NEON GENESIS
EVANGELION 2  #10  " Paradise Array "








 これでいいのだ!





 『右手』から太陽が昇り行く(主観上の西)のは「今居る所が南半球だから」と言う事をアスカに説明している際に、どういう訳だか『ネコヤナギ』の話になり、ついには『とんぼがえり』の話になってしまっていた。




 妙な程度に、そのフレーズが気に入ってしまった(らしい)アスカは、事あるごとに「これで良いのだ!」と可愛く繰り返している。




 エヘン!と胸を張ったようなその仕草の愛らしいミスマッチさが、なんとなくに可笑しくて頼もしくて、浜辺を歩きながらに二人して大笑いしていた。




 海岸に鎮座するP-EVA(参号機は、まるで狛犬(こまいぬ)のように外洋を睨み通している。




 原因『不明』で動かなくなって以降、(海からでも空からでも)何処からでも見えやすい位置関係で止まっており、救出部隊が間違っても『見逃す』と言う事は有り得ない巨大構造である事も幸(さいわ)いして、(未だに)見つけて欲しいような見つけて欲しくないような、曖昧なる心情(きぶん)を保ち続けるこの僕としては、非常に複雑な感情で以って見上げ眺めざるを得ない巨大なオブジェ(エヴァンゲリオンと成り果てていた。




 例えるなら、永遠に続いていて欲しい夏休みが、もうじき終わりを告げている八月第4週の気分(げんじつ)が、『狛犬ゲリオン』・・・




 と言ったら、少々語弊があるだろうか?




 宿題が溜まっている中学生や小学生であるならば、それを片付けられるのかどうかも非常に気になる一週間(ラストウィーク)となってしまうのだろうけれども・・・





「何がしたい?」





 宿題を片付ける必要のないこの僕は、とりあえず並んで歩いているアスカに対して声を掛けてみた。




「う〜ん」




 しばらく考える素振を見せてから首をかしげるアスカは、突然、思い付いたように密林(ジャングル)の方を指差している。




「ん?」



「ジャングル探検(クルーズ)、護衛付!!」



「・・・先に言っておくけど、象も、カバも、先住民も居ないんだからね。新厚木TDL(第三TDL)じゃないんだし・・・」



「え〜 水しぶきも無いのぉ〜 ウエスタン・リバー鉄道は?」



「ありません!」





 「これでいいのだ!」と言ってくれないアスカと二人で笑い合いながらに、密林に入るならそれなりに準備(けいかくも必要だろうから明日にしようという話で落ち着いて、その日も結局、礁湖(ラグーンを泳いで過ごしていた。




 アスカの見つけた黒蝶貝に入っている本物の黒真珠(ブラック・パール)とか、色とりどりの熱帯魚が織りなす海中パノラマを楽しんで、新鮮な海産物をバーベキューする・・・




 午後は、椰子(ヤシ)の木の木陰で昼寝をして、守護闘神(狛犬ゲリオン)の肩部分に乗っかり、沈み行く太陽(サンセット)を眺めていた。




 何事も穏やかで、そして、外部からは『何の連絡も無かった』半月の夜(ハーフムーン・セレナーデ)。





 そうして、一日が今日も過ぎて行った・・・