発売されているのに知らなくて、突然ショップでそのレコードやCDに出会うなんて事、よくありますよね??
今回紹介するのは、そんな一枚、Hatfield
& The North、National Health、GONG等々を渡り歩いた、CANTERBURYの生んだ名ドラマー、PIP
PYLEのソロアルバムです。
このアルバム、実は'98年の秋口に日本でもVoiceprint JAPANから発売されていたのですけど、筆者、ぜーんぜん知りませんでした。
たまたまショップに立ち寄ったら、あらあら、こんなの出てたの??とばかりにすかさず購入した次第です。
では、PIPの世界を紹介しましょう。
最初にも書いたように、PIPと言えばCANTERBURYきっての名ドラマーであり、その参加アルバムやセッションの数は無数にあります。
また、作詞家としてもユニークな歌詞を書いていますし、CANTERBURYだけでなくフランスでの活躍も有名なお話です。
ところが、このアルバム、そんなドラマーとしてのPIPではなく、作家としてのPIPの現在の姿を映しだした、そんなアルバムになっています。
近年のインストゥルメンタルバンド、L'EQUIP' OUTの時のような奔放にドラムを叩く姿でなく、作曲家、作詞家、そしてアレンジャーとしての姿勢でこのアルバムは作られたというわけです。
ちなみに、参加メンバーもフランスでのつきあいからのメンバーの他、かってのHatfield
& The Northの盟友、すなわちPhil Miller、Richard Sinclair、そしてStewart
& Gaskinが、またNational Health時代の盟友John Greaves、L'EQUIP'
OUTのメンバーでもあるGONGのDidierおじさん、元Soft MachineのHugh
HopperとElton Deanと来ていますから、もう殆どCANTERBURY ALL STARSと言ったところでしょうか??
でも、このアルバムはPIPのアルバムですから、そんなALL
STARS構成で作られたお祭りアルバムでは決してないのです。
収録曲は一曲を除いて、PIPの書き下ろしか共作(と言っても、共作の一曲はフリーパートがあることからのクレジットなのでしょう)で、まさにこのアルバムはプレイヤーではなく、作家としてのPIPが収められた作品となっている訳です。
ちなみに、このアルバム、まさにアルバムタイトルどうり、ほぼ7年がかりでようやく世の中に出すことが出来たのだそうです。
まあ、録音に時間がかかったというよりも、元々の発売を予定していたレーベルの業績不振やら何やらのどちらかといえば音楽とは関係の無いビジネス的な問題が大きかったようです。
ただ、それでも時間のおかげで、先にあるようなCANTERBURYの重要なミュージシャンが入れ替わり立ち替わり参加出来たのかも知れません。
録音は、フランスサイドのミュージシャンがセッションの中心を担っていたようで、Guitarについては腐れ縁というのも何ですがPhilがリードを担当していますが、一番驚いたのは、Stewart
& Gaskinの協力でしょう。
まあ、昔のようなOrgan弾きとしてではなく、シンセを中心としたKeyboard Playerとしての参加ではありますが、そこかしこにStewart
& Gaskinスタイルを披露しています。
ボーカルはトップナンバーのみをRichard Sinclairが担当、その他はStewart &
Gaskinが参加している曲ではBarbara Gaskinが、その他の曲ではJakko M Jakszykがそれぞれ担当していますが、ちょっとおもしろかったのが、Jakko
M Jakszykの声質と歌い方がRichard Sinclairに実に良く似ている事。
ホントはPIPは、Richard Sinclairのボーカルスタイルが好きなのかな????なんて思えて来ます。
もしかしたら、全面的にRichard Sinclairのボーカルでも良かったのだろうけど、多分他の参加メンバーを考えるとまさにHatfield状態にはしたくなかったんでしょうね。
さて、PIPの書き下ろし曲じゃない曲が一曲と言いましたけど、これが何とBeatlesの'STRAWBERRY
FIELDS FOREVER'なんです。
この曲、PIPのアイディアとともにStewart & Gaskinが全面的に協力したのでしょう。
ちなみに、アレンジは殆どBeatlesのオリジナルのまんまですけど、そこはDaveですから、ところどころにちゃーんと罠を用意してくれています。
後半の混沌とした部分のアレンジなんかも、かなり濃厚でおもしろい出来です。
さて、アルバム全体を通じて思えるのは、PIPの作家としての才能も捨てたものじゃないって事、単なる名ドラマーではなくて、十分な実力を持ったライターでありアレンジャーであり、プロデューサだって事でしょう。
十分に現役のプレイヤーでもあるPIPがちょっと違った面を見せてくれた、そんなアルバムなのです。
さて、そんなPIPですけど、筆者には忘れられない思い出があります。
それは、忘れもしない'96年のGONGの来日公演でした。
この日本公演は、ロンドンで行われたGONG結成25周年記念ライブ'25TH
BIRTHDAY PARTY GONG OCT 8TH-9TH 1994 LONDON, THE FORUM'の流れを組んで行われたものでした。
残念ながらGONGの日本での知名度からいって、ホールを使用したツアーではなくてライブハウスツアーとなってしまいましたが、日本各地のGONGフリーク(いやはや、実は年寄りと若い人の半々の客構成で、筆者もびっくりしましたが)が集まり、しかも演奏のほうも充実しまくりで、まさに伝説となったなんておおげさな形容詞を付けてもおかしくないコンサートだったのです。
PIPはMike Hawlettとリズム隊を組んで、もうそりゃ素晴らしい演奏を繰り広げてくれました。
演奏された曲や演奏スタイルは、'25TH BIRTHDAY PARTY GONG
OCT 8TH-9TH 1994 LONDON, THE FORUM'にほぼ準じたものでしたが、日本調達のPot
Head Pixiesは登場させるは、Daevidの衣装といい、極めつけはGilliのSpace
Whisper!!!!!とにかく筆者もステージかぶりつきで大騒ぎしていたことを思い出します。
(欲を言えばTim Blakeにも来て欲しかったのではありますが....)
そんな素晴らしいライブの後、メンバーが客席のほうに出てきたのですが、当然Daevidのところは人で溢れかえりました。
みんなに丁寧にサインに応じたり話をしたりしていましたが、人があまりに多いので筆者はサインを貰うのをあきらめたんですね。
そんでもって振り返ってバーカウンターのほうを向いたら、何とビールをオーダするPIPが居るじゃーありませんか!!!
思わず駆け寄り、言葉を交わし、チケットにサインとPIP流のジョークメッセージを頂いたというわけです。
Hatfield & The Northの大大大ファンである筆者としては、ホント夢のような一夜だったのでした。