マジシャン紹介
Mark Wilson(1929-)
2002/4/28 記
アメリカのプロ・ステージ・マジシャン。1950年代後半からテレビをうまく利用することで、ごく短期間に全米No.1のスーパースターになる。
1954年、ダラスのローカルテレビ局で"Time for Magic"というシリーズ番組を企画し、出演しました。これが契機となり、1960年から1965年まで、全米で放映された番組"Magic Land of Allkazam"(アラカザンの魔法)は大ヒットとなり、全米No.1の知名度を持つマジシャンになりました。この番組は毎週土曜日の朝、マーク・ウィルソンがマジックを見せると同時に、妻であり助手でもあったナニや、当時まだ10歳前後の息子グレッグも、よく番組に出演していました。多彩なゲストも招き、マジックだけにこだわらない番組であったため、これほど長く続いたのでしょう。この後も"The Magic Circus"という番組を作り、1960年代初頭から70年代後半までが最盛期といってよいでしょうが、現在でもアメリカで最もよく知られたマジシャンの一人です。
多くのマジシャン同様、マーク・ウィルソンも子供の頃からマジックに熱中していました。はじめて読んだマジックの本はサーストンの"Fifty New Card Tricks"だそうです。この頃には、小遣いのすべてがマジックの道具になっていたそうですが、マジックにのめり込んだ者がたどる道ですから珍しくもありません。特に好きだったのはカードやボールのマニピュレーション、ワイングラスの取り出しで、これらを得意芸にしているマジシャンのステージは何度も見たそうです。そのため、数十年経っても全手順を克明に覚えていると言っています。
子供の頃からマジシャンにあこがれていたものの、内情を知れば知るほど、マジシャンは経済的には恵まれていないことを知り、悩んでいました。ビジネスとして大きな成功をおさめるにはどうしたらよいのかを研究するため、大学では「広告」を専攻しながら、マジックショップで働いたり、企業とタイアップして、マジシャンを派遣する仕事なども引き受けていました。この種の経験が将来の成功につながったのでしょう。
第二次世界大戦後、すぐスターになり、その後、ダグ・ヘニング、デビッド・カッパーフィールド、ランス・バートン等、多くの若手マジシャンに影響を与えました。20世紀を代表するマジシャンを10人選べば、必ず入ると思います。
マーク・ウィルソンはテレビを利用することで有名になった、新しいタイプのマジシャンと言えるでしょう。しかし最初はテレビ局にマジックをシリーズ化した番組を作る相談に行っても色よい返事をもらえなかったそうです。プロデューサーからは、以下の3つの問題点を指摘されました。
1.テレビでマジックをやっても、視聴者はカメラトリックと思うであろう。
2.マジックは子供が対象ではないのか?視聴率を期待できない。
3.シリーズ化というが、2週目から見せるものがあるのか?当時は、多くのマジシャンが「鳩出し」や「人体切断」など、同じようなマジックばかりをやっていましたから、「2週目には何を見せるの?」といった質問が出るのもわからないでもありません。そのためプロデューサーは、何週も続くような番組が本当に作れるのか、心配したのでしょう。それが5年も続いたのですから、よほど構成などがよく考えられていたのに違いありません。
著書には、"Mark Wilson Course in Magic"(1975)やこれをコンパクトにした"Mark Wilson Cyclopedia of Magic"などがあります。ビデオ教材付きで、25種類のマジックを解説した"Video Course in Magic"もあります。1977年、1978年、1980年、1989年他、何度か来日しています。
魔法都市の住人 マジェイア