第二回大会


 西暦2000年暮れ。21世紀を間近に控えたとは言え、人々の営みは常に変化し、或いは変化するものではない。誇大な宣伝のキャッチコピーとしてしか存在し得ない21世紀よりも、観客の目の前で繰り広げられる人型兵器同士の戦いの方が、余程人々に未来を感じさせているであろう事は間違いがない。
 太平洋上に浮かぶ、中本工業主催ストライク・バック専用競技場。今回は前回優勝者、準優勝者を含む8機の機体が登録されていた。華やかなセレモニーも観客に取っては邪魔な余興でしかない。間もなく開催される第二回大会の興奮を前にして…。


Aブロック第一試合

 オープニングマッチは前回振るわなかった両者の対戦。元戦闘機乗りのネス・フェザード駆る近距離型軽量機ソードフィッシュと、現役軍人アリサ・ブラングウェン駆る遠距離型重量機メタルギアmk2の試合は中間距離の撃ち合いから始まる。今回より連装式に改良された中距離兵器、ソードフィッシュのレーザーキャノンは二発とも的確に命中、対するメタルギアのガトリングガンは一発が回避、一発は外れる。続いて遠距離、ソードフィッシュのセラミックボウガンは掠り傷、メタルギア恐怖の八発同時20mm対艦ミサイル弾が発射されるが、これは全弾命中せず。更にソードフィッシュはミサイルの雨をかいくぐり、正確な射撃でメタルギアの装甲を削る。続けてミサイル、一発がかするもソードフィッシュの攻撃も続けて命中。
 この辺りで展開が圧倒的になり、中間距離に移行してのレーザーキャノンが命中。メタルギアここまで成す術なし。遠距離に戻るも同様の展開が続き、命中精度の低いメタルギアの攻撃をあざ笑うかのようにソードフィッシュの攻撃がおもしろいように命中する。そのまま近接戦闘、反撃能力のないメタルギアの装甲をソードフィッシュのチェインソードが削り、更にレーザーキャノン直撃、接近してチェインソード、離れて牽制、接近して攻撃とお手本のようなヒットアンドアウェイを繰り返し、メタルギアもようやく命中したガトリングガンで僅かなプライドを見せるも構わず突進したソードフィッシュのチェインソードで止め。完勝と言って良い内容だった。

○ソードフィッシュvsメタルギアmk2×(20分機動停止)


Aブロック第二試合

 続いては前回優勝者、ロストヴァ・トウルビヨン駆るシアトリカル改の登場。対するは郷土愛の強い41歳、青森出身の軍人、名著「明日また生きろ。」を片手に中石譲が騎乗のねぷた祭りの開催…もとい出陣。戦前予想はシアトリカル有利だが、バランスの取れたねぷた祭りも侮る事が出来ない。開始早々、中間距離の撃ち合いはシアトリカルのチェインガンが命中、ねぷた祭りの弘前キャノンは空を切る。更に近接戦闘、斬り合いは両者とも回避、離れてねぷた祭り反撃の弘前キャノンが命中、続けての連装式キャノン砲の撃ち合いは相打ちで両者互角の展開に。そのまま中間距離で打ち合うがこの間合いはシアトリカルが得意か、精密度に劣るねぷた祭りの弘前キャノンを機体に掠らせながらも反撃、やや優勢に立つ。
 だが出力に勝るねぷた祭りもあくまで正面勝負を捨てず、一歩も譲ろうとしない。不利と思われた中間距離の撃ち合いで、何とか踏みとどまったねぷた祭りがやや強引な攻撃を連続で命中、シアトリカルの反撃も見事に回避し一気に優勢に。更に男らしく勝負を付けるべく距離を詰めると近距離で斬り合い、離れて牽制、止めの弘前キャノン直撃でシアトリカルが機動停止。正面からの撃ち合いを制し、前回優勝者を撃破した。

○ねぷた祭りvsシアトリカル改×(10分機動停止)


Bブロック第一試合

 波乱&殊勲の試合に続いては前回準優勝のハーフリング1st、シャル・マクニコルの登場。バランスの取れた正統派に対するは攻撃力重視の一撃離脱が得意な元艦載機乗りのレイモンド・オース駆るアークロイアル。大会の性質上軍人或いは元軍人の参加者が多い中で、若い少年ながら動きのいいマクニコルにやや声援が集まる。
 まずは遠隔での撃ち合い、機動性を活かしたアークロイアルがハーフリング1stのセラミックボウガンを回避しつつ45mm対艦ミサイルを四発同時発射、うち一発が命中する。更に続けて発射したミサイルが立て続けに命中、一気にダメージを与えて一方的な展開に。手数に劣る不利な遠距離戦でハーフリング1stも必至の反撃、ボウガンの精密射撃を連続で装甲の隙間に直撃させて展開の引き戻しを図る。反撃のミサイルの雨を今度は全弾回避するが、先程のソードフィッシュvsメタルギア戦とは違った緊張感に館内が沸き返る。
 ペースを握ろうと中間距離、レーザーキャノンの撃ち合いを制したハーフリング1stが徐々にペースを引き戻すが依然最初のミサイルで受けたダメージを挽回するには至らず、ここでようやく互角といった所か。しかしアークロイアルは遠距離の間合いを維持する事に固守、ここで命中した45mm対艦ミサイル三発の内一発が直撃、更に展開有利に、続けてのミサイル射出で圧倒する。これで完全にアークロイアルのペース、ミサイル射出で攻勢に出、続けて中間距離の撃ち合いでハーフリング1stの反撃を受け、かなりの損害を出したものの相手は機動停止寸前。だがここで意地を見せたハーフリング1stがようやく近接戦闘に持ち込み、反撃の手段を持たないアークロイアルに衝突せんばかりの勢いで攻勢に出る。更に間合いを離してのレーザーキャノンの撃ち合いを制し、これが直撃によって両者機動停止!だが判定の末、僅かに被害の大きいハーフリングに敗北が宣告された。好勝負に観客から歓声が沸き起こった。

○アークロイアルvsハーフリング1st×(12分両者機動停止による判定)


Bブロック第二試合

 一回戦最後の試合。熱い学生、新庄ジュンペイ騎乗の拳花火は両腕の巨大なアタッチメントを付けた極端な攻撃偏重の機体、対するは他企業キバヤシFからの参入、下請け企業のイハラ技研チームよりテムウ・ガルナ騎乗の試作機紫電をベースにしたグリーンコロナタスだがその奇異なフォルムは試作機らしい不安定さが見られる。両者近接距離からの展開。拳花火が強化アタッチメント付きの拳で殴り掛かるが初弾は命中せず。だが続けての重い一撃が命中、装甲の薄いグリーンコロナタスにかなりのダメージを与える。勢いに乗った拳花火の続けての攻撃は外れ、更に殴り掛かるが外れ。
 ようやく中間距離、拳花火はGダムハンマーを振り回しこれが命中、ここまで圧倒的な展開でペースを握る。近距離に移って拳花火の攻撃は外れ、続けて大振りの攻撃も外れ。中間距離、両者の大型武器の振り合いは互いに外れ。ここで拳花火のGダムハンマーが再び命中。両者外れ、近距離戦に移り一方的な拳花火のペース。遠距離攻撃主体のグリーンコロナタスは機動能力に欠ける点が災いして攻勢に出る事が出来ない。続けての拳花火の攻撃は回避、中間距離での攻撃は両者とも外れ、近距離の攻撃は外れ、グリーンコロナタスがトマホークブレイカーでようやく反撃、攻撃力の高い一撃で豪快なダメージを与えるが、ペースを取り返すには至らず。ここで拳花火が近距離に移る。接近戦での攻撃は外れるが、中間距離でGダムハンマーが命中、更に近距離、そして中間距離で両者の大型武器が同時に命中、これで装甲を破壊されたグリーンコロナタスが機動停止した。

 開発部門コメント「次は足を付けるっすよ」

○拳花火vsグリーンコロナタス×(20者機動停止)


Aブロック準決勝

 一回戦完勝のソードフィッシュに対するは、接戦ながらも前回優勝者を正面撃破で破ったねぷた祭り。開始早々、出力に勝るねぷた祭りの弘前キャノンがソードフィッシュを直撃、一気にペースを握る。派手な挨拶から両者得意の近距離戦に以降、ソードフィッシュの安定したチェインソードと、ねぷた祭りの精度に勝る青森レーザーでの斬り合いに移行した。
 両者の斬り合いは機動力に勝るソードフィッシュが優位に進めるが、初弾のダメージ分の不利をどこまで挽回できるかという展開になる。続けてチェインソードの攻撃、ねぷた祭りの厚い装甲に阻まれ効果が低い。逆にねぷた祭りの攻撃もソードフィッシュの鏡面装甲に阻まれダメージ軽微だが、展開が互角なら最初の利がある分だけ圧倒できるのは有利か。だがねぷた祭りの攻撃はソードフィッシュが攻撃を行う四回に一度程度しか反撃が命中せず、展開のペース自体は完全にソードフィッシュのもの。開始8分、ソードフィッシュの攻撃で形勢逆転かと見えたがねぷた祭りも反撃、正面からの削り合いに強いのは前試合でも証明済みで、ここから反撃してペースを取り戻す。
 ソードフィッシュの鏡面装甲は青森レーザーの効果を拡散させているのだが、ねぷた祭りの厚い装甲もソードフィッシュの攻撃の殆どを弾き返す。装甲以上に精神の削り合いとなった互角の展開のまま両者斬り合い、僅かにねぷた祭り優勢のまま20分経過、ここで両者のダメージはほぼ互角に並ぶ。これまでの展開を見るとペースで優勢に立つソードフィッシュ有利か。最後のラッシュ、勝負を決しようとする為、両者完全に足を止めて正面から斬り合い、同時に相手の装甲を破壊し今大会二度目の両者機動停止。ソードフィッシュの逆転の一撃がねぷた祭りの装甲を完全破壊し、判定により勝利を収めた。

○ソードフィッシュvsねぷた祭り×(22分両者機動停止による判定)


Bブロック準決勝

 近距離戦主体で攻撃重視の拳花火と遠距離戦主体で攻撃重視のアークロイアル。試合は中間距離で開始、アークロイアルのレーザーキャノンがまずは先制する。その後遠距離で両者大量のミサイル撃ち合い、アークロイアルの45mm対艦ミサイル四発と拳花火の20mm対艦ミサイル八発の撃ち合いは両者一発ずつ命中。距離を開けて中間距離での攻防はアークロイアルのレーザーキャノンが掠ったのみ。ペースはややアークロイアルにあったがここで近距離戦、拳花火の攻撃が命中してかなりのダメージ、一気に形成を引き戻す。近接戦を嫌ったアークロイアルが距離を取って反撃、安定した命中精度を武器に攻勢に出、両者ペースを譲ろうとしない。ここで再び遠距離のミサイル撃ち合い、45mmミサイル二発を命中させたアークロイアルが僅かに有利か。中間距離でのレーザーキャノンも掠っただけだが、一撃の恐怖さえ無ければ優位にあるのは常にアークロイアル、といった印象。
 更に同時十二発のミサイルの花がフィールド内に開き、観客の目に映える。更に続けてミサイルの撃ち合い、これを命中させてアークロイアル優勢。中間距離でのレーザーキャノンが命中し、これで完全にアークロイアルの展開。続けて距離を取ってミサイル連続着弾、更に45mmミサイル直撃で拳花火が機動停止、勝負を決めた。一試合合計84発のミサイルが飛び交う、実に派手な試合となった。

○アークロイアルvs拳花火×(13分機動停止)


NAKAMOTOストライク・バック第二回大会決勝戦

 ストライク・バック第二回大会決勝戦は軽量機同士の対戦、活字中毒の元戦闘機乗りネス・フェザード騎乗、バランスの取れた近距離型のソードフィッシュと遠距離でのミサイル射出から中距離での一撃離脱を得意とする元艦載機乗りレイモンド・オース騎乗のアークロイアル。奇しくも元軍人同士の対戦となり、鍛え上げられた能力同士による戦いに観客の期待が集まる。戦前の評価では近接武器を持たないアークロイアルの不利と、一撃の攻撃力に劣るソードフィッシュの不安とが指摘されていた。両機射出用カタパルトにスタンバイ、カウントダウンが始まると同時に滑り出すようにフィールド外周を動く様子に緊張感が高まる。

 カウント0と同時に両機射出、姿勢制御を行いつつ間合いは近距離、ソードフィッシュの距離で試合開始。ここは前大会参戦の経験が優位に立たせたか、すばやくチェインソードで一撃を加えるが、これは掠り傷を負わせたのみ。しかし距離を取ろうとするアークロイアルの動きを見透かしたかのように中距離でレーザーキャノンを命中させ、ソードフィッシュが先制する。続けて近接戦闘、ヒット&アウェイを狙うがこれは回避される。
 そのまま中間距離での撃ち合い、両者二連装のレーザーキャノンを打ち合うが確実に回避を行うソードフィッシュに比べ、得意距離に移ろうと姿勢制御を図ろうとするアークロイアルは度々その隙を付かれて攻撃を受ける形に。両者の僅かな経験の差が戦局に影響を与える。
 ここまで完全なソードフィッシュのペースだが、粘り強くようやく相対距離を遠距離に修正したアークロイアルが待ってましたとばかりに45mm対艦ミサイル四発を同時射出。うち二発が命中してソードフィッシュのダメージも甚大。更に続けてミサイル一斉射出、ダメージを与えて反撃を図るが一気に加速、距離を戻したソードフィッシュが一度レーザーキャノンで牽制を行ってから一気にラッシュ!距離を詰めると近接戦闘からチェインソードで一撃、二撃、三撃、四撃、五撃と続けざまの攻撃でアークロイアルを機動停止、どよめきが歓声に変わる間も無いままに勝負を決めてしまった。唖然としていた観客も我に返ると優勝者を歓呼で祝福、機体の性能以上にパイロットの勝負の駆け引きの結果を見せつける大会となった。

○ソードフィッシュvsアークロイアル×(13分機動停止)

cut



総合成績

優勝  ネス・フェザード     ソードフィッシュ  3戦3勝 通算4戦3勝
準優勝 レイモンド・オース    アークロイアル   3戦2勝 通算4戦2勝
    中石譲          ねぷた祭り     2戦1勝 通算2戦1勝
    新庄ジュンペイ      拳花火       2戦1勝 通算2戦1勝
    アリサ・ブラングウェン  メタルギアmk2  1戦0勝 通算2戦0勝
    ロストヴァ・トゥルビヨン シアトリカル改   1戦0勝 通算4戦3勝
    シャル・マクニコル    ハーフリング1st 1戦0勝 通算4戦2勝
    グリーンコロナタス    テムウ・ガルナ   1戦0勝 通算1戦0勝


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