第十二回大会
西暦2003年1月、中本工業主催ストライク・バックも第12回を迎える。今回の開催地は新設された第二競技場である「斑の鳩競技場」、新しい舞台に合わせて各出資企業ともに機体の基本フレームや兵装に変更を加え、心機一転を前面に打ち出している。もっとも、新装備のセッティングが必要になる各チームパイロットやそれに乗り込むパイロットにしてみればいい迷惑であったかもしれない。何れにしても剣闘士達は与えられた舞台の上、限定された技倆だけで戦いを披露しなければならないのである。
オープニングマッチ ダルジャンvsぷわぷわエターニア
新競技場での記念すべき第一試合はエターニア陣営オーナーたっての希望によりトーナメント前の特別試合となった。相手はリザーブ機であるダルジャンと新庄=ゴステロ=ジュンペイ、特別試合ではあるが勝者をトーナメント第一試合出場させるという事実上の予選試合である。
「お前の身体を八つ裂きにしてやるう!!」
カタパルトからフィールドに射出されたダルジャンのコクピットから聞こえる叫び声に場内一部から歓声が沸く。これに静志津香騎乗のぷわぷわエターニアが対峙、両機中間距離から撃ち合いを開始した。挨拶代わりの撃ち合いはダルジャンのレーザードバズソーとエターニアの硬質ニードルガンが相打ち、だが今大会からの新装備であるフロートマインによる累積ダメージでダルジャンが優位に立った。この距離を維持される限りエターニアは浮遊機雷の中で戦わなければならない。
「簡単に死ぬなよ!いたぶる楽しみがなくなるからなぁ!!」
たまらず距離を詰めるエターニアにダルジャンはメタルクローで攻撃、これは反撃のヒートロッドともに双方が回避される。離れて浮遊機雷に追い込まれたエターニアは更にレーザードバズソーを受けて損傷、だが反撃のニードルガンで狙撃して損害は互角。一気に切り合い、これも相打ちになるが威力で勝るヒートロッドで優位に立つ。
だが再び距離を離したダルジャンは機雷射出、損害の累積しているエターニアは長期戦では不利になる事が目に見えているが、迂闊に撃ち合いに出て火力の高いバズソーの直撃は避けたいところ。回避を重視しつつ確実にニードルガンで敵を捉え、機雷の損害以上のダメージを与える。続けての射撃、更に連射を命中させて隙の大きくなった相手に止めの狙撃。機雷の損害を受けながら確実にダルジャンを撃破した。
「脳がぁ!脳が痛いぃぃ!!(新庄=ゴステロ=ジュンペイのコメント)」
○ぷわぷわエターニア(8分機動停止)ダルジャン× 15vs-9
トーナメント一回戦 ステラ・マリスvsソニック・バイパー
オープニングマッチが終わり、正式にトーナメント一回戦の開始。前回優勝のロストヴァ・トゥルビヨンはステラ・マリスに乗って登場、「これに驕ることなく精進を重ねて参りたいと思います」とはパイロットのコメントだが、果たしてそのような殊勝な思いでいるかどうかは不明である。
対するは高速機動と高い攻撃力が売りのソニック・バイパーとネス・フェザード。試合はロストヴァ得意の中距離から開始、イルセスセレトの熱線がバイパーに命中するが、反撃のチェインガンもステラ・マリスの装甲を削る。ここで接近、ステラ・マリスはキリエで攻撃し命中、バイパーのサーペント・ソードを華麗に回避するがここでやはり使用されている新兵器、フロートマインに当たり損害を受ける。だが近接で設定された浮遊機雷から距離を取ったステラ・マリスはイルセスセレトの圧縮熱線砲を射出、二発を直撃させて一気に優位に立つと続けての砲撃による速攻でとどめ。バイパーの反撃もステラ・マリスに損害を与えたが、形勢逆転には遠い状態だった。
○ステラ・マリス(4分機動停止)ソニック・バイパー× 24vs-13
トーナメント一回戦 はやてvsドミニオンMk1
続いてはコルネリオ・スフォルツァ騎乗のはやてが登場。地元の鉄道会社がスポンサーについているらしく特急車両を模したペイントが意外に斬新に見える。対するシャル・マクニコルは新機体ドミニオンシリーズに変更、天使型の外見コンセプトは変わらず、より以上の軽量、高速機動が図られている。
両機遠隔距離から、はやてがハルコンネンを撃ち放つがこれは抜き撃ちだったためか二発とも外れ。だが距離を詰めたところでカタパルトランチャーを今度は命中、ドミニオンに大きな損害を負わせる。一方のドミニオンもゴスペル・ガンで反撃するが火力では及ばない。
だが高速機動を信条とするドミニオンはここで突撃強襲、一気に間合いを詰めると反撃能力の無い相手を十字架剣で切り刻む。まず一撃、これで損傷率を逆転してそのまま一気に一撃、二撃、三撃と連続で命中、はやての装甲を貫いた。強襲の決まったドミニオンには会心の、一瞬で逆転決着されたはやては無念の結末か。
○ドミニオンMk1(6分機動停止)はやて× 28vs-2
トーナメント一回戦 ホブゴブリンvsアークロイアル
新規参戦、腰まである長い黒髪がチャームポイントだと自認しているという簑島良子はRPGマニアな26歳、愛機の名称がホブゴブリンというのはややマニアが過ぎるかもしれない。アークロイアル騎乗のレイモンド・オースは元軍人がなかなか活躍できないでいるストライク・バックのジンクスを今度こそ破りたいところである。 両機射出、双方が希望する近接距離から戦闘開始。アークロイアルは新兵器のハンターズウェブを使用してホブゴブリンの機動力を封じ込める。攻撃回避共に動きの鈍くなった相手にサーペントソードで切りかかるが誤算だったのはホブゴブリンがもともと機動力を重視していなかったことにあった。
コンセプトに相応しい無骨な棍棒で殴り掛かるホブゴブリンとアークロイアルのサーペントソードの切り合いは双方相打ち、両者大きな損害を与えるが装甲の薄いロイアルがやや損傷大。続けて相打ち、更に相打ち、機動力に優れる筈のアークロイアルがこの攻撃を避け損ねたことで勝敗が決した。最後の相打ちでアークロイアルはそのまま機動停止。流血戦を制したホブゴブリンが準決勝進出を決めた。
○ホブゴブリン(4分機動停止)アークロイアル× 10vs0
トーナメント一回戦 ぷわぷわエターニアvsブレティンフェレルス
一回戦最後の試合はオープニングマッチを制したエターニアと機体を龍型に仕上げてきたブレティンフェレルス&テムウ・ガルナ。両チームとも機体フォルムへのこだわりが大きく、テムウ陣営は外注委託との事だが双方メカニックの技術力には定評があった。
まずは遠距離から、ブレティンフェレルスが有線砲台ストームランサーから砲撃。見事な操縦で連続回避するエターニアだが予測し辛い方向からくる攻撃に一発が着弾、損害を受ける。更に続けての砲撃、これは一発が掠ったのみだがこのまま遠距離を保たれれば不利を免れないエターニアは前進、硬質ニードルガンで攻撃しダメージを与える。しかしブレティンフェレルスはもう一度距離を離し、ストームランサーを今度は二発命中、更に続けて二発命中してペースを握る。確実に命中精度が上がっていくあたり、ブレティンフェレルスのパイロットの技倆も相当なものである。
再び接近を図ったエターニアはニードルガンで牽制、一気に間合いを詰めてヒートロッドを振るうがこれは回避される。反対にブレティンフェレルスのロトンブレスを受けるがこれは装甲で弾き殆ど損害なし。離れたところにニードルガンでダメージを与える。
ここで距離を離されて戦況は一気にブレティンフェレルスに傾く。ストームランサーが今度は三発命中、起死回生を図ってエターニアもニードルガンで反撃するが時既に遅く、とどめのランサーで装甲を貫かれた。
○ブレティンフェレルス(11分機動停止)ぷわぷわエターニア× 22vs-4
トーナメント準決勝 ステラ・マリスvsドミニオンMk1
準決勝、前回トーナメントでは丁度ロストヴァに破れているシャルにとっては雪辱戦となる一戦。双方機動性を重視し得意距離を狙うが、開始当初は遠距離からで双方が様子見となった。接近して中距離、瞬間イルセスセレトの熱線とゴスペル・ガンの砲弾が交錯する。ステラ・マリスはこれを見事に回避してドミニオンが損傷、だが続けての撃ち合いはそのドミニオンが反撃の砲火を命中させてペースを五分に取り戻す。
接近して切り合い、最初の一撃はかわされるが続けてのキリエと十字架剣は双方命中、続いては双方かわされて距離を離すと撃ち合い、イルセスセレトもゴスペル・ガンも空を切る。更にヒット&アウェイを狙い接近しての切り合いはまたも外れ、ここまで完全に互角の攻防。
中距離での撃ち合い、双方の攻撃が着弾するが火力に勝るイルセスセレトの砲火がドミニオンのバランスを僅かに崩す。この機を逃さず瞬間、接近したステラ・マリスがキリエで攻撃、損傷を与えて好機を掴むがドミニオンもペースを譲らない。返しの十字架剣を命中させて状況は五分のまま。離れて砲撃の撃ち合いは双方外れ、申し合わせたかのように接近、切り合いは相打ちとなって双方機動停止寸前。僅かに比べるならステラ・マリスが優位か。
一撃命中させれば勝敗が決する。極限の緊張感の中で双方のパイロットも死力を尽くす。中間距離となって高出力の撃ち合いは双方外れ、続けての射撃はイルセスセレトが一発、ドミニオンを捉えるがこれは回避。続けての攻撃もドミニオンは寸前でかわすと僅かな隙を狙って抜き撃ちで反撃を試みる。これがステラ・マリスを捉えて命中!だがドミニオンもイルセスセレトの直撃を受けて双方機動停止。接戦の末、奇しくも前回と同じ損傷比率による判定でステラ・マリスが決勝進出を決めた。
○ステラ・マリス(18分両機機動停止による判定)ドミニオンMk1× -2vs-7
トーナメント準決勝 ホブゴブリンvsブレティンフェレルス
決勝進出もう一方の椅子を賭けて、本職は自称漫画家だという簑島良子&ホブゴブリンとブレティンフェレルスの一戦。遠距離からの開始はストームランサーを装備するブレティンフェレルスの間合いだが、全距離対応のホブゴブリンは強力な罵声を飛ばしこれが双方命中、ランサーからの砲撃は三発命中したにも関わらず損害は互角。更に中距離、ホブゴブリンの石つぶては外れ、遠距離に戻り攻撃力に勝るホブゴブリンと砲火の数で勝るブレティンフェレルスとの勝負という形になる。この撃ち合いはやはり罵声が一撃、ランサーが三発命中するが今度のダメージはブレティンフェレルス優勢。続けての砲撃は双方外れ。
再び接近、ホブゴブリンの石つぶては外れ、近接して棍棒も外れ。ブレティンフェレルスのロトンブレスは命中するがホブゴブリンの装甲を破れず損害なし、距離を離したところで石つぶてが命中する。更に遠距離に戻ってブレティンフェレルスがストームランサーから砲撃、四門の砲撃はそれぞれ外れ、回避、装甲で弾かれて一発のみ命中。接近して石つぶては外れ、続いて切り合いは双方命中するが棍棒のダメージがロトンブレスを上回る。続けてロトンブレスはやはり装甲を破れず、ここまで展開は互角でブレティンフェレルスは手数に勝るが、装甲と火力はホブゴブリン。
ここで得意距離を取らねば不利は免れないと判断したのであろう、ブレティンフェレルスは石つぶてを回避して遠距離へ、削り合い承知の撃ち合いに出る。ホブゴブリンの罵声が命中するがストームランサーが四発全弾命中!一発のみ装甲で弾かれたが一気に大ダメージを与える事に成功。続けて打ち合い、やはり罵声の直撃を受けるがランサーを今度も三発命中させ、これでブレティンフェレルスが接戦をものにした。
○ブレティンフェレルス(14分機動停止)ホブゴブリン× 3vs-6
NAKAMOTOストライク・バック第十二回大会決勝戦
新設競技場での最初の大会、決勝戦は安定した実力が評価される両名の一戦。「中距離の女王」ことロストヴァ・トゥルビヨン騎乗のステラ・マリスと龍型機体に四門の有線砲台ストームランサーを備えたブレティンフェレルスとテムウ・ガルナ。だが戦前評では双方が相手の得意距離での反撃兵器を持っておらず、得意距離の奪い合いになると想定、ロストヴァが有利とされていた。
衆目の中、既に両機は磁力誘導されながらフィールド外周を滑っており、タイムカウントがゼロになったと同時に射出される。決勝戦が開始された。
間合いはブレティンフェレルス待望の遠距離から。有線で制御される移動砲台ストームランサーが鎌首をもたげ、四門の砲台から熱線を吐き出す様は正しく多頭の龍を思わせる。これが三発、いきなり命中してブレティンフェレルスが早々に優位に立った。続けての砲撃、更に続けての砲撃もこれは一撃が掠ったのみだがステラ・マリスには未だ反撃の手段が無い。
ここでようやく間合いを調整、イルセスセレトの圧縮された熱線が解き放たれるが抜き打ちの為に精度が甘かったか、連続射出して共に外れてしまう。絶好の機会を逃したステラ・マリスにブレティンフェレルスは再び距離を取って四方向からランサーで襲い掛かった。個別操作になる有線砲台は扱いが難しく、命中率が高いとは言えないがそれでも一発を命中させる。更に砲撃、側方からの一発がステラ・マリスを直撃して損傷大。ここまで一方的なブレティンフェレルスのペース。このまま決めるぞとばかりに攻撃態勢を取ると狙点を固定し一斉射撃、三発をステラ・マリスに命中させて相手は機動停止寸前に。とどめの砲撃は辛うじて回避したステラ・マリスがここで中間距離に持ち込み反撃、命中させてこの試合発の損傷を負わせる。
だが続けての砲撃は外れて万事休す。完全な狙撃体勢に入ったブレティンフェレルスが四方向からのストームランサー砲撃!上下左右から装甲を貫かれたステラ・マリスは完全損壊に近い状態で機動停止した。
○ブレティンフェレルス(12分機動停止)ステラ・マリス× 36vs-14
総合成績
テムウ・ガルナ ブレティンフェレルス 3戦3勝通算21戦13勝
ロストヴァ・トゥルビヨン ステラ・マリス 3戦2勝通算26戦18勝
シャル・マクニコル ドミニオンMk1 2戦1勝通算21戦11勝
静志津香 ぷわぷわエターニア 2戦1勝通算18戦10勝
簑島良子 ホブゴブリン 2戦1勝通算 4戦 2勝
レイモンド・オース アークロイアル 1戦0勝通算19戦 8勝
ネス・フェザード ソニック・バイパー 1戦0勝通算16戦 6勝
コルネリオ・スフォルツァ はやて 1戦0勝通算 8戦 2勝
新庄=ゴステロ=ジュンペイ ダルジャン 1戦0勝通算 7戦 1勝
神代進 ** 3戦2勝通算17戦10勝
山本いそべ ** 1戦0勝通算15戦11勝
アナイス・ランゲマルク ** 0戦0勝通算 2戦 0勝
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