マジシャン紹介
エド・マーロー Ed Marlo (1913-1991)
1997/7/24記
Ed Marlo (1913年-1991年)本名エドワード・マルコスキー。
カードマジックの専門家。長くシカゴに住み、数多くのカードマジック、技法を考案し、発表する。
私がマジックを本格的に始めた1970年代、すでにダイ・ヴァーノンと並んで、飛び抜けた存在でした。
新しいテクニックの開発が、新しいイフェクトを産み出すと確信していたため、マジックの解説書と並行して、技術書も数多く執筆しています。特に技術書は、一般の人や初心者のことなどまったく考慮せずに書いていますので、読むこなすにはかなりの専門的知識と、技術が必要です。1950年代から60年代にかけて出された本など、当時、日本で購入すると、サラリーマンの1ヶ月分の給料に匹敵するほど高額でした。
高木重朗氏、松田道弘氏などは、そのころからこれらの本を購入しておられたのですから、驚くしかありません。後年、松田さんから見せていただく機会がありましたが、まさに「ここまでやるかー」と言いたくなるような、膨大かつ詳細な研究書です。
特に、1952年に出た"Riffle Shuffle System"など、その当時で$50.00ほどしていました。戦後すぐのことでもあり、今の感じで言えば、100万円近いものであったでしょう。これを松田道弘さんからお借りできたときは、電車の中でも、膝の上にしっかり置いて、ぜったいになくさないようにとふるえていたのが、つい昨日のことのように思い出されます。このタイプの研究書で発表されている技法やトリックの大半は、実用面から言えば、どうでもよいようなものです。しかし、このような量の研究があったからこそ、今でもカードマジックの分野で広く知られ、実際に使われている技法を生み出すことができたのでしょう。
マーローの技法で、もっとも有名な技法は、「ティルト」"Tilt"でしょう。アンビシャスカードなどには大変重宝な”あの”技法です。
ただし、このTiltに関しては、ヴァーノンも同じことを考えていたようで、一説にはヴァーノンの発明という話もあります。そのあたりの真偽は何とも言えませんが、これほど画期的で実用的な技法が、シカゴとロス(またはニューヨーク)で、同じ頃に、同時に考案されたのは不思議と言えば不思議です。
そう言えば、「微分」の発明も、ドーバー海峡をはさんで、ニュートンとライプニッツという両天才によって、イギリスとドイツでほぼ同時期に発表されたそうですから、同時期の天才同士には、何か相通じる、シンクロニシティでもあるのでしょうか。この他、よく知られた技法では「センター・リバース」、「コンビンシング・コントロール」、「プロペルド・ラッピング」「インコンプリート・フェロー」「オーラム・サトルティ」(Olramという名前は、Marloの名前を逆から綴ったもの)「ミラクルチェンジ」他多数。
代表的なトリックとしては、「エレベーターカード」「オイルアンドウォーター」「デビリッシュミラクル」など。発表しているトリックの数だけでも、数百になるでしょう。コインやカップアンドボールでも、数は少ないものの、独自の技法を開発しています。特にコインマジックでは、コインバニッシュの一種である「スパイダーバニシュ」は、マニアの人ほど、初めて見せられたら、「あっ」と驚くでしょう。
ただ、マーローは演技者としてはまったくダメです。研究者がすべて演技者としても優秀である必要はないものの、初めてマーローの実演をビデオでみたときはショックでした。
ヘタではないのですが、まるで科学者が実験室で科学の実験をやって見せてくれている感じで、とてもショーとか、エンターテインメントという面で評価できるような代物ではありません。このため、ここ10年ほど前からマジックを始めた人は、最初に、マーローのビデオを見てしまうと、なんてつまらないおじさんなんだということで、彼の膨大な著作まで、そのような評価をしてしまかもしれません。しかし、それとこれは別問題です。マーローのあの膨大な知的遺産は、古典となって、いつまでも残ることは間違いありません。
単行本以外にも、多くの雑誌、特に"New Tops", "New Phonix", "Talisman", "IBIDEM"にはトリックを数多く発表しています。
単行本は50数冊出しているので、コメントは付けずに、リストだけ紹介しておきます。
魔法都市の住人 マジェイア
- The Card Magic of Edward Marlo
- Marlo without Tears
- Flash Point
- Amazing isn't it?
- Marlo in Spades
- Card Fan Production
- Deck Deception
- Let's See the Deck
- Shoot the Work
- Off the Top
- Discoveries
- Devilish Miracles
- Control System
- Future Reverse
- Card Control System
- Marlo Meets His Match
- The Cardician
- The Magic Seven
- Coining Magic
- Peek and Shuffle Control
- Pasteboard Presto
- Revolutionary Card Technique 1 Miracle Card Change
- Revolutionary Card Technique 2 The Action Palm
- Revolutionary Card Technique 3 Fingertip Control
- Revolutionary Card Technique 4 The Side Steal
- Revolutionary Card Technique 5 The Tabled Palm
- Revolutionary Card Technique 6 Faro Shuffle
- Revolutionary Card Technique 7 Faro Note
- Revolutionary Card Technique 8 Second
- Revolutionary Card Technique 9 Cecond
- Revolutionary Card Technique 10 Bottom
- Revolutionary Card Technique 11 The Multiple Shift
- Revolutionary Card Technique 12 Card Switches
- Revolutionary Card Technique 13,14 Estimation
- Riffle Shuffle System.1,2
- Tilt
- Faro Controlled Miracles
- Patented Shuffle
- Daub
- Unlimited
- Shunk Shuffle
- Early Marlo
- Advanced Fingertip Control
- Ten Card Poker Deal
- Unexpected Card Book
- Mint 1
- Magic of Ed Marlo
- So Soon
- That It
- 35 Years Later
- Marlo Magazine 1-6
- Riffle Shuffle Finale
- Marlo's Plus Package