BRM掛川600km

ぷろろーぐ

行ってきました6月17.18日の掛川600km
当日のスタートがAM6:00なので前日に新幹線で掛川入りして前日泊となるのですが、何故かどのビジネスホテルも満室、運良くキャンセルが出た直後のホテルが見つかったからよかったものの結構ブルベ前から冷や汗ものでした。聞くところによると近くでB’z(これであってるかなぁ)の大きなコンサートがあるそうでかなり前からホテルは押さえられてしまっていたそうです。

PM20:00過ぎに掛川駅前に出ると露出沢山のオネ―チャンがいっぱいいて、あまりのうれしさに自転車組み立てるのも忘れてホテルまで輪行袋担いだままキョロキョロ歩いちゃいました。しかしこの軽率な行為が本番で地獄の苦しみを味わう要因になるとはオネーチャンウォッチングに夢中な本人全く気づいてはおりませんでした。

午後9時過ぎにホテルの部屋で自転車組み立てていると、テレビのニュースが「本日中川根の県道で土砂崩れがあり復旧に一週間ほど…」と流れてきました。こっちの方ってそんなに雨が降っていたんだぐらいに私は思っていたんだけれど、実はコノ県道モロコース!、このころオフィシャルは迂回コース作成に走り回っていたそうです。オフィシャルの皆様本当にありがとうございました。

さて、一夜明けてAM4:30起床、手っ取り早く身支度をしてスターと会場の『掛川グランドホテル』にAM5:00到着、スタート表にサインをしてブルベカードを受け取りホテルのオープンテラスで朝ごはん、おにぎり2個に今やジロのロングの定番プッチンプリン、そして笹子ファミマの友、『ピルクル』でお腹を満たしてスタートを待ちました。

AM5:50、オフィシャルによる装備の確認、ブルベカードにスタートサインをもらいよいよ36名がホテル玄関前を一斉にスタート…しない…誰が先頭に出るか暗黙のルールがそこにはあって、カリスマランドヌールの市川さん、もしくは泉さんがクリートをはめるまで誰も動き始めません。「それじゃ、いってきます。」泉さんの声とともに集団が動き始めます。
二番手に『ツールド信州』でおなじみの山崎さん、サイスポ7月号で北海道行きの記事が出ていたAJ埼玉軍団、市川さん、うー44と続き、後は27名が続く大集団でまずは南下して太平洋を目指します。約7km地点で先頭集団は14名ほどになり前のほう5~6人がローテーションを組んで引っ張って行きます。速度は38kmあたりですが、信号からのスタートダッシュがきつく気が抜けません。14km地点で海沿いのR150に出て浜名湖方面(西)に向かいます。この辺は九十九里のように真っ平らな道、特に波乱もなく心拍数も130拍ほどでいい感じ、でも後ろの人は結構ハアハアしていて苦しそう、先はまだ長いんだから落ち着いていこうよと言ってやりたいのですが新参者ゆえそんなこと言えるはずがありません。でも「ゆっくり行きましょう。」と言ってとっとと集団から追い出せばよかったと、後に後悔することになるとは…

ブルベな戦い

AM7:20、44.7km地点、1CPのコンビニ(サークルK 浜松中田島店)に到着。ここからが真剣勝負、先頭を行こうとするものはとっとと買い物を済ませ、即スタートして集団を小さくしようと必ずします。先頭集団に残りたければ、事前に買うものを決めといて、われ先にコンビニ店内に駆け込みレジを済ませレシートをゲットしなければいけません。(コンビニのレシートがCP通過の証明になるため必ず買い物をしなければなりません)それなのにさっきのハアハア野朗は自転車ごと私の前に倒れこみ、私がコンビニの入り口に向かう通路を閉鎖してしまったのです。おかげでコンビニに入れたのはビリから2番め、買い物を済ませて外に出たときには、市川さん、泉さん、山崎さん、蓮井さんというゴールデンなメンバーがスタートするところでした。「絶対に追いつかない…」ボトルに水を入れながら、先頭集団を追ってあせってスタートする人々を見送り、あと560km単独で走らなければならないであろう自分の不幸をかみ締めながら1CPを後にするのでした。(先頭集団に遅れること2分のスタート)

1CPから8.5kmは見通しの良い直線路が続きます。先頭集団は全く確認できませんが先頭集団に乗り遅れた方が転々と確認できます。心拍が150拍を超えないようにセーブしながら一人一人捉えて行き、60km地点、浜名湖東岸に差掛かったころには5人の集団を引っ張る形になっておりました。進路を山方向の北に変え、うなぎパイ工場を越え、やや登り勾配になってもお構いなしに先頭を引き続けると(そんなに速くはないのですが)、いつの間にか独走になっておりました。

80km付近より最初の峠の始まりです。緩やかな勾配ながら400mUP、途中で一人パスして、下ってJR飯田線を越え二度目の峠、今度は5kmで300mUP、途中の電光掲示板が『27℃』だって、まだ9時ですよ!峠直前で先頭集団にいた蓮井さんを射程に、併走しながら前にいる人数を訪ねると3人との事、「一緒に追いましょう!」と言いながら峠頂上に向けとっとと逃げちゃう。が峠直下で持病の腰痛が勃発!昨晩オネーチャンに見とれて輪行袋を担ぎ続けていた報いが…でもオネーチャンたちよかったなぁと苦痛に顔をゆがめながら3km下って4km上ったところでAM9:43、108.3km地点、2CPの鳳来町サイクリングターミナルに到着。先頭の三人は3分前に到着との事、よくがんばりました。泉さんに1CPのクイックスタートをぶつぶつ文句いったら、「ランドヌールは走るのが遅くても良いけど、買い物はすばやくなければ一人前じゃない。上○くんはまだまだだね。」だって、でもカリスマランドヌールさまが自分の名前を知っていてくださるなんて感激です!ちなみに泉さん、私はあなたより7年人生の先輩です。

2CPは有人チェックポイント、オフィシャルが到着時間をブルベカードに記入してくれます。また補給食もずらりと並び、本当にありがたく思います。自分はフルーツポンチとトマトとスイカをいただき、空になったボトル2本を満タンにしてトップに遅れること5分で単独再スタートしました。

地獄の一丁目

2CPよりしばらくは小さなアップダウンが続くR257を北上し、設楽町を越えたところからR153に移り上りが始まります。ここの峠は9kmで700mUP特に後半の勾配がきつい峠で、日陰が全くなく、前の峠から始まった腰痛の苦しみと相まって、苦しかったことしか覚えていないのですが、峠1km前で驚くべき光景が飛び込んできました。あの市川さんが押しに入っているのです。追い越す際に声をかけると右STIレバーのラチェットがばかになってしまったとのこと、スプロケットがトップしか使えないため(39×12)きつい勾配では押さざる負えない。カリスマランドヌールでさえこんな試練が待っているとはブルベ恐るべしです。

峠を越えて10kmの下り、空気が生ぬるく粘液質な感じ、下りきったところが148km地点、ほぼ1/4をこなしたことになります。まだ12時前なのでペースとしてはまあまあでしょう。ここから35kmほどアップダウンを繰り返しながら標高1200mまで上ります。腰が痛むためストレッチをかねて立ちこぎと座りこぎを繰り返し、じわじわ進む亀走行、単独走だとモチベーションがどうしても下がり心拍も150拍あたりを前後する状態です。どのくらい走ったか立ちこぎからサドルに腰を落とした瞬間、頭の隅に痛みが走りました。風邪を引いたときのような痛み、あれっと思う間もなく痛みは脈打つように酷くなるばかり。どうしたんだ、何が始まったんだ、回らぬ頭で自問自答、しばらくして自分の体の異変にやっと気がつきました。ウェアーが乾いている!汗が全く出ていない!本来異常なくらい汗っかきの私が30℃近い気温の中、上っているのに全く汗をかいていないのです。水はすでに4L以上取っているので脱水ではないでしょう。ただ直江津の時には1時間ごとに取っていた塩分やミネラルを今回は全く取っていませんでした。6月だからと言うことで気温の上昇はノーマークでした。初めて経験する熱中症?油断していた、ナメていた。後悔してもしきれません。次期に両足太ももが痙攣を始め止まる直前までスピードが落ちてしまう様に。108km〜180km区間はこれといってお店がない区間とブリーフィングで言っていましたし、万事休す、ボトルの水で体を冷やしながら前に進むしかないのでしょう。何度ももう止めようと繰り返し考えたことでしょうか、薄れる視界の隅に『五平餅』の看板が見えた時、ここで止められると本当に思いました。小さな食堂でした。五平餅とうどんとゆで卵を頼むとともに、事情を説明して外にある水道を使わせていただきました。体全身を水道で冷やし、山盛りの塩をかけたゆで卵にかぶりつく。熱々のうどんの汁が胃に染み渡ります。五平餅の味噌の香りがたまらない。食べることで癒される、自分はランドヌールより食いしん坊の方が良いやと五平餅をおかわりしに行こうと立ち上がった瞬間、背中に一筋の汗が流れました。首筋も額も汗ばんでいる。相変わらず頭痛は続いているがひょっとしたら走れるかもしれない。とりあえず今日だけは食いしん坊はお預けにしようと思いました。

6月なのに30℃

走り始めて数分で顎から汗が滴ります。目に汗が入ります。グローブの中が汗でぬるぬるになります。普段は不快に思うことが今日はみょーにうれしい。頭は痛いし、足は20分おきに痙攣を起こすけど取り合えず汗が出てれば良いかなという感じ。雰囲気松姫峠のアプローチのようなこの道、心拍は140拍前後、足が攣ったら130拍ぐらい、腰痛は相変わらずだけどそんなこと気にしてられません。180km地点にある道の駅でもう一度うどんを補給してこの区間最後の峠も気温28℃だけど無事通過、飯田市に一気に下って行きます。ここからは国道と平行して50mほど高台を走る県道、さらに広域農道を繋いで北上します。ほとんど平らなところがなくひたすら小さなアップダウンの繰り返しで、ちょうどウグイスラインのアップダウンが延々続く感じかな。信号も多く、ストップ&ゴーも加わってどんどん消耗していく感じ。心拍は相変わらず130拍前後、スピードは上り15km/h、下り50km/h、短い上りでも必ず来る痙攣が怖くて立ち漕ぎはできません。

PM3:00、225km地点、頭痛が酷くなり緊急コンビニ休憩。ただ内臓の具合はすこぶる良いので親子丼を喰らう。念のため『ピルクル』も飲んでおきます。これまで走りながらの補給はせきねっち直伝の『一口羊かん』でしたが飽きてきたのでおにぎり2個をポケットに忍ばすことに。誰か来ないか15分ほど休憩してましたが残念ながら単独で再スタートすることにしました。スタートして直ぐにオフィシャルカーが追いついてきて、助手席の女性ブルベ第一人者の白木さんが「上○さーん、いい調子ー、前、泉まで30分差―」って、白木さんも自分の名前覚えてくれている、嬉いー!僕チンがんばるー!ってがんばって立ち漕ぎすると足が攣るのでがんばれなーい…

伊那市を超え、『かんてんぱぱミュージアム』を通過、千葉市の小学生が山村留学する『大鹿村』を通ります。娘に自慢しようとキョロキョロ情報を仕入れましたが、きっと冷たい反応しかないのだろうと思うとブルーになります。辰野市に入ると日差しもだいぶ柔らかくなり、頭痛も気持ち薄れてきたように思えました。

PM17:17、269.7km地点、PC3サークルK辰野宮木店到着。山崎さんは45分前、泉さんは25分前に通過したそうです。市川さんはリアが変速できないまま無休憩で走り続けているそうです。彼は600kmをパワーバー10枚で走りきれると以前話していたので、給水さえできればPC2-3間の160km程度は休憩なしで走ってしまうのでしょう。ここでは梅のおにぎりとちくわとプリンのディナーを楽しみ、ポケットにはおにぎり1個と羊かん3本を追加しました。自分は燃費が悪いのか、食いしん坊なだけなのか…15分ほど休憩して再スタートすると後ろから「市川さん!」の声、もう着ちゃったの〜

夕暮れ、そしてカリスマたち

ここからは鴨川有料道路風の峠(300mUP)を越えて諏訪湖に出てR20を富士見まで上って一気に清水港まで南下するコース、日が暮れる前に富士見を超えて下りを楽しみたい。熱中症の症状は今のところ落ち着いているが、腰痛は厳しい状態、100回漕いだら20回立ち漕ぎをして腰を伸ばします。そんな繰り返しで何とか7時前に富士見を通過しました。明るいうちに下り始めたのはいいのですが下りの振動が容赦なく腰を痛めつけます。下りながらも立ち上がってストレッチしている状態でペースが上がりません。実はブルベ400kmの時700-20Cのタイヤを使っている参加者が多かったのを見て今回自分も使ってみた結果このざまです。体が元気な時はあまり気にならなかったことが疲労を重ねると違う印象になるようで、70km/hを超える自転車の激しい振動は疲れた体をさらに疲労させ、乳酸で硬くなった筋肉をさらに硬くしてしまいます。全く体が休まりません。700-23Cは必須!と反省しきり、いい勉強をしました。それと驚いたのはこの時間帯の虫の多さ、顔面にバチバチ当たる痛さと言えば結構なもので、メットに当たるとポコンポコン響いている、イナゴ級のなのか、あまりの凄さに口があけられませんでした。

325km地点よりR20を離れ、県道を利用して南下、南アルプス市に向います。この道地図上では立派な道でしたが走り始めると民家も街灯もない真っ暗な道、暗くなるととたんに視野が狭くなります、と言うか眠い?瞬きすると目が開かなくなります。もう60km近く走っているのでコンビニか自販機があったら休憩しようと思っているのですがそんなもの出てくる雰囲気ゼロの道、うー真剣に眠い、何か幻聴が聞こえてきた『上○くーん』だって、狭い視野なんで大きく横を振り返るとそこにはにこやかな泉さんの顔が…幻覚じゃない、でも何で泉さんがこんなとこに?「いやー、眠くって眠くって7時過ぎに眠っちゃったよー、いやーまいった、まいった。」って俺も眠らせろー!泉さんのペースはとても心地よいのだけれど、このまま付いていくと100km先の4CPまで休みなしで連れて行かれそうなので、腰痛が酷い事を理由にペースダウン、345km地点、R52に入ってすぐ南アルプス市のコンビニで休憩を取ることにしました。駐車場に腰を下ろした瞬間…寝た…数分の睡眠だけれど狭まっっていた視野が広がりました。

夜間でもR52は交通量が多く結構緊張する道、少しだけれど眠ってよかった。370km地点で富士川をはさんで対岸の県道にコースを移すと途端に車の往来がなくなりました。緊張感がなくなるととたんに眠くなります。眠くなると…何かライトが明るい…幻覚?また幻聴が『上○くん…』振り返るとふらふらというかゆらりゆらり走る市川さんがいました。なんせ使えるギヤが52×12と39×12しかないのだから足がスローモーションのように回り、踏み込んだ方にバイクが傾くものだから、必要以上にふらついて見えます。しかし彼の発するオーラは物凄いものがあり眠くて28km/hほどに落ちていたスピードも一気に33km/hまで上がっていました。10kmほど併走していると前方に尾灯の点滅が見えてきました。一気にスピードを上げて追いつくとまたしても泉さん。「また眠っちゃったー」って、お前殺す!

400km地点で日本を代表するランドヌールである市川さんと泉さんと一緒なんて夢のようなシチュエーション、身も引き締まる思いです。(でも眠い)
お二人の走りは対照的で泉さんの走りはエックン(Eさん)に近い、走っていて足が長く見えるスムーズな走り、対して市川さんの走りは秋口の門ジュさんの様、どんなギアでも一気にフルスピードに持っていけるような野性的な走りをしてます。ただお二人とも0km/hからのダッシュは強烈で付いていくには結構きついものがありました。また真っ暗な状態の下りでも全く普通に下って行ってしまう能力は強烈で、65km/hで追っかけててもあっという間に千切れてしまいました。私はブルベに参加するようになって長距離は下りの能力が重要と思うようになりました。いかにリラックスして休みながら速く下れるかによって下りきった後の走りが変わってくると思うのです。また下りで休めると自転車から降りて休む時間もおのずと少なくなってくるような気がします。

395km地点で富士川を渡ってR52に戻ります。が、橋の袂でついにダウン。10分ほど眠りました。ここから4CPまで小さな峠が3つ、トラックにおびえながら無事通過。

日が変わってAM00:11 420km地点、4CPローソン清水興津中町店到着。
ここも有人チェックポイント、おしぼりとスイカとネーブルオレンジいただきました。補給は鮭のおにぎり、漬物、ゆで卵、ピルクル、ポケットに梅のおにぎり、羊かん2本、エネルギーインゼリー1個を入れ、メインライトの電池交換をして、ウィンドブレーカーを着て30分の睡眠をむさぼることに。市川さん、泉さんは私が到着すると同時に再スタートして行きました。先頭を走っていた山崎さんは行方不明、山崎さんはオフィシャルの用意するQシートを利用せず地図を利用して走るそうでミスコースでなければよいがと皆さんちょっと心配顔。(途中で大休止に入っていた模様)

地獄の二丁目

AM00:50、4CPを出発、後続はまだ来ませんでした。走り出してからしばらくは清水市街地、信号が多くてやんなっちゃいます。車が来ない信号を守るのはブルベに参加している時だけかも知れませんが、公道を利用して遊んでいるのだから最低限のルールはやはり守らないといけないと思います(きっぱり!)。小さいころ親によく言われました「道で遊んじゃいけません!」自転車遊びしていることが親にばれたらこの年になっても怒られちゃうのかな。親に秘密の遊びに興じているのっていつまでも子供って言うことなのかなぁ…10kmほどを30分以上かけてやっと海沿いの国道R150に出られました。この辺は石垣イチゴで有名なところ、昼間なら右側に日本平が見上げられるはずですが、今は波の音だけで真っ暗な平坦な道。心拍130拍弱で30km/h前後というところをキープ、下手に心拍を上げるとまた眠くなるようです。445km過ぎからアップダウンの激しい大崩海岸沿いの道、道が海の中を走っているような区間もあり昼間だったらさぞ綺麗なところであろうことは容易に想像できます。ただこの道、地元の走り屋さんの練習場のようで海に落ちるのを怯えながらがんばって走っているようです。AM02:00に自転車で走っているやつも迷惑なことですが、中途半端なスピードの車も迷惑、車はアクセル開かないと速くは走れないよ。

465km地点でR150を離れて大井川の堤防上の道に入り北上する予定が見事にミスコース、ひとつ手前の信号で曲がってしまったようで街中にどんどん入っていってしまいました。道は本来のコースと平行しているようですが、間違った信号まで戻ったので(それがブルベのルールだから)6kmあまり余分に走ってしまいました。堤防上の道は真っ暗、頼りはセンターラインと路肩の白線だけれど、これがたびたび途切れていて道路から外れて草むらに突っ込みそうになったり、堤防から河川敷に降りてしまったり、何か踏みつけてしまったり(たぶん蛇とか蛙とか)悪戦苦闘しているところで小松平さんと白木さんの乗るオフィシャルカーが通りかかってくれました。「シークレットチェックで待ってるねー!」ってオフィシャルも徹夜なんだよなー、しかも前日迂回路作りでほとんど寝ていないだろうから二晩徹夜!走っているよりきついかも。堤防上の道から県道に出る480km地点でまたもミスコース、4kmほど余分に走ってしまいました。

県道に出ると緩やかな上りが始まります。心拍が130拍を超えると途端に眠くなります。AM3:30を過ぎると漆黒の闇が濃紺に、そして青色に変化、夜明けです。途端に朝もやに包まれてしまいました。真っ青な朝もやの中の大井川、そして延々と続く茶畑、まるで写真集の1ページのような世界、ここまで来れて、この時間にこの場所にいられて本当に良かったと心からそう思いました。490km地点の長いトンネル、これを抜ければ5CPまで25km、と思いながらトンネルの入り口を見ていました。次の瞬間トンネルに反響する車の音で我に帰った時、すでに約2kmのトンネルは終わろうとしていました。つまりトンネルの入り口から出口まで全く記憶がない状態、眠っていたのか…これ以上の走行は危険と判断、ウィンドブレーカーを着て道路脇の広場に横になることにしました。微かに大井川の流れる音と鳥のさえずりが聞こえたような気がしました…

復活のとき

目が覚めるとすっかり朝になっていました。気持ち肌寒いのでアームウォーマーをつけてスタート、直ぐに道路閉鎖の看板で、対岸に迂回させられます。こちらは国道なのだけどアップダウンが激しく道幅も普通車のすれ違いがやっと程度の細い道で、300kmの時に走った対岸の県道の方がはるかに走りやすい道でした。距離も5kmほど長くなって物理的には損した気分でしたが、やはり古い道は趣があります。家々の苔むした石垣や道しるべ、神社への石段、道にはみ出している古木、茶畑を縫うように走る道は舗装されているけれど木枯らし紋次郎気分(知ってるかな)、癒されるなぁ、でもこういう時ってえらくゆっくり走っているんですよね。メーター見ると23km/hだって。5CPまであと8kmのところで市川さん、泉さんとすれ違いました。「眠くないかいー?」「眠ーい、死ぬー」「死ぬなよー」何か元気がでました。結構なアップダウンでしたが頑張ってAM6:00 518km 5CPミニストップ中川根町店に到着。

ここではカップラーメンと梅のおにぎり、ブラックコーヒー補給、ポケットには昆布のおにぎりと羊かん2本を押し込みました。20分休憩して再スタート、530kmあたりから本格的な上り開始、松姫峠の後半戦の感じで立ち漕ぎと座り漕ぎを繰り返します。そういえば頭痛はすっかり治っている、眠気はまあまあ、腰痛はとっても、で、ここで突然思い出したことが、一週間前にポジションをかえたこと、サドルを1cm上げ、ハンドルを1cm下げ、ステムを1cm伸ばし、クリートを1cm前に移動させました。この程度の変更は大勢に影響なかったのかな、とりあえずいつも激痛で苦しむお尻は今回快調なのでその点では正解だったのかもしれません。AM7:30 536km 無事峠通過、450mUP完了、後はこぶが少しあるだけ。下りになると腰痛がつらくなりますが立ち上がってストレッチをしながら我慢のダウンヒル、3kmほど急な下りをこなすと川沿いの道に出ました。茶畑と木々の新緑、透き通った川の流れが次々視野に飛び込んでくるすばらしい道です。大井川側の緑が『静』ならこちらは『動』、わくわくするような緑の風を感じながら42km/h程でグルグル回して行きます。そういえばこの道、ブルベ300kmの時はボトルの水が完全に凍った道、あの時は何でこんな道を走らすんだと恨んだけれど、最高の道じゃん!初めから昼間走らせろよー!

すんなり終わろうよ!

570km地点に最初のこぶ、1.5kmの上り、もう全然踏めないので即39×25に入れると脇を凄い勢いで抜き去る方々が出現しました。どうもこの辺は地元の練習コースみたいで対向するロードレーサーも多くみうけられます。さすがにフレッシュな脚とはお話にならないなと思っていると、どこにでもいるんですよね集団から落ちて来る方が、39×19までシフトアップして立ち漕ぎで追い詰めて(最初からそのギヤで行けばいいと言う意見もございましょうが)峠を5m差で通過、真後ろに入ってさあ行きましょうというところで、小松平さんと白木さんの待つシークレットチェックに到着。AM08:31。「前の二人もたっぷり休んでいったよー」のお言葉に「では自分は倍休みますー」、マイボトル持参でいすに腰掛けてトマトにオレンジ、スイカ、ポケットから昆布のおにぎりも出して、試走の時の裏話や市川さんの速さの秘密、2003年PBPの話等々ブルベ談義に花を咲かせるのでした。

20分の休憩後、最後のステージへ出発。10kmほど緩い下りを走ると天竜市、ここを走るのは5回目だから後はQシートなしでも問題なくゴールにたどり着けるはず。田んぼの中の道を30km/hほどでひたすら走ります。工事中の第二東名を過ぎると残り15km、ところが突然の便意が私を襲ってきました。このまま何とかゴールまでと言う私の意志に反して便意は一気に限界点へ上り詰めてしまいました。あきらめてコンビニにお世話になることに…ただでは出れないので買ってしまったカロリーメイトゼリーをすすりながらコンビニを出ると外はザーザー降りの大雨、もうなんでもいいさ!ってそのまま走り出すとあっという間にずぶ濡れ状態、対向車の跳ねる飛沫が顔面を襲います。半べそで走っていると6kmほどで雨降りの境界線を通過、路面はドライに。信号待ちで止まっていると歩行者がどうしちゃったの顔で覗き込んできます。そりゃそうです、雨も降っていないのに体中びしょびしょで水も滴っているいい男なんですもの。

R1のバイパス大池ICまで来ると残り3km、ところがここからゴールまで30ヶ所ぐらい信号があるのですが、ことごとく引っかかって(多分20ヶ所以上)前に進めません。歩道を走る3人乗りのママチャリと同じペースで残り0.5kmのJRのアンダーパスまで来てしまいました。この区間のアベレージは間違いなく一桁でしょう。最後は常用していたギア52×21を見栄で52×17にシフトアップして無事にAM10:04 619.9km地点、掛川グランドホテルにゴールとなりました。オープンテラスで待っていてくれたAJ静岡の寺田さんの最初のお言葉は、期待通り「そんなに濡れちゃってどうしちゃったの?」でした。

熱きランドヌールの教え

『600km』、全く想像もつかない恐ろしい距離でしたが、走ってみると1km1kmの積み重ね、一踏み一踏みの積み重ねに過ぎないことが実感できました。この感覚は初めて『直江津』に完走した時にも感じたこと、走っていればいずれたどり着く距離なんです。逆を言えばどんなに速く走っていようと止まってしまえば10kmだって届かない。今回、ほんのひとときでしたが日本を代表するランドヌールの二人とご一緒して、教えていただいたことは、『走り続けること、止まらないことの重さ』だった気がします。おそらく彼らは買い物をしている時と眠る時そして最後のシークレットポイント以外止まっていることはなかった、まして腰を下ろしていることもなかったと思います。

「腰を下ろしていたら1mも前にすすまない。だったらそんなことをしないで乗りながら休憩することを考えたらいいと思う、例えば下りで休むとか…そもそも自転車降りて休むなんて本当は自転車好きじゃないんじゃない。食料の補給もそう、自分の必要とする量を知っていれば止まってだらだら食べている必要はない。そもそもコンビニの前のスペースは通路であって座って物を食べる場所ではないでしょ。」ウーム…ブルベ恐るべし!

でも、『直江津』を完走できる力があれば十分『600km』も完走できると思います。だって制限時間40時間あるんだよ。