NEON GENESIS
EVANGELION 2  #10  " Paradise Array "








「ここに真実を語り行く・・・ 使徒侵攻(エンジェル・アタック)とは虚構である。大衝撃(インパクト)とは作為である。それは単なる手段にすぎず、その目的は、異常者宗教団体(ゼーレとその後継組織(ヴァイスハイトによる”地球圏”統一構想であり、その結果が齎(もたら)した被害の甚大さと人類社会に対するその歴史的犯罪性は、もはや告発するまでも無いだろう・・・。真実を知り得る我々は、世界に蔓延(はびこ)る新・帝国主義者(コスモスどもの恫喝・陰謀・策略などには屈しない! ここに大伯亜連合(UBAは、在りもしない対使徒軍事同盟("Anti Angels Alliance" 、トリプルA)からの離脱を宣言し、世界の脅威を自らに演出した総責任母体である国際連合・事務総局(統制派に対し、先制的対抗防衛手段へ移り行く事を通告する・・・」





 ブラジル=アルゼンチン連合(UBA)によるE兵器単独開発疑惑が真実である事を自らに公表し、論議が果てしなく紛糾する端緒となっていた第6次国連改革委員会、ハイレベル委員総会(第3新東京市:新・国連本部ビル)『五日目』の空気(ながれ)において、朗々(ろうろう)と響き渡りゆくBA連合・使節団代表部(テハス・ブリュンスタッド特命全権大使)より発せられた更なる言葉の爆弾は、日本と中国を抜き、GNP同率世界第2位の経済大国にまで登りつめたブラジル=アルゼンチン(UBA)による国際連合(UN)脱退事件となって、最後の止めを刺していた。





 インカム(翻訳機)を投げ捨て、次々に席を立つUBA衛星諸国家群(拡大メルコスル諸国)の動的(アクティブ)な同調(シンクロ)に比して、『連合派(フリーダム・ブルー』の盟友、インド(GNP第7位)、オーストラリア(GNP第8位)、南アフリカ共和国(GNP第14位)などの有力諸国家群(南部地域自由貿易同盟:SETL加盟国)は追随せず、その沈黙を保っている。




 様々な思惑が錯綜し、交錯して行く討議場(UNRC)の中、壇上から出口へと真っ直ぐに去り行くテハス・ブリュンスタッド特命全権大使に、『統制派(コスモス』、ブーテフリカ・ブーメジエン高等財務企画官が、横合いから声を掛けた。




 』の加護は要らんのかね?




 ブーメジエン企画官と、その隣に並び居座る『総帥』・アレクサンドル・ツーロン首席補佐官を等分に眺めながら、独逸系伯国(ブラジル)移民の末裔でもある金髪の女性外交官は、一時もその足どりを止めたりしない。




 " Deus e brasileiro "  ( 「神はブラジル人だ」 )




 一方、遠く離れた紐育(ニューヨーク)市において、中核となる北米軍団(UNF/NASS)に対する『統制権』行使を実行するカナン中将(防衛参議官)は、故・スプルーアンス上級特佐発案による対ブラジル=アルゼンチン攻撃計画(オレンジ・ツー)を推し進め、その対『E兵器』想定戦略に則(のっと)った軍団編成(トランスフォーメーション)の完成に、全精力を傾けていた。




 午前中には、召集された軍団配下の米国軍、加国軍、墨国軍高級将校、および国連軍中央作戦本部(CSO)・カールスクルーナ少将との調整会議に出席し、午後からは軍務局長、兼、統括特務部隊(パワーズ)司令官としての職務遂行に忙しい。




 連日、軍事参謀委員会(MSC)に詰めざるを得なくなった過密スケジュールの中にあって、その日は珍しく面会する人物も無く、一時(ひととき)の有余(ゆうよ)としての空白時間があり、文官でありながら軍務局第四課長でもあるスミルナ・サイモンズ補佐官(統制派)と共に、TV中継された『改革委員会(UNRC』の様子や動向を、具(つぶさ)に眺め見ていた。




 超大国・BA連合(UBA)が憤然と国際連合(UN)を脱退し、国連軍『分裂』が決定的な現実となった最大の場面(みせば)に至っても、まるで『想定の範囲内』とでも言うべき怜悧(れいり)な視線を送っているサイモンズ補佐官の傍らで、カナン中将は本来は『在り得ない』筈の直通コールサインに振り返り、局長室(オフィス)内の専用受話器を取り上げた。




 続いて、連動する映像モニターが立ち上がり、送信者のポップアップ・ウインドウが液晶前面に浮き上がる。




 そこに映(うつ)った精悍(せいかん)なる顔つきの中国人の映像は、国際連合軍(UNF)・野戦第三種兵装(プロテクター)を身に纏うと同時に、BA連合・特高警察特務機関セレステ(Celesteの紋章である『アイフ・ルーン』をもその襟(えり)に戴(いただ)いた、この世で最も油断ならない三兄弟(バーサーカー)の内の一人(いきのこり)だった。




「ノックして、もしもぉ〜し」




 何が可笑しいのか、半笑いの状態で電話をかけるパフォーマンス繰り広げたその男は、映像に映ったカナン中将を見とめると、一方的に『通告モドキ』を開始する。




「統制派(コスモス)のおじちゃんが、あんまりにも陰湿かつ陰険にイジメちゃってくれるので、大人しい僕達(BA連合)も、とうとうキレそうでぇ〜す。・・・断罪しますから、死んじゃってくださいね? 今すぐにっ!!」




 笑いをおさめ、豹(ひょう)のようなと形容される黒髪の中国人(チャイニーズ)は、次第に凄みを効かせ始めながらに、統制派軍人(コスモス・カラー)の巨星・・・ カナン中将の事を睨みつけていた。





「神様にお祈りは? 部屋の片隅でガタガタ震えて命乞いをする準備OK





 指でピストルを型作り、画面(モニター)上からまっすぐに心臓を狙い打つ仕草で、彼らは、彼らの『戦闘』儀式を開始する。





「・・・It's a "SHOW TIME"」





 恭(うやうや)しげに一礼すると共に映像(ファルス)は途切れ、同時に、(仕掛けられた爆薬が)館内(軍参委)を揺るがす大音響となって炸裂し、襲撃(ジェノサイド)に向けた一つ目のラッパとして、高らかに奏でられ、響き合うのだった・・・