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 ガルディオンの同調システムはパイロットの反応速度を驚異的に高めることができる一方で、様々な要因に同調が阻害されることもあって安定して好パフォーマンスを維持できるパイロットはきわめて希少な存在となっている。選ばれた者にしか扱えないといえば聞こえはいいが、当事者にすれば「世話が焼けるシステム」という印象を持ったとしても不思議はない。

「あれー、おかしいな?」

 模擬操縦用のブースで首を傾げているフィジー・高崎の呟きを聞きとがめた氷室孝一郎がどうかしましたかと背中から声をかけている。シミュレータとはいえ機体に直接接続されているからパイロットの感覚としては乗り込んで操縦するのと変わらない、つまり世話が焼けるシステムなのだがフィジーは若いにも関わらず優秀で彼が同調に手間取ること自体が珍しいことだった。自身もパイロットである氷室は真っ先にフィジーの不調よりもシステムの不調を考えたが口に出してはこう言った。

「そういつも上手く繋げるとは限りませんよ。さあフィジー、いい加減に降りて下さい」
「お前は帰れよ、氷室。オレはもう少しやってくから」

 五歳ほど年長の氷室に対してフィジーの態度は生意気に思えるが、五歳ではなく四歳ですとすかさず訂正してみせる氷室も大概ではあったろう。もしも同調システムの調子が悪いのであれば、最悪同調するパイロットが変調をきたす可能性もあるのだから氷室の判断は正しいがフィジーは聞かん坊のようにごねて、あるいは拗ねてみせる。そのような表情をするともともと幼げな顔が更に幼く見えてしまうのだが、そのような感想をいえばフィジーが気を悪くすることは疑いないからマイクに指をかけた氷室はメカニック・ブースに簡単な通信とシステムのデータを送る。プロジェクトでも多彩なタレントを持つ氷室だが餅は餅屋に任せるに越したことはない。

「というわけで私も残ります。システムの具合も見たほうが良さそうですしね」
「ずりーぞ、それならオレがやってく」

 駄々をこねるようにフィジーは座席に腰を沈めたままモニターパネルに向き直る。ヘッドセットを被るとガルディオンと同調を始めた様子を見て氷室はやれやれと肩をすくめてみせるが、ブーツの底が慌てた様子で床を叩く音が耳に届くと思わず振り返る。すでにシステムは起動していて、同調を始めているフィジーは気づいていないが駆け込んできた整備士のメアリーは切羽詰まった表情をしていてただならぬ事態を思わせる。

「どうしました?メアリー」
「氷室さん、フィジーくんを降ろして!システムが異常値を出してる。今、シミュレータを使うのは・・・」

 言い終わる前に異常は目に見える姿となって三人の視界を覆っていた。システムと接続していたフィジーのこめかみにズキリとした重い痛みが流れ込んできて、目の前が白い光で包まれると痛みと眩しさの双方に目を塞いで苦しそうに頭を抱え込む。明らかな危険を察して氷室とメアリーがフィジーを助けようとするが、少年の細い身体をつかまえたところで白い光が三人を包み込むと光はますます強くなって誰も目を開けていられなくなる。

「どうなってる!これは何なんだ」
「そんなの私に分かるわけないでしょ!フィジー!大丈夫、フィジー!?」

 そして唐突に大きくなった光が唐突に消える。眩しさに晒された目には周囲が暗黒に閉ざされたようにも見えたがそれも数瞬のことだったらしく、すぐに世界には今までと同じ色と光が戻ってきた。
 三人はガルディオンの模擬操縦用のブースの上にいて先ほどまで苦しんでいたフィジーも小さくうめくと何度か強く瞬きをしてからゆっくりと目を開く。どうやら無事なようで氷室もメアリーも安堵して息をつくが、少年の言葉にはっとして右を見て左に目を向ける。

「どこだよ・・・ここ」
「え?」

 そこは今までいた建物とは明らかに様相が違う場所だった。三人がしがみついていた操縦用のブースはそのままだが、金属と非金属でできた機能的な部屋は壁面がむき出しになって配線やコネクタがあちこちを這っていて仮設で使われている場所のように思われる。四方の壁の一面にはスライド式の扉が、反対の一面には大きな窓があって星々に満たされている夜空を背景にして彼らのガルディ、ガルディオンの姿が目に入った。慌ててブースから立ち上がると窓に駆け寄った三人は唖然とする。

「宇宙・・・?」

 それは夜空ではなく衛星軌道を巡る宇宙ステーションから見た星々の姿であり、眼下には彼らが今まで映像でしか見たことがない大きさで青と緑に覆われた惑星が横たわっていた。


ストライク・シリーズ一日目 = Days 1st =

 パイロットの神経系が接続されるとシステムと完全に同調するまで綿密な調整が行われる。数値は正常だがなにしろ借りている設備にこれまで見たこともない規格が使われているから、万が一の危険を考えれば調整は念入りに行わなければならなかった。機体を身体の一部として扱うガルディの同調システムは機体にかかる負荷をパイロットに伝えるリスクもあるから調整を誤ればパイロットに危険が及ぶ。わずかでも手を抜くわけにはいかない。
 ガルディはフレームと呼ばれている人型汎用機とは異なり厳密にいえば生物、生命体に近い。幸い有機パーツを用いたフレームはこの世界にも存在したから、彼らはガルディに装甲を着せてそれらしく誤魔化すとこの見知らぬ世界で人型汎用機による競技大会、ストライクバックの参加者としてここにいる理由を作ることができていた。国籍も人種も立場も不問、ステーション内では多くの特権もあるらしくさしあたって今日の宿を心配する事態にはならずに済みそうだ。

「でもいいのかしら?こんなことしてて」
「選択肢がないのだから仕方がありません。それよりフィジー、準備はいいですか」

 メアリーと氷室がこれだけは見なれたコンソールに向き合う。ガルディの生体機構は宇宙空間でも活動することはできたが移動する能力はないからフレーム用の推進機構をむりやり「着せて」姿勢制御するしかない。三人しかいない中で間に合わせたのはメアリーと氷室の苦心の賜物だが、手足にスクリューをつけて泳ぐごとき操縦はフィジーに一任することにした。彼の方が適性に勝っていたのは事実だが、氷室の方がオペレータとして勝っていた理由も大きいだろう。

「タイムカウント開始、機体射出準備、20・19・18・・・テイクオフ!」

 対戦相手のバラクーダは一撃離脱を得意とする雷撃機で、常軌を逸した超加速を相手に慣れない制御系で挑むなどハンデでしかないがそこは甘受するしかない。待ち構えて迎撃するしかないなら戦術としては分かりやすく、来るなら来いと構えるがセンサーに一瞬映った機影が次の瞬間には消えているのを見て絶望的な気分になる。光学センサーすら振り切る速度で目の前に現れると遠ざかり、数瞬遅れて衝撃が機体に襲いかかる。一撃の損害は大したことがないが一方的に装甲を炙られ続けるのだから状況は最悪に近く、速すぎる相手を補足すらできずにわずか10分で装甲の耐久値が半減していることに気づいて愕然とさせられる。慣れない条件とはいえここまで一方的に蹂躙されるとは思っていなかった。

「このままじゃジリ貧だ、リミッター解除するぞ!」

 彼らにも奥の手はあった。ガルディは制御機構で普段の力を大幅に抑えられていて、一時的にこれを解放すれば爆発的な力を得ることができる。システムにかかる負荷が尋常ではなくできれば使いたくはないが背に腹は代えられない。音が響かない宇宙空間でガルディが無音の咆哮をあげると同調システムにノイズが入る。装甲の下で変貌したガルディの姿が見られないのは幸いだが、これで機体の性能が爆発的に増してもそれを扱う手腕はフィジーに任せるしかない。ソードと呼ばれていた高純度の金属塊、この単純で原始的な武器を構えて力任せに両断する。高速で接近するバラクーダにタイミングを合わせてソードを振りまわすとこれをピンポイントで命中、目論見が的中したガルディの剣がバラクーダの薄い装甲を割るとこれ以上の幸運はありえないとすかさず防御に専念、残り時間を僅差で逃げ切って初戦を制してみせた。

「見たか、これがオレとガルディの力だ!(意.あっぶねーぎりぎりだった)」

メガロバイソン8    02 (14分停止) リアルタイプGIMM  00
太極師         02 (17分停止) オーガイザー      00
魔王          02 (05分判定) ねころけっと試作鶺鴒  00
ガルディ        02 (30分判定) バラクーダ       00
DiceTravelerはかた号 02 (30分判定) アストロタコボールフォー00
セント・マルタ     02 (30分判定) パンツァーおおばん号  00


ストライク・シリーズ二日目 = Days 2nd =

 ネス・フェザードは周囲から気まぐれな人物だと思われていたし本人もそれを否定しようとはしなかった。知人に言わせれば彼はスリルに憑りつかれているだけだと証言してもらうことができるだろうが、この評価もネスは否定しないに違いなく何よりも彼が操縦桿を握る愛機バラクーダの存在がそれを証明している。光学レーダーの外から人間の反応速度を超える加速で目標に接近してすれ違いざまに一撃を加える、これを繰り返して不可能な攻撃と不可能な迎撃の勝負に持ち込むのが彼のスタイルだった。

「大丈夫、機嫌が悪い女性よりはるかに扱いやすい」

 モニタと宇宙空間を挟んだ向こう、フィールドを挟んで対峙するメガロバイソン8は超攻撃機として知られる機体であり、極北同士の衝突であることも彼にとっては高揚の材料でしかありえない。霹靂のように襲いかかる砲火をかいくぐるのではなくすべて無視して加速する、それが雷撃機バラクーダの戦い方である。両機射出と同時に相対位置を補足、中間距離にあることを確認するがバラクーダはどの座標にいても空間を貫くように直線的に加速すると一瞬前にバイソンがいた座標を通り過ぎている。その間に放たれていたアンカーホイップを潜り抜けながら高熱の牙を打ち込もうとするが、これをまともに当てることができるなら彼は人間とは別の存在である何かだろう。

「おお、効くねぇ!」

 慣性制御システムで吸収しきれない、ぎりぎりの加速度まで機体に許しているのは数千分の一秒でも反応を早くするためではなく単に負荷そのものを体感するのが目的としか思えない。次元移動を行うことで亜光速を得ると砲戦の間合いを飛び越えて至近距離に出現することができるから、攻撃機であるメガロバイソンすらバラクーダを相手には迎撃戦を強いられるが彼らもそれを承知した上で迎え撃つ一瞬にすべての攻撃を集中させる。バラクーダがアクセルバイトで深々と咬みつくがバイソンもアンカーホイップを叩きつけて双方が同時に弾かれると、この状態から再び次のアタックが開始された。だが相打ちでも攻撃が命中したならその瞬間の座標は把握できるはずで、そこから行動曲線を予測すれば数秒後の出現位置を計算することは理論上不可能ではない。メガロバイソンのオペレータにはそれができる天才がいる。

「右向いて!アタックです!」
「了解、メージ!」

 メガロバイソンプロジェクトのオペレーションが雑に聞こえるのは正確に伝達する方法がないからで、パイロットと機体が反応する速度と角度を「なんとなく」指示して成功させるのが彼らの真骨頂である。芸術的なコンビネーションによる痛打を受けたバラクーダだが、ネスもチキンレースに怯む性格はしておらず更に加速すると襲いかかるムラクモオロチの砲火に正面から飛び込んでアクセルバイトを打ち込んだ。ここまで開始17分。結局、この一度の交戦を除くすべての攻防が失敗に終わるとそのままタイムアップとなるが、わずかに損害の大きかったバラクーダが僅差で星を落とす結果に終わる。結果はともかく内容は良、このような感想を少なからず持ってしまうからこそ彼はスリルに憑りつかれているなどと言われて反論ができないのだ。

「いやいや、悔しがってるよ」

DiceTravelerはかた号 04 (30分判定) 魔王          02
メガロバイソン8    04 (30分判定) バラクーダ       00
ガルディ        04 (30分判定) ねころけっと試作鶺鴒  00
リアルタイプGIMM  02 (30分判定) セント・マルタ     02
パンツァーおおばん号  02 (18分停止) 太極師         02
アストロタコボールフォー02 (30分判定) オーガイザー      00


ストライク・シリーズ三日目 = Days 3rd =

 北九州漁協に激震が走る。妾の子だったために今日まで日陰の存在だった漁協会長の孫が反逆すると北九州漁協をぶっ潰すと宣言、灘高の主席でヒトラーを敬愛する彼はフューラー(総統)を名乗ると殺人漁業を掲げるビクトリー漁協を設立した。こうして北九州漁協とビクトリー漁協の血で血を洗う戦いが行われたが、最後まで正道漁業を貫いた北九州が勝利するとストライクバックに革命を起こすべく作られたシリーズ4号機、アストロタコボールフォーがついに完成したのである。ちなみに高校生にも関わらず酒を呑んでいるのは小学生がスポーツカーを乗り回す花形満の例があるから何も問題ないがさしあたってその彼は今大会には何の関係もない。

「一試合完全燃焼キュ」

 超能力イルカフリッパーが自信を持ってナビゲートする、一見すると左マニュピレータにボールのマークがある以外はこれまでのシリーズと同様のボールにしか見えないがアストロタコボールであるからには超人的な性能を秘めているに違いない。対戦相手はチーム龍の太極帥、いわゆる接近短打を得意とする近接格闘機である。
 射出された双方の機体が互いに様子を見るようにゆっくり旋回すると太極帥が先手を打って加速、一瞬で至近距離に出現するがタコボールフォーは冷静に?殺人野球で迎え撃つ。本来、格闘戦が得意な相手に距離をとったらマニュピレータに包帯を巻き付けて超高速スピンボールを放るファイナル大魔球を狙う戦術もあったはずだが操縦桿を握る神代進にその選択肢はないらしい。なぜかと問われれば「坊やだからさ」とでもうそぶいてみせたに違いないが、彼らにはあえて相手の土俵に乗る理由があった。回線を通じて超能力イルカフリッパーの声が届く。

「データ解析、展開するキュ!」

 宇宙空間で慣性と機体の重心を丁寧に制御して装甲ごと体当たりをする、太極帥必殺の硬気功がタコボールフォーに打ち込まれるが、これを男らしく正面から受けると同時に解析してタコボールで同じ動きを再現してみせた。魔球コピーと呼ばれる一撃が硬気功を再現して太極帥に正面から打ち込むと、コピーは完璧なものではなく威力も本家には及ばないが百戦錬磨の神代はすかさず追撃を図ると相手の肋骨が八本くらい折れそうな殺人野球の一撃を叩き込む。あまりにも消耗が激しく使いすぎれば腕の神経が切れる危険すらあるがあえて相手の土俵で反撃を仕掛ける必殺の体勢である。

「一試合完全燃焼さ!」

 だが太極帥もこの距離で優位を奪われるわけにはいかず、不意打ちを受けた状況から体捌きだけで殺人野球をかわすと隙をついて硬気功の重い一撃を打ち返す。鋭い動きに今度は魔球コピーも反応できず、一撃の威力であれば太極帥が勝るからこのまま反撃に転じることができれば逆転の可能性も見えてくる、そう考えたところで試合時間が残りわずか3分となっていることに気づいて愕然とさせられる。先手をとって強引に優位に持ち込み、相手が反撃の手を試みている間に膠着させて時間を稼ぐ。そのために危険を承知で近接戦を仕掛けた神代の作戦勝ちだった。

「おのれに頼み一試合完全燃焼のもとに戦う、憧れていく自分自身がわかるというものさ」
「キュ?」

ガルディ        06 (30分判定) DiceTravelerはかた号 04
メガロバイソン8    06 (18分判定) ねころけっと試作鶺鴒  00
リアルタイプGIMM  04 (12分停止) パンツァーおおばん号  02
アストロタコボールフォー04 (30分判定) 太極師         02
魔王          04 (24分停止) オーガイザー      00
セント・マルタ     04 (30分判定) バラクーダ       00


ストライク・シリーズ四日目 = Days 4th =

 過去に三人の優勝パイロットを排出したメガロバイソンプロジェクトだが、新任パイロットとして配属されたベル・グラノが悪戦苦闘しているところを見て今大会では後見人のマック・ザクレスが自ら参戦することになっていた。名目上はロールアウトされたばかりの新造機メガロバイソン8が実戦に耐える仕様を備えているかの確認と、才能充分な後輩のスタイルと機体の相性を自ら確認してみたいということになっているが、それで操縦桿を握ってしまうのはやはりこの感覚が忘れられないからだろうかと心中苦笑しなくもない。

「まあ久しぶりに楽しませてもらおうか」
「ご安心を!ワタシはいつも楽しんでます!」

 メージのオペレーションも久しぶりだとやはり心中で頬をほころばせる。対戦相手はTV番組の企画で新規参入したというHDYLWとダイス・トラベラー、軽い存在に思われているが安定した戦績を見るに油断すれば簡単に足下をすくわれてしまうだろうと今度は表情を引き締める。軽く息を吐いて、これだけでごく自然に集中を完了しているのはベテラン中のベテランならではだろう。サブモニタには期待と敬意に溢れた後輩たちの顔が映っていて、チームに登録されていないために通信や会話を交わすことはできないが先方は競技中のデータをモニタリングできるようになっている。あっさり負けたら立つ瀬がないかなとも考えるが、それでマックの操縦にわずかな影響すら出ることはない。
 宇宙空間に打ち出されると教本通りに姿勢制御、メガロバイソンシリーズ特有の重装備を構えて機体を展開する。機体によって多少の違いがあるとはいえ、攻撃主体がメガロバイソンのコンセプトだがマック自身のスタイルはもう少し柔軟性に富んでいた。だからこそ後輩のスタイルを再現することもできるので、本職でないだけ練度は劣るがそこは経験で補うだけの自信と技術をマックは備えている。ダイス・トラベラーは攻撃主体・砲戦主体のバイソン8の苦手を突くべく速攻を仕掛けて近接格闘戦に持ち込むと至近距離からフォアマシンガンを連打、マックはこれを捌くが完璧な防御にはほど遠く一発二発、更に三発と被弾する。

「やはりいい判断をする、これはひたすら粘るのが今日の仕事かな」

 時間が経てばジェネレータの出力が落ちるからそこに活路を求める、条件は互いに同じだがダイス・トラベラーの執拗な攻撃がわずかでも息切れする、そのタイミングが訪れることを信じて捌き続けるしかない。更にフォアマシンガンを被弾、ここまで一方的な展開となりバイソン8はただの一度も相手に狙撃を試みることすらできていなかったが開始15分過ぎ、双方の機体が流されるように離れると相対距離が遠距離まで開いたところでマックの腕はすでに動いていてメージの指示が同時に耳に届く。

「八分の六発確定!撃てます!」
「ありがたい!」

 それは四連装のムラクモオロチ・改を斉射して六発名中させる座標を指示しますという意味で、名の如く八つ首の大蛇のようにうなる光条が正確にダイス・トラベラーを貫いた。うち一発を回避、二発を弾いてみせたダイス・トラベラーだが残る三つの首に食らいつかれるとこの攻防だけで逆転、あとは膠着してタイムアップとなり「一瞬の攻勢」だけで勝負を決めてみせたメガロバイソン8がこれで開幕四連勝、単独首位の座を確保する。

メガロバイソン8    08 (30分判定) DiceTravelerはかた号 04
セント・マルタ     05 (30分引分) ねころけっと試作鶺鴒  01
太極師         04 (24分停止) 魔王          04
パンツァーおおばん号  04 (21分停止) アストロタコボールフォー04
オーガイザー      02 (22分停止) ガルディ        06
バラクーダ       02 (28分停止) リアルタイプGIMM  04


ストライク・シリーズ五日目 = Days 5th =

 前日ようやく今大会での初白星を挙げたチーム龍波とオーガイザー。この日は唯一の全勝チームであるメガロバイソンプロジェクトとの対戦であり、追撃するためにもここは何としても勝利を挙げておきたいところである。だがコクピットに座す無頼兄・龍波にはいささかの気負いもない。なぜならば気負った挙句重圧に潰されるなどというのは宇宙サムライに相応しくない振る舞いだからである。

「いやちょっとはプレッシャーを感じなはれ」

 無駄を承知で鬼姉こと紅刃がため息をつく。なにしろ単純な性格だからハマると強いのだが単純だからどんな相手にも真っ向勝負を挑んでしまうのでいわゆる狡さや巧さがない。だがそれはそれで弟のよいところではあるからこの際は彼らしい戦いで勝ちを目指す、平たくいえば仕方がないというやつである。メガロバイソンを相手に真っ向勝負で無事に済むとは思えないが、そこはそれ日本には骨を断たせて肉を切るという名言もあるはずではないか(アントニオ猪狩・談)。
 両チームのコンセプトは明確でオーガイザーは装甲と機動力重視の近接格闘、メガロバイソン8は遠距離での砲戦を主体にするがポイントになるのは奇しくも両者が中間距離に備えたチェーンアンカーとアンカーホイップの撃ち合いであろう。どちらもスーパーロボット然とした外見で鎖のついた分銅を振り回す、そこは共通しているというわけだ。

「チェーーン!アンッカーーッ!!」

 コンバトラーV的な発音がやかましいが、懐に飛び込んだオーガイザーが機先を制すると距離を離そうと後退するバイソン8に放ったチェーンアンカーが命中、この先制攻撃で優位に立つ。バイソン8は更に後退するとムラクモオロチ改の光条をフィールドに降らせるが、オーガイザーもこれをタフな装甲「魂鋼」で受け切ってみせた。先制したこともあってオーがイザーが優位に見えるが、砲戦の射程にあるということはメガロバイソンの距離にあるということで、すぐにでもこの危険な状況を脱しなければならないが熱くなっている無頼兄は愚直に突進するとムラクモオロチを連続被弾、強引に近づいたところにアンカーホイップを叩きつけられてみるみるうちに装甲が削られていく。紅刃にとっては頭が痛くなる展開だが無頼兄はそれでもスタイルを変えず、再びチェーンアンカーを振りまわすとメガロバイソンの正面に当てて強引に前進、こうなれば無頼兄とオーガイザーを信じるしかなさそうだ。

「しゃーない、好きにやんなさい」

 残り10分でここまではオーガイザーが有利、装甲を活かして逃げ切るという選択肢もあるが無頼兄がそれを選ぶことはなく危険を承知で前進、格闘戦を挑む。バイソン8は接近を図るオーガイザーにムラクモオロチの光条を次々と叩き込むと、一発の威力こそ低いが弾数で補い魂鋼の装甲が歪んでいく。満を持したアンカーホイップが直撃するとこの一撃で逆転、気がつけばオーガイザーが機動停止寸前まで追い詰められていた。

「好きにやんなさい言うたんです、そのまま行きんさい」

 この状況でも最後まで男を貫いたオーガイザーのガイ・スオードが命中、更にチェーンアンカーとアンカーホイップが相打ちになって両機機動停止になる。判定による決着はオーガイザーに軍配が上がり、無頼兄は己のスタイルと勝利の双方を手に入れたが紅刃に言わせれば勝因は「魂鋼がふんばってくれたこと」であったろう。

太極師         06 (27分停止) ガルディ        06
魔王          06 (05分判定) アストロタコボールフォー04
DiceTravelerはかた号 06 (30分判定) セント・マルタ     05
ねころけっと試作鶺鴒  03 (30分判定) リアルタイプGIMM  04
オーガイザー      04 (26分判定) メガロバイソン8    08
バラクーダ       04 (30分判定) パンツァーおおばん号  04


ストライク・シリーズ六日目 = Days 6th =

 夏休みは返上して秋休みは冬休みは返上して春休みも返上してふだんの休みは仕事をしているのが山本いそべのスタイルである。最近はお台場に展示するユニコーンあれの組み立てを手伝いながら、副収入としては実入りも悪くないしクスノテック謹製ガッテンフレームならこの程度はプラモ感覚でちょちょいのちょいと組み立ててしまえるし、ロボットがロボットを組み立てる動画も営業なにそれおいしいのという彼らにとってよい広告塔になってくれそうだった。

「でもそれで大会遅刻したら本末転倒じゃないっすか」
「おいきさま!きさまは七転八倒という言葉を知っているか!」

 それを言うなら七転び八起きだが彼らの技術力はAI開発の分野にも発揮されていて、オペレータとして搭載されているNii/Bossの性能も更に向上すると片言の会話までできてそろそろパイロットがいらないんじゃないかと言われている。一方でいくら模擬戦をしても未だにAIがいそべからただの一勝も奪えずにいるのはゲーマー畑に生まれた彼女を相手にCPUでは如何にも分が悪い。Mii4Uのライブラリを活かしつつ機体挙動を自己判断してリアルタイムでモーションを変化させる、最新鋭のシステムが人間に及ばない分野は未だにあるようだ。機体はクスノテック謹製・鶺鴒をベースにした試作機で、未だ動作に不安定な個所はあるが斑鳩系で三段変形を実現した全距離対応での機動性と回避力を最大に活かすことができる夢の機体、なのだがよく考えたらどのモードでも性能が変わらないなら変形する意味がないけど気にすんな!問題はメンテナンス費用が従来機の九倍(当社比)かかることが判明して社長お仕事ですぞとお台場くんだりまで駆り出されていたのもこれが原因というわけだ。
 相手は相手も超速仕様が売りのバラクーダ、人間が反応できない加速で雷撃戦を仕掛けてくる機体だが、ねころけっとは宇宙空間で鋭角的な軌跡を描くという一見物理法則を無視した機動性が売りである。宇宙空間に足場を射出してこれを蹴って方向を変えると死角に回り込んでねこしっぽによる有線ジャミングを仕掛ける、こんな莫迦げた発想を実現してしまえるクーソーは心のコヤシが彼らの真骨頂だった。

「よっしゃー!一撃戦闘すっぞー!」

 ねころけっとにおける一撃とは一撃必殺で勝敗を決する戦い方ではなく、膠着した戦況の中で訪れる数少ない好機を一撃成功させてあとは全部避けるという宣言を指している。30分の競技時間の間にただの一度でもミスをすればそのまま勝負が決してしまうが彼らにミスはありえないという前提で神経を削り合う、Niiが事前に算出した数値ではこの両機の対戦では36分に一度の決定機があるという解答で、ノーチャンスもあり得るが開始数秒で好機が訪れないとも限らない。はたしてバラクーダは超加速で接近してねころけっとは超機動で回避する、両者が想定した通りの展開となるが人間の反応を超えた速度で動く機体を人間の反応を超えた速度で避けるのだから予想も想定も意味がなく、ただ刻々と過ぎて行く時間の中でパイロットの反射神経だけにすべてを賭ける。

「ソロソロ カエッテ イイカナ」
「終わったらな!」

 あまりの神経戦にAIが堂々とサボタージュを宣言する、センサーでも捉え切れない両機の交錯が何度も続くが終了間際に一度だけ擦過した軌跡からわずかな火花が散ったところでタイムアップ。この展開で彼女がいう「一撃戦闘」を成功させたねころけっとが高速戦を制して勝ち星を手に入れた。

太極師         08 (23分停止) メガロバイソン8    08
魔王          08 (07分判定) パンツァーおおばん号  04
アストロタコボールフォー06 (30分判定) ガルディ        06
リアルタイプGIMM  06 (30分判定) DiceTravelerはかた号 06
オーガイザー      06 (27分停止) セント・マルタ     05
ねころけっと試作鶺鴒  05 (30分判定) バラクーダ       04


ストライク・シリーズ七日目 = Days 7th =

 すでに大会は後半戦の日程に突入しているが、前大会準優勝のロストヴァ・トゥルビヨンとロイヤルガードがここまで戦績が振るわず中下位に甘んじていることを予想した者は少なかったろう。各チームとも突出できず星を落としている中で、上位陣も横一線に並んでいたから実際の勝ち点ではさほど離されてはいなかったが、これ以上星を落とせば追撃が難しくなることも間違いない。残るカードでも上位陣との対決が並ぶ厳しい状況だがロストヴァには悲壮感の欠片もない。

「勝てば上との差を詰められる、むしろ願ったりではないのかしら」

 これを堂々と言ってのける彼女の自信こそ「女王」の二つ名に相応しいものだろう。どのような状況でも勝利を前提にした思考と行動を組む、それがロストヴァの真骨頂だった。対戦相手となる太極師はこの時点でリーグ戦トップグループを形成する一角であり、まずは勝利して星を奪う必要があるが相手も後続を突き放すつもりでいることは疑いない。
 対戦は得意の中間距離からランサーを抜き放ったセント・マルタが先んじて仕掛けるが、狙いが甘く振り回されたエネルギーの槍はむなしく宙を切る。前進しながらこれを回避した太極師がすかさず接近、得意の格闘戦の間合いに飛び込むと同時に硬気功を打ち込んで先制してみせた。人型汎用機による近接格闘戦では第一人者となるシャル・マクニコルには慣れた動きであり太極師のコクピットでマニュピレーたを握り直す手に力が入る。

「こちらも余裕があるとは思っていない、悪いが圧倒させてもらう」
「残念ね。こちらは圧倒するつもりもされるつもりもないの」

 双方の回線は繋がっていないが時として会話のように言葉が交わされることがある。セント・マルタが空間を裂くようにランサーを振り回すが太極師はバランスのよい体捌きで避けると至近距離に飛び込んで再び硬気功、だが地雷を置くようにタイミングを測ったロストヴァがフレイムを合わせると高熱源の流体金属弾を着弾、太極師もすかさず高速移動で振り払うが三度接近短打を狙ったところにまたもフレイムを合わせられる。近接戦の攻防では太極師に分があるが、タイミングだけは完璧に捕捉されているらしく相打ちで削られると優位を保ちながら圧倒することはできていない。
 ここまで開始8分、双方が申し合わせたようにいったん距離を置くと戦況は膠着して距離の取り合いに終始するが、時空跳躍を行う太極師の縮地装置を相手にして出力の落ちたセント・マルタで拮抗して見せるのはロストヴァならではだろう。互いのセンサーをかいくぐりながら接近して硬気功とフレイムの打ち合い、17分にも相打ちになると損傷率では太極師がわずかに有利だが実際にはほぼ互角の状況は変わらず、シャルにすれば不気味なプレッシャーから逃れることができずにいる。

「悲観する理由はない。押しているのはこちらだし時間が立てば性能が落ちるのは向こうだ」

 言いながら得意の格闘戦を仕掛ける太極師が硬気功を命中、更にジェネレータの出力と機動力が落ちたセント・マルタに追い打ちを狙うがロストヴァもこれに合わせてフレイムを着弾、流体金属弾を振り払うために急加速した太極師をピンポイントで狙うとランサーで完璧に狙撃して見せて一撃で戦況を逆転するとすかさず抜き放たれた二本目のランサーを命中させてとどめを刺す。膠着状態からの一撃必殺を決めたロストヴァがワンチャンスを逃さずリーグ突破に望みを繋ぐ勝ち星を奪取してみせた。

「怪物はひれ伏した。皆はこれを打ち倒すのか?」

魔王          10 (15分停止) ガルディ        06
アストロタコボールフォー08 (30分判定) メガロバイソン8    08
リアルタイプGIMM  08 (30分停止) オーガイザー      06
DiceTravelerはかた号 08 (23分停止) バラクーダ       04
セント・マルタ     07 (29分停止) 太極師         08
パンツァーおおばん号  06 (30分判定) ねころけっと試作鶺鴒  05


ストライク・シリーズ八日目 = Days 8th =

 ことの発端はオペレータAIのEDシステムとメカニックAIのHFシステムが喧嘩をはじめたことで、整備中に小鳥の画像検索をしていたら文鳥がよいのではないかと言いだしたHFに対して小鳥はすべてよいとEDが言って大いにもめたらしい。どう違うんだよと言いたくならなくもないがAIにも趣味嗜好はあるだろうし、彼らなりにオペレータやメカニックとしての仕事はしていたから文句をいうほどでもないのだが同じチームのパイロットとしてテムウ・ガルナには彼らに言うべきことがある。

「それでどうして機体が小鳥でも文鳥でもなくオオバンなんだ」
「┐( ゚Д゚)┌」
「┐(´д`)┌」

 WDF社謹製パンツァーおおばん号は千葉県アビコ市の鳥オオバンに似た葉っぱのような足が特徴的だが、ずんぐりとした水鳥めいた頭と胴体にちょっと長めの水鳥めいた脚部が伸びていてようするに二足歩行型のトリめいた機体なのだが問題は問題はどう考えても宇宙空間で活動するのに向いたデザインではないことだった。とはいえどうせWDF社のことだからこんなデザインでもきっちり使えるように仕上げているのだろうと思うと本当にその通りだから始末が悪い。一説では「パイロットが安全かつ真剣に苦しみもがく姿を見て楽しむ」と社長が公言したメーカーの機体であり、性能自体は申し分ないとはいえ今大会での戦績はここまで中位といったところ、とはいえ上位陣が総崩れを繰り返しているので終盤戦で星を稼ぐことができれば現時点でも充分に上を狙える位置につけていた。
 まずは目の前の相手を攻略する、この日は近接戦闘の雄オーガイザーに対峙すると振り回されるガイ・スォードをかわしながら後退して距離を探る。近距離から中距離、更に遠距離まで下がったところで健脚ブーストするとくちばしの先でつっつき、オオバンというよりも水辺のハマチドリを思わせる小刻みな高速歩行で死角から襲いかかる動きが確かに斬新で新しい。

「あー、うん。たいした機体ではあるよねこれ」

 葉っぱのような足ひれのような脚部で走るような動きが実際に宇宙空間での姿勢制御と移動をしているらしく、どんな技術なんだろうと思わせる。よせ波を避けて側面から回り込むように近づくと、次の瞬間には離れてから健脚ブーストで近づく動きを繰り返してオーガイザーを翻弄する。魂鋼の装甲に阻まれて大した損害を負わせることはできないが、不意をついたところでおもむろに蹴り、更に繰り出したつっつきが命中してようやくダメージらしいダメージを与えてこれでペースを握ることに成功。健脚ブーストで落ち着きなく宇宙空間を走り回っているトリをオーガイザーは捉えることができず、ここまでおおばんが一方的に攻め続けるというか走り回り続ける展開になる。
 趣味やセンスはともかく宇宙空間を自在に走り回る機動力を発揮するおおばんは、一撃必殺の攻撃力こそないが距離を選ばずどこからでも相手の死角を突くことができる動きで容易にセンサーを振り切ることができる。けっきょくこのまま30分を圧倒し続けたパンツァーおおばん号がパーフェクト・ゲームでオーガイザーに勝利、終盤戦に望みを繋げる結果となった。

「でも変な機体! <(゚ )彡」

DiceTravelerはかた号 10 (30分判定) 太極師         08
メガロバイソン8    10 (30分判定) セント・マルタ     07
アストロタコボールフォー10 (30分判定) ねころけっと試作鶺鴒  05
ガルディ        08 (30分停止) リアルタイプGIMM  08
パンツァーおおばん号  08 (30分判定) オーガイザー      06
バラクーダ       06 (15分停止) 魔王          10


ストライク・シリーズ九日目 = Days 9th =

 前日の対戦で上位陣がことごとく星を落とす波乱が起こり、4チームが1位で並び4チームが勝ち星1つの差でそれを追う混戦になる。リーグ戦の日程は残り3日、ほとんどのチームに突破のチャンスがありそれはチーム龍も同様だった。

「ここまで来たらリスク覚悟で攻めきるつもりだ。オペレート頼むよ」
「は、はい!」

 コクピットから半ば激励するように声をかけるシャル・マクニコルだが、上ずった言葉を返している夏秋蘭も不慣れなだけでオペレータとしての実力は信頼に値する。負けられない星で雷撃機バラクーダを相手にしてペースを握らせず押し切ること、優位に立てば充分に勝てる相手だがひとたびペースを奪われたら手が付けられなくなるから迷わず攻め切るのが良手と判断する。反応が遅れれば一瞬の攻防が命取りになりかねない。
 時空加速を乱発して相対距離を選ばず一撃離脱を繰り返すのがバラクーダの雷撃戦であり、格闘戦を得意とする太極師は相手が咬みついてくるタイミングに合わせて拳を叩き込むしかない。はたして開始と同時に飛び込んできたバラクーダのアクセルバイトに深々と牙を突き立てられるが、宣言した通りに硬気功を打ち込んだ太極師は二撃目のアクセルバイトに対しても相打ちの硬気功を命中させる。だがどこからでも雷撃戦を狙うバラクーダはこの零距離からでも時空加速を敢行すると目の前で姿を消した次の瞬間には遠ざかっていて火閃だけが残される。

「左後方190度!座標送ります!」
「有難う!」

 損傷率では押されているが、常軌を逸したバラクーダの加速を捉えて攻撃を命中させることができていたから最初の攻防としては悪くない。問題は一撃離脱後に相手が消えたこの後、バラクーダをもう一度捕まえることができるかで、姿を見失ったまま削られることになれば装甲から吹き上げる火で望まない失血死を強要させられることになる。もしも勝つことだけを考えるなら、損傷率で優位な現状を確保して逃げ回るのがバラクーダの勝ち筋だが先方がそれを望まずアタックを繰り返してくることはシャルには確信があった。

「確信があっても捕まえられなければ意味はないけどね」
「装甲値が減少中、このままでは15分で停止します!」

 秋蘭の声に意識と神経を集中する。彼女が言う15分とはあくまでも現状を維持できた場合の数字であり、更に攻撃を受ければ10分にも5分にも削られる。この状況でもシャルの選択肢は最初から一つだけで接近してくる相手を硬気功で迎撃するだけだが、なにしろレーダーにも映らずセンサーでも追うことができない標的を拳で殴らなければならない。彼らが狙うのは目を閉じて盲目的な運に頼る方法ではなく、たとえリアルタイムでなくともあらゆる情報からバラクーダの軌跡とタイミングを予測する、ごく正当な方法だった。シャルのパイロットとしての経験だけでは不可能でも、太極師の性能とオペレータの能力を駆使すれば決して不可能とは思わない。
 ここまでぎりぎりの展開で押されていた太極師がアクセルバイトを受けて更に装甲を削られると、いよいよ機動停止寸前になるがそれでもパイロットもオペレータもモニタやセンサーから目を離さず脳裏に最適解を描こうとする。一撃では逆転できないことまで計算して相対座標を掴むと機体ごと当たる勢いで硬気功を連打、これで強引に押し切ると装甲が破られる直前にバラクーダを沈黙させることに成功する。薄氷を履む、だが疑いなく狙い通りの会心の勝利である。

メガロバイソン8    12 (10分判定) ガルディ        08
DiceTravelerはかた号 12 (05分停止) パンツァーおおばん号  08
リアルタイプGIMM  10 (24分判定) アストロタコボールフォー10
太極師         10 (22分停止) バラクーダ       06
セント・マルタ     09 (11分停止) 魔王          10
ねころけっと試作鶺鴒  07 (30分判定) オーガイザー      06


ストライク・シリーズ十日目 = Days 10th =

 前大会優勝したザ・ピットは機体を聖人から魔王に変更しての参戦、もともと初期参加時に試験機として導入されたが前任パイロットの更迭に伴い封印されていた機体である。吊られた人形めいた外見をしていた聖人に比べると魔王は推進システムのある肩部が不恰好に大きな人型をした機体であり、共通しているのは顔にあたる部分が人間の面になっていることと直結式VM−AXと呼ばれる機体とパイロットを有線接続するシステムだった。

「外見だけだ。中身は換装されてお前の機体になっている」
「システムコネクト完了、手順開始します」

 オペレータブースから指示らしきものを伝えているウォルフガング卿の呼びかけに対しても、フランシスは言葉も表情も変化を見せずよほど機械人形めいて思わせる。直結式VM−AXに適応するために用意された彼女は一切の感情というものを見せることがなく、その代わりに機械よりも正確に機体を操ることができた。彼女自身も魔王用に換装されていて手の甲と首、こめかみにそれぞれコネクタが設けられると機体と直接ケーブルで繋がれていた。対戦相手となるメガロバイソン8は遠距離からの砲戦を得意とする攻撃機で、多弾砲撃の撃ち合いになるだろうがフランシスはそれすらも無関心な様子でマニュアルに定められた操作を忠実に続けている。

「起動完了、戦闘開始します」

 無造作に機体を展開する魔王に先制したのはメガロバイソンで、巨大なアンカーホイップが放たれると正面から装甲に打ち込まれる。宇宙空間を横断する鎖が引き戻されている間にロックオンの照準が次々と合わされていくが魔王の渋面もフランシスの無表情も目の前の危険を相手に動揺する素振りがなく、砲戦距離に入ると同時に双方の砲門が開かれた。

「煉獄を解放」

 時空移動システムを砲撃に応用した空間振動砲が魔王の両肩から放たれるが、同時にメガロバイソン8から一斉射出されたムラクモオロチ・改が名のごとく多頭の竜のように襲いかかると魔王の装甲に次々と牙を突き立てた。威力でも練度でもバイソン8が圧倒的に上回るが、それはあくまでもフランシスが操る魔王と比べての話である。緊急システムが起動すると魔王の渋面が禍々しい笑顔に変わり、ジェネレータが全解放されると同時にダウンロード接続されたAIがフランシスの脳髄に書き込まれて瞳孔が散大する。

「一撃で決めてやる!祈る時間だけ用意しなっ!」

 AIの演算能力とパイロットの技量が完璧に調和して魔王のセンサーをコントロールする。撃ち放たれる煉獄の砲火だけではなく、襲いかかるムラクモオロチの鎌首をも捉えた計算式が無数の火竜を描くと虚空を横切って双方の機体が炎に包まれた。一瞬の後、荒ぶる野牛を沈黙させた魔王は辛うじて勝者の姿で漂い、コクピットでは機械人形の顔をしたフランシスが戦闘行動の終了宣言を壊れたテープレコーダのように繰り返していた。

「戦闘行動終了。損傷大、回収を要請します」
「戦闘行動終了。損傷大、回収を要請します・・・」

DiceTravelerはかた号 14 (30分判定) ねころけっと試作鶺鴒  07
魔王          12 (03分停止) メガロバイソン8    12
リアルタイプGIMM  11 (24分引分) 太極師         11
セント・マルタ     11 (30分判定) アストロタコボールフォー10
ガルディ        10 (27分停止) パンツァーおおばん号  08
オーガイザー      08 (28分停止) バラクーダ       06


ストライク・シリーズ十一日目 = Days 11th =

 いよいよリーグ戦も最終日を迎えるが、当人たちを含めて誰にも意外だったのは某番組企画で設立されたはずのチームHDYLWが快進撃の挙句早々に優勝決定戦への進出を決めてしまったことだろう。上位陣が星を落とし合う混戦模様のリーグ戦だったとはいえここまで十戦して七勝という戦績は充分に胸を張れるものだったし、圧倒できずとも接戦を制して勝利を積み重ねていく戦いぶりで5日目にはあの女王ロストヴァから勝ち星を奪ったほどである。とはいえそれで調子こいていい気になっていたのはプロデューサーとかディレクターたち番組スタッフの方で、アイドル兼パイロット兼イロモノを一身に負う塩追津みひろにすれば偶然でもここまで出来れば大したものだと謙虚に思いつつ気分は悪くない。

「ももももしもこれでスカウトとか来たらどーしよう!?こまるなーこまるよなーわたしアイドルなのに」
「安心しろ(いろんな意味で)」

 いまどきのアイドルは一芸に秀でたほうがお仕事をもらいやすいとはいえ、このままロイフォッカースペサルに乗ってスカルリーダーに選ばれたらどうしようかと彼女もやはり調子こいていい気になっているらしい。この日はすでに予選落ちが決まったオーガイザーに胸を貸してあげる消化試合みたいなもので、それでも華麗なフィニッシュを狙おうとして足下をすくわれたらカッコ悪いから安全策をとって削り合いからの逃げ切りを狙う、つもりでいたのだが対戦は終始優位を保ちながら終了前5分間でオーガイザーのガイ・スォードからのコンビネーションを食らうとまさかの逆転負け。画竜点睛こそ欠いたが優勝決定戦進出は変わらず、番組的にはオイシかったからOKとして大一番への準備を進めている。
 そしてHDYLWに続くもう一枠だが、勝ち点で二位のザ・ピットと同じくメガロバイソンプロジェクトのどちらかが勝てばそのまま優勝決定戦への進出が決まるが両者とも負けた場合は更に勝ち点で続く三チームにも可能性が生まれ、計五チームが一つの枠を争うという状況になっていた。この状況で大会運営側もあからさまに興業としての盛り上がりを意識したらしく、最終日は全対戦が終わるまで最後の枠が確定しない順番でカードを組んでいる。チャンスのあるチームは自分の試合を勝った上で、残る試合を祈りながら待つしかないというわけだ。

「プレッシャーを感じても仕方ない。やるだけやってみようか」
「は、はい!」

 チーム龍と太極師の対戦相手はTeamKK擁するねころけっと。混戦をかろうじて生き延びて最終戦までリーグ突破の可能性を残してきた彼らとしては、ここで難敵を相手にして勝利を得たいところだがこのような場面でねころけっとは難敵中の難敵には違いない。あくまで近接格闘戦を狙う太極師に、高速機動で飛び回られた死角からねこしっぽを打ち込まれてしまうとダメージ自体はかすった程度のわずかなものだが、このわずかなダメージを挽回することができずにそのまま30分を逃げ切られてしまう。
 これでチーム龍も脱落、続いて登場したのはクイーンズ・ガードとロストヴァ駆るセント・マルタ。こちらも中位下位の戦績から追いすがってみせた粘り強さが彼ららしく、最終戦でチームGPとガルディを相手にして勝たなければならない事情も他と変わらない。勝つしかないなら勝つだけだとばかり、開始と同時に鬼気迫る勢いでランサーフォースを抜き放ったセント・マルタはガルディのレーザーキャノンを被弾しながら振り回した十文字槍を突き立てて圧倒する。むろんガルディも無抵抗に捧げられる羊ではなく正面から撃ち合いに応じるが、瞬く間に装甲を削られると危機を察した機体が自ら縛めを解くかのようにリミッターを解除する。フィールド化されたレーザーキャノンの砲身を両手で握り、十文字槍を相手にして薙刀を振り回すかのように斬りかかる。

「オレの、ガルディを舐めんなーッ!」
「串刺しになりなさいな!」

 ジェネレータを暴走させて正面から突進するガルディに容赦のないランサーフォースが深々と突き刺さる。これで勝負ありかと思わせたがガルディは半ば身を貫かれながらなおも突進すると振り回したレーザーで斬撃、更にもう一撃斬りつけると互いの装甲にエネルギー・フィールドの槍が突き立てられたような姿になる。これで一瞬、動きが止まるがわずかに先に動いたのはガルディで、レーザーキャノンのエネルギーユニットを引きちぎると強引に斬りつけてセント・マルタを力づくで沈黙させてみせた。ガルディは意地の勝利、セント・マルタはこれでリーグ戦脱落が決定する。
 残るは二戦、先んじて登場するメガロバイソンプロジェクトはイハラ技研を相手に勝利すれば少なくとも同率二位による自力でのリーグ突破が確定する。星勘定を難しく考えるよりも一方的に攻めて勝つ、それが彼らのスタイルだが機動力を活かした全距離対応のスタイルで反撃を狙ってくるパンツァーおおばん号は実のところ彼らにとって決して楽なタイプの相手とは言えない。どのような技術で実現しているのか分からないが、オオバンというよりも砂浜を走るチドリのように宇宙空間をだかだかと二足歩行で走り回ると降りそそぐムラクモオロチの光条をかいくぐってくる。不気味な高速移動の軌跡はアンカーホイップでも捉えることができず、そのまま懐に飛び込まれると細かいつっつきや蹴りを受けてみるみる装甲を削られてしまう。圧倒してやんぜと言わんばかり、傍受されたオペレータの交信がコンソールに表示される。

「(#`皿')凸」
「こちらも顔文字で対応します!凸(゚Д゚#)」

 だがメージの対応も実らずメガロバイソン8はこのまま至近距離で押し切られて無念の撃沈、これで優勝決定戦に進出する最後の一枠は最終戦、魔王とリアルタイプGIMMの結果で決まることになる。両者ともコンセプトは明確で、魔王は緊急システムの起動を前提にした多弾頭砲撃による圧倒を狙う機体だが、GIMMは重装甲と安定した性能を活かして長期戦を狙う軍用機そのままの仕様である。連邦軍技術開発部は試験機に冗談とも遊びともつかない奇妙な機体を投入することもあるが、今回はリアルタイプと謳うだけあってそうした要素は見当たらない。

「機体名がGMじゃなくてGIMMなんだよな」
「リアルタイプはプラモデルの箱絵の文字もGIMMになっているからな」

 珍しく口を開いたメカニックの言葉にコイツやるなと思わせるが、引き分けでは勝ち点に勝る魔王の優勝決定戦進出が決まってしまうからいずれにしても勝つしかない。魔王の狙いは遠距離での砲戦にあるが、ジムとしては相手の好きにさせる理由はなく前進してビームサーベルでの接近戦を狙う。すかさず距離をとった魔王が煉獄を射出、これを落ち着いてシールドで防ぎながら砲戦用に出力を切り替えたビームサーベルから長射程のエネルギーが突き出された。ビーム兵器と重装甲の組み合わせという、連邦軍本来のスタイルを踏襲した速攻に成功すると高出力の一撃を被弾した魔王も緊急システムを起動、構わず前進するGIMMは頭部の60mmバルカンを打ち込むとここからあえて後退、危険距離を承知で砲戦に応じるべくビームサーベルのエネルギーを解放する。

「どーせ危ないならお互い様!ってね」

 飛び交う光条が宇宙空間を一瞬で横断するとGIMMに降りそそぐが、飛来する弾道を予測したジムはシールドを構えて数弾を受けてみせると同時に鋭角的に突き出したビームサーベルの長射程エネルギーを魔王のみぞおちに正確に突き立ててみせた。この距離でまともに撃ち合えば不利は免れないが、先行して優位を得た状況なら魔王の破壊力に対するよりもいっそ相打ち覚悟の削り合いを挑むことは装甲の厚いGIMMにとって無謀な選択肢ではない。機体の特性に賭けたジムの判断は正しく報われると速戦に応じた魔王を撃破、これで単独二位となり最終戦でのリーグ突破、優勝決定戦進出を決めてみせた。

リアルタイプGIMM  13 (06分停止) 魔王          12
ガルディ        12 (12分停止) セント・マルタ     11
オーガイザー      10 (30分判定) DiceTravelerはかた号 14
パンツァーおおばん号  10 (19分停止) メガロバイソン8    12
ねころけっと試作鶺鴒  09 (30分判定) 太極師         11
バラクーダ       08 (30分判定) アストロタコボールフォー10


STRIKE SIRIES IX ストライク・シリーズ優勝決定戦 = The Final =
DiceTravelerはかた号vsリアルタイプGIMM

photo photo  最近わりと知名度が上がってきて番組でもたびたび時間を任されるようになった塩追津みひろだが、スタッフから無茶振りをされてキレる芸風?が定番になっているということはこれからも無茶振りされるということですねそうですねということには幸い誰も気がついていない。そもそもこの企画も自称アイドルが戦闘機バトルに参戦してみよう!でも機体と装備はサイコロで決めようかという縛りで挑戦したら勝ったり負けたりしながらとうとう今大会では優勝決定戦まで来てしまって他の参加者や応援している方々に心中申し訳なく思わなくもない。もちろん彼女たちもまじめに参加していないわけではないがハッキリいって動機は不純だった(註:もっと不純なチームもいるから大丈夫です)。
 いいんですかねーと言おうとして本番前にスタッフルームを通りがかったみひろだが、ふとテーブルにある企画書を見つけると土建屋と一緒に無人惑星開発とか海溝8000メートルで生き物を探せとか目を疑うようなアイデアが書かれていてアイドルとはいったい何をするヒトだったっけと過去の「企画会議」を脳裏に映し出す。

「いまこそ伝説の兼業農家アイドルを再び」
「アルミ溶接とか難易度高すぎだろ!バックがジャ〇ーさんみたく強いと思ってるのかー!そして5人もいない!!」
「そーいえばこないだの北九州遺跡調査の放送どうなった?」
「あれはまるごと破棄するって政府、げふんげふん頭突木チーフが持ってったからさー。宇宙的に忘れて。うん」
「なんだよ政府って!?BPOどころかUFOかよ!」

 走馬灯のように思い返してみるとよほどいらぬ苦労をしているような気もするが、これで活躍できなければ新曲発表のお披露目会を「本人を模した着ぐるみ」でやらされる罰ゲームとかが待っているのでアイドル稼業も楽ではない。ともあれ今大会はよい宣伝になっているに違いないしスポンサーへの覚えもいいだろうからこれでビッグになって不治村Pとか熟死野Dとかアゴでこき使ってやるんだーと健全に考えるみひろの動機は個人的私怨かもしれなかった。
 そんな私欲いっぱい俗心いっぱいのHDYLWに対するのが連邦軍技術開発部でいいのかしらと思わなくもないが、彼らは彼らなりに趣味的な機体開発を追求しているチームでかなりの意欲作でも気にせずパイロットに押し付けているとの評判である。なにしろ彼がパイロットに選ばれた理由も「名前がジムだから」という冗談が半ば本気に聞こえてしまうくらいこれはRGM79ジムにすべてを賭けている男たちの物語である。

「いや別にすべてを賭けてはいないけどね」
「だが今回の再現度はすごいぞ。だてにGIMMで登録していない」

 ジムのつぶやきなど気にしていないかのように、メカニックのジェガンが断言する自信作リアルタイプGIMMは前回のなでしこGMで使用した外套への被ダメージと各種塗装のハガレや劣化の実戦データを参考にして各種マーキング用途に適した塗料と塗装方法を選定、機体には派手目にラインやコーションを施したリアルタイプ仕様の機体である。なにしろGIMMとは実際にプラモデルの箱絵に描かれていた名前で、つまり機体をリアルに再現したプラモデルをリアルに再現した機体なのだからタマゴが先かヒヨコが先かという彼らのこだわりが見えるだろう。
 優勝決定戦に進出した両者はどちらも安定した戦術がとれる汎用機で、パイロットも守勢に粘り強くそれが大崩れをせずに勝ち残ることができた一因かもしれない。多少の差があるとすればGIMMはやや重装甲よりで、ダイストラベラーはやや多弾頭攻撃よりという程度だろうか。

「このカタパルトGがキツいから好きじゃないんだけど・・・行くよ行きますよ行きまーす!」
「出るぜー!」

 滑走するカタパルトからGIMMが打ち出されると、ちょうど反対側ではダイストラベラーが切り離されて双方が宇宙空間に放出される。姿勢制御、座標確認、武器装備の展開など必要な一連の動作を手際よく済ませてしまうジムに比べると本職がキレ芸のみひろはこうしためんどうな作業は自動制御に任せたほうが本当はよいのだがそれでは面白くないから自動制御があることは内緒にしてすべて手作業で行わせていた。

「なんですとー!?」

 思わぬ事実に衝撃を受けたダイストラベラーがもたついている間に、頭部の60mmバルカン砲で牽制したGIMMが遠距離からビームサーベルを突き出してみせる。ライフルと変わらない長射程のビームが襲いかかるとダイストラベラーは防戦一方になるが、守勢に粘り強いと評されるみひろはシールドでブロッキングしてペースを握らせない。そのまま攻撃が途切れた瞬間に合わせてヘブンパニッシャーを発射、偶然かもしれないが神がかったタイミングで全弾がGIMMの装甲に吸い込まれる。攻めながら一度の撃ち合いで押し返されたGIMMも動揺したそぶりは見せず、遠距離からビームサーベルを突き出す戦法を継続する。先ほどの被弾は事故として割り切る、あくまで装甲を活かして正面からの撃ち合いを仕掛けるのが彼らの作戦だった。

「デカいジェネレータと厚い装甲があればGMだって!」
「それじゃあガンダムだろ」

 開始10分、先ほどの意趣返しとばかりダイストラベラーの座標を捉えたGIMMが正確にビームサーベルを突き込むと今度はシールドをかいくぐって命中。ガトリングガンによる反撃を装甲で弾くと動きを止められたところで再びヘブンバニッシャーを被弾してまたも戦況を五分に戻されてしまう。二度のチャレンジも失敗したGIMMだが三度仕掛けるとビームサーベルで攻撃、今度は正確さを度外視して乱暴にエネルギー弾をばらまくと数発が命中してダイストラベラーの装甲を焼いてみせた。半数を弾くみひろのブロック率は確かにすさまじいが、ならばそれ以上に当てればよい。

「そこっ!」

 一度は言ってみたかった掛け声からビームサーベルのエネルギーを全解放して突撃、正面からヘブンバニッシャーを連続被弾するが構わず攻めると半ば強引にダイストラベラーを沈黙させる。ストロングポイントを信じてあえて強引に押し切ってみせたリアルタイプGIMMが勝利して連邦軍技術開発部が久々の栄冠を奪取した。

リアルタイプGIMM(18分機動停止13vs0)Dice-traveler ver.はかた号

優勝  ジム           リアルタイプGIMM     12戦07勝  /通算95戦50勝
準優勝 塩追津みひろ       Dice-travelerはかた号   12戦07勝  /通算24戦13勝
3位  マック・ザクレス     メガロバイソン8       11戦06勝  /通算107戦65勝
3位  フランシス=ヨハンナ   魔王             11戦06勝  /通算60戦33勝
3位  フィジー高崎       ガルディ           11戦06勝  /通算11戦06勝
6位  ロストヴァ・トゥルビヨン セント・マルタ        11戦05勝  /通算109戦65勝
6位  シャル・マクニコル    太極師            11戦05勝  /通算106戦42勝
8位  神代進          アストロタコボールフォー   11戦05勝  /通算106戦58勝
8位  テムウ・ガルナ      パンツァーおおばん号     11戦05勝  /通算105戦46勝
8位  無頼兄・龍波       オーガイザー         11戦05勝  /通算105戦42勝
11位 山本いそべ        ねころけっと試作型鶺鴒    11戦04勝  /通算107戦60勝
12位 ネス・フェザード     バラクーダ          11戦04勝  /通算85戦39勝

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