マジシャン別Very Best集

Dai Vernon

Out of Sight Out of Mind

 

書名 Dai Vernnon's More Inner Secrets of Card Magic
著者 Lewis Ganson
発行年度 1959年

 

1999/1/11

最初に

これはヴァーノンの「モアー・インナー」に解説されています。このマジックの現象を見ることなく、解説を先に読んでしまうと、大抵、見過ごしてしまうと思います。こんなものが不思議とは思えないのですが、実際にやってみると、観客の驚きようは大変なものです。マジックと言うより、本物の読心術ではないかと思えるくらい、気味の悪さを感じるようです。

心の中で思っただけで、何の手がかりもないはずなのに、それを当てられたら確かに不思議と言うより不気味かもしれません。

マニアで、まだこれをやったことのない人はぜひ一度やってみてください。特殊な技法は不要ですので、技術的には難しくありません。5,6回練習すればできます。

 

現象

観客に一組のトランプを手渡し、よく切り混ぜてもらいます。マジシャンはそれを受け取ったら、顔を横に向け、一枚ずつ、上からトランプを観客に見せて行きます。途中、見えたトランプのなかで、適当なトランプを心の中で一枚だけ思ってもらいます。10枚程度見せ、観客にもう思ったかどうかたずねます。思ったと言ったら、マジシャンは再びトランプをよく切り混ぜてしまいます。

自分の覚えたトランプを忘れてしまう人がいるので、もう一度念のために、ざっとトランプの表を見せて行き、さっき覚えたトランプがあるかどうか確認してもらいます。観客が大丈夫と言えば、一組を裏向きのままテーブルの上に置きます。

マジシャンは裏向きのままで、一枚ずつ、トランプを取り上げ、自分の左手の上に置いて行きます。すると、何か天のお告げがあったようで、マジシャンにだけ聞こえる声がありました。「そこでストップせよ」という天の声がしたのです。観客に、先ほど心の中で思ってもらったトランプの名前を言ってもらいます。マジシャンはストップしたところのトランプを表向きにすると、まさにそれが観客の思ったトランプです。

コメント

これは観客の選び方が重要です。もし可能なら、これまで何度かマジックを見せた人の中で、なるべく人の良さそうな方を選んでください。このマジックは、もし観客がウソをつけば絶対に当たりません。観客の中には、わざとウソを言って、マジシャンを困らせてやろうと思っている人もいます。ある程度経験を積んでくると、そのような観客は雰囲気でわかります。避けた方がよいのは、目立ちたがり屋で、マジシャンに対して挑戦的な人です。このマジックに関しては、複数の人がいるのなら女性を選んだ方が確実です。

また、観客が数名いるのなら、思ってもらったら、隣の人に、こっそりそれを言ってもらうようにします。

「途中で忘れてしまったり、何かの勘違いで違うトランプを言ったりすると、絶対に当たりませんので、それを避けるために、お一人だけに、耳元で、私に聞こえないようにささやいてあげてください」 とでも説明します。この人であればウソもつかないし、途中で忘れることもないと思えば、今の部分はカットしてもかまいません。

おまけ

2,3年前、ジョン・ケネディが「マインド・パワー・デック」という商品を売り出しました。これは複数の観客を相手に、同時に思ってもらうことのできる大変優れたネタなのですが、少々難しい面もあります。実演するまでには、相当練習が必要です。うまく演じたら、最高レベルのメンタルマジックになりますが、数十回は練習が必要でしょう。

この「マインド・パワー・デック」を使って、今回の「アウト・オブ・サイト−アウト・オブ・マインド」を演じることができます。これは根本氏のアイディアですが、確かにおもしろい組み合わせです。両方ともすでに知っている方でしたらわかると思いますが、「マインド・パワー・デック」を使い、最初、観客に一枚のトランプを覚えてもらうとき、デック全体を表向きに広げて、その中で一枚、目に付いたカードを記憶してもらうということが可能になってきます。

勿論、よい点ばかりではありません。組み合わせることによって、逆に欠点も色々と出てきます。最大の欠点は毎回セットをし直す必要があるため、面倒なことでしょう。その点、オリジナルの「アウト・オブ・サイト−アウト・オブ・マインド」はいつでもどのようなトランプでもできます。

追加:現在でも入手可能な邦訳としては、『カードマジック事典』(東京堂出版)に「カードの読心術」と題して紹介されています。


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