【SS】 再会 2004/12/18 何度目のイモを振ってやったのか覚えていないのだが、最後のイモはとりあえず最悪だった。 引き際という物を心得ていない・・・ 「お高くとまりやがって、このネルフの○□×・・・」 自信があったのであろうその表情が全くにうち砕かれ、それなりに格好の良い外見と、あまり格好の良くない捨て台詞の発現が、具体的に男の本音と器量を覗かせて垣間見せている悪意な訳なのだが、当のアスカはと言うと、あんまり気にした様子でもなくグラスを傾けていた。 ハンスだか、ズィンダーマンだとか名乗っていた青年実業家が消え失せて、落ち着きが取り戻されて行くラウンジにおいて、アスカは独り言(ひとりご)ちる・・・ 「つまらないわ・・・」 つまらない・・・ くだらない・・・ くだらない・・・ つまらない・・・ 人生は、何と無意味で、かつ、多くのくだらなさで出来ているのだろう? 今夜のお酒は、ほろ苦くなりそうだった。 美味しく感じられた例(ため)しなど、再び独りで生きて行く事になったあの時以来、只の一度も無かったのだけれども・・・ 【SS】 再会 written by BIG.T (2004/12/18)
ひらひらと舞い落ち行く雪の中、一人の美女(自称)が、仮住まい(滞在ホテル)へ向かう帰路の途上で遊んでいる。 他人から見ても美女なのだから、やっぱり美女なのだろう。 凛々しさと大人らしさを兼ね備えた年相応の外見は、その上に、『絶世の』と言う形容詞を付けておいても全くの言い過ぎではなかったのだが、この女性、そう語るには幾分、行動が子ども過ぎた。 ゴミ箱を蹴飛ばし、ガードレールに飛び乗り、奇声を上げて笑っている・・・ 「私たちの成果でござい〜」 雪に舞い、月に舞う彼女は、絶妙のバランスで地上に舞い降りた天女を演じる天才女優であるかのようにも見えている。 何年も前から『四季』を取り戻した日本国において、今の季節は冬の季節・・・ とりたてて日本に居残る理由が在った訳でもないその後の彼女にとって、それは寂寥と後悔感を伴う季節の訪れだった。 「あいつが、私を選ばなかったから・・・」 だから、私も選ばない。選べない・・・ 寒風吹きすさぶ世界の中心で、アスカは思う。 「命燃え尽きる時まで、綾波と共に・・・」 人づてにそう言っていたと聞かされた時、彼女の感想は、『ふ〜ん』ぐらいのものだった。 「だからお見舞いにも来なかったんだ・・・」 病院の個室ベットの上で、ようやくにしてその『考え』に思い至っていたのは、本当にしばらく後になってからの事だった。 意識を取り戻す前には頻繁にお見舞いに来てくれていたと言う事であるらしい碇シンジと言う少年は、結局、意識を取り戻したアスカの病室を訪れる事も無く、消えていた・・・ 忙しさにかまける特務機関作戦部長、葛城ミサトなる女性に至っては、とうとう只の一度もアスカの病室を訪れる事も無く、亡くなったと言う事であるらしい。 楽しいから同居した・・・ 笑い合えるからこその『家族』だったのに・・・ 「フフフ・・・ バ〜カ・・・」 もし仮に、これから『出逢える』と言うのであれば、一体、どっちの同居人から文句を言ってやろう? 文句ならあるっ! 一杯あるわよっ! とりあえず同い年の馬鹿の方にはビンタかまして、ケチョンケチョンに蹴り倒して、何年間も『引き摺ら』せた事に対して、謝罪と賠償を要求し・・・ 「あ、あぶない!」 街中の噴水広場に差し掛かり、ふらふらと噴水べりを歩いているアスカの身体をフワリと抱きかかえた馬鹿が居た。 よ〜し、その喧嘩、買ったっ!! 瞬殺される事も厭(いと)わずして、私を助けるその度胸! 好意に値するコトアルネ・・・ 既に何を言っているのかも(たぶん)解っていないであろうアスカは、朧(おぼろ)な瞳でその青年を一目見るなりに、凍り付いていた。 年相応に成長しているとは言え、なんとなくに残っているその面影は、やっぱりバカで、マヌケで、スットコドッコイなまでにアンポンタンで・・・ 「危ないですよ? そんなに酔っているのに、こんな所を歩いたんじゃ・・・ って、え!? ちょっ・・・ え! ア、『アスカ』!? アスカなの?」 きっとこの夜は、幻影の夜・・・ こんなの『私』じゃない・・・ だから、もう少しだけ、このまま踊らせて居て欲しい・・・ 醒めたら私に・・・ 何時もの私にちゃ〜んと戻っているんだから・・・ |