NEON GENESIS
EVANGELION 2  #9  " Turning Point "  side-B1












「20世紀は、『大量殺戮』の時代だった・・・」







 静かに語り出すカヲル君と、そのすぐ側で対等に燐立する綾波の二人は、ある意味、憐憫の情を含んだその物言いで、この僕の事を見詰めていた・・・







 田園風景の中に相対するこの僕は、静かに彼らの言いようを待っている。







 時には優しく・・・




 時には厳しく・・・







 語り出すカヲル君達の言動には、まだまだ更なる続きがあったのだ・・・









「群体として数限りなく増殖して行き、ついには、どうしようもない閉塞にまでたどり着いた君たちリリン・・・ 彼らは誰よりも幸せに生きたいと願いながらに、競い合い、殺し合っていた・・・ そう・・・ それは、まるで本能に導かれているかのように・・・ 」







「国民戦(National War)、総力戦(Total War)、最終戦(Destiny War)・・・ 名目はどうあれ、革命(ナポレオン)以降の近代兵制は、幾度と無く悲惨で大規模な闘い(第1次、第2次世界大戦)を繰り広げながらに、『大衆参加』による合法的な戦闘国家を作り上げ、世界戦争(民族競争)を正当化する『気運』を助長して行ったのだとされているわ・・・ 次々と生まれ行く挑戦諸国家群・・・ 国家社会主義(AXIS)、共産主義(USSR)、資本自由主義(USA)・・・ だけど、そこで語り継がれ行くイデオロギーの排他性は、闘争(戦争)の原因ではなかったの・・・ 彼らはただ単に解らなかっただけ・・・ 同じであると言う事を・・・ だから・・・」







「愚かなるリリンたちの衝突(戦争)は必然だった・・・ 排除するための交渉、殺戮するための理論構築、抹殺するための技術革新・・・・ 事は国家間レベルの問題だけでは終わらないよ、シンジ君・・・ 社会の現状に目を向けられない人々は、争い(葛藤)とは元来小さな相違より始まる感情の蓄積である事にも気付かない。子どもを愛さない親・・・ 親を忌み嫌う子供・・・ みな己の欲望にだけ忠実で、他人の欲望には厳しい・・・ 彼らリリンは、集(つど)っても敵対し、離れても敵対するのだろう・・・ それぞれの正義(こせいという名の下に・・・」







「碇君・・・ 民衆が戦争を欲していたから、戦争があった・・・ 人々がより良い生活を望んでいたから、それに応える技術革新(環境汚染)も要請されていた・・・ 決して、戦争(システム)や技術(テクノロジー)の方から望んで民衆や大衆の『しもべ』となっていた訳ではないわ・・・ 平和な時代に・・・ いいえ、戦乱の時代であっても追究されるのであろう人類の欲望(探求心)は、どんな時であっても決して止むる事が無いの・・・ 技術の進展と市場拡大に伴う、20世紀型の資源略奪戦争の抑止に一旦は成功したのだと思ったら、人口バランスの不均衡、肝心な資源自体の枯渇問題、不公平配分に基づく暴力主義(テロリズム)の蔓延・・・ 新世紀(ミレニアム)に入ってからも、悲観主義者(ペシミスト)達の心配事に、世界は事欠かないだろうと予想されていたわ・・・ だからこそ・・・ だからこそ、世紀末の人々は歓喜して新たなる発見(無限力(むげん・ちから) = S2−Energy)に沸き、活路を求めていた・・・・ そして・・・」







大いなる意志(Something Else)の禁忌・・・  セカンド・インパクト(S・Iの事さ・・・」







 爆発する映像を僕は感じた・・・







 差し出して来る綾波の手のひらに、力強き生命のきらめきさえも感じている・・・







 僕は、コクリと頷いている綾波からその赤きビー玉のような物質を受け取ると、太陽の光に翳して、眺め見てみた。







 その中に居る人物は、確か墓苑で出会った事のある人物・・・







 ODD作戦参謀のスプルーアンス上級特佐だった・・・








「見てごらん・・・ ある人々(リリン)の在りようを・・・ 彼らもまた善(よ)き男たち(Good Men)だった・・・」




















B2パートへ続く