Romancing Saga-Minstrel Song-を最後の?遊んでいます。


pic 地母神ニーサの子と呼ばれるタラール族。かつて神々の戦いで光の神エロールを助けて三邪神と戦ったニーサによって守られたという人々は、戦いを終えた世界に戻ると天幕を張り、馬に乗って広大なガレサステップを駆ける自由奔放な者たちとして暮らすようになっていました。平穏な日々、その中で族長ニザムの孫娘アイシャは奔放なタラール族でもことに奔放な娘として知られており、一見すると幼い娘でしかありませんが突き出される拳は羅刹の一撃とまで称される一族きっての猛者と呼ばれています。

 七人目の英雄候補たる彼女、怪物の徘徊する平原で一人薬草を集めているとどこからともなく台詞を咬みながら現れたのが「あの」カール・アウグスト・ナイトハルトでした。お忍びの旅でも堂々と名乗りを上げる、全身黒衣の殿下に誘われたアイシャは大理石に覆われた王都クリスタルシティへと赴きます。相変わらず前頭葉が除去されたような口調で喋るナイトハルトは彼女を父王カール三世に謁見させますが、別に殿下が小娘相手に色気を覚えたためではなく、羅刹の技に魅了された訳でもなく大国ローザリアの王太子として、国境に隣接する広大なステップ地帯の領土安定を図るためにタラール族の協力を得ることが目的でした。
 もちろんローザリアがガレサステップに攻め込もうというのではなく互いに友好関係を築くことが目論見でしたがタラールの言葉でカヤキス・レピタ、黒いあぶら虫と呼ばれるナイトハルトだけに断られれば実力行使に訴えることも辞さないことは疑いありません。殿下との会談を終えた族長ニザムはステップを捨てて辺境カクラム砂漠の果てに移住、戦乱を避けることを決意しますが、孫娘には一枚の地図を与えて世界を旅してまわることを許します。

 こうして故郷を後にした豪傑アイシャ、旅の強敵(とも)を従えてふたたび王都クリスタルシティに赴くとナイトハルト殿下への目通りを願い出ますが何しろ黒いあぶら虫、いつでも来てくれと言っていたくせに門衛に彼女のことを伝えておくのを忘れていたので職務に忠実な彼らは遮る槍をどけようとしません。叩き潰すのも剣呑かと拳を鳴らすところに折良く貴族の少年アルベルトが現れると、彼の助力を得てようやくナイトハルトへの目通りが叶いアイシャは率直な感謝の言葉を伝えました。

「あなたは殿下に会うための道具なのよ。大切なことだからもう一度言うわね、あなたは殿下に会うための道具」

pic は遡ります。故郷のガレサステップを背に旅に出たアイシャが旅の伴として道連れにした一人が、ローザリアの南に隣接する旧都エスタミル近郊で出会ったファラという少女でした。スラムの貧民窟で生まれ育ち、詩人ジャミルと幼なじみという彼女ですがある時、借金のかたに奴隷商人に売りとばされるとよりにもよってクジャラートの英雄ウハンジ様に買われてしまいます。ウハンジのハレムの正体がファラと似た境遇の娘を集めた救護院だったのは幸いだったかもしれませんが「幼い娘好き」の夫の所業を調べるべく、裏社会のルートで奥方に調査を頼まれていたアイシャはハレムに乗り込むと彼女と出会います。娘たちはたちまち意気投合し、部屋を抜け出す算段を立てるとウハンジが訪れた折りを狙って拳を握り彼の護衛たちに襲いかかりました。

 まさか自分が買った少女の中に素手で護衛を殴り倒す豪傑がいるとは思う筈もなく、唖然とするウハンジでしたが心中はさぞ痛快だったに違いありません。許してくれ、わしが悪かったなとクジャラートの英雄は率直に頭を下げると彼女たちを解放しました。神殿を辞した二人はエスタミルの酒場でもと炎の魔術師ミリアムを、熱帯のワロン島では弟アルベルトを殴り飽きて大陸を放浪していたディアナ姉さんと出会います。こうして若い女性ばかりのかしましい一行ができあがりましたが、その正体は素手の一撃で神でも魔でもしとめようという四人の羅刹であり歴代英雄候補でも最大の破壊力を誇る一団となりました。彼女たちに打倒される邪神サルーインが気の毒でなりません。

pic 闘派揃いの娘たちにも長い旅には世話役が必要です。ニューロードの街道を旅する彼女たちが白羽の矢を立てたのが街道の果て、開拓地ウエストエンドの酒場でちびちびと盃を傾けていたエルマンという旅商人の青年でした。もともと旅芸人の一座の世話役で、外面はひたすら笑顔で人が良さそうな好青年にしか見えませんが、細すぎる目の奧には世間の表と裏を知っている者の経験と英知と打算が秘められています。

 当人は頭脳派を主張していますがそんなことはどうでもいいと、酒場でくつろぐエルマンを拉致したアイシャは彼をうら若き女性たちを守る名誉ある戦士に任じました。こうして旅商人を改め武芸家を名乗らなければいけなくなったエルマンは世界で一番不幸な青年として、破壊神よりも恐ろしい娘たちに従い世界を救う旅に出ます。彼の髪の毛が南斗水鳥拳の使い手のように真白くなるのも遠い未来の話ではないでしょう。

pic 幸なエルマンが働いていた旅芸人の一座、そこで座長をしていた人物こそ八人目の、そして最後の主人公であるバーバラ姉さんです。ニューロードでも有名な踊り子で、粋という言葉の見本のような人ですがいざとなれば剣一本で世界を渡る海千山千の戦士でもあるというとても基本性能の高い人。荒事にも動じず、人は訪れて出会いやがて別れてまた会うものだという自由な暮らしをしていましたから、羅刹に連れ去られたエルマンの姿が見えないことにもあらどうしたのかしらとあまり気にしてくれないかもしれません。
 その日も酒場で踊りを披露していた彼女、軽快に床を踏む音が響き汗が散って拍手と手拍子が鳴り渡る中で、吟遊詩人を名乗る奇妙な男が話しかけてきました。すばらしい踊りを見せてくれた礼だと言って、押しつけるように豪華な首飾りを手渡すと駆け去ってしまう男の様子はあまりに胡散臭いものでしたが、それもまた面白いかと思ってしまうのはバーバラ姉さんらしいところでしょう。キャラバンを転がしていつもの気ままな旅に出る彼女ですが、まさか男の正体が光の神エロールであり手渡された宝石が伝説のディステニィストーン「幻のアメジスト」であることに気付けというのは無理な話でした。

 千年前に封印された気の毒な邪神サルーイン、破壊と殺戮の神は復活を図り自分のしもべを世界中に放っていましたが、それに対抗すべくエロールは人間の中に勇者を求めました。それが世界を救うことになる八人の英雄たちですが、邪神を倒して世界を救う方法は彼ら自身に委ねられており、神々の力を借りてサルーインを封じるのも自由ならディステニィストーンの力を借りず人間の力だけで邪神を倒すことも自由、そしてエロールの力であるディステニィストーンの力もろともサルーインを砕いてたたき壊してしまうのも自由なのです。バーバラ姉さんが神様に選ばれた理由、それは彼女が最も自由な人であったことなのでしょう。

 情勢は不穏で騒乱は世界中で起こっていました。野蛮な開拓地フロンティアでは目立ちたがりの魔物がみんな僕に注目してよと暴れていたり、伝統と格式しかないバファル帝国では町中を暗殺者が闊歩して下水道には海賊が徘徊し、商店に行けばサルーインの神官が人殺しはいらんかねと商いに訪れて、警備隊の詰め所でも最近妙な事件が起きているから調べてよと言われる始末。南の騎士団領では騎士以外の発言は認めてもらえませんが、その騎士はお姫様と逢い引きをして地下牢に詰め込まれる失態で、北に目を向ければクジャラートの英雄ウハンジ様とローザリアの黒いあぶら虫とが国境を挟んで対峙しています。
 ふつうに考えれば破壊と殺戮の神様サルーインにとってまたとない混沌とした情勢で、三邪神の兄である死の王デス、闇の女王シェラハとともに卑劣なエロールをぶち倒してやる好機のように思えますが、邪神といっても単に悪いだけの神様ではなくデス兄さんは死と農耕と秩序の神様で、シェラハ姉さんは闇と安らぎの神様でもありましたからけっこう人間の暮らしに馴染んでいました。こうなると破壊の神様は壊してから直す神様でないと本当は都合が悪いのですが、幼いサルーインはエロールの手で暗い押入に閉じ込められていた恨みが忘れられずそのことに気が付くことができません。世界や人間にとって不幸なことがあったとすればまさしくエロールとサルーインの双方が幼い神様であったことで、それでもエロールには千年かけて自分がやらかしたことを反省する時間がありましたが、封印されていたサルーインにはその機会すらなかったのです。

 もっともそんな幼い神様、サルーインが画策する程度の陰謀ですからミニオンと名乗るしもべたちの暗躍もたかが知れていました。怪物を暴れさせるとか、人間をたぶらかすとか、呪いをかけるとか、雑で単純なものばかりで百戦錬磨のバーバラ姉さんには可愛い悪戯でしかありません。もう少し頭を使って悪いことができないのかしらねと、気ままに陽気に事件に首を突っ込んでは解決していく姉さんを選んだエロールの目は少なくとも間違えてはいなかったのでしょう。運命の石と呼ばれる、ディステニィストーンを手にした姉さんは見えない何かに導かれていくように世界を脅かす陰謀に巻き込まれて、世界を救う戦いへと誘われていきました。千年前の英雄ミルザの時は誰も帰ってくることができなかった、最後の決戦を前にしてもバーバラ姉さんなら笑いながら言ってくれることでしょう。

「あたしはそんな柄じゃないけど、踊り子に助けられる世界も悪くないんじゃないかしら?」

pic は人をつくり、人は物語をつくるといいます。世界中の酒場を放浪して八人の主人公を導き彼らの物語を語る吟遊詩人、それはかつて世界を滅ぼしたことを恥じたエロールが、自分がただ見守る存在であることを示すために選んだ姿でした。愛用のツインネックリュートを抱え、しかもネックの一本が仕込み剣になっているあたりは神様らしい浮き世離れした性格なのかもしれませんが、千年前の戦いから続く古今東西の伝説伝承モノマネまで披露してくれるけっこう多芸で楽しい人です。

 ナゾナゾ博士のように何でも知ってる詩人さん、その割には即興でつくりましたという詩はどうにもおそまつなもので「悪の栄えた試しなしー」などとテキトウに奏でる調子を聞くと、もしかしたらこの人は単なる語り部であって作詩は不得意なのかしらんという疑惑もぷんぷん漂わなくもない、そんなお茶目な神様です。


 わたしがゲッコ族風に語る物語を聞いていきませんか?

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