。しかも海神ウコムの使いを名乗っていた彼女、自分は神殿に入ることができないと言うではありませんか!もちろん苦労してブラックダイヤを手に入れた末に神殿を出ると邪神サルーインの僕が待ちかまえており、ダイヤを渡せと襲ってくるのです。ハメられましたね。
帝国の宝である伝説の宝石の一つ、風のオパールを強奪すると多くの財宝を残して姿を消したという伝説の海賊シルバー。その正体は人に姿を変えたシルバードラゴンで、これを解放してオパールを手に入れたキャプテン・ホークは帝国を襲撃した宿敵ブッチャーを粉みじんにすると、ようやく帰還した海賊の島で再び人の姿をしたシルバーに出会います。「一本足」から守ってくれと一枚の紙を託された少年ジムはそれが大海賊フリント船長が残した宝島の地図であることを知ると、帆船ヒスパニオラ号に乗り込み出航しました。一本足の料理長シルバーを疑いながらもこれと仲良くなったジムは、いよいよ宝島を前にして彼がおそるべき大海賊シルバーであることを知ります。ですが、フリントの財宝を巡って争う中でジムは海賊シルバーが心から宝島に憧れる、その心も知ることになるのです・・・。
一部内容に誇張やまちがいが混じっているかもしれません。
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