所謂黄金週間も終わりました。
それでも、そんな黄金週間に世の中には働いている人はいるもので、筆者もご多忙にもれずほぼカレンダーどうりに過ごすことになってしまいました。
それでも、前半と後半にぶつ切れではありますけど、休めたのは不幸中の幸いでしょうが、結局近場をうろつくだけの休みとなってしまいました(^^)。
さて、今回は4月に発売された'King Crimson 30th
Anniversary Edition'シリーズの第四弾のお話です。
今回の三枚は、所謂DISCIPLINE Crimsonが残した'80年代のアルバムです。
まあ、この時期のCrimsonが登場した時、日本のファンはかなりとまどったのも事実ではありますが、二度の来日公演も果たしています。
来日公演は一部を除けば、それなりに盛況ではありましたが、結局、この時のファンのとまどいは近年のMetal
Crimsonの登場まで、実は解消しなかったとも言えます。
そんな三枚を検証していきませう。
'74年の'RED'を発表後、ライブアルバム'USA'の作業終了後、Fripp翁は所謂、音楽的小ユニット'Fripp
& Eno'、そして'Frippertronics'によるソロパフォーマンスに活動の場を、ある意味縮小していきます。
そして'79年に'God Save The Queen'、'Exposure'の発表で、再び音楽シーンに積極的に戻って来ます。
ご存じのように、'Drive To 1981'、そしてDarryl Hallの'Sacred
Songs'を含めた三部作の完成、そしてなにより、それまでトレードマークであった眼鏡を外したコンタクト装着と短髪で、正直、これがFripp翁か??と見間違う姿であったのも、この頃でした。
The League Of Gentlemanでの活動も含めて、この頃のFripp翁の活動はまさに個人的な音楽を創り、演奏するという姿が見られます。
Crimsonに関して、意外と勘違いされているのはCrimsonというバンドはFripp翁が言うように、'Poseidon〜Islands'期を除けば、実は各メンバーとのセッションを通じた曲作りが中心で、Fripp翁が書いた曲もメンバーによるアレンジメントは、意外と自由な形で行われてきました。
これが所謂、最近のBill Brufordが言うところの、'リハーサルで曲を固める、非常に贅沢な環境での作業'だったわけです。
それから考えると、Fripp翁のソロとCrimsonでの活動はまったく別のものであると考えるのが妥当なのです。
さて、Fripp翁、The League Of Gentlemanの活動の後、再び新たなバンドを造り、リハーサルを始めます。
集められたメンバーは、Crimsonの前任ドラマーのBill、Peter
Gabrielのソロアルバムで知り合った米国のセッションプレイヤーのTony Levin、そしてZappa学校の卒業生であり、David
Bowie、The Talking HeadsのツアーメンバーでもあったAdrian Belewでした。
リハーサルは進み、バンドはDisciplineの名称でテストケースツアーに出ます。
そしてレコーディングに突入、レコーディング終了後、バンドの名称を正式にKing
Crimsonとした訳です。
確かにDisciplineの名称でのツアー中も曲が足りない事もあり、'Red'や'Lark's
Part II'といったところの曲を演奏していましたから、Fripp翁の頭には既に、このバンドをCrimsonとする腹は固まっていたとは思われますが...
ただ、ご存じのとおり、今回のCrimsonは、Guitar以外のリード楽器を参加させていなかったというのも、これまでのスタイルから離れているわけですが、何といっても、あれだけ同じバンドの中で他のメンバーにGuitarを弾かせなかったFripp翁がAdrianというもう一人のGuitarプレイヤーを参加させた事、そしてなによりもこれまでの英国人メンバーだけの構成ではなく、米国人二名+英国人二名の編成としたこと等々、当時のファンを驚かせた訳ですが、一番の驚きは、その演奏された曲、そしてサウンドスタイルでしょう。
Fripp翁とAdrianのGuitarの絡みだけではなく、Tonyの弾くBass、そしてこの時期のCrimsonの飛び道具Stickを合わせた三本の弦楽器によるリズムの一拍、二拍ズラし等の複雑な絡み合いを生み、Fripp翁の人間シークエンサー等々、これまでのCrimsonも技術的にずば抜けたバンドではあったのですけど、それをより以上にテクニカルな演奏に終始し、過去のCrimsonのもっていた叙情性なんざ、かけらも無い(というと元も子もありませんが^^)というのは、特に日本のファンは複雑な反応を示したのも否めないかも知れません。
しかし、拍ズラしを行いながらも、それをものともせずにリズムを支えるBillの演奏も見逃せません。
特に、TAMAのオクタバンやロートタムの使用によるメロディアス且つリズミカルなドラミング、そして後のSimmonsを使用したパーカッションプレイ、わすれちゃいけない、この頃から使い始めたゴングバスによる低音等々、色んなアイディアとその実践がBillによって行われました。
(この時期のリズムの出来を支えていたのは、Billのおかげだと筆者は思っています)
それと、Fripp翁とAdrianによる富士ローランドのGR/Guiter Synthesizerを始めとしたGuitarによるシンセシスもこの頃から始まりましたし、個人的にはFripp翁がついにアーミング(Kaller製)を始めたのも新鮮でしたね。
でも、一番、ファンを驚かせたのは、やっぱAdrianの象さんGuitarでしょう。
このアルバムをひっさげて、日本に初来日を果たし、あの伝説の('おせんにキャラメル、アイスクリーム'売りがホントに居た!!!!)浅草国際劇場でのライブが行われましたが、ホントAdrianのGuitarが象さんを奏した瞬間、ファンは凍りついたのかも知れません。
実は筆者、このCrimson来日前にThe Talking
HeadsのAfro Funk OrchestraでのAdrianのプレイを見ていましたし、逆にAdrianを見たくて行ったので、差程驚きませんでしたが....(詳しくは、'今なら象の声'をどうぞ)
ただ、逆にこの時のTonyのプレイを見て、大ファンになったのも変な話です。
さて、余談は置いといて、アルバム'Discipline'のリマスタリングについて少し。
以外とアナログ盤の雰囲気をそのまま持ってきていると思えますね、今回のリマスタリング。
アナログ録音の雰囲気をCDに収めるのは実は、凄く難しい(というか、大体失敗する^^)と思うのですけど、今回のこのリマスタリングはその辺、凄くうまくいっているように思います。
聴いてて、違和感ないですし、変に高音の密度が高いとか、低音が広がるなんて事もなくて、アナログの特徴である中音域の豊かさも表現されていると思いますね、これ。
但し、日本語のライナーノーツを信じると、'Matte Kudasai'がオリジナルバージョンではないようです。
ちなみにボーナストラックの'Matte Kudasai'は、その基のトラックだそうです。
さてさて、'Discipline'を発表した後、Crimsonをツアーを続け、先にも書いたように、'81年12月に日本の土を踏みました。
その後、再度レコーディングに入り'82年夏前に発表したのが、'Beat'です。
前作'Discipline'が赤(と言うか、暗めの赤でしたが)の中心にシンボルマークを配したのに続き、この'Beat'は青色のジャケットの中央上にピンクの8分音符をあしらったジャケットは、前作にもましてシンプルな造りでした。
但し、アナログ盤はシングルジャケットの内側がピンクに染められている点が特徴でもあります。
収録曲は、先の日本公演でも演奏された'Neal and Jacke and Me'や'Neurotica(先の日本公演では'Manhatan'とコールされていました)を含んでいますが、全体的に前作よりもポップな造りになったのが特徴でしょう。
例えば、'Neurotica'などは、中盤までは派手な造りですが、実際にはボーカルパートの途中からは非常にメロディアスな造りですし、リフ自体は凝ってはいますが、それを感じさせない'Neal
and Jacke and Me'、そして一番端正な曲としてSimmonsでメロディーというかリフを奏でた'Waiting
Man'等は、その最たるものと言えます。
アルバムタイトルからも読みとれるようにBelewの書いた詩は所謂1950年代後半のBeatniks詩人のスタイルと雰囲気のものが使われています。
このほかのインストゥルメンタルナンバーもどちらかと言えば構成がきちんとした造りも特徴ですし、日本語版ライナーでChihiro.S氏が指摘しているように、ボーカルナンバー、インストゥルメンタルナンバー共にリズムもかなりシンプルなのも特徴と言えます。
個人的には、この時期の三枚のアルバムの中では、このアルバムの出来が一番良いんじゃない??と筆者、思っているのですが.....
但し、ラストナンバーの'Requiem'の重さは、やはりFripp翁とCrimsonの出目を感じさせてくれたりして...
ちなみにリマスタリング作業は、このアルバムも平均点以上の出来というか、アナログ盤の良さを損なわない出来と言えます。
まあ、さすがに'70年代よりも'80年代のマスターのほうが保管状態も良かったのと、レコーディングテクノロジー的にも、デジタルっぽい取り方(この頃からデジタルやデジアナ的エフェクターもレコーディング現場で増えていましたし)やトラックの分離感の良さが功を奏しているのかもしれません。
この時期のCrimsonの活動はかなり精力的に、米国、欧州をかなりの数、ツアーして廻っています。
ただ、Crimsonは'70年代の頃から、実はヘッドライナー/トップビルでのツアーというのは、かなり数が少なく、殆どがセカンドビル、つまり前座扱いが多かった訳です。
さて、そんな合間を縫ってレコーディングされ、'84年初頭にまずシングルとして'Sleepless'を発表、その後アルバム'Three of a Perfect Pair'を発表します。
このアルバム発表後も精力的にツアーを続け、'84年4月には日本にも来日、前回のツアーとは違い、日本数カ所をツアーして廻っています。
さて、アルバムの内容はというと、まとまりという点ではさすがに同じメンバーで三作目と言うこともあり、かなり手慣れた造りと言えましょう。
後のMillennium Crimsonでも取り上げられるトップナンバーの'Three
of a Perfect Pair'、シングルカットもされた'Sleepless'等の聞き易いポップなナンバー、不思議なモノローグのような'dig
me'、'Industry'、'No Warning'のようなインプロ等々、アルバムとしてはバランスが取れています。
ただ、ちょっとこなれすぎているなー??というのが、気になると言えば気になる点。
もう少し、危うさがあったほうが良いかなって気もしますね。
ちなみに、ラストを飾るのはご存じのとうり'Larks' Tongues in Aspic Part III'。
この時期にこのナンバーを何故Fripp翁がやる気になったのかは判りません。
まあ、曲は確かに'Lark's'の流れを組むリフとカッティング、リズムを含んでいますし、日本公演でもこの曲はかなりの拍手で受け入れられました。
イントロのカッティングのバックでTonyが弾くシンセも効果的でした。
結局、この'Lark's'はその後のMillennium Crimsonでも'Larks'
Tongues in Aspic Part W'まで受け継がれる訳ですが、それなりにFripp翁もこの時期のCrimsonの状態に満足し、そして完結した雰囲気を感じていたのかも知れません。
Crimsonは1984年7月11日のMontreal
The Spectrum公演を最後に活動を停止します。
さて、このアルバムのリマスタリングについては、ちょいと問題が...
と言うか、最初に聴いた時、何か音圧が低く感じたんですね、これ。
そして決定的だったのが'Sleepless'、これ、何と日本でのアナログ盤とトラックが違うものだったんです。
日本版のアナログ盤では、このリマスタリング盤でもボーナストラックとして収録されたシングルカット用のトラック、つまり'Bob
Clearmountain Mix'だったんです。
と言うことは、オリジナルトラックは初登場と言うことになる???
(はは、これって'89年のリマスター盤からは、このトラックが使用されてるんで、初出ではないっすね^^。2001.07.20訂正)
これは、実際日本版のアナログ盤の裏ジャケの記述に'Sleepless Mixed by Bob Clearmountain'と記載されている事からも判ります。
と言うことは、当時の日本盤は英国盤と異なるマスターを使用された可能性があると思われるのです。
又、これは憶測ですが多分、米国盤も日本盤と同じマスターが使用されたんじゃーないでしょうか??
これは、多分レコード会社側(当然Crimson側も了承しているとは思いますが)の販売戦略の一つだったのでしょう。
事実、日本版のアナログ盤を聴くと、今回のリマスタリング盤と比較して音圧というか低音や中域のハリが強く感じられます。
(で、'Sleepless'の問題は良いとしても、やっぱ今回のリマスタリング盤と日本版のアナログ盤は音圧が違うと思うのは私だけ??'89年のリマスター版もそうなのかな??正直なところ、特にボーナストラックも付かないんで'89年のリマスタリング盤は、見送ったんすよね??買うの....2001.07.20訂正)
これは、今回のボーナストラックにも収められたディスコ用12Inchアナログ用に制作されたリミックス版'Sleepless(Dance
Mix - F. Kevorkian)'からも見て取れる事で、プロモーションの仕方も前作までと異なり、所謂売れ線的な扱いをレコード会社は取ったのでしょう。
で、どちらが良いかと言うと、耳に慣れてるせいもあって日本版のアナログ盤のほうが個人的には気に入っていますね。
今回のリマスタリング盤が英国盤のマスターを使用しており、英国版のアナログ盤を基にリマスタリング作業をしたとすれば、それはそれで、マスタリング違いの二枚を楽しめると言うことになりますが...
ちなみに、他のボーナストラックは、本編では使用されなかった'Industry'(すみません、'No
Warning'の間違いですね、これ/2001.05.16訂正)のアウトテイク'Industrial
Zone A'と'Industrial Zone B'、後に四枚組ベスト盤'The Essential
King Crimson:Frame by Frame'で初公開されたTonyのボーカル遊び'The
King Crimson Barber Shop'、そしてTony自身がミックスした'Sleepless'が収められています。
トラック的にはTonyがミックスした'Sleepless'が面白い出来です。
'Sleepless(Dance Mix - F. Kevorkian)'の基になったというか、レコーディングの際のトラックを全部使ったって感じですけど、ラストの方のパーカッションとか、アフロファンク的な感じが強調されてて良い感じであります。
とにかく、今回のこの三枚の中では、このアルバムが一番色んな考える材料を与えてくれたと言えますね。
さてさて、今回は所謂Discipline Crimson期の三枚のリマスター盤を紹介しました。
リマスター作業も、この後、ようやくホントに出るらしい'USA'で打ち止めになるんでしょうか??
(さすがにMetal Crimson/Double Trio Crimosnはリマスタリングは必要無いでしょうからねー??)
まあ、Fripp翁の日記を見ると次のツアーのリハと曲作りも順調のようですし、6月頃から米国を起点にツアーも始まるようです。
残念ながら、今回もTonyの参加は実現の可能性は殆ど無さそうですけど、どんな展開になるのか、又、じっくり見させていただこうではありませんか??
(で、いつ日本に来るのかな??)