マジシャン紹介
Harry Lorayne (1926-)
1999/5/24記
アメリカ、ニューヨーク在住のクロース・アップ・マジシャン、記憶術師、著述家、雑誌『アポカリプス』(Apocalypse,1978-)の発行者。
マジックの世界では昔からよく知られているマジシャンですが、一般のアメリカ人の間では、マジシャンとしてよりもむしろ記憶術師として知名度が高いでしょう。
マジック関係では数多くの著作もあり、1962年に出した"Close up Card Magic"(Tannen)はこの分野でベストセラーになりました。オリジナルマジックとして、ポール・カリーの「アウト・オブ・ジス・ワールド」を一ひねりした「アウト・オブ・ジス・ユニバース」や「ヴァーノンズ・エイセス」「エイペック・エイセス」など今では古典になっているものを含めて、数多くのカードマジックを発表しています。
また、1970年代初頭まで、一部アンダーグラウンドな世界以外では無名であったデリック・ディングルを紹介したことも功績の一つでしょう。"Dingle's Deceptions"(Haines House of Cards,1971)が出てから、一躍ディングルが世に知られるようになりました。
古くからあるマジックに新たな演出を加えるのも得意です。「マジシャン対ギャンブラー」は後年まで残ると思います。ターベル・コースの第7巻目の編集もやっています。オリジナル技法でも、「ウルトラ・ムーブ」、「ハロー・カット」などがあります。
記憶術と多少関係のあるマジックとして、"The Epitome Location"があります。これはよく切ってもらったデックから、1枚トランプを観客に抜いてもらい、1枚だけ足りない状態でデックを受け取ります。デックの表面を一度端から端まで見るだけで、何のカードが足りないかを当てるマジックです。マジックと言うより、演出次第では記憶術のようにも見えます。
余談ですが、10年ほど前、私がニューヨークのホテルに泊まっているとき、時差の関係で夜中の3時頃目が覚めました。テレビのスイッチを入れると、今では日本でもすっかりお馴染みになっている通販の宣伝をやっていました。一つの商品を30分くらいかけて、いかにその商品が優れているかを見せる番組です。洗剤、歯を白くするもの、包丁、焦げつかないフライパン、腹筋を鍛える道具などです。当時はまだ日本ではこのような番組はなかった時代ですので、物珍しさもあり、私はこの番組が大変気に入りました。翌日から連続して数日、夜中に起き出しては見ていました。そのとき、番組に突然、ハリー・ローレインがあらわれたのです。最初誰かわからず、どこかで見たおじさんだと思っていたら、宣伝し始めたのが記憶術のシステムであったので気がついた次第です。
どこかの公立小学校の校長が現れ、10歳くらいの子供達みんなに、歴代の大統領の名前を言わせていました。このシステムを使うと、暗記ものなど楽勝だということを強調しながら宣伝していました。
記憶術そのものは大変古くからあり、基本的なメソッドはどれも似ています。 確かにこれを使えば、数字でも100桁くらい簡単に記憶できます。1週間も練習すれば誰でもできます。しかし、これが実生活でどれほど役に立つかは別問題です。
記憶術をショーとして見せるのなら、1から100まで書いてある紙に適当に物の名前を書いてもらい、それを一度で全部記憶するといったことも可能です。
ビデオでは、"Harry Lorayne:Magic Classic"(Tannen,1987),"Harry Lorayne's Magic Video #2"などがある。1999年、L&Lから久しぶりに4巻セットのビデオも発売されました。
魔法都市の住人 マジェイア