ルスカ書簡


ウイリアム・ルスカからバーネル・ガルフ氏へ

(前文略)

 よって、バスキア政府による我が邦との軍事協定破棄の決定に従い、クオスはバスキアにある全ての軍事施設の撤廃と兵力の撤退を行う所存です。これに伴うバスキア前線の砦の撤廃を貴公に依頼しますが、もともと仮設の砦である為作業は容易でありましょう。更に上記に関連して、クオスとバスキアの国境付近、クオス領内に新規に砦を建築したいと考えております故、その為の工事を貴公にお願いできないでしょうか。仮設砦設営に用いた知識と技術を活かした、本格的な砦となります。正確な地点や設計については予定されている会談の中でお伝え致します。
 合わせて、バスキア政府に貸与していたクオス北部の開拓地を返還してもらう事になりますが、代わりに同地を貴公に貸与したいと考えています。開拓地は新設する砦によって軍事的に守られる事になり、国境周辺の安全保障においても問題はありません。更にこれまでクオスからバスキア政府に援助されていた物資、技術の全ての供与が停止されることになりますが、これらは以降、全て貴公に対して行う事によって経済、産業、貿易、技術援助を継続したいと考えます。

 無論、これらに伴うクオスからバスキア商工ギルドへに対する要望と依頼も考えていますが、それは以下の通りとなります。

・クオス北方の開拓地に新しい都市を建設し、バーネル・ガルフ氏を統治責任者、ウイリアム・ルスカを治安責任者とする。

・これまでクオスからバスキア政府に行われていた援助は当地へ全て移行される事になる。

・当地をネオバスキアシティと仮称し、クオスの自治都市としてアルカンシェルまたはファグオへと至る三角貿易を行う。

・ネオバスキアでは工業国家ファグオへの商人、職人の派遣と技術開発を推進する。

・ネオバスキアはクオスの属領として、クオスの軍事的保護を受ける権利を有する。

・ネオバスキアは独立した自治体として、バスキア政府と独自に外交折衝する権利を有する。

・ネオバスキアはクオス及びバスキアからの移民を全面的に受け入れる。

 上記により、貴公には新自治都市の自治領主の地位を受諾して頂きたいと考えています。今後貴公がバスキア人及びクオス人の移民を推進する事でネオバスキアは拡大し、クオスは当地の産業、経済、技術、貿易の成果を受ける事ができるでしょう。現在はクオス内部の混乱もあり、ネオバスキアが力を貯える事でいずれ新国家として独立できる可能性も視野に入れておりますが、より現実的なことは旧来の国家体制に縛られずに強力な通称産業体制を構築してそれを実質的に統括することが重要ではないかと考えます。貴公には、その第一人者となってもらいたい。古い遺跡の管理は老人に任せて、我々はより広い視野で物事を見るべきでしょう。

 貴公の決断を望み、伴に未来を得る事を望むものであります。

クオス神聖王国軍情報部大佐ウイリアム・ルスカ記

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