マジシャン紹介

カーディーニ

Cardini(1894-1973)

 

Cardini & Swan

  2000/7/9 記


イギリス生まれのプロマジシャン。本名、リチャード・バレンタイン・ピッチフォード"Richard V. Pitchford"。プロになったのは1918年頃ですが、1926年にアメリカに渡ってからは、アメリカでプロマジシャンとして活躍しました。

現在、ステージでよく行われているマジックで、手からカードがファン(扇形)になって次々と出現するものや、火のついたタバコが捨てても捨てても出てくるものがあります。それを初めて行ったのがカーディーニです。

アメリカに渡った頃はカードとスカーフを使ったマジックが中心でした。それが評判になってくると数多くのマジシャンが真似をしたため、途中からは火のついたタバコとビリヤードボールを出現させるものに変えていました。またこのころから、舞台ではいっさい喋らず、パントマイムだけで演じるスタイルになりました。

「ステージでマジックを演じているとき、私自身は魔法など使っていないという印象を観客に与えるようにしている」

Cardini with cigarettesこれはカーディーニがマジックを見せるとき、意識していることです。つまり、不思議な現象をカーディーニ自身が起こしているのではなく、勝手に、指先に火のついたタバコやビリヤードボール、カードなどが出現し、そのことに自分も驚いているといった演出にしています。このような見せ方も画期的なことです。

この辺りの演出はフレッド・カップスなどにも受け継がれています。テクニックの面でも、カードやボール、シガレットのマニピュレーションに与えた影響ははかり知れません。

カーディーニの最も有名な一連のマジックは、妻のスワンがホテルのページボーイに扮し、朝方、足元がおぼつかない様子でカーディーニがホテルに戻ってくるところから始まるものでしょう。

昨晩パーティでもあり、その後、徹夜を酒を飲みながらカードゲームやビリヤードでもしていたに違いありません。衣装はトップハットに燕尾服、ケープをまとい、手には白い手袋とステッキ、目にはモノクル(単眼鏡)という完璧なイギリス紳士の姿ですが、酔っぱらって、ふらふらしながら現れます。

ホテルに着き、ロビーで新聞を立ち読みしていると指先にカードが現れます。それを捨てても捨てても指先にカードが現れ、その後、ビリヤードボールや火のついたタバコも現れます。最後は大きなパイプが現れ、それを口にくわえながら部屋に戻って行きます。演技時間は約10分です。

ここで出現させていますカードやビリヤードボール、タバコは決して唐突なものではなく、当時のイギリス紳士がごく普通に遊びに使っていた物ばかりです。ホテルに戻っても、さっきまで遊んでいたカードやビリヤードボールが指先に現れるのは酔っぱらって幻想を見ているからでしょうが、そのようなものが指先に現れて驚くという見せ方は観客も演者と一緒になって笑うことができます。カーディーニが魔法を使っているのではなく、一人の酔っぱらった紳士が見ている幻想を観客もみているだけですから、観客は余計な緊張を強いられることがありません。

カーディーニのこの演技は世界中でコピーされています。決して気分のよいものではなかったはずですが、当時はそのあたりのモラルが欠如していたため、苦々しく思っていたことでしょう。

 

魔法都市の住人 マジェイア


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