ネット社会の憂鬱-その弐〜海の向こうの凋落劇(2000.04.30)

黄金週間に突入、皆様、いかがお過ごしでしょうか??
digi19で続編を予告しておきながら、別ネタをしばらく取り上げていたら、ついに憂鬱は現実と化したようです。
もう既にご存じのとうり米国ではネット関連株を中心に株価が下落、まあ米国の場合はそれでも全体が下がったというよりも、ろくでもないネット関連株とろくでもある(??)ネット関連株の選択が行われた、派手目の調整が行われたと言っても良いのですけど、日本の場合はちと深刻。
正直言ってその株は下がらなくても良いんでない???というのも十羽ひとからげでまとめて落ちちゃいました。
別の言い方をすると、ろくでもない会社の株の下落に引きずられて、みーんな落ちちゃったと言ったところでしょう。
確かに、日本の場合東証で銘柄の入れ替えがあったから入れ替え分の株の売り買いが激しかったわけなんですけど、どうもそれだけじゃないでしょう。
そんなこんなの最近の出来事をかいつまんで見ると、やはりネット社会の憂鬱が見えてくるのです。
今回は、そんなお話を......


バブルか否か???

 最初にも書いたように、米国の株価は4月第二週を境に急落したのはご存じでしょう。
とにかく一週間で二兆ドルがすっ飛んだというすさまじいもので下落率としては過去最大だったとか。
一応、現在NY市場はかなり持ち直してはいますがNASDAQのほうは相変わらず安定せず、激しく上がったり下がったりしております。
まあ、NY市場のほうはいわゆるオールドエコノミー企業が中心ですし、業績や資産評価等、これまでの企業評価の方法で見ていけば、それほど悪い状態では無いと投資家も理解しているのでしょう。
問題は、NASDAQなんかのほうでして、こちらのほうはいわゆる株式公開して数年、もしくは数ヶ月のネット企業、ハイテク企業が中心で、投資家達もどうすれば良いのかが疑心暗鬼になっているとも言えます。
まあ、そんなネット企業ってのは、ある種ブームに乗って株式公開を急いだ企業ばかりだし、しかも投資家達もついこのあいだまでのネット企業投資ブームに乗り遅れるなとばかりに貢いで来たというのが正確なところ、気配やブームで創られた世界が、現実に直面し始めたという事なのでしょう。
とにかく、ここ数ヶ月のいわゆる米国のネット企業の凋落はすさまじいもので、それなりに有名な会社でさえ株価が段々と下落、資金がショートするは、人材は逃げ出すはという状態です。
でも、そんな状況になりそうだったって事は、みんな実は知っていて黙っていた、誰がババを引くかを見極めようとしていたというのが事実ではないでしょうか??
ただ、一つ救いがあるとすれば、この騒ぎで有用な企業とそうでない企業のきちんとした選別が行われつつあるという事でしょう。
事実、CISCOINTELと言った実のある企業の評価は持ち直して来ています。
落ち込んでいるのは、株式公開はしたものの、今後それだけのキャパシティを維持、成長出来そうにない会社が中心で、しかも公開時の株価が異常に高かったものがドカーンと落ちたから市場全体のダメージが大きかったというのが真相でしょう。
ですから、米国はバブルの部分とバブルで無い部分が例えばNASDAQの中で同居していたわけです。
と言うことは、今回の出来事はバブルの崩壊でもあるわけですけど、調整局面であったとも言えるわけです。
事実、米国の一般投資家の間では、これから生き残る企業と生き残れない企業を選別、そして今の底値状態を利用して再び投資に乗り出す動きもあるんですから。


バブルな奴ら

 確かにここ数年、ネットを利用した商売はいろんなものが米国では出現しました。
いわゆる'ドット・コム'という奴らです。
Amazonみたなネット本屋や、E-Toysのようなネットおもちゃ屋、ネットペットショップ、あげくの果てはネットを利用した料理のケータリングサービス.....
でも、一部を除いて、その殆どが行き詰まってしまっています。
これらの企業の経営者は、強気の姿勢を崩しません。
まあ、強気の姿勢の裏で何とか会社を売り抜けないかと考えている連中もかなり多いようですが....
で、よくよく考えてみるとEコマースだ何だと言っても、そうゆう一般消費者向けの事業って、早い話が通信販売といっしょなわけです。
確かに、ネットを使用する事により、これまでの通販業者のようなオペレータが大量に必要だとか、大量の回線が必要だとか、それらを運営する設備が必要だとかいう事に対して、圧倒的に有利な事は事実です。
ところが問題もあります。
それは自分達のサイトが皆に知られなくてはならないという点です。
そのため、あの有名なNFLのスーパーボールのCMタイムを大金を投じて確保する、そんな事が行われる訳です。
つまり'ドット・コム'企業というのは、実はその運営において広告宣伝費が大々的に投じられている訳です。
以前、どこかのIT会社のCMみたいに少ない投資で行えるなんて事は、実は大嘘だったわけです。
ちなみに'ドット・コム'企業のもう一つの運営にかかる大きな費用って知ってます???
なんと、それはストックオプションで売りにだされた株を買い戻す為に費用だそうです。
ストックオプションって奴も、そんな怪しい雲行きになった'ドット・コム'企業に重くのしかかってきているようです。
確かにその企業の評価が高ければ、ストックオプションの付与って奴は従業員にそれなりのモチベーションを高める役割を果たしてくれます。
しかも、報奨金とかそうゆうものと違って付与した段階では、金銭上のやりとりは無いわけですから、企業にとっても人件費にかかる部分を低減出来るわけです。
ちなみに、そんなストックオプションを使って会社の家賃を払うというワザもあるそうです。
(さすがに夜食のケータリングサービスの支払いには使えないみたいですけど.....)
しかし、そんなストックオプションも従業員が売り抜けを始めると企業にとっては厄介な事になります。
何せ、底値で従業員が手に入れた株を市場価格で売っちゃう、ところが市場に株が出たなら、その株で自社株の価値が下がらないようにその株を買い取らなきゃいかんわけです。
と言うことは、ストックオプションの行使が行われるのは、実はそんな企業にとってはかなりきついことな訳です。
ちなみに、あのMicroSoftの年間予算の内、研究開発費より多いのがそんなストックオプションで市場に出た株を買い戻す為の費用だとか.....
MSでさえそんな状態ですから、ろくに利益の出ていない'ドット・コム企業では耐えられないでしょう。
そう、以外とみんな綱渡りで会社を運営しているんですね???


生き残るのは誰か???

 こうやって考えてみるとネット社会を先導しているかに見える'ドット・コム'企業も、かなりほころびがあるというのが、良く判ります。
特に、こんな状況下では資金集めも大変な事でしょう。
金の切れ目が縁の切れ目となる訳です。
ただ、そうは言ってもこれからの社会がネットワークを利用して成り立つ世界に変わる事は間違いは無いしょう。
ところが、それを今の'ドット・コム'企業が引っ張っていけるのかというとかなり疑問も沸く今日この頃な訳です。
特にコンシューマ向けのEコマースというのは、今後どんな形で定着するのか、紆余曲折があると思います。
そう言えば、先日TVで英国の'ドット・コム'企業の特集がありました。
英国でも'ドット・コム'企業はブームだそうですで、ちょっとアイディアを思いついた若者が投資家を捜して、日本で言えばあのBit Varyパーティのようなところで投資家に投資を持ちかけるなんて事をやっているそうです。
ただ、英国の投資会社のほうでも、やはり思いつきと勢いだけの企業はふるい落とさなければならないとしているようです。
確かに思いつきで始めたビジネスが成功すれば、それはそれで良いのですけど、そのビジネスを思いついた人と同じ評価を皆がするかというと、100%そうはならないでしょ??
そういう意味では、選別というのは投資家にとっても、ユーザにとっても非常に重要なわけで、起業家の思いこみだけが一人歩きしていた時期は既に去っていったとも言えるでしょう。
ところが、そんな一人歩きしていた思いこみにまんまと乗ってしまった投資家達、それでとてつもない資産評価の恩恵を受けてしまった起業家達も、実はそれをどうやって鞘に収めるかに四苦八苦しているんじゃーないでしょうか??
最近'ドット・コム'企業は何社生き残るのかって良く話題に昇ります。
一説では100社に1社なんて話もありますが、筆者はもっと少ないんじゃーないかと思います。
企業向けのBtoB型のEコマース企業はかなり生き残る可能性が高いと思いますけど(企業向けのBtoB型は、その誕生に理由があるはずですから)、コンシューマ向けは、ある意味起業家の思いこみの産物的なところが濃いですからヘタするとかなりきついんじゃーないかな....


 さて、今回は米国の'ドット・コム'企業の凋落のお話でした。
そんな海の向こうだけじゃなくって、じゃー日本はどーなん???と言うことで、次回は(ホントに次回かな???)'ネット社会の憂鬱-その参'として日本のお話をしようと思っております。
では、次回まで(^^)/

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