NEON GENESIS
EVANGELION 2  #9  " Turning Point "  side-A2










「・・・ここは?」







 暗闇の中に居る僕は、たった一人だった・・・



 全てが荒涼たる世界の欠片・・・






 誰も居ない・・・



 何も無い・・・







 アスカ・・・ 綾波・・・ カヲル君・・・




 トウジ・・・ 委員長・・・




 ミサトさん・・・ 加持さん・・・ リツコさん・・・




 父さん・・・ 母さん・・・








 『ここ』に来れば、僕は、確かに
誰かには出会えるだろうと思っていたのに・・・








「そうか・・・ 独(ひと)りなのか・・・ そうだね・・・ そうかもしれないね・・・」





当(あ)てが外れた? 碇シンジ君?」





「 ・・・カヲル君!?」








 歩み行く事に疲れ果て、大きな木の下で木の幹に凭(もたれ)れかかっている僕の目の前に、14歳の姿をしたカヲル君が表れていた。





 僕はさほど驚かない。





 これは僕の
望み・・・





 
終わりを望んだ僕自身の心象なのであろうから・・・








「僕は死ねたの?」





「不要な肉体が消え去ったと言う意味ではね・・・ それは君たちリリンの願(ねがい)でもある。後戻りは出来ないよ・・・」





「ウン・・・」







 本当は、とても呆気のない出来事だったのかもしれません・・・






 あの世界から逃れられるのなら、どんなにか楽だっただろうとずっと考えていました。






 『戻って来る』と微笑んだ彼女(
アスカ)との約束を違(たが)えなくても良かったのであれば、僕は一体、何を想って生きていられたのでしょう?






 それでもなお、戻ると約した彼女から愛されていたくて・・・






 在り得なくても、愛し続けていたくて・・・






 その先にある世界を信じてみたくて・・・






 逢いたくて・・・








「・・・僕は残された世界の中でも、精一杯に頑張って、足掻(あが)き続けました・・・。隠れた勉強家だった加持さんアスカ達の昔を見倣って、高等教育に打ち込んでいた時期があったのも、彼女の言う『一歩手前』の男になりたかったからでしょう・・・ だけど、もう良い・・・ もう良いんだと思う・・・」







「・・・本当に?」







「・・・きっとね・・・ そうだろう? カヲル君・・・ 願わくば、このままこの僕を消して下さい・・・ この僕(シンジ)の痛み記憶を消して下さい・・・ 碇シンジは、昔も今も、それほど強い人間(おとこのこ)だったのではありませんよ?  ・・・最後には、この僕を受け入れてくれていた彼女(アスカ・ラングレー)を想い続けた過去の出来事も・・・  何も解らず、何も知らないまま亡くなった彼女(アスカ)の面影を、今ある彼女(アスカ・ホーネット)へと重ね合わせて自分勝手な愛情(れんあい)の対象にしてしまっていた無様さ思い上がりをも含めて・・・  今の僕にはもう痛いのです・・・ だから・・・」








「逃げるのかい? おもいで(アスカ君からも? 」







終わらせたいのです。僕の希望は、その中にしか見出せません・・・ 」








 カヲル君は、やれやれと言った仕種と表情を浮かべた。







 再度に口を開きかけようとしたカヲル君の後ろには綾波が居た・・・







 彼女は言った。








「貴方は、卑怯(ひきょう)だわ、碇君・・・」











A3パートへ続く