Misdirection for THE WEB

このマジックは、観客に悲鳴をあげさせるのが目的であるなら、これ以上のものはないでしょう。不思議というより、驚くことは間違いありません。

しかし、これをやってみたけれど、観客の手の甲にこっそりとクモを貼り付けるところがうまくできないとおっしゃる方が結構います。観客にばれないようにクモを貼り付けることができないと、このマジックはできません。この部分が、このトリックのすべてとも言ってよいので、そこがうまくできないと実演できないのです。

タネの部分にも少し触れることになりますが、「フィジカル・ミスディレクション」"Physical Misdirection"の例として、紹介しておきます。

1998/11/27


解説

まず、買ったとき添付されている粘着テープを丸めたものをクモの腹に付けて、自分の手の甲で試してみます。実際に演じるときと同じように、右手にクモをパームして、左手に張り付けてみます。送られてきたままのクモでやってみると、足の部部にとがったものが残っている場合があります。すると、その部分が針で刺したようにチクリとします。このようなものがあれば、まずその部分をハサミやナイフで切って、なめらかにしておいてください。チクっと刺さるような感覚は相手に感づかれる元になりますから、絶対、処理しておいてください。

次ぎに、実際に観客の手で行うことです。

観客に手のひらを上にして広げてもらいます。このとき大切なことは、できるだけピンと伸ばしてもらうことです。手のひらも指もしっかり伸ばしてもらいます。これはクモを張り付けた後、手のひらの力を抜いて手を丸めると、手の甲に何かが張り付いているという感覚がして、気づかれてしまうからです。手のひらがピンと伸びた状態が維持されている限り、手の甲も伸びたままになっていますから、クモが張り付いていても気づきません。ここまで理解できたら、いよいよ実際に、観客の手の甲にクモを張り付ける番です。

右手にクモをフィンガーパームしています。(粘着テープが付いたもの)

観客に左手を出してもらいます。ピンと伸ばすように頼み、マジシャンは左手で観客の手を軽く持ちます。右手も観客の手に添えますが、右手の4本の指が観客の左手の下に入り、親指だけが観客の手のひらにあるように持ちます。このときはまだクモを張り付けていません。

「手のひらをピンと伸ばすように」と言いながら、マジシャンは左手で観客の手のひらを2,3回、こすります。ちょうど手のひらの中央辺りです。このこする動作は、手のひらをピンと伸ばすという意味づけです。この動作を行うときも、右手は最初と同じように観客の手を持っていますが、術者の右手の親指が邪魔で、手のひらをこすれないと思いますので、そのときだけ右手の親指を少し右にずらせます。左手で、こする動作を行うとき、右手にフィンガーパームしているクモを張り付けます。このとき、クモがくっつく程度に押しつけるのですが、押しつけるときは、左手の人差し指で、観客の手のひらの中央当たりを少し強く押したまま、2,3センチこすります。

以上の動作は、何をしているかわかりますか?人間の感覚は、より強い刺激がある部分に意識が行き、それより弱い刺激があっても、強いほうに気を取られてしまって、弱い部分は気づかなくなっています。つまり、手のひらをこする動作で、そちらに意識を向かわせ、手の甲に意識が行かないようにしているのです。

手の甲に張り付けたら、右手は手の甲を圧迫するのはやめます。

以上で張り付けるまでのミスディレクションの解説は終わりです。

この後、4枚のカードを出してきてクモの巣の話をしてください。30秒ほどかかると思いますので、最初に手のひらをピンと伸ばしておくことをしっかり言っておかないと、途中で手のひらを曲げたりされたら、手の甲に違和感があるのを気づかれてしまいます。

追加:「エリスのリング」

マニアの方であれば、「エリスのリング」をご存じの方は大勢いらっしゃると思います。これは様々な使い方がありますが、観客の親指にリングが移動するマジックがありますね。あれで重要なことは、手のひらを垂直に立ててもらい、親指も直角になるように上を向けて立てもらいます。そこに「シェル付きリング」をはめて、上からハンカチをかぶせます 。

ハンカチの下でシェルだけを抜くのですが、親指を軽くこすりながら抜くと、親指の付け根に残っている本体のリングに気がつきません。ここでも大事なことは、手のひらと親指をしっかり伸ばしておいてもらうことです。このことを最初に念を押しておかないと、ハンカチの下で少しでも指を動かすとリングの存在に気づかれてしまいます。

 

マジェイア記


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