わすれな草
1998年7月26日
最初に 1998年7月19日に、テンヨーからCD-ROMによるマジック、『電脳手品師:サイバーマジシャン』の「デジタル・イリュージョン編」と「デジタル・ミステリー編」(各5,800円)が発売されました。今回紹介しますこの『わすれな草』は、『電脳手品師』の初回プレス版だけに付いている「おまけ」です。同社の鈴木徹氏の作品です。 本体の『電脳手品師』は、WindowsまたはMacが動くコンピューターにCD-ROMを入れるとマジックをやってくれるソフトです。それぞれに7種類ずつマジックが入っています。コンピューターがマジックをやってくれると言っても、これを購入した人にマジックを見せてくれるのはひとつだけです。後は、購入者がコンピューターを動かすなり、観客に指示を与えて、マウスを操作してもらうと、画面上にマジシャンが現れ、マジックが始まります。なかなかよくできたソフトですが、私はこの本体のソフトより、おまけについてきた『わすれな草』」のほうが数倍楽しめました。実際、買ってから数日、『わすれな草』ばかり見せています。 現象 左の写真のような、アメリカの50セント硬貨と1ドル硬貨の中間くらいのメダルがあります。表には「わすれな草」(英語名:FORGET-ME-NOT)が刻まれています。 このメダルの裏の面には、ある模様が入っています。大変シンプルな模様ですので、観客に見せると、たいてい10秒くらいで覚えてくれます。観客が覚えたと言ったら、紙を渡して書いてもらうと、なかなか正確に再現できません。決して複雑な図形ではありません。ところが、実際に描いてもらうと、9割以上の人がおかしな図形を描くのです。この奇妙な図形が刻まれたメダルを使ってカードマジックを見せます。 まず観客に一組のトランプから1枚ってもらい、覚えてもらいます。 ここで先ほどのメダルを取りだし、この不思議な図形の話をします。この図形をよく見せて、観客が覚えたと言ったら、紙にその図形を描いてもらいます。すると上記のようなことが起こり、単純な図形なのに、正確に書けません。コインの反対側を見せると、そこには花が刻んであります。この花は「わすれな草」で、人の記憶を消してしまう作用があるのです。(笑) 私が実際にこれを演じているときは、ここで、この花の名前、「わすれな草」の名前の由来を説明することにしています。それは次のようなものです。
ざっと以上のような由来を説明します。 ここで、先ほど取ってもらったトランプの名前を言ってもらいます。たまに、そのトランプの名前まで忘れてしまう人が出てきます。でもこの場合は問題ありません。観客が覚えていても、忘れてしまってもかまわないのです。 メダルの上に白い紙を1枚かぶせて、上から鉛筆(青の色鉛筆がよい)で軽くこすっていると、ハートのマークが5つ出現してきます。そうです。観客の覚えたトランプが「ハートの5」であったので、ハートのマークが5個現れたのです。記憶は消えても、花はちゃんと覚えていてくれました。ロマンチックなマジックでしょう? コメント 実際にやってみるとわかりますが、紙の上からこすっていると、ハートのマークが5個出現したとき、観客は予想もしていなかった現象が起こるので、大変驚きます。 この「おまけ」は初回プレスだけということになっていますから、将来なくなる可能性もあります。このメダルのために、『電脳手品師』を買ってもよいくらいです。(笑) マニア用アドバイス これを見せた人から、後日、またこれをリクエストされることがあります。 「あのとき、もし8のトランプを取っていたら、8個のマークが現れるの?」と質問されることがよくあります。そのようなとき、ラリー・ジェニングスの「コイン・カット」と同じような現象をこのメダルを使ってやることにしています。 つまり、一枚のトランプを取ってもらい、覚えてから一組のトランプの中に戻します。よく切り混ぜた後、トランプをテーブルの上に置きます。 今回は2度目ですから、もう裏の模様は見せません。 メダルを左手に握って、それをテーブルのトランプに向かって投げるとメダルが消えます。トランプを中央からカットすると、このメダルが現れます。メダルの下のトランプを見てもらうと、確かに観客の覚えたトランプです。見事に、「花」が観客のトランプを見つけてきてくれました。どうです?悪くないと思いませんか? コインを投げるジェスチャーで消した方が、この花のストーリーともあっていますが、コインを左手に持って、テーブルの下からたたくと、コインがテーブルを貫通してデックの中央から出現するという見え方でもよいでしょう。スライディーニの「インプパス」 を使えば簡単にできます。 なお、「コインカット」は、テンヨーから発売されていますカードマジックの専門書、『ラリー・ジェニングスのカードマジック入門』に解説されています。 最後に 本体の『電脳手品師』が発売された直後に、数名の方から、このソフトを「製品情報」のコーナーで取り上げてほしいというメールが届きました。関心のある方が多いようですので、ひとことコメントしておきます。下の「電脳手品師について」をクリックしてください。
魔法都市の住人 マジェイア |