NEON GENESIS
EVANGELION 2 #9 " Turning Point " side-C4
「彼女が助かっているのは、ほんの偶然であるにすぎない・・・」
背後で淡々と言葉を紡いでるカヲル君に対して、僕の方はと言うと悔しさと悲しみの飽和状態だ・・・
何のために、僕は・・・
・・・そういう思いもある。
あの世界(よ)に生きていたこの僕が、幸せになれない運命にあると言うのなら・・・
せめて、その分、これからのアスカ(ホーネット)に向かって、沢山の幸せが訪れん事を・・・
そう考え、日向さんの告白に則(のっと)って行動した決意は皆、全てが徒労に終わっていると言う事か・・・
伍号計画(ODD)全体を引っ掻き回し、彼女(アスカ)の利用される要素の全てを事前に排除して来た心算であった事も、全ては無駄骨となっている・・・
「・・・約束が違う?」
「だけど、死せる貴方には抗弁出来ない・・・」
「・・・彼女を守り、愛(いつく)しむ力(パワー)は、君の中にこそあるんだと誓ったんじゃなかったのかい? シンジ君? 彼女は君の事が大好きだったんだよ?」
「それとも貴方は、(アスカさんを)愛していなかったの? だから、平気?・・・」
「違うっ!! こんな事、平気なんかじゃないっ!!」
握る拳(こぶし)に力を込め、僕は振り向かずに叫んでいる。
嘆いて、苦しんで、挙げ句の果てにこの結末だなんて、あんまりにも酷すぎる・・・
僕は悲しむ事しか出来なかった・・・
それは綾波たちが言うよう、今の僕にはもう、どうすることも出来ない物事だったからだ・・・
「・・・碇君?」
「・・・どのような人間にも欲望はあるでしょう・・・ けれど、だからと言って、他人を犠牲にして達成して良い訳はありません・・・ 子供は大人の玩具ではないんですよ・・・ 少なくとも大人には、大人に相応しい行動と言うものが追い求められて来た筈です・・・」
「我が父の祈りは、統制だよ・・・ 人(リリン)の持つ矛盾をも根本からねじ伏せてしまうほど強力なね・・・ 否定するかい?」
「・・・その先にやって来る物は何? 父さん(碇ゲンドウ)達が望んだよう、人間の魂が一ヶ所に集まって難局を乗り切るとでも? 生命が一つとなり、ただ一人の思惟がまかり通る世界を是(ぜ)にすると言うのなら、人が集団(群体)に分かたれて培(つちか)って来た多文化と言う財産は継承されない・・・。どんなに辛くても・・・ どんなに傷つけられても・・・ 『ヒト』は、自分以外の『他人』との関係を構築して『人間』になる筈です・・・。僕は他人の中のシンジなのではありません。僕の中に居る僕、碇シンジなのですよ? だったら・・・」
「貴方にとって、存在は記号なの? 碇君?」
「違う! 存在は意識だ! 君たちを認識し、君たちを愛している僕の中の心(まごころ)・・・」
「感情は、生化学的な反応式でしか生まれないよ? 伝達は、電気信号(パルス)だ・・・ キール・ローレンツ・・・ ないしは、碇ゲンドウの『参号計画(E計画)』の完成が一体何を目指した補完であったのかを既に理解しているのならば、シンジ君にも解る筈だろ? 物理的であれ、化学的であれ、生体の行動がシステムである以上、その中にある『意識(こころ)』さえもが、究極的にはシミュレート可能だという事・・・ 我々は核(コア)なんだ、制御という名のね・・・・」
「私達は、あなた達(QP)のために存在する作られた『生命』・・・ 『魂』は泡沫(うたかた)の夢・・・ 」
「夢?」
「そう夢・・・ 希望ではないのさ・・・。だから、源泉であるガフの部屋を開け、望む世界を君にあげよう。僕たちにはその力がある・・・」
「望み?」
「それは現実の続き・・・」
「そして、夢の終わりでもあるのさ・・・ 君とアスカ君のね・・・」
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