Romancing Saga-Minstrel Song-をしつこく遊んでいます。
千年の眠りから覚めた邪神サルーイン。復活するたびにあっさり討伐されるなかなか気の毒な神様ですが、五度目の復活ともなれば神々の宝石ディステニィストーンを五つも捧げられてずいぶん力を増してくる、それでも勇者シフには歯牙にもかけられずあっさり倒されてしまいます。
この世界、マルディアスは南が寒冷で北が温暖な気候を持つ大陸で、雪と氷に覆われた南の果て、バルハラントと呼ばれる地域には金髪碧眼の蛮人バルハル族が暮らしています。筋骨たくましく毛皮を着て獣の骨でできた兜をかぶり、漁や狩りで生計を立てる彼らが漂着した難破船を見つけるところから物語は始まりました。乗員はほぼ全滅、蛮人はこれぞ天の恵みと残骸に群がりますが人がいれば助けるのもまた彼らのルール。ただ一人の生存者、少年アルベルトを見つけたのが一族の戦士として知られるシフでした。ベーオウルフかコナンかシフかというばかり、大剣を小枝のように振り回す偉丈夫は少年を軽々と担いで村へ帰ります。
目を覚ました流浪の貴族、アルベルトは幼いながら勇気にも品性にも欠けるところがなく、助けて頂いたご恩にと当地を悩ませている怪物退治に名乗り出る少年をシフはいたく気に入ります。それが無謀であれ愚直であれ、勇気に勝る価値は戦士にはありません。頭二つは大きいバルハル族の戦士たちに混じり、足手まといにしか見えぬ小柄なアルベルトは未だ非力な存在でしたがシフは勇気ある少年を他と同じ戦士として扱います。雪原の洞窟に潜む怪物を一掃し、村に帰った彼らはすでに対等な仲間でした。
父が守る砦を怪物の軍勢に襲われて難を逃れた。例え手遅れであっても危急を王都に伝えねばならぬと言うアルベルトの事情を知り、これを送り届けるべくシフは大きな拳を握ると生まれて初めてバルハラントの外へと足を踏み出しました。騎士団領の峻険な山岳を越え、広大なクジャラートのステップを進み、ボガスラル海峡を渡るとニューロードを経てローザリアの王都クリスタルシティまでの長い旅。旅の中で邪神と怪物の軍勢が台頭しつつあることを知ったシフは剣を握りこれに立ち向かうことを決意します。邪神の僕、ミニオンと呼ばれる者たちが暗躍する事件を片端から潰してまわり、戦いとあれば一人先陣に立って仲間たちに背をさらし、遂には千年前の英雄ミルザが挑んだという神々の最終試練を乗り越え、先祖に伝わる秘宝竜の目に力を宿して世界を守るべく雄々しく戦う。まさしく詩人が語る英雄伝説サ・ガにふさわしい、この人が見上げるような巨躯に筋骨隆々としたたくましい女性であることなどささいな問題でしかありませんね。
騎士団領にそびえる峻険な山岳。バルハラントを出立したシフやアルベルトが訪れたこの地には竜の谷と呼ばれる場所があり、そこでは伝説の竜騎士が古き力を守っています。後に詩人ジャミルらと旅をすることになる、騎士の技と心を学んだと称する竜は巨体に甲冑をまとい二振りの剣を携え、鱗におおわれた皮膚には火焔も吹雪も雷も効かず、メーメーと羊舞う眠りの術を駆使する古の幻術使いというのだから竜の価値観はよく分かりません。
とはいえこの竜、竜陣と呼ばれる騎士団伝統の戦いの作法を授けたり、シフが持つ秘宝に竜の力を宿す方法へと導いたりと英雄を誘う賢人としての存在も見せてくれます。竜にして騎士の技と心を学び甲冑と剣を携えた幻術士にして賢人、しょせん爬虫類に騎士のなんたるかを伝えることはできなかったのでしょうが、あるいは竜騎士にそれを教えたという騎士団領の創設者初代オイゲン公を小一時間ほど問いつめる必要があるでしょうか。
雪ふきすさぶバルハラント、戦士シフが暮らすガトの村はその名の通り族長のガトが村を治めています。かつては偉大な戦士だったのでしょう、ガトは敷かれた毛皮の上にまるで彼自身が一つの像であるかのようにどっかと腰を下ろし、最近はあたたかくなって狩りの獣だけでなく怪物も増えて困ると呟きます。かつてジラの家で「君は剣士だろう」と言われた別世界の記憶を呼び起こさなくもありませんが、シフやアルベルトが怪物退治に赴く間に探してくれた雪原の地図を手渡して、戦士たちはバルハラントを旅立ちました。
ところが長い冒険を経て後に再びバルハラントを訪れると待っていたガトは開口一番、またモンスター退治を頼むと持ちかけます。これを退治して旅に出ては戻ってくるとまたもや怪物退治の依頼、しかも確かに同じ洞窟に同じ怪物がはびこっているではありませんか。獣なんかを狩るよりよほど安定した職業ですが、もしや飼っているのかもしれません。
ところで邪神サルーイン。破壊を司る強力な神様ですが、同時に幼い神でもあってゴミのような人間ごときに倒されたという千年前の屈辱を今も背負って地下深く、不満と憎悪を募らせて復活の時を待っています。千年後にようやく蘇ると一度どころか二度も三度も倒されることになるとは夢にも思っていなかったでしょうが、五度目の戦いとなる勇者シフに至ってはサルーインの長々とした前口上に聞く耳すら持たず「男のくせに細かいことをうだうだ言うな」と一喝、神に説教する気かといきり立つ破壊神に相手になってやるからかかってこいと剣を構え、剛力のままに圧倒するとやはりサルーインの奥の手である剣の雨すら使わせぬままに両断してしまいました。神の奇跡でも魔の仕業でもない、町の鍛冶屋で鍛えた大剣に叩き伏せられて再び眠りにつくサルーイン。次に彼を討伐するのはかつてシフが助けた少年アルベルトの役割となりますが、五度も続いた惨敗には破壊神も多少は学ぶところがあったらしく少しずつ神様にふさわしい力を取り戻していくことになります。
流浪の貴族アルベルト。ローザリアの最前線イスマスの世継ぎでしたが、サルーイン復活をもくろむ怪物の軍勢に襲われると砦は陥落、父や母に姉も失って一人逃がされた彼は危急を伝えるべく王都を目指した、筈なのですが隣の帝国、ローバーン公の砦で囚われてしまうと地下牢に押し込められてしまいます。ジャン・バルジャンのようにずだ袋にくるまってとはいきませんが辛うじて脱獄、港から船に乗りますが海の悪魔が仕組んだ大津波に巻き込まれると船ごと難破、気がつけば酷寒のバルハラントというオデュッセウスもかくやの流離譚を披露します。若いどころか未だ幼い、名誉と礼節と正義を重んじる貴族の世継ぎという運命に翻弄される物語の主人公そのままのアルベルトですがそれだけに真面目に育てば誰にも負けないだけの素晴らしい戦士に成長するでしょう。剣も槍も使いこなし、重い盾と鎧で神々の剣すら弾き、ロバの骨と呼ばれる巨大な棍棒を振り回す六人目の英雄候補です。
不憫な貴族の少年アルベルト、ですが少年とともに行方知れずになる姉のディアナも不憫さでは弟に負けていません。古くバルハラントの系譜を引くローザリアの人々は金髪碧眼の美男美女が多く、同時にこの国には女性も武器を手に勇ましく戦うという伝統があってどちらも彼女にとって例外ではありませんでした。運命の日、怪物の軍勢を前に世継ぎの弟だけは逃がそうと魔人や竜に立ちはだかるディアナは幼い頃から弟を足蹴にしていた、慣れた仕草でアルベルトを突き飛ばすと果敢に怪物に挑みます。あえなく倒れた彼女が運良く生き延びたことはアルベルト以上に神々の気まぐれが働いた結果かもしれませんが、弟を探すべく旅立つとまるで見当違いの熱帯の島、ワロン島に漂着します。バカンスすら似合わない堅苦しい娘は気のいいトカゲ人、ゲッコ族に囲まれると水平線を眺めながらロビンソンな日々を送ることになりますが、ゲッコ垂涎の昆虫料理だけは口に合わなかったかもしれません。
姉弟が生まれ育ったイスマスが崩壊した原因はかの地が偶然、邪神サルーインが封じられたその場所に建てられていたというただそれだけが理由でした。その前日にはディアナがローザリアの王太子ナイトハルトの求婚を受け、祝いの宴で賑わった砦も今はもう瓦礫と残骸とが残されているだけです。長い苦難の旅路を経たアルベルトがようやく滅びたイスマスに帰り着くと、すべてが手遅れになった砦の惨状に呆然としますが父王の部屋には伝承の封印を記録した一冊の日記が、姉の部屋からは可愛らしい子猫の刺繍がある靴下がしまわれているのを発見しました。邪神サルーインの存在と危機がすでに王都にも知らされていたらしい事実にアルベルトは驚愕し、更にこれが知られれば姉に肉団子にされてしまうであろう趣味に戦慄した少年は憔悴しきった顔で生地を後にすると目指す王都クリスタルシティへと足を向けます。彼の義兄になる筈であった王太子ナイトハルトに会い、役立たずの伝令の任を果たすために。
その名はカール・アウグスト・ナイトハルト。病床の父王に代わってローザリアを治める王太子であり領民にはプラックプリンスと呼ばれて敬愛されている一方で、ローザリアの侵攻に怯える遊牧民には黒い悪魔カヤキス・レビタとかスティックとかロボトミーとか呼ばれて恐れられている黒衣の騎士です。寛大だが冷徹な統治者であると同時に将軍としては自ら騎兵を駆って軍団の先頭に立つ勇ましい武人でもあり、人望でも実力でもこの人に匹敵する者といえばクジャラートの首長ウハンジ閣下くらいのものでしょう。一人峻険なスカープ山に登って鳥の王タイニィフェザーの羽根を持ち帰るなど、英雄伝説的な武勇伝にも事欠きません。
彼がアルベルトの姉ディアナに求婚した理由は政治的には対帝国の最前線である要衝イスマスとのつながりを深める政略結婚だったに違いありませんが、アルベルトを実の弟のように可愛がり、ディアナを慕う思いにも嘘はありません。例えそれが冷徹な打算の結果だとしても、当人たちを含めてそれを望まない者は一人もいませんでした。時に窮屈な宮廷暮らしに飽きて城を影武者に任せると出奔、ガラル・カヤキスと称する長槍を手に漆黒の派手な甲冑に身を包むと「我が名はカール・アウグスト・ナイトハルト!」などと思いきり名乗りを上げてくれるお茶目な殿下、お忍びではなかったのですか殿下!ウワァー!といった児戯も持ち合わせていますが人によってはそれすらも魅力に感じられることでしょう。
若き将軍にして支配者、冷徹かつ勇猛だが無慈悲でも残酷でもない生ける英雄。こんな完全無欠の殿下ですが彼にもちょっとした欠点がない訳ではありません。台詞を咬む。とにかく咬む。どうしてこんなかんたんな台詞が言えないんだと思うくらい咬む上にやたら棒読みくさく、口を開けば誰もが不安と戦慄に支配されずにいられない様はまさに人々が恐れるカヤキス・レビタ、黒い悪魔の異称にふさわしいものでしょう。苦難の旅を経たアルベルトがようやく王都にたどり着き、謁見の間に姿を現せば「アルベルト。アルベルトかー」とたどたどしい棒読みで出迎え、失われたアクアマリンを手にすれば「これがデステニイストーンか」と感動のかけらもない声を漏らし、怪物の軍勢に襲われる仇敵クジャラートを義によって助けるべく早馬を出すとなれば「ローザリアいし足の速い馬を」と言い出す始末。殿下!ローザリア「いち」ですよ殿下!ウワァー!
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