MDの相性はあるのか?

Aw社のMDミニコンポを買った。 厳密に言えばコンポ風の一体型ミニステレオだ。 何れにしても、私にとっては生まれて初めてのMD機器だ。 同時に録音用のMDメディアも買った。 M社の2種類のディスクだが、仮にこれらを「ハイグレード」と「ローグレード」と呼ぶことにしよう。

先ずはローグレードのメディアを使ってCDから録音してみたが、エラーが頻発した。 録音が強制終了される「重大な」エラーだ。 始めは、CDに傷があるのかとも思ったが、CDにはとくに問題はないようで、違うCDでも同じエラーが起こった。 そこでハイグレードのメディアで録音してみた。 今度はエラーも起きずに録音できた。

誰でも考えつくだろうが、メディアが不良品ではないのか? しかし一流メーカの製品、しかも新品でこれほど多く(10枚中で約5枚)の不良品があるとは思えなかった。 今までMDは使ったことがないので、これが異常なのか、よくあることなのは、全く見当が付かなかった。 そこで、Aw社とM社にEメールを出した。

Aw社に対しては「ディスクとの相性の良し悪しはあるのか?」、M社に対しては「特定の機器でのトラブルが起きているのか? 製品のグレードによってエラーの起こる頻度が違うのか?」と問い合わせた。 2社とも直ぐに返答をくれた。

しかも、何れのメールも丁寧な内容で、それぞれのメーカに対して好感の持てるものだった。 しかし、内容的には多少の不満が残った。 Aw社からの返答メールには「メディアとの相性はありません。 規格にあったMDであれば全く問題ありません。 もしエラーが頻発するのであれば、故障の可能性もあるのでサービスセンタに持ってきて下さい」と書かれており、M社からの返答には「不良品の可能性もあるので、問題のあったディスクは送料を当社が負担して交換します」と書かれていた。

私が期待していた答えは、「機器とメディアとの相性は確かにある。 録音エラーはたまに起きる。 グレードの低い製品ほどエラーは起きやすい」というものだった。 しかしメーカとしては、相性があると言うことは公式に認めるわけには行かないのだろう。 実際に、ある量販店の店員も「相性はあります。 とくにT社でそういう話を多く聞きます。 もっとも、それだけT社のディスクが多く売れているんでしょうが」と言っていた。

気になったので、インターネットでメディアメーカ各社のホームページを読んでみたが、何れにも「当社の×××(ハイグレード製品)は、シェルに×××構造を採用しいるのでエラー率が低い」という様な事が書かれていた。 「ハイグレードはエラー率が低い」と言うことは、「ローグレード製品ではエラーが起こり易い」と解釈できるのではないか。

アナログのカセットなら、「音飛び」や「ノイズ」がちょっと気になるで済むだろうが、デジタルでは全く録音できないという事態になる。 カラフルで綺麗なシェル(ケース)や、人気グループの名前や、値段の安さでメディアを選ぶと、録音エラーが頻発し、結局は後悔することになる。

もしも読者の皆さんの中に、特定のオーディオ機器(メーカ)と、特定のメディア(グレード)とで「相性の悪さ」を経験した方がいましたらメール[(a)→@、5xm→mx5]をください。

(98/11/28)


 
後日談 (各社のMDを調査)

問題を起こしたMDメディアはM社のローグレード製品だった。 その後、メーカによる違いを知るため、各社(T社、Ax社、Sn社)のローグレード製品を買い集めてみた。 ちなみにMDを購入した店は、池袋駅前の西口広場に面したマクドナルドの裏にあるディスカウント店で、私の調べた範囲で最もMDの安い店だ。

ここでいうローグレード製品とは、主にカラーシェルに入ったMDのことで、「××構造を採用した」という黒いシェルに入ったMDはミドルグレード製品に分類することにしよう。 もし、ローグレード製品でも問題なく録音できれば、その会社の製品は、当然ながら上位グレード製品を含めて、安心して使えることになる。

その結果は、T社とAx社のMDは全く問題が起きなかった。 しかも、Ax社のケースはインデックスカードが入れ易いように工夫されている。

S社には若干(1枚で1〜2ヶ所)音飛びが起きるMD(10枚中で2〜3枚)があったが、イレース後に再録音したら問題はなかった。 M社のような録音時の致命的エラーは起きなかった。 録音時に「重大な」エラーが起きたM社のディスクは、再録音ではエラーは起きなかったが、再生時に所々で音飛びが起きていた。 S社とM社のディスクも、イレース後に再録音することで音飛びは直った。

M社製品でエラーが頻発したのはやはり異常であった。 M社が言うように、製造上の不良があったのだろうか。 しかも、そんなに高い率で...?

もっとも、私が録音に使ったMDコンポはAw社のものであるので、他社のコンポ等で録音した場合は全く異なる結果になるかもしれない。 しかし、これまでに分かったことは、安いMDでは誰でも気が付く問題として、とくに音飛びが起きやすい傾向があると言うことだ。 残念ながら、音質の劣化は私の耳では聞き分けられなかった。

私からのアドバイスは、値段がちょっと高くても黒い「×××構造」のシェルに入ったMDを買う方が無難で、カラーシェルに入ったMDは避けた方が良い、と言うことだ。

(99/1/3)


 
読者からの情報(1)  やはり、コンポが悪い(?)

検索サーバでこのページを偶然見つけたというSHISEIさんからメールを頂きました。

SHISEIさんはメールの中で、 「 MDメディアについてですが、多分メディアよりもAw社製のコンポが悪いと思います。 私は、Sn社製のMDコンポを約1年半使っていますけど、このような問題は起きていません 」 と書いていました。

やはり、そうなのでしょうか。 コンポに疑いがあるとしても、Aw社のサービスセンターまで持っていくのは面倒ですし...さて、どうしよう。

Aw社の名誉のために言っておきますと、私が買ったのはAw社製品の中でも、比較的に値段の安い製品です。 でも「安かろ××かろ」ではねぇ...

(99/3/7)


 
比較レポート  各社メディアのエラー率に差

The MiniDisc Community Page のFAQページ Mini Disc Frequently Asked Questions の中で、Eric Woudenberg が各社のMDメディアのエラー率比較("Blank MiniDisc Raw Bit Error Rates Compared")を行っている。

方法は、ソニーのMDデッキ(Sony MDS-503 MiniDisc Deck)のテストモードを使い、米国で発売されているメディア(8社、12ブランド)について、エラー率(RBER: raw bit error rate per second)を測定している。 測定結果はディスクの内周(In)・中間(Mid)・外周(Out)の3ヶ所での平均値と最大値で示している。

エラー率の許容限界を(CDと同じ)220としてるが、テストした全てのディスクのエラー率が220以下であり、問題は無かった、と書いている。 しかし、ブランド間でのエラー率の数値には明らかな差がある。 例えば、最も少ないディスクは平均値が0.76〜0.87で、最大値が3〜5となっている。

これに対して、最も多いディスクでは平均値が2.0〜43.03で、最大値は7〜88となっている。 このディスクで平均値・最大値が大きいのは何れもディスクの内周部で、しかもアドレスエラーが発生したという。

テストしたサンプル数が少ないため、これらの数値を「メーカの実力」と判断することは出来ない。 しかしMDメディアのブランド(少なくとも製造ロット)間でのエラー率の差があることは言えるだろう。



(99/3/7)


 
読者からの情報(2)  やはり、メディアが悪い(?)

飯能市(或いはその近辺)にお住まいの内沼さんからメール(*)を頂きました。

内沼さんは、Sn社のMDデッキとM社のMD5枚パックを購入しました。 早速Ok社のミニコンポを接続して、CDから録音してみたところ、5枚全部で音飛びが起きました。 MDコンポを購入店で交換してもらったが同じ現象が起きるので、今度はSn社のメディアを買って録音したら問題は起きなかったそうです。

M社に現品を郵送したところ、メディアに異常があったと言うことで、代替品+試供品を送ってきたそうです。

内沼さんの場合は、特定メディアの不良と言えるでしょう。 そしてメディア不良が明らかになったら、現品をメーカに返送する、というのが賢い方法のようです。

(*)内沼さんからメール(全文)はこちらにあります。   


(99/3/27)


 
MDはアナログ機器

MDはデジタル機器だが、録音と再生のプロセスはアナログだ。 録音では、磁界をかけながらレーザで約180度に加熱し、記録層の位相を反転させる。 再生では、レーザの反射光を偏光器を通して強弱を検知する。

オーディオ信号をデジタル化した後での録音と再生は、温度差、光の偏向成分・強弱というアナログ的な特性を利用している。 当然ながらメディアは、それぞれに固有な物理特性値(温度特性や反射率など)を持っている。 また録音再生機器では、レーザ光の強度、強弱を判定する敷居値(スレッシュ)などをメーカ毎に設定している。 MDに関する規格があると言っても、その規格値には幅を持たせてあり、メーカにより規格の運用は異なる。

さらに、ディスクを納めるシェルの構造や材質により、回転時の振動という機械的な特性値が違ってくる。 また、レーザのトラッキング方式もメーカによって異なる。

実際には、各メーカが独自に選定したMDメディアをリファレンスとして、MD機器の調整を行っているのが現状だろう。 だとすれば、メディアと機器の相性が存在しても不思議ではない。

やはり「MDには相性がある」が私の持論、いや確信に近いものだ。

(99/3/27)



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