Bouquet of Roses
1999/12/7
ある女性の方からメールで質問されました。今までまったくマジックをやったことのない人です。別の方からも、2,3ヶ月前、同じようことを質問されました。
「近々、友人の結婚式があり、そこで花束を贈りたいのですが、マジックで本物の花束を空中からパッと取り出し、それをプレゼントできたら素敵だと思うのです。そのようなマジックはありませんか」
本物の花束を空中から出現させることができたらさぞかし素敵だと思いますが、それはちょっと無理です。バラの花を一本だけ空中から出現させるだけでもそれほど簡単ではありません。
デビッド・カッパーフィールドが演じている「フローティング・ローズ」は、最初、テイッシュペーパーで折ったバラが空中に浮かび、それに火をつけると一瞬にして燃えあがり、本物のバラに変化します。これは1本だけですが、このマジックは相当なキャリアのあるマジシャンにとっても簡単ではありません。まして今までまったくマジックをやったことのない人が、にわか仕立てでできるような代物ではありません。本物のバラを一本出現させるだけでも大変なのですから、バラの花が数十本もあるようなものはまず無理です。
先の「フローティング・ローズ」のような出現のさせ方はできないのですが、とにかく花束をマジックで取り出し、それをプレゼントするということなら、いくつかの手段は考えられます。一番簡単なのは、「箱ネタ」を使うものでしょう。そのような仕掛けのある箱も販売されています。しかし、このようなものから花束を出しても、それほどうけるとは思えません。また、マニアなら、このような箱を使うことは端からやる気もしないと思います。
ある程度マジックの心得があるのなら、「シルク・マジック」のクライマックスに、本物の花束を出現させることくらいは思いつくはずです。具体的には、「ブレンド・シルク」や「シルクの振り出し」で、5,6枚のシルクを次々と出現させた後、いったん、バラバラのシルクを束ねるためにテーブルから、紐や別のシルクを取るときスティールしてきて、花束を出現させることは可能だと思います。シルクから鳥のオームや子犬を出現させるときと同じ手法を使えば、2,30本の花束でも取り出すことができます。しかし、これも今までマジックをまったくやったことのない人に教えるには無理があります。何度か直接指導できる時間があれば可能ですが、一度会って、それで実演できるレベルまで教えるのは無理でしょう。
それで、もう少し簡単な方法を教えました。フレッド・カップスに、昔見せてもらった「ベル・トリック」がヒントになっています。これなら2時間ほど教えただけで、今までまったくマジックをやったことのない人でもできます。それと、神戸出身のプロマジシャン、旭人氏のレクチャーノートに載っていた予言のマジックもヒントになっています。この二つを組み合わせると、初心者にでもできる方法があります。私自身は数年前から何度か演じています。
ある程度マジックをやっている方であれば、今のヒントと「ベル・トリック」を読んでいただけたら方法はすぐにわかるはずです。花束は、中がどのような花なのか見えないように包んでおいてください。今ならクリスマス用品の売り場に行けばきれいな紙や、銀色の紙などもありますから、そのようなものですっぽり包んで、リボンで結んでおけばパーティ会場のような場所でも違和感はありません。それをテーブルの上のよく見えるところにおいておくか、誰かに手伝ってもらい、マジシャンの横で持ってもらってもよいでしょう。
詳しい現象は書きませんが、基本的には「ベル・トリック」と同じです。これなら技術的には何も難しいことはありません。準備にもそれほど手間もかかりません。なお、旭人氏はベルは使わず、A5サイズくらいの白い紙を何枚か用意しておき、会場で数名の人に好きな花の名前を適当に言ってもらい、それを紙に書いて行き、そのようにして作ったカードと、すでに書いてあるカードを混ぜてやっていたと思います。