マジシャン紹介
Dr.Jacob Daley (1897-1954)
1999/1/20 記
ロシア生まれ、のちにニューヨークに移住。本職は整形外科医ですが、アマチュアマジシャンとしても活躍しました。特にカードマジックに堪能であり、当時一流のマジシャン、ジーン・ヒューガード、アル・ベーカー、サム・ホロウィッツ、ダイ・ヴァーノン他、多くのマジシャンと親交がありました。中でも彼と同じ医師でありアマチュアマジシャンであったドクター・ヘンリー・フォークには多大な影響を受けています。
ドクター・フォークは「ハーマン・パス(Turn Over Pass)」を得意にしており、これを使った「カラーチェンジ」を見せられたとき、ダレーはあまりにも感動して、何度も何度も繰り返してもらい、夜が更けても、フォークからそれを教えてもらえるまで彼を離さなかったそうです。後年、このハーマン・パスをもとにして創作したマジックが「カボーティング・エース」なのでしょう。
また、彼は慈善活動にも積極的に参加し、特にマジシャンが病気になったときなど、診察,治療をしてもマジシャンからは料金を取らなかったそうです。そのため、多くのマジシャンから愛され、「ドック」の尊称で呼ばれていました。
普段から研究熱心であったため、どこででもメモを取っており、マジシャンと会ったときなども、そのとき見せてもらったトリックをこまめに記録していました。彼の死後、何冊かの手帳が見つかり、そこには様々なトリックの改案や、ふと思いついたアイディア、どこかでマジックを見せたときのメモなどが記録されています。ただ、これはあくまで彼自身の備忘録として書いてあるため、他人が読んでもよくわからないところも多々あります。フランク・ガルシアなども協力して、手書きのメモをタイプに打ち直し、1974年、カール・ファルブスが"Jacob Daley's Noteooks"として出版しました。
このメモの中心になっているのは1930年代から40年代のことです。これを読みこなすには、読み手の側にも相当な知識がないと無理ですが、ある程度わかっていると、まるで謎解きのようなおもしろさがあります。読んでいると、本の上でしか知らない歴史上のマジシャンも数多く現れ、ダレーが直接会って、マジックの交換をしているそのときの様子が浮かんできます。
著作はありませんが、"JINX"や"Sphinx"などの専門誌に数多く発表されています。中でも最も有名な作品としては、遺作となった"Dr.Daley's Last Trick"でしょう。これは4枚のエースだけを使って行う交換現象です。現象がはっきりしており、私が初対面の人に見せるカードマジックとしては実演回数の最も多いものの一つです。 (Vernon Bookに解説有り)
Stars of Magicにも数点、紹介されています。
魔法都市の住人 マジェイア