マジシャン別Very Best集
De Kolta
Vanishing Lady
最初に"Simple is Best."を地で行くようなマジックです。誰が見てもよくわかり、あっけにとられるほど鮮やかです。
現象
舞台の上に新聞紙を数枚広げます。その上にごく普通の、一人掛け用のいすを置きます。いすの下に新聞紙を敷いたのはステージに穴があり、そこから舞台下に抜けたのではないかという観客の疑念を払拭(ふっしょく)するための演出です。
女性をいすに座らせて、頭から薄い布をかぶせます。全身をおおいますが、布は薄いため、布の下に女性がいることはシルエットからでもはっきりわかります。
ドコルタが布をサッと引っ張ると、女性は跡形もなく消えています。いすの上には女性が手に持っていたハンカチだけが残っています。
はじめてこれを見た観客は、拍手をするのも忘れるほどでした。
ひじ掛けいすはごく普通のものです。照明も明るく、舞台の中央で演じているためカーテンの後ろに逃げるということもできません。
もしこれを今テレビで見たとしたら、カメラトリックを使ったとしか思えないでしょう。文字どおり一瞬にして、本物の女性が観客の目の前で消えてしまうのですから、観客がどれほど驚いたか、今でも十分想像できます。
「消失現象」は、マジックの現象のなかでも大変基本的なものですから、様々な場面で使用されます。しかし、これほど鮮やかに本物の人間が消えるものはありません。何かの箱に人間が入り、開くと消えているといったものはよく見かけます。しかしドコルタの考案したものは、そのような箱など一切使用しません。頭から一瞬薄い布をかぶせますが、それをサッと取りのぞくだけで、つい数秒前までいすに座っていた女性が跡形もなく消えてしまっているのですから、本物の魔法としか思えないでしょう。あとに女性が手に持っていたハンカチだけが残っているというのもしゃれた演出です。
最後に一言
このマジックは現在でも十分通用しますが、実際に演じるとなると見かけ以上に準備が大変です。現象はいたってシンプルなのに、設備は思いの外、大がかりです。観客から見たところは、舞台に新聞紙を敷き、いすを置くだけなのですから、あやしい物は一切使っていません。
このマジックを調べていると、以前紹介した「消える鳥かご」もドコルタの考案であることがわかりました。ドコルタは「四つ玉のシェル」「噴水カード」「バネ花」「大きくなるダイス」他、数多くの傑作があります。特に「大きくなるダイス」はドコルタの死後、未亡人が種の公開を拒否したため、今でも謎のままです。
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