マジシャン紹介

チャーリー・ミラー

Charlie Miller (1909-1989)

Charlie Miller


1998/4/11 記


Charlie Miller (チャーリー・ミラー) (1909-1989年)
アメリカのクロースアップマジックの名人。ダイ・ヴァーノンや天海師とも古くからの親友。マジックの専門誌GENIIで1964年から88年まで、25年間、MAGICANAのコラムを執筆していました。まとまった本はありませんが、うすいパンフレットのようなレクチャーノートや解説書は数点出しています。

アマチュアの頃からカードマジックの名手として知られており、Hugard & Braueによるカードマジックの専門書、"Expert Card Technique"に、いくつかのオリジナルトリックが発表されています。代表作はサカートリックの傑作、「ダンバリー・デリュージョン」でしょうか。

「セカンド・ディール」や「ボトム・ディール」に代表される「フォールス・ディール」の名手としてもよく知られており、1970年に来日したときのレクチャーでは「ダブルディール」という、2枚重なったままでトランプを配る、珍しい技法まで紹介していました。
しかし、プロになってからは、レパートリーからカードマジックをほとんどカットしました。カードマジックは、ごく一部の、ビジュアルなものを除いて、ほとんどすべて自分のレパートリーから取り除いてしまったのです。理由は、一般の観客、とりわけ女性はカードマジックが好きではないことに気がついたからだそうです。

レクチャーノートはすばらしく、私自身、個人的にもっとも影響を受けたマジシャンの一人です。彼の言葉は一部、「箴言集」の中に紹介しておきましたので興味のある方はお読みください。

残念ながら、彼の演技を直接見る機会はなかったのですが、市販のビデオや1970年に来日したときのレクチャービデオで彼の演技を知ることが出来ました。

Stevensから発売されている3本のビデオは、1986年と1988年に発売されたもので、さすがに亡くなる数年前であり、年齢的にも80歳近かったため、往年の精彩はありませんが、彼が好きでよくやっていたマジックを知ることが出来る貴重なものです。

"Charlie Miller" (Stevens,1986, Vol.17)

「マイザーズミラクル」や「ライス・ボール」他を実演。特に「ライス・ボール」は、これをレパートリーにしている人はあまりいないので、参考になるでしょう。1970年にテンヨーのレクチャーでこれを紹介してから、テンヨーが発売するようになりました。今でも入手可能です。

現象は、どんぶり鉢のようなお椀を二つ使います。一方にすり切り一杯の米(彼はプラスチックの米やフワフワしたビニールを切って作った雪のようなものを使用しています)をどんぶりに入れます。もう一方のお椀で上から蓋をして、口笛を吹きながら、二つ重ねたお椀を上下に振り、上のお椀を取り除くと、下のお椀に入れた米が増え、山盛りになっています。
もう一度、米をすり切りの状態までにして、同じように上下に振ると、今度は米が消えてどんぶり一杯の水(または酒)になっています。

基本的な現象は以上のようなものですが、演出次第で見せ方はもっと工夫できるはずです。
チャーリー・ミラーは、彼の持ち味であるソフトタッチのコメディーという雰囲気に合わせて、これを演じるときは中国風の帽子かぶり、口笛を吹きながら、セリフなしで演じています。このような見せ方は、合う人にはよいでしょうが、あまり一般的ではありません。
普通は何か喋りながら演じるほうがよいと思います。ただ、どのようなストーリーにするかは一工夫いるところでしょう。

"Charlie Miller" (Stevens,1986, Vol.18)

「紙玉の復活」:破った紙を復活させ、種明かしをしながらもう一度観客をひっかける。

「マリニのエッグバッグ」:割りとあっさりした演出です。普通、このマジックは観客から一人、または二人出てきてもらい、手伝ってもらいながら演じることが多いのですが、彼は一人であっさりと演じています。

「傘とシルク」:昔、よくTVで見ました。私が小学生の頃、欲しかったのですが、テンヨーのカタログでも、一番高価なもので、小学生には手が出ない値段が付いていました。
現象は、カラフルなパラソルがあり、それを新聞紙でつつんで立てておきます。色の違うシルクを7,8枚取りだし、小さなバッグに入れます。おまじないをかけてから、バッグを開けると、シルクが消えて、パラソルの布の部分が出現します。新聞紙につつんだパラソルをぬいて、広げると、パラソルの骨の部分に、シルクが1枚ずつ結ばれています。
これをまた新聞紙で包み、同じようにすると、元のパラソルに戻ります。

「サイレント・モーラーのスリー・ボール・ルーティン」: このマジックはクラシックとしての評価も高い優れたものですが、日本ではあまり演じられていません。しかし、フレッド・カップスやヴァーノンをはじめ、海外では多くの一流マジシャンが自分のレパートリーに入れています。 今回、このビデオで彼の解説を聞いて初めて知ったことがありました。特に、最後に3つのボールが消えてしまうところでは、ビデオを見ていて驚きました。もし、このマジックをマスターしたいのであれば、今のところ、このビデオが決定版でしょう。左手に2個ボールを持ったときのポジションが、今まで私が知っていた方法と違ったため、2個同時にスティールできるのです。

"Charlie Miller and Johnny Tompson" (Stevens,1988, Vol.29)

ジョニー・トンプソン(ステージ名、グレート・トムソーニ)と対談をしながら、お互いの得意芸を見せ合うという演出になっています。"Vernon Book"に載っている「カップアンドボール」のときに使用する「チャーリー・ミラー・ムーブ」などもやっています。
「マリーニのエッグバッグ」は二人とも得意芸にしているので、それを比較することもできます。珍しいものでは、インドのカップを使ったカップアンドボール「ヒンズー・カップ」や「ヒンズー・ヤーン」を演じています。

Sun & Moon レクチャーノートは現在では入手困難だと思いますが、"AN EVENIG WITH CHARLE MILLER"は、現在も入手可能かもしれません。この中で、"Mugs and Hats"(4つの紙玉と帽子を使いながら紙玉の移動現象を見せていると、最後に、突然、帽子の中から、ビールの入ったジョッキが二つ出現します)、"The Torn Card"(ビジュアルなトランプの復活現象)、"Sun and Moon"(赤いハンカチと白いハンカチを使ったコメディ版ハンカチの復活現象。写真参照)他、傑作ぞろいのマジックを解説しています。

魔法都市の住人 マジェイア


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