第四回大会


 西暦2001年5月。中本工業主催ストライク・バック第四回大会が一ヶ月ほど延期された事に関しては理由があった。ハードウェアの不良から競技フィールド内を管理するシステムにトラブルが発生し、その修復と試験調整に一ヶ月を要したのである。管理部門はシステムに頼りすぎた競技体系とその体制を批判される事になるが、いずれにしろ順延こそあれ競技再開ができたのは相応の体制が確保されていたからでもあるのだろう。通常の人型汎用機を使用した戦いだけであればそこに多くの制限は必要ないが、観客とパイロットの安全管理、また、競技性の維持を考えればどのような競技にもルールなりシステムなりは必要なものである。

 傾向として今大会参加の八機の機体は軽量機が半分を占め、その高い機動性能が評価されている。対して重量機ティーゲルはこれまで実績と結果を残すことができず、苦戦を強いられている感が強い。こういったデータが集まり始めたのも、大会が継続して開催されていることの現れであろう。


Aブロック第一試合

 オープニングマッチ第一試合。これまでレギュラー参戦を続けながら、決して満足のいく戦績を納めているとは言いがたいレイモンド・オースとアークロイアルに対するは、イタリアから新規参戦マクシミリアン騎乗の大型機アウグストゥス。まずは遠距離の撃ち合いから始まり、アウグストゥスから射出される45mm対鑑ミサイルの雨をかいくぐりつつ、アークロイアルがロングレンジキャノンの正確な一撃を命中させて行く。更に接近してヒートキャノン、直撃こそ避けているが確実にアウグストゥスの装甲が削られる。
 そのまま接近戦に持ち込んだ両機は攻撃手段をブリッツに切替。至近距離で炸裂する小型弾頭を互いに正面から打ち付け合う展開に。装甲の厚いアウグストゥスはアークロイアルの攻撃を最小限に抑え、挽回を図る。ここで接近戦は不利と見たアークロイアルが一旦離脱、ヒートキャノンを放ちこれが直撃!更に離れてロングレンジキャノンで牽制、一気に接近してブリッツの削り合いで相手を機動停止に追い込んだ。

○アークロイアル(13分機動停止)アウグストゥス×


Aブロック第二試合

 続いて第二試合。強豪ソードフィッシュに騎乗するはネス・フェザード、対するはドック入りさせたグリーンコロナタスに乗り代わりブルーゲイル騎乗のテムウ・ガルナ。バランス型のソードフィッシュと遠距離火力集中型のブルーゲイル、開始早々、遠隔砲台クロームレイから放たれるエネルギーの帯がソードフィッシュを貫きいきなりの大ダメージ。更に中距離、大型レーザーソルファランクスも直撃させ一気にソードフィッシュの装甲が半減。ここから一気呵成に攻めたて相手の反撃をものともせず離れてクロームレイ、接近してソルファランクス、離れてクロームレイの直撃で勝負を決めた。優勝経験のある機体をごく短時間で沈めた攻撃力に場内に歓声が上がっていた。

○ブルーゲイル(5分機動停止)ソードフィッシュ×


Bブロック第一試合

 Bブロック第一試合。新規参加は外見はのんびりした女性にしか見えず内面はのんびりした女性らしい静志津香(しずか・しづか)騎乗の中量機、のんびりエターニア。一風変わった新参者に対するは前回優勝のシャル・マクニコルとハーフリング2nd。接近型高速機動機に絶対の自信があるのか、ハーフリングは整備のみで設計変更をせずに参戦。試合は遠距離から、のんびりエターニアのロックオンレーザーがハーフリングに先制するが、すかさずハーフリングもヒートキャノンで反撃、一撃でペースを掴むと接敵、ブリッツを炸裂させる。続いてのんびりエターニアがレーザメスで反撃、ハーフリングが中間距離でヒートキャノンを命中、接近してブリッツとレーザーメスの一撃。このあとお互いに接近状態での戦いになり、手数で攻めるハーフリングとダメージ重視ののんびりエターニアの間で一進一退の攻防となるが、先制したヒートキャノンのダメージが尾を引いているのんびりエターニアが不利であるのは否定できない。逆転を狙い距離を取ろうとする相手にヒートキャノンで阻止を図るハーフリングだがこれは掠ったのみ、得意の遠距離戦でロックオンレーザーを連射するのんびりエターニアだが、これをダメージ最小限に抑えられて万事休す。一気に接近して装甲を削られると止めはヒートキャノンで機動停止した。

○ハーフリング2nd(14分機動停止)のんびりエターニア×


Bブロック第二試合

 派手な攻撃性で片寄った人気のある新庄ジュンペイと拳花火に、相手はやはり攻撃偏重でチューンアップしたホウオウ弐型と神代進。遠距離からオプションバードで先制したホウオウに構わず突進した拳花火のドリルが直撃!追撃で受けたショットウイングの相打ちダメージを一撃で挽回するほどのダメージを相手に負わる。場内の歓声に乗って更に突撃する拳花火に、これに乗らず確実に距離を取ったホウオウはオプションバードで遠隔射撃、更に接近してショットウイングで鋼弾を撃ち込み、離れてオプションバードの熱線、接近してショットウイングで完全に止め。攻撃機体の拳花火を正面から高い攻撃力で撃砕してみせた。

○ホウオウ弐型(6分機動停止)拳花火×


Aブロック準決勝

 確実な戦法と安定した実力で一回戦突破したアークロイアルと、高い攻撃力で一回戦を突破したブルーゲイル。開始早々遠隔からの熱兵器の撃ち合いはアークロイアルのロングレンジキャノンが直撃するも、ブルーゲイルもクロームレイで反撃、両機互角ながらややブルーゲイル優勢。更に中間距離でヒートキャノンとソルファランクスをお互いに直撃、僅か2分で両者とも装甲を半分に削ってしまった。
 しかしここで接敵したアークロイアルは接近戦能力を持たない相手にブリッツの連弾。性能は高いが装甲の薄い紫電をベースにしたブルーゲイルは、ブリッツの小型弾頭でもかなりのダメージを受ける。一撃目が直撃、二撃目をかすり傷で済ませたものの三撃目が直撃、機動停止するしかなかった。

○アークロイアル(5分機動停止)ブルーゲイル×


Bブロック準決勝

 続いて準決勝、もう一試合は一回戦を快勝した両機の激突。先制したのはハーフリングで、装甲の薄いホウオウに奇襲のブリッツが炸裂、更に中間距離でのヒートキャノンとショットウイングの撃ち合いが相打ち、再度接敵してブリッツの直撃で一気にペースを握った。ホウオウも距離を取ってオプションバードの砲撃を命中させ、ペース奪還を図るが再びヒートキャノンとショットウイングの相打ちで直撃を受けてしまい、これで機動停止してしまった。今回、準決勝進出の両機は共に装甲の薄さが仇となる形になり。高機動性を持ち攻撃性能の高い機体が決勝進出を決める形となった。

○ハーフリング2nd(6分機動停止)ホウオウ弐型×


NAKAMOTOストライク・バック第四回大会決勝戦

 NAKAMOTOストライク・バック第四回大会決勝戦。両機とも多弾頭小型炸裂弾ブリッツを装備した軽量機という近いコンセプトで設計された機体同士だが、ハーフリングはブリッツ中心の近接戦闘重視、アークロイアルは強化装甲を外してバランスの取れた攻撃性能に特化した機体となっている。前評判ではハーフリングがやや有利とされ、衆目のなかフィールド外周のカタパルトを両機が移動、同時に射出されると決勝戦が開始された。

 開始と同時に一気に距離を詰める両機。お互いの機体性能が近いこともあって「パイロットの性能」を比べ合うつもりになったのであろうか、正面からブリッツを撃ち込み合う勝負となった。まずはアークロイアルが右掌から放つ連弾、これを掠らせながらハーフリングも左掌から反撃。やはり装甲の差か、一撃の攻撃力で僅かにハーフリングに分があるように見える。更に続けての撃ち合いでは動きでも勝ったハーフリングがアークロイアルに弾頭を着弾させ、反撃こそ受けるがペースを握る。続く撃ち合いは両者回避し合い、互いにかすり傷のみ。命中精度ではアークロイアル、回避と装甲性能ではややハーフリング有利か。更にハーフリングはアークロイアルの攻撃をかわし、反撃のブリッツが着弾、強化装甲の無い相手にダメージを蓄積させていく。決め手の無いアークロイアルはこの時点でのダメージ差以上に、展開で大きく不利な状態になったため手数での反撃を図り、僅かに相手の装甲を削ることに成功。続けてハーフリングの攻撃を回避、かすり傷だが攻撃を命中させる。
 動きとしては地味な展開になっている一方で近接した両機が確実に相手の攻撃を交わし、こちらの攻撃を命中させて装甲を削っていく消耗戦になった。こうなると装甲の面で有利に立っているハーフリングとシャル・マクニコルが精神的にも有利になり、正面から相打ち覚悟で攻撃。多少の被害を受けたもののブリッツを全弾命中させることに成功し、先程のアークロイアルの反撃ダメージを帳消しにしてしまった。

 ハーフリングがダメージを厭わず攻撃重視に切り替えたことで、ここからは火花とスモークで両機を視認するのが困難になるのではと思える展開に。装甲とダメージ差から回避に気を使わざるを得ないレイモンド・オースはどうしても後手後手にまわり、ハーフリングからブリッツの連弾、続いては相打ち、更に装甲を抜けての直撃まで受けてしまい、これで機動停止寸前に。更に攻撃を受けて完全に勝敗が決まったと思われたが、決勝戦まで登ってきた意地があるのは両者とも同じことであり、ここからアークロイアルも懸命の反撃を図る。反撃の一手、ブリッツの攻撃を命中させたアークロイアルは相手の攻撃を完全回避。これまで撃ち合いと削り合いをしてきた両機がこの試合で攻撃を外したのは始めてで、続いての撃ち合いは相打ちながらアークロイアル有利、互いにかすり傷を与えた後でラッシュに出ながらハーフリングの反撃を華麗にかわす。これで互いのダメージ差を試合開始当初のレベルにまで引き戻すことに成功した。更にハーフリングの攻撃を完全回避、ダメージ差を縮めようとする。
 しかしアークロイアルの健闘もこれまで、最後に相手の補足に成功したハーフリングがやはり相打ち承知のブリッツ全弾直撃!あくまで優勢を譲らず、最後まで耐えきったのは大会二連覇に成功した前回優勝者であった。

○ハーフリング2nd(17分機動停止)アークロイアル×


総合成績

優勝  シャル・マクニコル    ハーフリング2nd 3戦3勝通算10戦8勝
準優勝 レイモンド・オース    アークロイアル   3戦2勝通算8戦4勝
    ブルーゲイル       テムウ・ガルナ   2戦1勝通算6戦3勝
    神代進          ホウオウ弐型    2戦1勝通算4戦1勝
    ネス・フェザード     ソードフィッシュ  1戦0勝通算7戦4勝
    静志津香         のんびりエターニア 1戦0勝通算1戦0勝
    ロストヴァ・トゥルビヨン セクレタリアト   0戦0勝通算6戦4勝
    中石譲          ねぷた祭り     0戦0勝通算2戦1勝
    新庄ジュンペイ      拳花火       1戦0勝通算4戦1勝
    マクシミリアン      アウグストゥス   1戦0勝通算1戦0勝
    アリサ・ブラングウェン  メタルギアmk2  1戦0勝通算3戦0勝


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