著 者：Hugard & Braue
初 版：1949年
発売元：Faber and Faber
ページ数：302ページ
分 類：Card Magic
最初に
初版は1949年です。マジックの本の中でも、とりわけ多いのがカードマジックに関するものです。この本は、カードマジックの入門書として出版されたものですが、初心者からエクスパートまで、すべてのレベルの人の役に立ちます。
内容を紹介しましょう
全体の構成は技法の紹介と、それを使った簡単なマジックが解説されています。技法そのものは今ではもっとすぐれたものもありますが、基本的な部分の解説が大変すぐれています。
例えばリフルシャッフルで、ボトムに数枚のカードがセットしてあるとき、そのセットをくずさないようにデックを二つに分けてシャッフルをするとします。左側がボトムです。このようなとき、初心者の人や、マニアでもよくやっていることですが、普通のリフルシャッフルのときと同じように、一度左右のパケットを持ち上げてから、先に左のストックの部分を数枚落として、それからシャッフルをしている人を見かけます。しかしこれは無駄な動作が多く、よくありません。
両方のパケットの全部を持ち上げるのではなく、ストックカードを含んだ数枚はテーブルから持ち上げないで残したまま、上の方の２０枚をくらいを持ち上げると、ただちにシャッフルの動作に入れます。つまり、最初からその部分は持ち上げていないので、「最初に落とす動作」が不要になります。
このようなことは、大した違いではないと思うかも知れませんが、上手な人とそうでない人の違いはこのような部分の差です。上手な人が何かの技法をやっても、何も怪しいことをやったようには見えないのは、このような部分で神経を使っているからです。
一事が万事、この調子です。最近はビデオなどのおかげで、技法そのものは簡単にコピーできるようになりましたが、「うまいけれど何かやった」と感じる人と、何もやったように見えない人の違いはこの辺りの理屈がわかっているかどうかです。
また、この本には最後の章にPlatform Tricksとして、舞台でも実演可能なトリックをいくつか紹介しています。これに解説されているものは、 Conus Ace Trick, Ladies' Looking Glass, Everywhere and Nowhere, Egyptian Pocket, Cards to the Pocket, Enlarging and Diminishing Cards, Three Cards Across, Everybody's Card 1, Everybody's Card2などですが、どれも世紀の傑作揃いです。
最後に一言
私も上記のプラットフォームトリックに解説されているもののうち、いくつかはレパートリーにしています。"Ladies' Looking Glass"（貴婦人の姿見）と題されたトリックなど、ラリー・ジェニングスがマジックキャスルでのトリネタにしていたほどです。パスを何度も使うため、これをレパートリーにするにはパスによほど自信がないとできないのですが、ジェニングスの方法では少し楽になっています。３人に２枚ずつ選んでもらい、その６枚をデックの中に差し込み、・マルティプルシフトでコントロールします。当てる部分は、最初の二人は原案道理に当てて、最後の人のカードは空中にすべてのカードをはじき飛ばした後、２枚をつかみ取るという見せ方をしています。この最後の部分はジェニングスの演出です。大変派手であると同時に、うまく演じると、本当の魔法のように見えます。ジェニングスの演技はビデオで見ることが可能です。
ロイヤルロードを読むのが面倒な方は、この最後の章に解説されているマジックの大半は日本語でも読めます。『トランプ・マジック・スペシャル』（松田道弘著 筑摩書房 1993年 1650円）に解説されています。
つまらないネタに数万円出すくらいなら、この松田さんの本一冊で、一生のレパートリーになるなトリックを数種、身につけられますからしっかり読んでください。本物のマニアなら垂涎のネタ、いえ発狂しそうなくらい恐ろしいトリックがぎっしり詰まっています。歴史上の偉大なマジシャンが生涯のレパートリーにしていたトリックばかりです。もしあなたが持っていないのでしたら、何が何でも買っておくことです。将来絶版にでもなったら、くやしい思いをしますよ。今はインターネットのおかげで、紀伊国屋や八重洲ブックセンターなどもオンラインで簡単に注文ができますので、ぜひ購入しておいてください。一年にひとつずつマスターしていっても、この本だけで１０年は楽しめます。ひとつか二つマスターするだけでも、普通のマニアからは「カードの達人」という評価を得るでしょう。冗談ではなく、本当にそうなのです。これは隠れた名著ですよ。
ロイヤルロードの紹介が、いつの間にか『トランプ・マジック・スペシャル』の紹介になりましたが、英語を読むのが苦手でなければ、ロイヤルロードもぜひ読んでみてください。今でもタネンなど、有名なマジックショップに頼めば入手可能です。
indexへ
魔法都市入口へ