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 人類が宇宙に進出するようになったこの時代でさえも、ユナイテッド・ネイションズ・フォースは旧態依然とした姿のままで存在を続けている。彼らが過去の大戦における戦勝国と新たに参加した国々の集まりである事情も今さらであり、強国が利益を求める手段としての軍隊という側面も変わらないが、それが最善でなくとも他に優れた方法がなければ案外長持ちすることはむしろ普遍的な事情であるのかもしれない。

「これ何!?ビームシールドっすか」
「プロトタイプと謳ってるが、まあオモチャだな」

 機体を見上げて頓狂な声をあげるジムの後ろで、納品リストを確認しているジェガンが無愛想に呟く。試作タイプGMイージー、一見して常の量産機と変わるところはないが古代の重装兵を思わせる盾を装備していない、と思わせて大型のビームフィールド発生装置が機体の左腕に据えつけられていた。
 昨今ではKUNUNOTEC機で導入が始まっている技術とはいえ相当なエネルギーを消費することは疑いなく、限定された競技時間内でさえジェネレータ出力を保つか怪しいことを思えばこんなものが本当に実用化できるのだろうか。そう思いながらその限定されたルールの中で配備された機体を活かす方法を考えてしまうのはジムの性格であり、テストパイロットとしての彼の力量が信頼されていることの証明だったろう。

「最近のオモチャはよほど贅沢な子供用に作られるみたいですね・・・ああいえ、もちろん乗りますよ。仕事ですから」

 そう言いながらもこの機体で有効な戦いかたをすでに考えようとはしている。スペックを確認した限りでは、三十分という限られた時間であれば多少の燃費の悪さを承知の上でジェネレータを稼働させ続けることは可能だろう。オペレータのネモに攻撃指示のサポートをさせつつ、メカニックのジェガンには毎回の稼働負荷に耐えられるだけの強化を主体にチューニングをしてもらう。戦法としては回避を放棄して攻められるだけ攻め続けることによって機体性能で圧倒を狙えばいい。
 汎用機による対戦格闘競技、ストライク・バックの特殊性は用意されたフィールドで限られた時間内に相手を撃破する、競技だからこそ存在するその競技性そのものにあった。だが制限された中で見出される技術だからこそ汎用的に活かされる例は多く、連邦軍も決して伊達や酔狂だけでこれまで多くの技術や人員をこの「オモチャづくり」に投じてきたわけではない。

「しっかし、GMというよりもRXみたいな性能ですね」

 環境耐性と適応性に優れたパイロットのジム、戦術的な要求に過不足なく応えることができるオペレータのニモ、機体の性能を要求される戦術に沿った仕様に修正してみせるメカニックのジェガン、いずれも代え難いタレントであり本来三人ともが前線配備されて不思議のない実力を備えている。
 中本工業主催、ストライク・バック競技大会は民間や公営を問わずあらゆる組織の参加が許されており、彼らは軍籍を保持したまま堂々とUNFの所属として参戦しているチームである。地球連邦軍が町工場や地方自治体の代表を相手にして最新鋭の機体と熟練したメンバーを送り込み、衛星軌道を周回する巨大な宇宙ステーションを舞台にしたロボット同士の殴り合いを演出してみせるのだ。

「そんじゃ整備お願いしますよ」
「ああ。任せときな」

 必要最小限の言葉しか行き来しないのは、性格と同時に彼らのチームとしての完成度の高さのあらわれでもある。限定された目的、共通する目的のために最高のパフォーマンスを発揮するにはチームワークなどは取れていて当たり前であった。玉石が入り交じった多様な環境だからこそ過酷である、それを承知した上で彼らは不敵に言い放つことができる。

「さて、遊びの準備でもするとしますかね」


ストライク・シリーズ一日目 = Days 1st =

 かつて「アプラシリーズ」と呼ばれた機体が大会に参戦して人々の間に物議を醸したことがある。毎回同じ機体名を冠しながら仕様も装備もコンセプトもまるで異なっており、まがまがしいとしか言いようがない印象だけは常に共通していた。パイロットを含めてチーム全員が姿を見せたことがなく、人工知能による自動操縦の可能性すら疑わせたが、SPTとは異なる独自理論によるオーバーロード機能や自己増殖する有機装甲の試験導入など、現在もどこにも採用されていないが技術の宝庫ではあったと言われている。

「今回だけだ!今回だけ貴様にすべて任せてやる!」

 激昂しながらシャル・マクニコルが叫ぶ。彼がメカニックのアマツカこと天使十真を信用したことなどこれまでただの一度もない。腕は確かだろうが狂信的な言動が目立つ上に、この男の機体に乗るようになって以降、競技後に著しく大きな疲労と消耗を覚えるようになっていた。当初は大会形式がトーナメントからリーグ制になった影響かと考えてもいたが、数日を超えて残る異質な感覚は単なる疲労だけで片づけられる問題ではない。
 そのアマツカは叩きつけられる口調にも睨みつける眼光にも動じたふうはなく、常の彼らしい熱っぽい視線とやや高めの口調を返している。到着したばかりの輸送コンテナが不快な音を立てながらゆっくりと上下に開かれた。

「喜べ、これがお前の救い主だ」

 MESSIAHと刻印された文字がシャルの目に映るが、この男の機体で注意すべきは名前や外見などではない。早々にパラメータを確認しながら奇妙に思えるのは、高出力ジェネレータのエネルギーが一部不明な用途に配分されている点である。追求したところでまともな返答が得られるとも思えないが、余剰のエネルギーが何のために使われているのか。
 いよいよリーグ戦が開幕、初日の対戦相手は古豪イハラ技研が操るジョビアルクレイドルである。メサイアのオペレータシステムは機体に内蔵されており、コクピットに搭乗したシャルは専用のパイロットスーツとヘルメットを介して人工知能からの指示を受けるが、首の後ろにある端子からも電気信号が送られる仕組みとなっている。

 まずは遠距離から、ジョビアルクレイドルが放つ光条を余裕を持って避けると得意の前進を開始する。弾幕をかいくぐりながら更に接近、カメラとモニタで中継される映像が自分の視界に思える操作感が意外に悪くない。

「取った!」

 半分無意識のまま操縦桿が動くと、空間振動による高熱を伴う腕が命中、離れたところを救済の光で確実に捕捉して追い撃ちまで成功させる。近接格闘戦の基本に則った動きはシャルの真骨頂だった。
 先行したメサイアはいったん離された距離を確実に詰めると再び接近戦に持ち込んで救済の手が直撃、これで完全に主導権を握ったと思われたが、ジョビアルクレイドルが中間距離で広げたセレストサンクションの弾幕に突っ込むかたちで被弾すると相応のダメージを受ける。

「読まれたか、いや、行けるか?」

 シャルが迷ったのは強引な前進による被弾ではない。それは彼のスタイルで当然負うべきリスクだがジョビアルクレイドルの距離を離そうとする動きも序盤に比べて改善しつつあり、先制こそしているが戦闘が長引くと厄介かもしれない。
 再び強引な前進を図るシャルに対して、ジョビアルクレイドルはタイミングを測るように一気に後退すると砲戦距離まで離脱する。タイニーシャンデリアと称する高出力の光エネルギーが飛来、シャルに幸いしているのは狙いが決して精密ではないことで、避けながら救済の光を撃ち込むが徐々に距離確保が難しくなっていることは自覚しておりこのペースではいずれ反撃の手を封じられての逆転もあり得るだろう。

 ここまでメサイアの急襲に翻弄されていたジョビアルクレイドルは15分を過ぎてようやく遠距離を確保、解放したタイニーシャンデリアの光条を連続で射出する。相変わらず砲撃の精度は甘いが開始20分を過ぎて以降は距離確保が決定的になり一方的に攻め続ける展開に。

(汝に・・・救いを・・・もたらす)
(・・・!?)

 シャルの脳内に声が聞こえた瞬間、激しい衝撃がコクピットを揺らすと続けてもう一撃、高出力のエネルギー塊が直撃して装甲に派手な光芒を散らした。損害は甚大、そのまま時間切れになるが算定された損害率でわずかにメサイアが優勢勝ちを獲得する。それが救い主の加護であったのか、今のところ救われた側に分かることは何もない。

○メサイア        02 (30分判定) ジョビアルクレイドル  00×
○清姫          02 (30分判定) トータス号湖底の夜明け 00×
○大リーグボール3号   02 (30分判定) メガロバイソン7    00×
○GMイージー      02 (12分停止) 嵬星          00×
○猫ろけっとR9R    02 (30分判定) メカタウラス拾参號改  00×
○テータ         02 (13分停止) オーガイザー      00×


ストライク・シリーズ二日目 = Days 2nd =

 初日に前回優勝者と当たった上に、内容でも圧倒されて厳しい滑り出しとなったSRI白河重工。パイロットよりもオーナーの印象が強いチームは決して珍しくないが、SRIも例外ではなくワンマンに振り回されがちな一方で、それはオーナーが積極的な助力を惜しまないという一面も備えていた。

「徳なき知育の力こそがうちの流儀じゃないのかしら」
「それただの知能犯だろ?」
「大丈夫、あたしは捕まらない」

 だが狂わせ屋女史がいつにも増して不満な様子を見せている理由は緒戦の結果でもなければ投入機体が世紀末救世主トルーパーSPT仕様でないことでもなく、初日の競技映像を見てメサイアの存在にいたく刺激を受けたからであるらしい。彼女が曰く、ダイレクトエントリーシステムで先んじられるのはSRIとしてまったくふさわしくないとのことだが略称DES、デスとかいうシステムがいったい何であるのか尋ねる気はコルネリオにはなかった。
 彼らの二日目の相手はGMイージー、高出力機を無理矢理汎用機仕様に仕上げたにも関わらず、重装歩兵としてのGMのコンセプトは失われておらず結果として高スペックにまとめることに成功した機体である。初日にSSBTを圧倒した機体性能を見ても強敵というしかないが、パイロットとしては目の前の環境で最上のパフォーマンスを発揮するしかないのだ。

「可変フォースの制御ルーチンOK、加速性能よりもこいつの反応速度が頼りか」

 今さらのように機体性能の確認をしながらカタパルトに腰を据える。セブンフォースの変形機能は状況に応じた有効装備を判断して自動制御により行われるタイプが多く、わずか数瞬で驚くほど姿を変える例も存在する。一部で「ブリキの車」と呼ばれている今大会のトータス号、湖底の夜明けではその機能を搭載武器に限定しており、派手な変形こそしないが素早い攻撃の切り替えによるサンビーム500の直撃を狙いたい。
 開始と同時に遠距離から射出される、高出力の光の棒が宇宙空間を数瞬で過ぎると派手な閃光を散らす。だが速攻から命中したと思わせた一撃はGMイージーのビームシールドに弾かれており、盾の背後から狙撃されたビームライフルを被弾して逆に先制を許してしまう。

「当たる!」

 コクピットの中で会心の表情を浮かべたのはコルネリオではなくGMイージーに搭乗するジムである。回避を捨てているからこそ装甲と盾を最大に活かさなければならず、続けて飛来したサンビーム500もビームシールドで弾いてみせるとライフルを撃ち放ってこれを直撃、一気に主導権を握る。
 慣性に従って双方の機体が流れると接近、相対距離を自動計算したトータス号から突き出ている砲身が大型単砲のサンビーム500から連装式の14年式拳銃へと姿を変えた。小ユニットで構成されたパーツが瞬時に組み変わって別の装備になる、セブンフォースシステムの賜物であり撃ち出された鉛弾がGMイージーに命中する。小型銃への切り換えで戦況の打開を図りたいトータス号だが、GMイージーは被弾を気にせずひたすら攻勢に出るとやはり連装式のバルカンを撃ち込んでくる。

「まずいね、畜生」

 珍しくコルネリオが悪態をつく。同じ磁力射出式の連装砲による攻撃だが、弾頭を撃ち出すために費やされるエネルギー出力に差がある上に盾でも装甲でも勝るGMイージーが相手では性能差が大きすぎる。相手もそれを承知の上で、ビームシールドに身を隠しながら砲撃の手をゆるめようとはせず正面からトータス号を圧倒するつもりでいることが分かる。単なる特攻や猪突猛進ではなく、それが最も有効だからその方法を選んでいるのだ。

「こいつはいいや。ビームシールドだと盾越しに相手を見やすいのは思わぬ発見っすね!」

 中間距離の優位を悟ったジムはあえて相対距離の維持に努めようとはせず、この機に更なる攻勢を強めることを選ぶ。互いに撃ち放たれるバルカンと14年式拳銃の弾が交錯するが、トータス号の銃弾は装甲と盾で確実に防がれる上に一弾の威力で劣り、一方でGMイージーの砲弾は相手の装甲を確実に削り取っていく。
 急速離脱により遠距離戦に移行したコルネリオだが時すでに遅く、GMイージーの重装甲とシールドを相手に有効打を与えることができないまま「戦艦なみ」のビームライフルに貫かれたトータス号が無念の機動停止。SRIにとっては厳しい連敗発進となるが、オーナーたる狂わせ屋女史にとっては機体スペックを見せられないままの完敗こそ不満というほかないだろう。

「やるならもっとやられなさいよ」

○メサイア        04 (20分停止) 大リーグボール3号   02×
○GMイージー      04 (10分停止) トータス号湖底の夜明け 00×
○テータ         04 (20分停止) メカタウラス拾参號改  00×
○清姫          04 (14分停止) オーガイザー      00×
○猫ろけっとR9R    04 (16分停止) 嵬星          00×
○メガロバイソン7    02 (06分停止) ジョビアルクレイドル  00×


ストライク・シリーズ三日目 = Days 3rd =

 その日、イハラ技研に異変が起きていた。千葉県柏市内に店舗を構える町のガス屋さんをチームの母体とする彼らは常磐線快速電車に揺られて隣県のスーパー銭湯まで慰安旅行に赴いていたのだが、プール熱にかかって全員がダウンしてしまうという緊急事態が発生。たまたま一人だけバイトに行ってて難を逃れた岩田くんもお店にかけられた臨時休業の看板の前で困った顔をして立ち尽くすしかなかった。さあ今回のストライクバックどうしよう。

「お困りのようだね」

 振り向いてみた背後に立っていたのは立派なツケヒゲ姿に白髪をなでつけた紳士である。手賀沼のほうから来ましたと自称する白い紳士はだいたいの事情を聞くと、それでは私が良いものを用意しましょうとだけ告げて去っていく。

「で・・・これってシャレになってねえっす」
「むーむー」

 誰にともなく呟く岩田くんの姿がそこにあった。ジョビアルクレイドルと刻銘されている機体と一緒にシロネコメール便で送られてきたWDFからの委任状に、臨時パイロットとして彼の名前が書かれていたのはまあ仕方がないだろう。メカニックとして招聘されたWDFガールズがガールズと言いながらカリフォルニア系の金髪美女が一人というのも頑張れば我慢できる。だがオペレータとして登録されたのが四歳になるオーナーのお孫さんというのは色々法的にまずいんじゃないだろうかと、むーむー懐いている子供をあやしながら岩田くんは考えるしかなかった。
 そんなわけで気がつけばコクピットにいる彼としては、初日二日目と落としてしまったここまでの戦績を気にする余裕があるはずもない。代理パイロットに余計なプレッシャーを与えないというWDF社の作戦は見事成功していたがもっと別のプレッシャーが彼を悩ませているのはいいのだろうか。

「むーむーむー」

 通信回路から流れてくる機嫌のいい声を聞きながら操作パネルに視線を移す。そこにはお子さんの様子が一目で分かるご機嫌ランプに音響や遊具などを遠隔で操作できるボタンなど、忙しい主婦が家事と子供の世話を両立させるための機能が搭載されていた。いざとなれば機体の全機能を安全に停止させてすぐにお子さんのところに行けるスリープ機能もついている。
 対戦するチーム・さんくちゅありとしては、まさか相手が子守りをしながら参戦しているとは思いもよらないがもしも知っていたらパイロットの牛山信行は黙っていなかったろう。巨体に強面の彼だがこれで子供にはめっぽう弱いのだ。

 ともあれ競技は競技として始まっている。まずは出足を止めるべく、ジョビアルクレイドルがセレストサンクションの光条を放つとこれを壁にしながら遠距離戦へと移行。技研の得意は砲戦であり、岩田くんもそれに倣うのは当然だった。
 一方で遠距離戦を嫌うメカタウラス拾参號改は落ちついた動きで飛来するタイニーシャンデリアをかわしながら接近する機会を窺う。一発、二発を避けてから飛び込むとフレイムカノンを放つが火線に身を隠してもう一歩を踏み込む前に離脱を許してしまう。相手は狙撃の腕こそいまひとつだが、距離確保には優れているらしく格闘戦を狙う牛山には厄介だった。

「厳しいタイミングだな、おい」
「信兄ぃ!さっさと行きなさいよもう」

 狭いコクピットに窮屈そうに巨体を押し込みながら呟く牛山にオペレータから叱咤の声が届く。五分以上の砲撃をすべて避けてみせるタフなテクニックは現役ゲーマーならではだが、攻撃しなければ勝ちが得られないのは当然だ。
 危険は承知、穴に入らなければ虎の子も手に入らないとばかりジョビアルクレイドルの出力が低下する一瞬に合わせて突進するメカタウラスだが、初撃と同様にセレストサンクションを合わせられて被弾、動きが止まったところにタイニーシャンデリアの追い撃ちを受けてしまう。

 状況を打破すべく再び突入を試みたメカタウラスは開始15分でようやく格闘戦への移行に成功、離脱を図る相手の懐に食らいつきながらもアームド・アームズの武装された拳で殴りかかるが有効打を与えることができない。だが離れ際の光条を今度はかいくぐりながらフレイムカノンを合わせて中間距離での反撃に成功、更に出力低下する瞬間を狙って再突入すると今度こそ重い武装装甲の拳を叩き込む。

「むー!」

 ご機嫌ななめのオペレータをあやすべく距離を一気に離したジョビアルクレイドルの砲撃がメカタウラスに直撃。削り合いを制した岩田くんがリーグ初勝利を手に入れたが、勝利を讃えるWDFガールズの3Dチアダンス映像がコクピット内に映る中でストライクバックってとても疲れるなあと思っていた。

○猫ろけっとR9R    06 (30分判定) GMイージー      04×
○テータ         06 (13分停止) 清姫          04×
○メサイア        06 (24分停止) オーガイザー      00×
○大リーグボール3号   04 (30分判定) トータス号湖底の夜明け 00×
○嵬星          02 (30分判定) メガロバイソン7    02×
○ジョビアルクレイドル  02 (12分停止) メカタウラス拾参號改  00×


ストライク・シリーズ四日目 = Days 4th =

 今日も今日とてさんくちゅあり。都市にも見える大型共同住宅コーポ・サンクチュアリを経営する巨大コンツェルンとして一般には知られているが、資金力はともかく内実といえばけっこうアットホームな私企業である。チームとしては若い女性オーナーたる天宮あてな嬢ちゃんに振り回される気のいい巨漢こと牛山信行、という印象もあるがやはり外見と内実は必ずしも一致するとは限らない。

「信兄ぃ!SANチェックに失敗してる場合じゃないでしょ!」
「ああ、窓に、窓にっ」

 税務関係の申告に追われていた挙げ句、大会申請を失念していたことに気がついたのは応募が打ち切られる直前。なんとか手続きは間に合いそうだが問題は機体設計と納品だった。過去の例ではクスノテックことTeamKKが前日納品当日組み上げという荒技をやりとげた事実もあるが、まず機体そのものが間に合わなければ話にならないのだ。

「そのときは信兄ぃに素手で戦わせるからね」

 宿題の後に祭りの準備を行うといった風情の中、昼夜兼行もう一度の奮闘を「主に牛山が」繰り広げたおかげでかろうじて機体の納品こそ間に合ったものの、調整不足は如何ともしがたく開幕三戦勝ち星なしという厳しい状況が続いている。この日の相手はやはりここまで勝ち星なしのオーガイザー、ここは先んじて勝利を上げて勢いを得たいところだろう。

「男らしくッ!いくぜ!」

 コクピットで気合いを入れているのは牛山ではなく、オーガイザーに搭乗する無頼兄・龍波である。握りしめた拳と拳で殴り合うからボクシングと言わんばかりに開始と同時に突進、ガイブレイカーで殴りかかるが牛山はこれを正面から迎えながら弾くと同時にアームド・アームズの拳を打ち込んだ。両機ともに武装装甲による格闘戦仕様の機体、だがメカタウラス拾参號改の設計コンセプトはオーガイザーとは根本的に異なる。
 反撃を意に介さず、一気呵成に攻めるオーガイザーはガイブレイカーを命中させて初撃のダメージを挽回、更に攻勢を強めるがメカタウラスはあくまで襲いかかる拳をかわして反撃を窺うスタイルを崩さない。メカニックの仔羊徳兵衛が仕込んだ欺瞞チャフを至近距離で展開しつつ身を削られるかに思えるぎりぎりの回避に専念する、大型装備を用いたテクニカルな格闘戦が彼らの狙いだった。名前に似合わない年齢不詳中性的な面持ちのメカニックが得心したように頷く。

「ようやく牛くんも慣れてきたみたいですねえ」
「あーもう、なんで駆け込みで思い切った設計にするかな」

 徳兵衛の呟きに呆れた声をあげるあてなだが、機体の設計にメカニックがこだわりを持つのは当然だろう。高出力ジェネレータはイプシロン系機体の特徴だが、それを単純に武器に費やして攻勢機に仕立てるのではなく、機能性能を重視してカウンターを狙う機体に仕上げたのは彼の発案だった。
 あてなもそれを承知した上で、悪態をつく相手を徳兵衛ではなく機体に振り回されるパイロットへ向けることにする。牛山にすればいつものちょっとした理不尽だが、そんなことよりも高スペック機の操縦桿を握らされる手にゲーマーとしての楽しみを感じていないといえばその方が嘘になった。

 開始早々の攻防の後、一方的に攻めるオーガイザーのガイブレイカーをメカタウラスはことごとく回避してみせるが序盤は反撃を行う体勢をつくることができず膠着状態が続く。10分を過ぎても15分を過ぎても状況は変わらず、攻めることを決めた者と避けることを決めた者による均衡が崩れるのは17分を過ぎてからであった。

「ぅ当たれええええ!」

 至近距離で息継ぎすら忘れさせる無呼吸連撃を繰り広げていたオーガイザーの拳がついにメカタウラスの装甲を捕らえ、これで捕まえたと思った瞬間わずかに生まれた隙をついてメカタウラスが攻勢に切り換えた。牛頭の戦士がその威容にふさわしく全速で突進すると至近距離の更に内側から右に左に武装装甲を叩き込み、オーガイザーの胴部に重い拳の跡を残す。

「信兄ぃ!ガード・パリィ・アタックよ!」
「おお!」

 攻撃と防御のせめぎ合いはその後も続き、両者ともに勢いが衰えることもなくオーガイザーも数度の攻撃を命中させるが直撃にはいたらずにタイムアップ。ただ一度の好機を確実に掴んだメカタウラスが身を削る攻防を制することに成功した。

○猫ろけっとR9R    08 (30分判定) メサイア        06×
○テータ         08 (23分停止) ジョビアルクレイドル  02×
○GMイージー      06 (26分停止) 大リーグボール3号   04×
○清姫          06 (30分判定) メガロバイソン7    02×
○嵬星          04 (30分判定) トータス号湖底の夜明け 00×
○メカタウラス拾参號改  02 (30分判定) オーガイザー      00×


ストライク・シリーズ五日目 = Days 5th =

 清和ストライクバックチーム、SSBTといえばドラ息子清和須売流の道楽に皆が振り回されている印象が強く、実際にその通りでもあるのだが当人はといえば彼なりにけっこう真面目に取り組んでいたりはする。

「どうせなら本物の人間みたいに動かしたいだろ?」
「やってみるのは良いが・・・問題は操作系だな」

 フレームの駆動系に医療用人工筋肉を応用することによってヒトと違わぬ動作レベルを可能にする。須売流のアイデアは決して悪いものではなく、メカニックを務めるアルシオーネにすれば腕を振るう機会には違いない。だがパイロットの動きを機体に100%トレースさせる訳にもいかず、ある程度は自動制御せざるを得ないがそれはそれで「人間を操作しているような」違和感を覚えさせてしまうだろう。パイロットの灯乃上むつらには余計な負荷がかかるかもしれない。

「須売流さまー、この子なんか動きがぬるぬるしますぅ」

 そうして設計された嵬星の複雑な制御系は大部分が自動で行われているが、だからこそ機体の自然な動きに人間が合わせる不自然は避けられない。違和感を軽減するため基礎データにむつら自身のパーソナルデータを反映させているのも須売流のアイデアだが半分は趣味ではないかとアルシオーネは思わなくもない。
 大会五日目、対戦相手はここまで無敗のテータ。長期戦で確実に相手を追い込んでしとめるハンターだが、守勢での粘り強さが評価されているSSBTにとって決して相性が悪い相手ではない。遠隔距離からデルタ・アタックを展開するテータに対して嵬星はゆっくりと距離を測りながら脚部ユニットの天斑駒を駆動、空間に干渉しながら座標を変更するゼロ移動は相手には瞬間移動をしたようにしか感じられない。

「捕捉はできる、しつこく距離を取れ」
「OK、シータ」

 信頼するオペレータの指示に従い、ノーティは機体を後退させるが中間距離に離れたタイミングで嵬星の左腕から土蜘蛛の粘性の液体が放たれてテータを捕らえることに成功する。

「せっかくの装備だ。うまく使えよー」
「は、はいー」

 むつら本人はただ必死なだけだろうが、彼女にはパイロットとしての臨機応変な即応力がありそれを活かすのが須売流の役目である。すぐに天斑駒で移動、出現した瞬間を狙われてフォアマシンガンの弾頭で叩かれるが危険を承知でむつらが得意な近接戦闘へと誘導する。
 天斑駒で跳ねるように舞いながら、至近距離への飛び込みを狙うがたびたび弾幕に遮られて都牟羽之太刀を振るうには到らない。それでもたびたび放たれる土蜘蛛が命中しており、展開そのものは拮抗しながらもわずかに嵬星が優位を保つ。テータにすれば戦況を挽回したい筈だが彼らにも焦りの色は見えなかった。

「慌てる時間じゃない、座標データを送り続けるぞ」

 執拗に後退、遠距離に移行した瞬間に的確にデルタ・アタックを展開するテータの動きを見て、いいオペレータを抱えているものだと須売流は感心する。シータという女性だったか、自分に替えて彼女をスカウトしたらどうだろうかとくだらないことを考えながら天斑駒の座標計算を怠らない。
 再び至近距離に出現、都牟羽之太刀がわずかにかすめるとバランスを崩したところに返しの太刀が直撃。開始16分、これで均衡が崩れると須売流は近接距離の確保に専念するように指示を伝える。長期戦、接近戦での高機動による負担はあるだろうが、それに耐えるパイロットを選んでいるつもりだった。

「我慢してくれよ。大会が終わったらみんなで温泉旅行だ!」
「こ、混浴!?・・・(´・ω・`)」

 たぶん主人の声が届いたのだろうが、動揺せず指示に従い接近戦を狙い続ける。都牟羽之太刀を振るう好機など相手は二度と与えてくれず、至近距離の攻防ですらテータの動きが勝るようになってきたが、この距離であれば単発の攻撃力は低く集中が切れなければ粘りきることができるだろう。
 残り7分で一撃、残り6分でもう一撃、残り5分でもフォアマシンガンの一撃を受けるがこれは装甲で弾いてみせる。決して高いガード率ではないが、装甲がみるみる削られていく中で嵬星の命綱はここにあった。

「あと3分!スマン、堪えてくれ!」

 それはもはや指示ではなかったが、ほぼ足が止まった状態で連続被弾、一方的に砲火にさらされるだけの展開だがタイムアップになった時点の損害率でわずかに嵬星が逃げ切りに成功。思わず指揮シートに沈んだ須売流に送られてくる、むつらからの通信が疲労困憊ながらどこか誇らしげだった。

「勝ちました、勝てましたー!」

○猫ろけっとR9R    10 (30分判定) ジョビアルクレイドル  02×
○GMイージー      08 (13分停止) オーガイザー      00×
○嵬星          06 (30分判定) テータ         08×
○大リーグボール3号   06 (30分判定) 清姫          06×
○メカタウラス拾参號改  04 (30分判定) メサイア        06×
○メガロバイソン7    04 (03分停止) トータス号湖底の夜明け 00×


ストライク・シリーズ六日目 = Days 6th =

 目下戦績低迷中の無頼兄・龍波とオーガイザー。今大会でもここまで勝ち星がない状態では、武士は食わねど高楊枝というわけにもいかない。恐姉(こわあね)こと紅刃も最初のうちは笑ってさっくり折檻をしてくれていたが、最近では笑いもせず「かわいそうだけど明日にはお肉屋さんの店先に並ぶ運命なのね」という冷めた目で見るようになってしまった。

「バット!バトル・イズ・ザ・ガイ!」

 それでも男らしく戦うべきだという彼の信念を英語で語ってみる。今大会、無頼兄は彼が常々頼ってきた重装甲「魂鋼」を外しており、頼れる相棒を抜きにして己の身を危険に晒すことで新たな男を発見する、実際は大型兵器による中距離制圧テストを主張した姉の意見だが男は些細なことを気にしない。
 一方、テスト仕様ということではメガロバイソンプロジェクトも同様である。位相反撃システムによる100%反撃が実戦でも有効か。装備が大型になればバイソン得意のフォロー攻撃を行う余地がなくなる、その穴を埋める効果が期待できるのか。

「遠距離での完全反撃は確かに強力ですが、近接格闘専門で来る相手はそもそも遠距離砲撃をしてこないんですよね」

 ジアニ・メージの主張はごく簡潔に事態の本質を突いている。今大会ここまでの黒星はすべて近接戦闘で不利を強いられたことに起因しており、メガロバイソンの通常設定であれば近接戦にも相応に対応はできた筈だった。とはいえテスト機でも相応の戦績を残さなければ予算委員会から突き上げを食らうことは必至であり、それがなくとも負けてもよい理由がある筈もない。

「バイソンビジョン、展開します」

 ゲルフ・ドックの声と同時にバイソン7の姿を精巧にトレスした立体映像群が展開された。各々の映像がアウトレンジブラスターと反射衛星の座標に重ねられており、攻撃と防御の機能を備えた六機の分身が現れる。TeamKKでも試験導入を開始している単騎による編隊攻撃システム、これが実戦配備されればドッグ・ファイトの様相は大きく変わることになるだろう。複数のバイソン7から放たれる複数のアウトレンジブラスターが襲いかかり、オーガイザーも懸命に回避するが一撃が着弾、すかさず放たれた二撃目も連続命中してメガロバイソンが先攻してペースを握る。

「効かねェ!」

 男の装甲、魂鋼ならばそう言うだろうと無頼兄が代弁しつつ被弾覚悟で前進するが、トライバルカンの弾幕を正面から受けるとわずか3分で損害率が50%を超える。満身創痍でようやく接近、ここまでは一方的な展開だが格闘戦を嫌ったバイソン7が後退を図るところに試作兵器ガイ・チェインシューターが放たれた。砲弾の雨をかいくぐる鎖の刃が命中、ダメージはそれほどではないが今度こそ反撃の恐れがない至近距離への移行に成功する。

「いや、反撃ありますけど構わずやりんさい」

 近距離での自動反撃も100%ではないが発動する、そんなことも忘れている弟の単純さにオペレータブースにいる紅刃は嘆息するがそれでパイロットへの指示が変わるわけでもない。バイソンビジョンには砲撃と位相反撃双方の機能が備えられており、つまりこの状況でオーガイザーは削り合いを挑まなければならないが他に手段がなければ彼らに選択の余地はなかった。
 常は無謀な弟を力ずくでたしなめるのが紅刃の役割だが、それが有効ならば強引な攻勢を避ける理由はない。ジェネレータ出力を安定させて長時間稼働を可能にした今大会の仕様は強引な削り合いでも充分に活きる筈である。

「本当は一昨日のさんくちゅありさんみたいに懐に食らいついて避けるのがええんやけどねえ」
「ガァイ!ガァイ・ガイ!ブレイカァー!」

 まるで聞いちゃいねえ無頼兄がラッシュを仕掛けるが、ノーガードで殴りかかる迫力には確かに見るべきものがある。バイソンビジョンからの位相反撃を受けながらも、システムの反応を無頼兄の勢いが上回れば逆転は不可能ではなくあとはもう賭けるしかないだろう。

「グアアアアアイ・ブレイクアアアアア!」
「あーもう下品ですえ」

 右の拳で殴った次の瞬間に左の拳が殴る、その動きを追尾したバイソン7から迎撃の砲火を受けるがそのときにはもう一度右の拳がうなりを上げている。鬼気迫るラッシュで自ら装甲を穴だらけにしながらも最後は右のアッパー・カット気味の一撃でバイソン7が機動停止、いかにも無頼兄らしい試合を制したオーガイザーの姿が煙の中から浮かび上がると、音が響かない筈の宙空に勝者を讃える歓声がこだました。

○GMイージー      10 (25分停止) メカタウラス拾参號改  04×
○テータ         10 (19分停止) トータス号湖底の夜明け 00×
○大リーグボール3号   08 (30分判定) 猫ろけっとR9R    10×
○メサイア        08 (15分判定) 嵬星          06×
○清姫          08 (19分停止) ジョビアルクレイドル  02×
○オーガイザー      02 (20分停止) メガロバイソン7    04×


ストライク・シリーズ七日目 = Days 7th =

 北九州漁業協同組合、地方参戦ながら第二回大会でも優勝を果たしている強豪であり、圧倒的な攻撃力を見せるパイロット神代進の技量とお茶目なオペレータとして知られるサイボーグイルカフリッパーの印象が強いチームだが、関係者に聞いてみれば彼らを支えているのはメカニックを務める伝説の船大工源さんの腕だと皆が口を揃えて言うだろう。
「頼まれた通りできたぜ」

 ノコギリ一本カンナ一つで何でも作ってやると言わんばかりの職人の手で生み出された機体は大リーグボール3号、これまで北九州漁協の定番と思われていた超攻勢機のイメージを平然と覆す超高機動機での設定、それでいてこのタイプの先駆者たるTeamKKとは異なる仕様にした上でここまで上位の戦績を維持していることに彼らの実力を見せつけられる。相手はその上位戦線で首位の一角を占めるテータ、難敵だからこそ星を奪っておきたい相手だろう。
 遠距離から互いに交わされる砲撃を合図にしてリーグ後半戦が開幕。スタンダードなスタイルでデルタ・アタックの攻勢ユニットを宙空に展開するテータに対して、大リーグボールは超高機動から放られる超スローボールがまるで意思を持つ生き物のように襲いかかって相手のセンサーを攪乱する。

「ゆれる魔球さ」
「竹やぶ特訓の成果キュね」

 単発の威力こそ高くはないが、不規則な軌跡を描いて襲いかかる魔球が次々とテータの装甲に着弾する。一方で反撃のデルタ・アタックも確実に大リーグボールに命中しており、ファースト・コンタクトを終えての状況は五分に近いが撃ち合いを望まないテータにとっては満足のいく立ち上がりとは言いがたいだろう。
 挨拶代わりの砲撃が繰り返されたところで5分過ぎ、大リーグボール3号が相対距離を詰めるべくゆっくりとした前進を開始する。迎撃に放たれるガトリングガンを高速機動でかわしつつ謎の下手投げからの魔球で牽制、更に接近したところをフォアマシンガンの砲火を浴びながらも血まみれの左腕を叩きつけた。双方の損害率だけを比べるなら戦況は互角、だが通信回路で不安と不満を現したのはテータをオペレーションするシータの声である。

「膠着状態に見せて消耗戦に引きずり込まれているぞ。なんとか修正できないのか」
「やってはいるけど、砲撃さえ捕捉できれば・・・」

 シータの精密なオペレーションは他チームからも高い評価を得ている一方で、即応性には決して優れているとはいえず削り合いは得意でない。双方が連続で被弾する状況で気がつけば開始10分に満たない時点で互いの損害率は五割に達しつつあり、このまま推移すれば本来長期戦で相手の攻守を封じ込めるテータのスタイルを活かすことは難しくなってくるだろう。パイロットのノーティもその危険を充分に理解しているが、緩急の激しい大リーグボールの攻撃を捕らえることは容易ではない。
 再び距離を離されると撃ち放たれたゆれる魔球が予測しがたい方向から襲いかかる。テータは砲撃と反撃を効果的に織りまぜながら相手に損害を強いる一方で、相手の砲撃を避けきることができず互いに装甲を削られていく展開は変わらない。圧倒的な破壊力も堅牢な装甲もない超高機動機、だが執拗な攻勢はまさしく「要塞」と謳われる神代進の戦法である。

「やれやれ、私も進歩がないものだ」
「海から陸に上がるだけが進化ではないキュよ」

 意見とも感想ともつかないフリッパーの言葉に苦笑しながら意識を現実へと戻す。ここまでテータが望む展開にはなっていないというだけで決して大リーグボール優位ではなく、あくまで戦況は五分であり一瞬の隙が命取りになりかねない。
 現状打破を狙うテータは前進する大リーグボールが中間距離に入った一瞬を狙いガトリングガンを撃ち放つ。これを複数被弾した大リーグボール3号だがコクピットの神代は続けて襲いかかる砲撃を避けようとも強引な接近戦を挑もうともせず、その場に留まると謎の下手投げからの魔球で反撃した。狙撃状態で反応が遅れたテータはこの攻撃を回避することができず砲弾が次々と命中する。

「若いとは時に残酷だな」
「キュ」

 すかさず至近距離まで飛び込むと血まみれの左腕で攻撃、これを嫌ったテータが急速後退した瞬間を狙って再び謎の下手投げから放られた魔球が着弾してこれで機動停止。相手の動きに反応して速攻をしかけた大リーグボール3号がベテランの妙味を見せて一気に勝負を決めてみせた。

○猫ろけっとR9R    12 (11分停止) メガロバイソン7    04×
○GMイージー      12 (13分停止) ジョビアルクレイドル  02×
○大リーグボール3号   10 (12分停止) テータ         10×
○清姫          10 (10分停止) メサイア        08×
○メカタウラス拾参號改  06 (30分判定) 嵬星          06×
○トータス号湖底の夜明け 02 (18分停止) オーガイザー      02×


ストライク・シリーズ八日目 = Days 8th =

 複雑なコンピュータと高性能の機械が多くの仕事をこなすようになってからも、メカニックには昔気質の職人肌の人物が多く人任せにもせず自分の手で最新鋭の機体を組み上げてしまう例は珍しくない。メガロバイソンプロジェクトであればまさしくザム・ドックがそのような人物であり、一見して自動車整備の技師に思えるツナギ姿の男が宇宙空間を駆ける人型汎用機の開発と整備を一手に任されているのだ。

「何も難しく考えるこたあない。機械が機械の、メカニックがメカニックの仕事をするならお前さんの仕事も決まっている」
「爺・・・いや、ザムさん。ありがとう」

 思わず言いかけた言葉を止める。ゲルフ・ドックがザムの孫であるのは今更だが、今大会の不振を受けてパイロットがすべきは祖父に泣きつくことではない。テスト搭載したシステムの隙を突かれて星を稼げていない事情があるとはいえ、無為なまま勝てなくてもいいという理由にはならない。そして自らが最善を尽くすからこそ、解決できない問題であれば仲間に頼ることができるのである。

「メージさん。距離確保が難しいバイソン7で近接戦に有効な戦法ってありますか?」
「何を言ってるんですか。その前にヤッちゃうんですよ!」

 ちょっと下品な表現と仕草だがジアニ・メージの主張はストレートで裏がない。ようは場当たり的な対応でゲルフ得意のスナイピングを捨てるのではなく、長所を最大限に活かすスタイルを忘れるなということだろう。
 この日の対戦相手はここまで首位を走るGMイージー。ビームフィールドを備えた高出力重装甲機だが、ジェネレータへの不安があるためここまで短期勝負で星を稼いでいる機体でありやはり短期決戦を得意とするバイソン7には決して相性の悪い相手ではない。思い切った削り合いになればゲルフの正確な狙撃が活きてくるが、守備力に優れるジムに対してそれをしのぐ攻撃力を見せられるかどうかがカギになるだろう。

 中間距離の撃ち合いから開始、トライバルカンとバルカンが遠慮なく撃ち放たれて互いの装甲を派手に叩いた。双方の意思が短期決戦にあることを悟るとゲルフは先んじて展開したバイソンビジョンにより更なる砲撃を図り、GMイージーはシールドの背後に身を隠す常のスタイルをとりつつ高出力ビームライフルの砲口をバイソン7に向ける。
 煙と閃光が派手に舞うファースト・コンタクトを経て先に動いたのはメガロバイソン7であり、タイミングを見て巧みに後退、得意の遠距離へと移行する。

「さあ、ヤッちゃいましょう!」
「了解!」

 ゲルフはスナイピングの名手ではあるが、一方で精密な攻防ができるほど器用なパイロットだとは自分で思っていない。オペレータのメージはそれを見越して勢いに任せた攻勢を彼に要求するし、メカニックのザムは派手な撃ち合いに耐えられるだけの機体を彼に用意している。ならば彼らの期待に自分らしく応えるのがパイロットとしての仕事だろう。
 遠距離で展開された三体のバイソン7が縦横に動きながらアウトレンジブラスターを発射、編隊としての動きは決して複雑ではないがそれぞれの火閃が正確にGMイージーを捕捉して襲いかかる。一弾をシールドで受けたGMがすかさずビームライフルで反撃、この動きに反応した残り三体のバイソン7が正確極まる砲火を走らせる。削られるのは覚悟、弾かれるのも承知でそれに勝る火力を見せるのがゲルフ・ドックの戦法だ。

「畜生!アリかよこんなの」

 GMイージーのコクピットでジムが悪態をつく。再び撃ち合いになり襲いかかる散髪の砲火を一弾はガード、一弾は回避してもう一撃は命中、これに位相攻撃を返されるのだから重装甲のGMとはいえあまりにも分が悪い。
 わずか3分間の攻防でメガロバイソン7に大きな損害を与えたが、それ以上の反撃を被ったGMイージーは中間距離へ移行して戦況を変えるべく図るがこの距離で正面からバルカンの撃ち合いを挑まれる。メガロバイソン7は敢えて後退を図るのではなく、ひたすら砲撃を試みながら自然な動きで相対距離が離れる瞬間を待つ。

「分かってますね!」
「攻撃は最大の攻撃!」
「ゴー!」

 フォーメーションを組んだバイソンビジョンの編隊から放たれるアウトレンジブラスターが襲来、シールドで防ぎながら反撃するGMイージーの座標を捕らえた三機のバイソンビジョンも位相攻撃、完璧なコンビネーションで圧倒するメガロバイソン7の火閃の雨がさしものGMイージーを炎に包むとわずか5分の攻防で決着。彼ららしい豪快な勝利を手に入れた。

○猫ろけっとR9R    14 (07分停止) オーガイザー      02×
○テータ         12 (19分停止) メサイア        08×
○清姫          12 (30分判定) 嵬星          06×
○メカタウラス拾参號改  08 (30分判定) 大リーグボール3号   10×
○メガロバイソン7    06 (05分停止) GMイージー      12×
○トータス号湖底の夜明け 04 (18分停止) ジョビアルクレイドル  02×


ストライク・シリーズ九日目 = Days 9th =

 ストライク・バックではパイロットとオペレータによる連携が競技上の優位に大きく関わる例が少なくないが、メカニックの存在は影になりがちな一方で彼らの実力が安定して発揮できるかどうかに大きく関わっている。優れたオペレータは機体やパイロットの能力を増すことができるが、優れたメカニックを擁するチームは幾度の競技に臨んでも常に最高の能力を発揮することができるものだ。

「かようにメカニックとは地味だが重要な仕事というわけだ」
「いつも感謝してますよ」

 自ら堂々と言ってのけるハイナーの傲岸さに苦笑しながら、冗談めいて返しているノーティの言葉にも嘘はない。いささか不埒な言動が人の眉をひそめさせることはあるが、この壮年の紳士めいた男が調整した機体は百回乗れば百回、千回乗れば千回万全の状態を発揮してわずかの狂いも生じなかった。女はときに激しく扱うが機械には丁寧に触れる、という余計な一言に通りがかったシータが不快そうな顔をするのもいつものことである。

「お前さんもたまには激しく扱ってあげたらどうかね」
「いや、それは・・・」

 さて機体のことかあるいは別のことを指しているのか、判断がつかないふりをしたノーティは目の前の対戦に意識を切り換えることにする。この日は首位を走るTeamKKとの直接対決であり、リーグ突破には勝利が欠かせない一戦だった。超高機動機たる猫ろけっとはあらゆる攻撃を回避しながら罠のように配備される散発的な攻撃に相手を誘い込む、そのやりくちに彼らの真骨頂がある。どれほど一方的に攻め込んでもただ一度のミスに戦況を覆されてしまう、白刃の綱渡りにも似た対応が求められるがそれこそがノーティらの得意でもあった。
 対戦は光学欺瞞ポッドまるちぽーを展開した猫ろけっとが、距離確保を図るテータの死角をついて開幕。ファースト・コンタクトを捨てたテータは被弾しながら遠距離に移行してデルタ・アタックを撃ち込み双方が立ち上がりの急襲を成功させる。

「リスクを許容できる相手じゃない、もっと正確に動け!」

 オペレータのシータが指示を送る。距離を固定して膠着状態に持ち込みながら相手を確実に捕捉するのが彼ら本来のスタイルであり、散発的な猫ろけっとの攻撃に対処できれば時を置くごとに座標計算は正確になって回避は的確に攻撃は緻密になっていく。
 そのまま砲戦を維持、複数弾放たれる砲火はごく当然のように猫ろけっとにかわされて宙空へと吸い込まれるが、これを繰り返しながら両機の相対位置を測り、不規則なはずの行動曲線を予測するのが「シータ・プログラム」である。相手にすれば避けるたびに難易度が上がるゲームに似て厄介なことこの上ない。

「UZEEEEEE!」

 猫ろけっとのコクピットでは、山本いそべが罵りの声を上げながらも指先は止まることがなく操縦パッドを動かし続けていた。自分を本気で殺しにくる相手にこそゲームの醍醐味を感じるとはいえ、それで感心するとか敬意を表するというつもりにはなかなかなれないものだ。
 開始7分、中間距離に流れた瞬間を狙われてガトリングガンの弾頭が猫ろけっとを捕らえる。直撃こそしなかったが、膠着状態で被弾すること自体がいそべにとってありがたい状況とは言いがたい。膠着状態で被弾させられるのではなく、被弾させることが彼らのスタイルなのだから。

「相対座標捕捉、補正データから目を離すな」
「了解、シータ」

 テータのコクピットで操縦桿を握っている、ノーティ自体はいわゆる天才型のパイロットではないが質実で安定した手腕を持っている。その彼がハイナーの機体に乗れば決して崩れることがなく、シータのオペレーションに従えば確実に相手を追い詰めることができる。
 距離を移行しながらの砲戦が続き、猫ろけっとは確実に回避を続けるが状況を打破する一撃を狙うことができずにいる。一方でテータは膠着状態を維持しながら時折繰り出される攻撃が相手の機先を制して命中、直撃せずとも損害を累積させてわずかな優位を保つことに成功していた。

「ハメられてもハメないぞー!」

 こうなると装甲でも攻撃力でも圧倒的に劣る猫ろけっとは不利を免れない。散発的な反撃こそ試みるが主導権を奪うには遠く逆に修正を図るわずかな隙を突かれて被弾、やはり致命的な一撃ではないがこの展開自体が猫ろけっとには致命的なものである。
 急速移動、急速旋回、攻撃を繰り返しながらも相手のセンサーを振り切ることができず、そのまま30分が経過してタイムリミット。猫ろけっとR9Rの独走を止めたテータが再び首位戦線に躍り出た。

○テータ         14 (30分判定) 猫ろけっとR9R    14×
○GMイージー      14 (10分停止) 清姫          12×
○メカタウラス拾参號改  10 (30分判定) メガロバイソン7    06×
○嵬星          08 (30分判定) 大リーグボール3号   10×
○トータス号湖底の夜明け 06 (13分停止) メサイア        08×
○ジョビアルクレイドル  04 (10分停止) オーガイザー      02×


ストライク・シリーズ十日目 = Days 10th =

 ロストヴァ・トゥルビヨンの機嫌が悪い理由は成績不振のためではない。現在リーグ十日目にして首位戦線に食らいついているし逆転の可能性も充分残されている。最終戦でTeamKKとの対戦が予定されているのも不愉快ではあるが遠慮なくコロすことができようというものだ。
 気まぐれなネスが姿を見せないことも彼女の不機嫌の理由ではなく、軍部と関係の切れない彼がまた「公務」に呼ばれたのかと思っていたがそこで負傷した噂も聞いて心配だってしておらず、その後退院したと聞いて安心などもしていない。つまりは彼女が不機嫌でいる理由など何もないのだ。

「荒れてるねえ、お嬢さん」

 彼女をお嬢さんと呼んでいい人間はこの世に二人しか存在しないが、その一人がメカニックのアインである。女王とまで称されるパイロットの印象が強いチームだが、ロストヴァ自身は彼女を支えるメンバーの力量を正当に評価していた。とはいえ黒人青年アブのサポートには常々助けられている一方で、アインの整備はクセがあることが多く余所のチームであれば手に負えないじゃじゃ馬を押しつけてくることがあるとも思っている。

「しっかしなに考えてこんな機体用意したわけ?」
「さてねえ」

 よりにもよって蛇身の清姫とは何かあてつけがあるのだろうかと思わずにはいられないが、いずれにせよ大会に若い坊主の姿はなく彼女の前に立つのは牛頭のメカタウラスだった。対峙する牛山にすれば相手の事情など知る由もなく、知っていても女性の厄介ごとに近づきたいとは思わないだろう。

「長期戦なら直撃さえ避ければいける、か」

 メカタウラスの戦法は高出力の武装装甲による接近戦を試みながら、牛山自身は至近距離での回避に専念して損害を避けながら相手にはプレッシャーを与え続けるというものである。リーグ序盤こそ躓いたものの、四日目以降は調子を上げており北九州漁協やメガロバイソンプロジェクトといった強豪を撃破する星もあげていた。
 対戦は遠距離から開始。まずは守勢に構えつつ、特徴的な蛇状の下半身を引いて旋回する清姫の様子を窺う。吹き上げる火のように伸びた火閃が襲いかかると一弾のみ命中するが、損害を気にするほどではない。そのまま高速で旋回する清姫から散発的な炎が放たれるがどれも命中せず、ここでメカタウラスが前進を開始する。

「あら渡し守さん、蛇身の娘に舟を出してくれるのかしら」

 熟達したパイロットらしく、絶妙のタイミングで業炎鱗が放たれると危険を察したメカタウラスもとっさに弾くがやはり一弾が命中する。離れたところでまたも旋回して放たれる火閃が命中、いずれもメカタウラスの損害はごく軽微だがここまで先手を取られ続けており好機らしい好機を得られていない。
 いったん体勢を立て直すべく、守勢に構えるメカタウラスを囲うように清姫が旋回する。動線を予測できないように描かれる不規則な軌跡に相手の技量を感じながら、牛山としてはこの程度の攻撃への対応ができなければゲーマーの腕もすたるというものだ。

「なに呑気してんのよ信兄ぃ!その距離ダメだって」
「分かってるよ、タイミングさえ掴めば」

 回線ごしに届く天宮あてなの罵声に応えつつ、襲いかかる火閃に対処しながら接近を図ろうとするが的確に迎撃の準備がされていることがわかり迂闊に飛び込めない。無謀な突進を試みても先ほどと同じく自ら弾幕に飛び込むだけだろう。

「あーもう!だからそう思わせるのが向こうの狙いなの!」

 あてなの目には罠にはまりつつあるメカタウラスの様子がありありと見える。大型武装装甲を構えた清姫の装備は遠距離から近距離へと接近するほど強力になる、にも関わらず距離を置いて散発的な火閃しか放たずにいる理由は最初から接近戦を警戒させてこの距離で戦うつもりでいるからこそだ。

「回向鐘の火は御堂の鐘を焼き尽くしはしなかったけれど」

 気がつけば5分過ぎに失敗した接近戦の好機はその後10分を過ぎて20分が過ぎても訪れることがなく、牛山もこの時点になればロストヴァの目論見を理解している。毒蛇の牙をむく必要がなければそれでよい、執拗な火に焼かれ続けた獲物はいずれ耐えきれずに倒れるのだから。

「三時の後、鐘の下には亡骸しか残らなかったのよ」

 そのまま30分が経過、直撃といえる攻撃はただの一度もないが一切の反撃すら許さず清姫がメカタウラスを完封する。これで最終戦に望みを繋いだロストヴァは、見舞いの酒ではなく優勝の杯を用意すべく翌日の算段を脳裏に巡らせていた。

○GMイージー      16 (12分停止) メサイア        08×
○猫ろけっとR9R    16 (19分停止) トータス号湖底の夜明け 06×
○清姫          14 (30分判定) メカタウラス拾参號改  10×
○大リーグボール3号   12 (30分判定) オーガイザー      02×
○嵬星          10 (30分判定) ジョビアルクレイドル  04×
○メガロバイソン7    08 (30分判定) テータ         14×


ストライク・シリーズ十一日目 = Days 11th =

 ストライク・バックの戦績における一般的な評価基準は勝率五割、これが強豪と呼ばれるチームであれば六割から七割に達することもある。ことに新規参入や様々な理由で戦績が振るわないチームはこのラインを安定して超えることができて実力が認められるのが常だった。今大会であれば11日間の日程で6勝、勝ち点12を上げることが関係者には大きな意味を持つ数値となってくる。

「だから今日勝てなかったら信兄ぃのこと牛兄ぃって呼ぶ!」

 初参戦となる前大会ではわずか3勝、だが今大会ではこの対戦に勝てば目標に届き次のステップを望めるようになる。チーム・さんくちゅありとしては貪欲に勝利を得たいところだろう。最終日の相手はSRI白河重工、ベテラン中のベテランだが戦績が振るっているとはいえず堂々と撃破したい。

「などと舐められる前に立派な狂気を見せなさい」
「おいおい」

 両者対峙、高出力兵器による一撃必殺こそSRIの本領とばかり、開始と同時に放たれたサンビーム500がメカタウラスの装甲に突き刺さることで開始する。そのまま砲戦距離を保ちながら14年式拳銃を命中、一方的な立ち上がりとなるがもっと派手な花火が見られなければ狂わせ屋女史は満足しない。
 開始10分でようやく接近戦に成功したメカタウラスが武装装甲アームドアームズで思いきり殴りかかると離れたところをフレイムカノンで狙撃、更に接近してアームドアームズを直撃させるとわずか3分で形勢逆転に成功。お株を奪われたトータス号は遠距離に逃れて挽回を図るものの、確実な回避に専念する牛山の技量に決定機をつくれず僅差で判定負け。ワンチャンスをものにしたさんくちゅありが貴重な勝利を上げた。

「よくやったわ!信兄ぃ今度ベイクドケーキ食べたげる」
「それ作るの俺だろ」

 一方、ここまでわずか1勝しかできていないオーガイザーは二度の連敗が響いて戦績が伸びなかったSSBTと対戦。どちらも最終日で星を積み上げておきたい事情は変わらず、積極的に近距離での格闘戦を狙いに行く。

「ガイ・ブレイカーッ!」
「あの、えーと、都牟羽之太刀ぃー!」
「いや、張り合わないでいいからさ」

 互いに武器名を叫ぶことにあまり意味はないが、実のところ接近戦では相手に分があることを須売流は知っていた。彼らの戦い方は柔軟な距離変更で致命傷を避けながら粘り強く隙を窺うことであり、無頼兄はといえば近接格闘の専門家なのである。
 懸命に盾で弾きながら太刀を当てていく嵬星に対してオーガイザーは重さのある一撃を叩き込む。開始10分まで互角の削り合い、紅刃とアルシオーネがそれぞれ仕上げた機体はジェネレータの出力が落ちることもなく長期戦にも耐え得る仕様になっているが、問題はこの状況をパイロットが維持できるかどうかだ。

「俺のマン・ハートを見せてやるぜッ!」

 ここで状況の優位を見た無頼兄がラッシュ、重装甲を外しているからこそ一切の防御を捨てた積極攻勢に出る。嵬星は要所の攻撃を弾いて連続被弾こそ避けるものの、単発の一撃は防ぎきれず数発の直撃を受けて次第に圧倒されていく。不利を悟りながらも果敢な削り合いを挑むものの、徐々に追い詰められて最後は無念の機動停止。リーグ戦を通じてみればオーガイザーは得意の格闘戦に持ち込みきれず、嵬星は格闘戦に強い相手に対して一歩を譲った面があり、長所を伸ばすか短所を補うかは両者ともに今後の課題になるだろう。

「まったく、誰も彼も素材が脆すぎるな」

 大会の影で呟きながら、アマツカは貴重なデータが採取できたことには満足している。彼の投入したメサイアは中盤以降失速したとはいえ随所では想定した性能が確認されていた。無意識下の動きを機体がパイロットに命令する、あとは距離対応の算定ができるかどうかである。最終日はメガロバイソン7、まさしくその距離対応の必要性が問われる相手であった。
 まずは至近距離から一気に後退を図るバイソン7がアウトレンジブラスターの砲門を開く。距離対応の必要性は相手も承知しているがメサイアは降り注ぐ砲火をかいくぐって接近、救済の手の連続攻撃を成功させると一方的な攻勢に出て開始10分でバイソン7を追い詰めてしまう。

「短期決戦望むところです!骨を断たせて骨を砕くッ!」
「了解!?」

 強引に自分のペースに持ち込みたいバイソン7は削られながらも攻勢、踏み込まれる寸前でトライバルカンを直撃させて相手の出足を止める。あと一撃受ければそれまでの状況で、もう一度狙撃するとこれは全弾回避されるが展開していたバイソンビジョンから一斉砲撃が直撃して逆転に成功、メサイアは戦況では終始圧倒しながらも粘りきることができなかった。やはり脆い、と呟く声がコクピットに届く。

「アマ・・・ツカ・・・貴様・・・」

 今大会は砲戦格闘戦とも専用機が苦戦する場面が見られるが、イハラ技研の不振もその一つで急造パイロットの岩田くんとしては先輩ってあれで苦労してたんだなーと思わなくもなかった。狙わなければ当たらないし避けなければ当たってしまう、うっかりすれば砲弾が使えない距離に近づかれてしまう、しかもピンチになるとオペレータがむーむー泣き出してあやさなければいけないのだ。

「むーむーむー!」
「えーと、機関車トーMスのボタンは・・・」

 お気に入りのトOマスの映像が出て機嫌を戻してくれたところで、あらためて現実が良くなることもない。優勝戦進出の可能性こそなくなっているとはいえ北九州漁協の攻撃は相変わらず圧倒的で、謎の下手投げからゆれる魔球を攻略することを不慣れなパイロットに要求することは酷だったろう。

「沈みたまえ!」

 遠距離確保そのものはできているにも関わらず、放たれる砲弾だけではなく機体そのものがゆれる大リーグボールはジョビアルクレイドルから繰り出されるタイニーシャンデリアの光条を巧みにかわしながら砲火の雨を浴びせていく。一撃が致命にこそならないが、確実に装甲を削られていく展開が15分間以上も続いて攻撃と回避と子守りに翻弄される岩田くんはほぼ何もできずに沈黙、実力差を見せつけられる内容となった。

「いらん苦労が混じってるような気がするんスけど」
「むーむーむー」

 そんな各チームが競い合っている中で、今大会ではリーグ突破の可能性が残された四者が最終日に直接対決を行う。勝ち星で先攻するTeamKKとGM陣営は勝てばそのまま優勝決定戦に進出、これを追うコミューンとクイーンズガードが勝った場合は三者以上が勝ち星で並ぶ可能性もある。
 いずれにせよまずは目の前の相手を倒さなければならず、それが山本いそべとロストヴァ・トゥルビヨンの対決となればこれはもう因縁と言うしかないだろう。

「おばさんには小皺が気になる季節ですね」
「女は時を重ねるごとに輝きを増す宝石なのよ?」

 機動力にものをいわせた完全回避を理想とする猫ろけっとだが、実際には毎回緻密な攻撃コンセプトが追求されている。今大会で投入したR9Rは本来は格闘戦で相手を捕捉、反撃を封じるのを狙いとする機体であった。
 対戦するロストヴァは無論それを承知して遠距離から回向鐘で焼こうとするが、相手を望みの攻防に誘い込む彼女のスタイルは徹底して容赦がない。だが機体性能を極限まで尖鋭化した上で即応が求められる状況はパイロットの技量でしのいでみせるのが山本いそべであり、周到と臨機応変を兼ねるスタイルこそ彼女たちが互いを蛇蝎のごとく嫌い理由だった。

「それでは美しく嫉妬深い蛇の攻撃から」

 開始と同時にごく自然、かつ意図的な流れによって遠距離を確保した清姫が回向鐘の火を放つが、猫ろけっともこれをごく当然に回避しつつ光学欺瞞ユニットまるちぽーを展開する。距離の奪い合いでOBAさんに勝つつもりがないいそべは回避に専念するが、基礎システムに存在するわずかなタイムラグを狙ってロストヴァは砲火を集中、先制に成功する。

「システムじゃないんだ!指先で勝負するよー!」

 わずかな誤差が不利となるのはそれだけ設定が緻密であるからこそ、それは相手も同様であり清姫の動きにロスが生じた瞬間を狙って魚型航行式ミサイルが着弾する。これでペースを奪い返すと随所で攻撃を命中させる猫ろけっとが徐々に圧倒、このまま決着するかと思われた20分過ぎ、ロストヴァは清姫の出力が低下した一瞬を逆用してタイミングをずらした回向鐘の一斉砲撃、これが猫ろけっとの無いに等しい装甲を貫いて一撃で戦況を逆転させた。
 だがこの一撃で完全に沈めるつもりでいたロストヴァは相手が機動停止寸前で稼働していることに舌打ち、わずかとはいえフォースフィールドに助けられた猫ろけっとは彼女らしくない思い切った攻勢で反撃のミサイルを命中させると火をまとう蛇姫も耐えきれずに沈黙した。座席シートに深く沈みながら、無念の思いに唇を咬むロストヴァだがこんなときに慰めの言葉をかけてくれる相手など必要ないと考えていたには違いない。

「TeamKKが決めたね」
「向こうは向こうだ、行くぞ」

 オペレータに言われてノーティは意識をメインスクリーンへと戻す。各計器類は正常、カタパルト射出準備すべてよし。この対戦でテータがGMを撃破すれば両者が勝ち星で並ぶことになり、その場合は再対戦でリーグ突破を決めることになる。連戦となれば厳しい状況には違いないが一度勝てばもう一度勝つことも不可能ではない、いずれにせよ目の前の戦いだ。
 長期戦に持ち込んで相手の動きに対応するテータのスタイルに対して、GMイージーは高出力重装甲を活かした短期決戦を図る。当然のように速攻を仕掛けたのはGMであり、開始と同時にビームサーベルで攻撃するとテータも至近距離からフォアマシンガンを撃ち放すが正面からの撃ち合いそのものがジムの狙いである。

「こっちはスタミナ不足なんでね。スプリント戦に付き合ってもらうよ!」

 流れるように中間距離に離れるとバルカンを一斉発射、これにガトリングガンを合わせられて被弾しながら更に遠距離でビームライフルを撃ち放す。どれも回避を無視した狙撃モードでの攻撃であり、テータは数発を避けながら攻撃と反撃の砲火を浴びせるが兵器の出力と機体の装甲ではGMイージーが圧倒的に勝っていた。
 展開されるデルタ・アタックからの位相反撃にも構わず、高出力のビームライフルを命中させる。反撃は100%ではありえず、着弾と同時に相対座標の自動計算を行い放たれる砲火は常に後手にならざるを得ない。展開も距離適性も構わず力押しの砲撃で圧倒したGMイージーがテータを沈黙させ、リーグ戦突破の残る一枠を手に入れた。

「無茶な設定かと思ったけど、案外悪くない?」
「無茶な機体を悪くない設定にしたヤツがいるんだよ」
「へいへい、メカニック様のおかげです」

○GMイージー      18 (07分停止) テータ         14×
○猫ろけっとR9R    18 (26分停止) 清姫          14×
○メカタウラス拾参號改  12 (30分判定) トータス号湖底の夜明け 06×
○大リーグボール3号   12 (17分停止) ジョビアルクレイドル  04×
○メガロバイソン7    10 (20分停止) メサイア        08×
○オーガイザー      04 (22分停止) 嵬星          10×


STRIKE SIRIES IV ストライク・シリーズ優勝決定戦 = The Final = 猫ろけっとR9RvsGMイージー

photo photo  ストライク・バックが町の小さな工房や地方自治体からも参戦できる理由の一つとして、競技用機体であるフレームが極めてすぐれた汎用性を持っている点が挙げられるだろう。既製のユニットを組み合わせるだけである程度の目的に応じた多様さが実現できるから、極端なことを言えば機体と装備さえあれば誰でも参戦できるというわけだ。
 むろん、それで満足ができない人々はルール上で許されている範囲の中で様々な機体設計を試みる。それはフレーム開発技術そのものを向上させる一助となっており、KUSUNOTECなどは技術供与によるギャランティが彼らの資金を支える大きな一因であり新規開発に余念がない理由ともなっていた。

「大学の連中来てたぞー」
「社長、大会終わったら遊んできてもいいんですよ」
「ん、あんず置いてこう」

 大学といっても彼女が講義に通っているのではなく、次期開発で提携している研究室のことである。町工場と大学の共同チームであるTeamKKが資金を捻出するには、生み出された技術の有用性を常に証明し続けなければならない。そのためには大会での結果と実績が求められる、それがストライク・バックにおける彼らの基本姿勢であった。
 では明らかに軍が背景にあるGM陣営であれば彼らよりも事情はましであったろうか。ジムであればテストパイロットとして軍から給与も有給休暇ももらえるし、大会になれば契約企業から機体が送られてくるからそれに乗って競技に赴くだけでよい。

「問題はその送られてくる機体なんだけどなあ」

 彼が見たところではどう控えめに評価しても、半分は開発に失敗したガラクタでもう半分は最初からお遊びで作った機体にしか見えなかった。実状は異なるのかもしれないが、メカニックのジェガンがそれらを乗れるように組み直しているというのがジムの見解であり、メカニック様という彼の言葉は冗談まじりの本音なのだ。
 今大会、優勝決定戦に進出したTeamKKは前大会とほぼ同仕様の猫ろけっとR9Rで参戦。フォース・フィールド装甲の採用と攻勢ユニットの独立化により限界を超えて軽量化したと豪語する機体である。対するGM陣営は彼ららしく一見地味な量産機に見えながら、大型のビームシールドを装備するGMイージーを投入していた。猫ろけっとは機動力を活かした長期戦を図りGMイージーは火力と装甲任せの短期勝負を狙う。

 多目的ステーション「アストロボーイ」に連結されている競技用フィールドは、宇宙空間における管制機能や情報収集機能などの最新鋭技術が投入された設備である。球形のフィールドをただ観客席で囲っただけでは、肉眼で宇宙空間の戦いを視認することはできず、中継映像や情報画面が立体映像として浮かび上がる仕組みになっていた。これも無論、宇宙空間でのカメラやモニタの導入実験を兼ねた設備である。
 競技者が搭乗した機体はフィールドを周回するカタパルトに設置されて、慣性と磁力により射出される。両機の位置情報は機体自体が備えるセンサーや光学レーダーからもたらされ、ある程度の姿勢制御や慣性制御は機体に搭載された基本システムに任されるがそこから先はパイロットやオペレータの技量次第であった。

「目標捕捉、当たれ!」

 目の前にターゲット・スコープを下ろしたジムは完全に狙撃狙いであり、多少の反撃は装甲と盾で弾くつもりでいる。TeamKKを相手に精緻な攻防で勝てるわけがない、だがこの場面でジムが選んだのはハイパワーのビームライフルではなく初速と連射性能に優れる頭部のバルカンである。
 無数の弾頭が放たれるが、それでも猫ろけっとは当たり前のようにこれをすべて回避してみせる。展開される光学欺瞞ポッドまるちぽーから単発の銃火が走り、GMイージーの厚い装甲を叩くが損害はごく軽微。ゼロに等しい損害だがゼロではない、猫ろけっとの高速機動を捉えることができなければその差はやがて積み上がって絶望的になるだろう。

「右も左も弾幕の世界ぃー」
「全画面更新実施、れでぃ」

 オペレータAIからコクピットを360度囲う光学スクリーンが更新されると、飛び交う砲弾の海の中を泳いでいるようにしか思えなくなる。画面いっぱいの攻撃が自分をめがけて襲いかかってくる、この感覚こそ8ビット機の時代から山本いそべを昂揚させてくれる最高の友人だった。コクピットに流れるPSG4音のBGMが、集中した彼女の耳には届かなくなる。
 避けながら三機のまるちぽーを展開して砲撃、だがGMも数発を被弾しながらも装甲と盾で被害を最小限にとどめつつ反撃の機会を狙う。ジムが考えていたのはこの優勝戦を前にして、メカニックのジェガンが言っていた言葉である。

「この機体でも10分に一回はチャンスがある。10分間殴られ続けても大丈夫な機体には仕上げておいたから、一回のチャンスでひっくり返せるかはお前さんの腕次第だな」

 基本システム内に存在するロスやタイムラグ、その他の要因を含めて機体の動きが完璧に行われないタイミングが存在する。それは互いに同じ条件だが、猫ろけっとのように尖鋭化された機体にとってわずかな誤差はより大きな意味を持たざるを得ない。
 開始9分、それまで膠着していた攻防の中でわずかに機体制御が遅れた一瞬を突いてGMイージーのバルカンが命中。本来はただの軽機関砲にすぎないが、高出力機から撃ち出される砲弾が装甲など無いに等しい機体を叩くのだから損害も大きくなる。この一撃で戦況が逆転、猫ろけっとは深い溝を小さな石で埋めなければならないがそれ自体はいそべにとって常と同じ条件である。

「ふじおかひろしー!」
「指が折れるまで、れでぃ」

 勢いのままの小ネタによく反応してくれる、オペレータAIの性能に感心しながら再び高速機動モードに入った猫ろけっとがまるちぽーからの砲火を重ねてGMイージーの厚すぎる装甲を叩く。確実に差を詰めていくが決定打には到らず、本音を言えば近接戦闘に移行したかったが猫ろけっとのジェネレータは推進力にはほとんど費やされておらず隙を作ってまで距離確保を狙うわけにはいかない。
 避けながらたまに当てる、迂遠でも精密な動きで追いすがる猫ろけっとをGMイージーは単発の一撃で突き放そうとする。メカニックに言われた通りジムの狙いはワンチャンスだが、そこに到るまでに襲いかかる猫ろけっとの砲火を一撃でも多く回避して一撃でも多く弾こうとする。少なくともこの対決において、GMイージーは高出力機であることよりも重装甲機であることに意味があった。

「わはっ!」

 長期戦を期待できないジムは装甲を活かしながらも意識は攻撃に集中するスタンスでいる。狙いはもちろん、完璧に思える猫ろけっとの動きにロスが生じる一瞬である。15分過ぎ、再び機体制御が遅れたタイミングに合わせてGMイージーのバルカンが猫ろけっとを捕捉、全弾命中はしなかったが優位を得ることに成功する。
 劣勢に立たされた猫ろけっとだが、有利不利を問わずあらゆる状況下で自分たちの戦術を貫くスタンスは変わらず中間距離からまるちぽーを展開して砲撃を継続。一撃の破壊力は期待できないが、確実に着弾させてくる執拗さに対峙するジムも辟易するしかない。

「まだよまだよまだまだよ・・・」

 メカニックの言葉に乗るつもりなら、砲撃の機会があと一回は訪れるだろう。集中を途切れさせず相手の攻撃は一つでも多く弾きながらその時を待つ。圧倒攻勢による短期決戦狙い、ジム本来の目論見はとうに潰えているが長期戦になったからこそ活きることもある。
 時を経るごとにジェネレータの出力は徐々に低下して、GMイージーのパフォーマンスは確実に落ちているがそれで戦術が変わるわけではない。一方で目にも止まらぬと形容したくなる猫ろけっとの動きは衰える素振りすらなく、追跡して捉えるなど無理に思えるが近接戦闘を狙いたい相手が、パフォーマンスの落ちた自分を狙うならそれは迎撃する好機ではないか。

「これが三回目!ってな」

 終了間際に誘い込んで撃ったバルカンが命中、この対戦に限るのであればTeamKKは狙い通りの安定したパフォーマンスを発揮しながら、近接戦闘に持ち込むタイミングを相手に支配されたことが不利になり、目論見が外れた筈のGMイージーは機体性能とパイロット戦術を臨機応変に対応させて確実な好機を掴んだことが勝利へと繋がることになる。10分に一回、そのチャンスをすべて活かしてみせたGMイージーが猫ろけっとを封じ込んで優勝の栄冠を手に入れた。

「つまり持つべきものは優れた仲間、ってことだ」
「優れた仲間が同じことを思っていてくれるといいがね」

○GMイージー(30分判定25vs11)猫ろけっとR9R×

優勝  ジム           GMイージー         12戦10勝/通算35戦24勝
準優勝 山本いそべ        猫ろけっとR9R       12戦09勝/通算48戦31勝
3位  神代進          大リーグボール3号      11戦07勝/通算47戦32勝
3位  ロストヴァ・トゥルビヨン 清姫             11戦07勝/通算47戦30勝
3位  ノーティ         テータ            11戦07勝/通算46戦27勝
6位  牛山信行         メカタウラス拾参號改     11戦06勝/通算22戦09勝
7位  ゲルフ・ドック      メガロバイソン7       11戦05勝/通算46戦28勝
7位  灯乃上むつら       嵬星             11戦05勝/通算22戦09勝
9位  シャル・マクニコル    メサイア           11戦04勝/通算46戦14勝
10位  コルネリオ・スフォルツァ トータス号湖底の夜明け    11戦03勝/通算46戦18勝
11位  岩田新造         ジョビアルクレイドル     11戦02勝/通算46戦17勝
11位  無頼兄・龍波       オーガイザー         11戦02勝/通算46戦13勝

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